【解説】BCP策定を実施するメリット・デメリットとは?

記事更新日:2022/10/04

BCP対策

BCPの文字と書類

企業の事業継続性を保つために必要とされているBCP対策。多くの企業で実施が急がれているBCP対策ですが、具体的にどのようなメリットや効果があるのでしょうか。本記事では、BCP対策のメリット・効果やデメリットなどを解説するとともに、企業事例も紹介していきます。

BCP対策とは?

BCPとは、「Business Continuity Plan」の略で、日本語では「事業継続計画」を意味します。

BCP対策は、災害などの緊急事態が発生した際に、被害の最小化と早期復旧を図り、事業を滞りなく継続させることを目的とした取り組み全般を指し、非常時・平常時双方において実施されています。

BCP対策が必要とされている理由

企業におけるBCP対策の必要性は年々高まっており、2022年の策定率は17.7%、企業規模別では、大企業が33.7%、中小企業で14.7%となっています。

このような意識の高まりの背景にはどのような理由があるのでしょうか。

[出典:株式会社帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2022 年)」]

企業の事業継続性を保つため

冒頭でも述べたように、BCPとは非常時における事業の継続を目的としています。緊急事態というものは、予期せぬタイミングで突然発生し、多くの場合現場は混乱に包まれてしまいます。

そのような状況下において、冷静で的確な判断と行動ができなければ、被害がさらに拡大することにより復旧が長期化する可能性が高まるでしょう。最悪のケースでは、事業が停止してしまうこともあり得るため、企業の存続をも脅かす事態になりかねません。そのような事態を回避するために、BCPは存在します。

平時より、非常時を想定した様々な対策を講じておくことで、緊急事態が発生した時に適切な判断と素早い行動をとることができるのです。

IT化に伴い発生する問題に対応するため

近年の企業のIT化により、様々な業務がシステムやネットワークを介して行われています。そのため、システムや情報インフラに損害が及ぶと、事業継続が危ぶまれる深刻な事態へと発展しかねません。自然災害による物理的なネットワークや情報インフラへの損害以外にも、通信障害や不正アクセスなどのサイバーテロによる損害も考えられます。

企業がBCP対策を導入する理由としても、このような情報セキュリティ上のリスクは、自然災害や感染症に次いで多くあげられています(前掲「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2022 年)」より)。

さらに、事業継続を困難にさせる要因としても、多くの企業が情報システムの不具合や損傷といったリスクは深刻であると考えており、IT化が進むことによるリスクが顕在化しているのです。

BCP対策を実施するメリットや効果

BCP対策は、突発的な緊急事態から事業を守ること以外にも様々なメリットや効果を生み出します。ここからは、BCP対策を実施する上で考えられるメリット・効果をあげていきます。

緊急事態でも冷静に対応できる

地震や豪雨により工場やオフィスが損壊したり、業務に必要なシステムがダウンしてしまった時、多くの場合、人は冷静な判断を下せない精神状態に陥ります。

このような状況下においては、被害を最小限にとどめる、または早期復旧を図るために投入できる社内リソースは限られていることがほとんどでしょう。一刻を争う中で、素早く現状を把握し、優先順位をつけて取り組んでいくことが求められるのです。

平時より、起こり得る様々なリスクを想定し、周到に準備を重ねておくことで、緊急事態に陥った際も冷静な判断のもと、やるべきことを的確にこなせるようになるのです。

取引先からの信頼度が向上する

企業の経営は、ステークホルダーとの関係の上で成り立っています。そのため企業の一部が損害を受けた場合、その影響の波及範囲はステークホルダーまで広がる可能性は多分にあります。

非常時においても問題なく事業を継続するためのBCPを策定しておくことで、取引先や株主、顧客に対し、強固な経営基盤を示すことができ、信頼獲得につながるでしょう。

加えて近年の企業が果たすべき社会的責任(CSR)に対する意識の高まりを受け、顧客や社会を含む総合的な危機管理能力の高い企業であるという証明は、企業価値向上に貢献する要因にもなり得ます。

