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働き方改革で社会の役に立つチームを目指す テレワークは目的ではなくチームで仕事をするための手段

取材日:2024/07/19

“働き方改革”を掲げて第4回TOKYOテレワークアワード推進賞を受賞した株式会社山崎文栄堂。テレワークは「チーム」で仕事をするための手段の一つと語る同社の働き方改革と、「志」を土台にしたチームづくりについて、お話を伺いました。※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 櫻井友子さん

    櫻井友子さん

    株式会社山崎文栄堂

    本部長

  • 上村倫世さん

    上村倫世さん

    株式会社山崎文栄堂

この事例のポイント

  1. 仕事を効率化して生まれた時間を、学ぶための時間に
  2. お客様の「思い」に目を向けた、ビジネスを超える関係性づくり

誰もが輝けるチームになるための手段の一つがテレワーク

御社といえば、オフィス向上委員会を立ち上げ、オフィス見学を実施するほど”オフィスづくり”にこだわっていると思います。そんな御社が「働く場所・時間を選べる取り組み」を始めたきっかけと理由はなんでしょうか?

櫻井:当社は、文房具店として創業して104年続く会社です(2024年7月現在)。アスクルの正規代理店としての事業もあり、お客様の「書類整理に困っている」という声に、まずは自分たちのオフィスで「生産性の高いオフィス」を実現してみようと思ったのがオフィスづくりにこだわるきっかけでした。

その一方で、「働く場所」を選べる取り組みを始めたのは、「社員一人ひとりが輝く働き方ができるチーム」を目指しているからです。子育てをしながら働きたいというケースももちろんありますが、子育て中の社員に限らず、一人ひとりのリソースを発揮するための手段の一つがテレワークだったということですね。テレワークの導入は2019年頃から始めていましたが、コロナ禍になり、本格的な在宅環境が整ったという流れです。

テレワークを始める際の課題はありましたか?

櫻井:テレワークを導入した直後は、経理などのペーパーワークが多く発生する業務は出社しないと仕事ができない環境でした。加えて、当社はコールセンター的な業務もこなしていたので、会社にいないとお客様のお問い合わせに対応ができないなど、業務によって環境の制限があったことが課題でした。

課題はどのように解消していったのでしょうか。

櫻井:クラウドの電話サービスなどのツールを使って、在宅環境でもお客様のお問い合わせ対応ができるようにして、業務マニュアルもクラウド化するなど、在宅でも社内と変わらずに働けるツールの導入を進めました。

上村:併せて、今まで”なんとなく”やり続けていたことや細かな業務の見直しも行いました。クラウドツールの利用と、ムダ削減の徹底が最初のフェーズの取り組みだったと思います。

具体的に削減したのは、どのような業務ですか?

上村:例えば、勤怠管理の面では、ただの慣習になっていた日報のようなシートの作成や、上長が勤務状況を把握できているにもかかわらず続けていた出勤チェックなどでしょうか。そういった細かい見直しをしていきました。

櫻井:あとは会議です。当時は形だけの会議がいくつかあって、会議のための準備にも時間を取られている状況でした。週に5・6時間を会議のために使っていたのですが、今は基本的に定例的な会議はゼロです。社長(代表取締役社長 山崎登さん)と幹部メンバーの日々の会話の中で情報共有や意思決定を行っていますね。

仕事の仕方をガラッと変えたときに、どのような効果がありましたか?

櫻井:「やらなくてもいい業務」をなくしたことで、教育に多くの時間を費やせるようになったのは、大きな成果として実感しています。

大自然の中でチームビルディング研修をしたり、社会貢献活動で農業のお手伝いや文化活動をしたり。仕事を効率化して生まれた時間が、視座高く学ぶための時間、自分の成長も感じられる時間になってるので、そういう意味で働き方が変わった実感と喜びを感じています。

働き方改革で生まれた時間を学びと未来への投資に活用

幹部の方は、仕事全体のうち、社会への貢献活動が50%、残りの50%を学びに時間に当てていると伺っています。

櫻井:学びは、未来への投資だと考えているので、今は、もっと学びの時間が増えているかもしれません。

生産性を上げたことで得たリソースを、直接利益につながる業務に注力するのではなく、「教育(学び)や社会貢献」へと注ぐ。という判断は、容易ではないと思います。その理由をお教えください。

櫻井:私たちも最初からそういうことができていた会社ではありませんでした。

以前は、離職率80%という課題を抱えていて...。自社のことで精一杯、社会貢献の”社”の字も考えることができない時代があったんです。

売上自体は伸びていたものの、メンバーは疲弊していて...。幸せそうに見えない社員の様子を見て迷っていた社長が出会ったのが、ワールドユーアカデミーの「志経営」でした。

「志経営」で、売上や企業規模ではなく、企業の存在意義である「志」を土台にした経営を学ぶようになって、私たち山崎文栄堂は何のために存在するのかをベースに、その当時、抱えていた問題を一つひとつクリアにしていったんです。

そうすることで、組織内に「チームで仕事をしよう!」という共通認識を持てるようになりました。そうなると、「自分の会社だけ良ければいい」ではなくて、世のため人のために力を出し合うようになったら日本がもっと良くなるのではないかと考えるようになったのです。

もちろん私たち一社ではできないことばかりなのですが、今では、「志経営」を学ぶ中でご縁のあった企業さんも含め、力を合わせて一緒に活動する仲間の企業さんがたくさんできています。

会社を超えて力を合わせるということはとても大変だと思います。それを実現させている要素はなんでしょう。

上村:働き方を変えるまでは、お客様とは「取引相手としてのお付き合い」のみしかしてはいけないというか、そんな思い込みがあったのです。

ですが、志経営に舵を切ってからは、ビジネス上のお付き合いを超えてお客様の大事にしている思いにも意識が向くようになり、その思いを知ったときに「何か一緒にできるのではないか」と気がつくようになりました。それが、サービスとしてのつながりだけではないご縁へと発展している感じですね。

自分たちの「何のために働くのか」の意識が変わったことで、お客様への視点も変わっていった結果なのかな、と思います。

5つの価値基準と研修の経験をシェアすることで社員を育てる

御社が大切にしている理念を社員に定着させるための教育はどうやって進めているのでしょうか?

