BCPマニュアルとは?必要性や策定方法を解説!テンプレートも紹介!
BCPを策定したあとは、運用するための明確なマニュアルが必要になります。本記事では、BCPマニュアルの必要性や策定方法を解説します。策定に役立つテンプレートも紹介しているので、マニュアル作成にご利用ください。
目次
BCPマニュアルとは何か
BCPとは、自然災害・事故・情報漏洩など不測の事態が発生した際に、被害を最小限に抑え、事業を早期復旧・継続させるための計画のことです。「Business Continuity Plan」の頭文字をとった言葉で、日本語だと「事業継続計画」と訳されます。
BCPで想定されるリスクは、自然災害、サイバー攻撃・社内の不祥事などさまざまです。事業継続を脅かすあらゆる事象に備えるのが、BCPの特徴といえるでしょう。
BCPの種類
BCPで対策すべきリスクは、大きく分けて以下の3種類です。
・自然災害
地震・豪雨・豪雪・火山の噴火・津波・竜巻などが当てはまります。自然災害の発生は防げないため、災害の種類ごとに対策を講じることが大切です。
・外的要因
取引先の倒産・サイバー攻撃・感染症・通信障害など、社外で発生する問題が該当します。特に、サイバー攻撃によるデータの破損や情報漏洩は、企業経営に深刻なダメージを与える可能性があるため、注意が必要です。
・内的要因
社内の不祥事・人的ミス・機械の故障といったように、社内で起こる問題が当てはまります。社内の不祥事は企業イメージを損なう可能性が高いため、予防はもちろん、発覚後の対応も重要です。
BCPの効果
BCPを策定するメリットは、主に以下の3点です。
・緊急時における事業の早期復旧が可能になる
BCPを通じて事前に対策することで、緊急時の早期復旧が可能になります。自社のリスクがあらかじめ整理された状態であるため、非常時にスムーズな対応ができ、経済的損失を最小限に抑えることが可能です。
・自社事業の強みと弱みを把握し、経営戦略にも生かせる
BCPを策定する段階で、自社の事業の課題や優先事項が明確になります。これらの分析を生かすことで、適切な経営戦略の立案が図れるでしょう。
・企業価値が高まり、取引先から信頼を得られる
企業経営において、関連企業との関わりは事業成功に大きな影響を及ぼします。緊急時に何日も事業が停止すると取引先に迷惑をかけてしまうため、BCPによる対策が必要です。
BCP対策は、緊急時の事業停止リスクの低減に繋がるものであるため、策定しておくことが取引先からの信頼向上に繋がります。
BCPマニュアルを必要とする理由
緊急時は現場が混乱し、正常な判断がしにくい状況です。そのなかで、適切な対応を迅速に行うために、事前にマニュアルを作成する必要があります。
また、緊急時にBCPに沿った行動を取るためには、平時から作成したマニュアルを従業員に浸透させることが大切です。
災害対策マニュアルとは違うのか
BCPマニュアルと似たものとして、災害対策マニュアルがあります。災害対策マニュアルは、自然災害に対する安全確保が目的のマニュアルで、事業継続を目的としていません。
一方、BCPマニュアルは、非常時における事業の早期復旧・継続が目的のマニュアルです。自然災害だけでなく、事業継続を脅かす様々なリスクが対象となります。
このように、災害対策マニュアルとBCPマニュアルとでは、作成する目的と対象とする緊急事態の範囲が異なります。
BCPマニュアルを策定する手順
ここでは、BCPマニュアルを策定する手順について解説します。
1.リスクを洗い出す
まず、想定されるリスクを洗い出しましょう。ここで可能な限り細かく具体的なリスクを洗い出すことで、想定外の事態を減らせます。
たとえば、自然災害であれば台風・地震・落雷などがあり、事故だと設備事故・中毒事故・交通事故といったものが挙げられます。自然災害・外的要因・内的要因のリスクを思いつく限り洗い出せたら、次の段階に進みます。
2.復旧対象を選定する
直面する可能性のあるリスクすべてに、等しく対策を講じることは現実的ではありません。リスクに優先順位を設け、重要度の高いリスクを主な復旧対象と定めましょう。
リスクに優先順位を付ける際の判断基準は、以下の3点です。
- 発生する可能性
- 発生頻度の高さ
- 発生した際の損害レベル
3.発動基準を定める
想定されるリスクに対し、どのような場合にBCPを発動させるか基準を決めましょう。発動基準が決まっていないと、作成したマニュアルが効果を発揮せず、現場の混乱を招いてしまいます。
発動基準は、誰にとってもわかりやすい指標を用いて設定することが大切です。地震の場合であれば、「震度5以上の場合にマニュアルを発動させる」といったようにです。
4.復旧事業の優先順位を決める
非常時によって事業が停止した際に、どの事業から復旧させるか優先順位を決めておくことも大切です。特に、複数の事業を展開している企業は、優先順位付けによって被害の最小化が図れます。
基本的には中核事業が最優先となるでしょう。中核事業は、収益額・他社との関係性・社会的重要性などから判断します。
5.復旧目標を明確にする
非常時に直面した場合は、どのくらいの時間で、どのレベルまで復旧させるかを明確にしておくためにも「復旧目標」を設定します。復旧目標を立てる際は「RTO(目標復旧時間)」「RLO(目標復旧レベル)」の2つの指標を用います。
RTOとは、中断した業務・システムを復旧させる目標期限のことです。一方RLOは、普段の業務を100%とした場合、中断した業務をどのレベルまで復旧させるかを示す指標を表しています。
6.段階ごとの具体的な行動を決める
このプロセスでは、事業を元通りに再開するまでの行動を、「初期対応」「業務仮再開」「本格復旧」の3段階に分けていきます。
・初期対応
被害状況を確認し、安全確保に努めます。従業員の安否確認や二次被害の防止、業務継続用の環境の確保も併せて実施しましょう。