BCP対策の有無は、取引先の選定や金融機関の融資判断にも大きな影響を及ぼすようになっており、企業の信用度を示す証明書としての役割も果たすようになっているのです。

自社の中核事業が可視化できる

BCP策定においては、現時点での自社の経営状態や方針、また組織体制や業務フローなどを、客観的に見直し、脆弱性の検証を進めていく必要があります。

そして、非常時の限られたリソースの中で継続・復旧対応を行うため、優先的に社内リソースを投入する事業を順位づけし、中核事業を可視化していかなければなりません。中核事業を選定する上でのポイントは、その事業が停止した際に、企業経営に及ぼす影響の大きさです。

その影響が大きければ大きいほど、事業停止により企業の存続事態が危ぶまれる可能性が高くなるため、優先的に社内リソースを投入する必要がある事業と言えるのです。

自社の強みと弱みを明確にすることができる

BCP策定のために必要な現状把握作業を進めていく中で、経営基盤の脆弱性が可視化されることで、様々な課題を洗い出すことができます。

中核事業が可視化されることで、事業が停止してしまった際の影響の大きさやその波及範囲などが見えてくるでしょう。それに伴い、中核事業の強みも可視化されることになり、その事業に取り組む従業員の意識が高まることも期待できます。

同時に、業務フローや組織体制における弱みが顕在化することで、非常事態に陥る前に、様々なリスクヘッジ対策が講じられるようにもなります。

倒産や廃業のリスクを減らすことができる

2011年に発生した東日本大震災では、2021年までの10年間に震災を原因とした倒産件数は累計1,979件に達しています。その内訳を見てみると、震災や津波によって工場や拠点が損壊したことなどが原因となっている直接型倒産の件数は、全体の1割程度の240件となっています。

その一方で、取引先や仕入れ先の倒産やサプライチェーン断絶などにより業績が悪化したことが原因の間接型倒産の件数は1,739件と、震災による倒産の約9割を占めています。

適正なBCPを策定し実行することで、被災した場合でも資源の枯渇による操業率の低下や、業績の悪化という影響を被るリスクが軽減され、倒産や廃業を免れる可能性が高くなるのです。

[出典:株式会社東京商工リサーチ「“震災から10年” 「東日本大震災」関連倒産状況」]

BCP対策を実施するデメリット

企業の経営基盤を強化する上でも大きな効果を発揮するBCP対策ですが、策定に伴いデメリットもあります。

策定にはコストがかかる

BCP策定においては、社内でプロジェクトチームを発足させ、全社横断型で進めていく必要があります。BCPの策定は、現状把握から具体策の策定、社内周知のための教育実施などに社内の人的・物的資源を割くこととなる一方で、直接的な利益が生まれない取り組みです。

加えて、BCPに関するスキルやノウハウが社内に乏しいという理由から、専門のコンサルタントに依頼するケースも少なくはないため、その場合、新たなるコストが発生します。

大企業に比べて投入できる人員や財源の確保が難しいことが、中小企業のBCP策定率が低水準である大きな原因となっており、策定率向上における課題となっているのです。

リスクを分散するためのコストがかかる

非常時に対する備えとして、リスクを複数に分散させる対策は多くの企業のBCP対策からも散見されます。

例えば、基幹システムのバックアップデータを災害に強い地域のデータセンターに避難させたり、クラウド型バックアップシステムを導入したりする対策は代表的な一例です。

オンプレミスとクラウドの両サーバーでバックアップを取っておくことで、どちらかが損害を受けたとしても、もう一方のサーバーを使用することで、早急なデータ復旧が可能となります。

他にも、本社拠点が損壊した際に、別拠点にて本社機能を維持させる環境づくりもリスク分散の一例としてあげられます。これらに投資し、実際の非常時に正しく機能するレベルまで環境を整備するには、多大なコストが発生することになるでしょう。