櫻井:「何のために仕事するのか」など、仕事に対する”考え方”や、5つの価値基準を言語化して共有しています。

一番大事にしている価値基準は、「自分の機嫌は自分で取って、いつも上機嫌で仕事をする」ということです。これに加えて、「ありがとうと言われる数」「名前を呼ばれる数」「人の成長に貢献すること」「視座高く学ぶことを大事にしよう」が続きます。

上村:5つの価値基準には、その人自身が輝き、周りの人(お客様や一緒に働く社員)に良い影響や良い関係性を築いて縁をつないでいく人を育てたいという思いも込められています。

”こなす”ように仕事をする社員になるのではなくて、お客様にどうやったら喜んでもらえるかを考えながら行動できるような人を育てるために設けているのが5つの価値基準なのです。

企業のミッションやバリュー(価値基準)などは、「浸透」に苦戦する企業も多い印象です。御社はいかがですか?

櫻井:結局は、対話が大切だと感じています。面談件数や受注件数など、定量面の成果を見える化するのと同時に、行動のプロセスについても、大切にする価値基準に照らし合わせ上司部下で振り返るようにしています。

さきほど離職率が高かったお話を伺いましたが、企業文化の浸透に注力したことが離職率へのポジティブな変化にもつながりましたか?

櫻井:それは、間違いなくありますね。以前は「5人採用して4人辞める」という状態でした。年間数100万円から1,000万円程度の採用コストをかけ、さらに、離職したポストの再募集をするなどお金も時間もかかっていたんです。

それが、私たちが大事にしている「考え方」を、しっかり伝える採用活動をするようになると、「山崎文栄堂に入って企業の役に立ちたい」という、目的意識が明確な方々が入社するようになったので、離職率は下がっていきました。

「山崎文栄堂で働きたい!」という方が自然と集まってくるようになると、闇雲に出していた広告費をはじめとした採用費用が減り、育成にかかっていた費用なども削減できるようになったので、離職が減ったことによるコスト面の効果は本当に大きいですね。

5つの価値基準は、人事評価にも反映されるのでしょうか?

櫻井:そうですね。業績や行動、成果ももちろん大事ですので、業績評価と、価値基準に対しての自己評価と上司評価。それぞれを5段階で評価しています。

非日常を体験することで仲間とチームの大切さを実感

大自然の中でのチームビルディング研修なども実施しているそうですが、実際にはどのような学びになるのでしょうか。

上村:これもワールドユーアカデミーさんが中心となって、同じような中小企業の方々と協力して実施してるチームビルディング研修です。

例えば、「登山研修」などがあるのですが、登山をしながら、人がつくった世界ではない大自然に身を置くと、普段想像しないような出来事が起こるんですよね。

まぁまぁキツイ登山なので(苦笑)、思い通りに行かないことも多々あります。その中で、「普段一緒に働いてくれる仲間の優しさ」「仕事では見えなかった人柄」などを知ることができるんです。

研修には幹部メンバーだけではなく、新入社員などの若手社員も参加するのですが、みんなそういった環境に数日間身を置いて帰ってくると、当たり前の状況に感謝が生まれたり、人とのご縁を大切にするようになったりして、気づきが日常の生活の中で行動として変わっていくことがわかりますね。

また、教育の場でいろいろな体験ができたことへの恩返しではないのですが、研修に参加したメンバーは、自分が気づいたことをアウトプットしてみんなで共有することにしています。

日常では得られない気づきにもつながる、大自然の中での登山研修。

予算が潤沢にあるわけではない中小企業で、直接利益を生むような施策にならない人材育成や研修教育にコストをかけることに社内の反対はないのですか?

櫻井:当社においては、ないですね。日本中、世界中を旅したり、新しい学びで世界が広がったり、社会のために活動できたりと、仕事をしながら自分の成長を実感できる働き方というのはなかなかないのではないでしょうか。なので、反対というよりもむしろ、「期待感」や、「嬉しい」とか「楽しい」とか、感謝を感じていることの方が多いです。

働き方改革を進めていった未来の目標は

働き方改革を進めてきた今、今後の展望についてもお教えください。

櫻井:自分たちで言うのもなんですが。「志」を土台に働くという働き方が、自分たちにとっても驚きでもあるんです。

私は社会人になって20年ほどですが、「嫌なことでもお給料をもらうためにはやらなきゃいけないのが仕事だ」と思っていましたし、それが一般的な考え方でもあると思っていました。

ですが今は、お給料をいただいて、学びの機会もあって、人の役に立つ実感も得られる、そういう働き方が、実際にできています。仕事を通じて学びや人の役に立つ機会が多くありますし、それが自己肯定感の向上につながっていると実感しています。

なので、お客様に対しても無駄な仕事や無駄なエネルギー、そういったものを減らしていくお手伝いをしながら、社会の役に立つ会社が増えていくような取り組みができたらいいなと思っています。

上村:会社に属して働くことに対して、”組織に縛られる”という感覚を持つ人もいると思います。ですが、「会社には属していても、会社組織を超えてもっと幅広く、多くの人たちと関わり、つながる働き方もある」そういった働き方の幸せを、もっと多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。

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