・業務仮再開
徐々に業務を再開し、本格復旧に向けて準備を進めます。事前に代替拠点や責任者不在時の代行者などをマニュアルに示しておくと、混乱なく進められるでしょう。
・本格復旧
会社設備やネットワークなどを平常時のものに戻し、本格的に業務を再開します。
7.責任者や代行者を決めておく
非常時における指揮系統を明確にするために、あらかじめ責任者を決めておくことも重要です。基本的には企業のトップなど意思決定権のある人物が担当することになりますが、責任者が指揮を取れない状況を想定し、代行者も決めておきましょう。
8.従業員の取るべき行動を規定する
優先すべき業務や具体的な行動手順をまとめておき、従業員が非常時でも冷静に対応できるような体制を作っておきましょう。また、余震発生時の行動など、従業員自身で判断する場合の基準も併せて定めておくと安心です。二次災害を防止しながら、スムーズな復旧作業を図りましょう。
9.改訂基準を具体的にする
BCPマニュアルは、定期的な見直し・改訂が必要です。時が経過するにつれて環境や事業も変化していくため、マニュアルもその時々の状況に適したものでなければなりません。改訂基準を定めたチェックリストを作成し、マニュアルと自社の現状が合っているか定期的に確認しましょう。
BCPマニュアルを活用するポイント
ここでは、BCPマニュアルを活用するためのポイントについて解説します。
定期的な見直しと改善を心がける
BCP策定後は、定期的な見直し・改善を心がけてください。非常時を想定した訓練などを実施してみると、新たな気づきや改善点が得られるはずです。
また、時代や環境の変化などによって、想定されるリスクや優先課題は変化します。BCPの実用性を維持するためにも、常に最新の状態にアップデートしておきましょう。
従業員にBCPを浸透させる
BCPマニュアルを策定したら、次は従業員への周知です。BCPマニュアルが十分に周知されていれば、非常時でも冷静に対応できます。単にマニュアルを配布するだけではなく、訓練・教育などを通じて従業員一人ひとりの理解を深めることが大切です。
万が一の応援要員を確保する
BCPマニュアルでは、現場の指揮をとる責任者や作業担当者を規定します。ただし、担当者が不在の場合や、不測の事態により出勤できない可能性もゼロではありません。
非常時のチーム体制を検討する際は、責任者や担当者の代行者も同時に決めておきましょう。企業によっては代行者を2人用意することで、フォロー体制を強化しているところもあります。
BCPマニュアル作成に使えるテンプレート
最後に、BCPマニュアルの策定に役立つテンプレートを3つ紹介します。
中小企業BCP策定運用指針
『中小企業BCP策定運用指針』は、中小企業のBCP策定を促進するために中小企業庁が作成したものです。中小企業関係者や有識者の意見を踏まえて作成していることから、中小企業の特性や実状に沿った内容となっています。
投入できる時間と労力に応じて、入門・基本・中級・上級の4つのコースから選べるのが特徴です。入門・基本・中級コースは、ダウンロードしたファイルを読みながら、様式に沿って帳票などを入力し、取りまとめるだけでBCPが完成します。
上級コースは、すでにBCPを策定済みの企業向けです。より深い分析を実施することで、BCPのクオリティを改善できます。入門コースであれば、1〜2時間程度で必要最低限のBCP策定が可能です。BCP策定を検討している中小企業は、内容をチェックしてみるとよいでしょう。
[出典:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」]
東京商工会議所のBCPガイド・パンフレット
東京商工会議所では、BCP啓発用のパンフレットと策定ガイドを配布しています。ガイドは本編と様式集に分かれており、本編でBCPについての理解を深めながら、様式集でBCPの策定を進める形式です。
本編では、東日本大震災の事例を紹介しつつ、図表を用いて解説されているため、具体的なイメージを持ちやすいのが特徴です。また、様式集では記入例も掲載されており、参考にしながら記入するだけでBCPを策定できます。
[出典:東京商工会議所「BCPを作って信頼を高めよう~あなたの会社が生き残るための戦略づくり~」]
中小企業BCPステップアップガイド
事業継続推進機構が、中小企業向けに配布しているガイドが『中小企業BCPステップアップガイド』です。
本ガイドは、「BCPの基本となる防災対策の実施」「重要業務の認識と簡易BCPの策定」「本格的なBCP策定」の三部構成になっています。最初に全体解説を読み、全体像を理解してから読み進めていくとよいでしょう。
本ガイドは、解説を読みながら様式を埋めていく形式です。第一部から順に取り組み、第三部の記入が終わるころには、本格的なBCPが完成します。チェックシートが付いているため、BCP策定後の評価・改善サイクルを回すことも可能です。
[出典:特定非営利法人事業継続推進機構「中小企業BCPステップアップガイド」]
策定したBCPを効率よく運用するにはマニュアルが必要
BCP策定後は、マニュアルを作成し、緊急時に自社の従業員がBCPに沿った行動ができるようにしておくことが大切です。具体的な手順を細かく定めることで、混乱している現場でも冷静に迅速な対応が取れるでしょう。
BCPマニュアルを有効活用するためには、マニュアルの定期的な見直し・改善や、従業員への周知が必要です。最適なBCPは、時代やビジネス環境の変化によって変わるものなので、策定したままにするのは避けてください。
中小企業庁や東京商工会議所が配布しているガイドなどを参考に、自社専用のBCPマニュアルを作成していきましょう。
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