BCP対策を実施するための方法

ここからは、BCP対策を実施する上での、具体的な方法を時系列に解説していきます。具体的には、次の6項目です。

  • BCP対策に必要な体制を整える
  • 復旧の優先順位を決定する
  • リスク分析を実施する
  • 継続に必要な戦略を講じる
  • 運用方法を決定する
  • 社内への周知や教育を実施する

BCP対策に必要な体制を整える

BCP対策は、社内のどこか一つの部門が策定して完結するものではありません。

横串型で組織を横断・連携し、事業継続と早期復旧に取り組まなければならないため、各部門から選出された担当者でプロジェクトチームを発足した方がよいでしょう。

以下、BCP策定に関わるべき部門・組織とそれぞれが担う主たる役割です。

  • 経営層:BCPにおける基本方針や中核事業の決定
  • 経営企画部門:経営戦略策定
  • 人事部門:組織編成および人事異動
  • 総務部門:オフィスや工場などの施設管理・環境整備
  • 情報システム部門:情報インフラやシステムの整備・管理
  • 財務部門:資金調達

平時のBCP対策チームが非常時には災害対策本部となり、司令塔として機能することを想定してチームを編成しておくと、すでに共通認識を持った上で対応にあたることができるため、おすすめです。

復旧の優先順位を決定する

緊急事態が発生した際、継続や復旧作業に投入できる社内リソースは限られてきます。

全ての損害に対し、同時に対策を講じることは困難であるため、優先的にリソースを投入する事業をあらかじめ決定しておかなければなりません。そこで有効となってくるのが、ビジネスインパクト分析(BIA)という手法です。

BIAは、災害などの非常時において業務やシステムが停止してしまった際の影響度を評価するための分析方法で、BCPにおける中核事業の選定や優先順位をつける上で、有効に働きます。

BIA分析を元に、優先的に継続・復旧対策を講じなければならない事業(=中核事業)を決定します。

リスク分析を実施する

BIA分析とともにBCP策定において有効な分析手法として、リスクマッピングがあります。

リスクマッピングとは、図表形式で、リスクの発生頻度と影響度の大きさの二つの軸から、各リスクの大小を明示したものです。リスクを可視化し、対処すべき優先順位を決める際に有効な手法です。

例えば、高頻度に発生し及ぼす損害も大きいリスクは、発生頻度を抑えるか被害を最小限にするかという防災・減災対策がまず必要であるため、平時からの対策が必要であると考えられます。

このように、高頻度・損害大のリスクが非常時における優先順位の高いリスクとは一概には言えないため、リスクマッピングを元に各リスクの内包する要因をしっかりと検証する必要があるのです。

マップを作成する際に必要なリスクの洗い出しにおいては、全社員を対象にアンケートを実施することで、取りこぼしを軽減することができるでしょう。

継続に必要な戦略を講じる

事業を滞らせずに継続することと損害箇所の早期復旧においては、復旧に必要な対応とともに、いくつかの代替策をセットにしておくことが大切です。

例えば、社内ITインフラのBCPにおいては、損害を受けた拠点やシステム、ネットワーク環境を復旧させるための対策がまず盛り込まれることが一般的です。

さらに、復旧対策と合わせて、他の拠点や設備、方法で必要な業務を継続する代替策という2枚のカードを持つことで、経営基盤の盤石性をより向上させることができます。

代替策の例としては、以下のようなものがあげられます。

  • バックアップデータをクラウドとデータセンターの両方に保管する
  • 本社やメインの生産ラインとなる工場が被災した際に、製造や本社機能を別拠点に移す
  • 復旧が完了するまでの間、業務の一部をアウトソーシングする

代替策においては、事前対策として準備・整備しておけることが多く、非常時の混乱した状況下においても、スムーズに実行に移すことができるため、事業継続に対し高い効果を発揮します。

運用方法を決定する

具体的な戦略と対策が固まったら、実際の運用方法の決定へと進んでいきます。非常時において、冷静かつ的確にBCP発動の判断を下すために、まずは対策本部の編成や招集手順を定めておく必要があります。

そして、具体的な避難方法や安否確認などの初動対応における行動指針を定め、手順を明確にしていきましょう。運用方法の決定において最も重要なポイントは、BCPの発動条件を明確にすることです。

発動条件が曖昧であったり認識に齟齬が出るような表現で定義されていたりすると、判断軸がブレてしまい、本当に必要な状況下において発動できない可能性が高まります。

発動が必要な状況であるにもかかわらず発動を見送ったことにより、被害の拡大と復旧の遅れが深刻化し、事業が停止してしまう事態になりかねません。最悪の場合、初動対応の遅れが原因で、廃業や倒産に追い込まれることもあるでしょう。

社内への周知や教育を実施する

BCPは、一度作成して終わりではありません。

緊急事態が発生した際に自分達がすべきことを明確に理解できていない場合、対応が後手に回り、結果、事業継続や早期復旧に甚大な影響を及ぼすことになります。

そのため、社員に対しては、定期的な教育や訓練を実施し、緊急事態が発生した際も冷静に行動が取れるように準備しておくことが大切です。BCPが完成したら、試行期間を設け、社内ルールの周知や社内教育、訓練を実施すると同時に、様々な意見や新たな課題を吸い上げていきましょう。

収集した声や意見を検証し、適宜必要箇所を修正、そして再運用を繰り返すPDCAサイクルを回し、ブラッシュアップしていくことで、高い実行性と効果を生むBCPを作り上げることができるのです。

BCP対策を実施している企業事例

BCP対策においては、自社の事業内容や経営方針をきちんと理解・分析し、各社で最適なリスクヘッジを講じる必要があります。

漢方薬などの製造販売を行う大草薬品株式会社は、神奈川県の三浦半島に本社工場を設けていることから、大規模地震と津波被害を事業継続における最大のリスクと設定してBCP対策を講じています。

同社のような災害発生リスクの高い場所に拠点を構える企業の多くは、災害発生時に機能を移管できる、他拠点施設を設けるケースが多いものです。しかし、BCP対策のために他拠点を開設することは難しいと判断した同社は、災害発生時における減災・防災をBCP対策の基本方針としたのです。

次に、災害発生時に優先すべきことは以下の2つに定めました。

  • 従業員の命と安全を守る
  • 災害発生時、避難場所などで最も需要が高い胃腸薬と便秘薬の製造を中核事業とする

上記2つの優先事項を軸に、下記のような5つの対策を策定・実行しています。

<1.事業継続委員会の設置>

理由:平時はBCP対策の策定・見直しなどを行い、災害発生時には災害対策本部となって指示命令を行う司令塔の役割を担うため

<2.製造に必要な備品や薬品、設備等の保管方法を変更>

理由:災害発生時における設備の転倒や備品・薬品の落下を防止するため

<3.従業員の初動訓練の実施>

理由:避難通路の確保や初期消火などの初動対応を迅速に行うため

<4.避難計画の周知徹底>

理由:従業員の安全確保のため

<5.製造現場環境の再整備>

理由:工場が損壊した場合、GMP基準(医薬品の製造・品質管理基準)を満たすことを製造再開の判断基準とし、同基準を軸に早期復旧を図るため

このような取り組みの結果、各社員の当事者意識が高まり、BCP対策に対して様々な意見交換が活発に行われるようになり、社員間の結束が強化、連携・協力体制がより強固なものになっています。

BCP対策を実施するメリット・デメリットを把握

必要性の高まりに反してBCPの策定率が低い原因の一つに、「『もしもの時』を想定した有効な戦略・計画である一方で、コストがかかる」ということがあげられます。

一方でBCP策定は、中長期的に見れば企業価値が高まり、顧客やステークホルダーとも良好な関係を築きながら持続的な企業経営が可能になるというメリットもあります。

高い効果を生むBCPの策定には、メリット・デメリットの双方をしっかりと理解することが重要です。本記事で紹介した効果や手法をもとに、自社の事業環境に応じた実効性のあるBCP対策に取り組んでいきましょう。

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