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働く場所も時間も制度も、自分が決める 「働き方の多様性」を追求する理由とは

取材日:2023/05/15

転職支援や個人と企業のワークシフト支援をおこなう株式会社LiB。メンバーのライフスタイルを最優先し、テレワークをはじめとした時間と場所の制約が少ない多様な働き方を次々と具現化しています。その背景や狙いについて詳しくお話を伺いました。※本文中、敬称略

お話を伺った人

  • 斧 佳代子さん

    斧 佳代子さん

    株式会社LiB

    コーポレート責任者

この事例のポイント

  1. 柔軟な働き方ができるから優秀な人材が集う組織に
  2. テキストベースのコミュニケーションを重ね組織活性化

複業、時短…人のニーズから制度を構築

御社の働き方は様々な働き方に対応する「柔軟性」や「ポジティブ」が大きなキーワードになっていると思います。

斧:2014年の創業当時から大事にしてきた考え方です。創業者である松本(洋介氏、代表取締役)は、この会社を新しい価値を持続的に生み出す「価値創造コミュニティ」にしたいと考えていました。そのためには、社員がポジティブに働ける環境であってほしいと、柔軟な働き方を認めてきました。2022年10月に「Best workstyle for Best performance」を盛り込んだコミュニティポリシーを制定し、社員がベストなパフォーマンスを発揮するために、一人一人に合った働き方を重視し、みんながポジティブに働ける場を作ろうという方針を明確にしました。

一般的な企業のように仕事や業務の枠組みに従うのではなく、個々人が自分の働き方を優先させ、それが成果をもたらすと考えているわけですね。

斧:そうですね。創業当初から他社の社員や企業経営者、海外在住者、フリーランスが現在の仕事をやめずに当社に参加できる仕組みがありました。簡単に言えば、当社の事業に複業として参加してもらうというものですね。今でこそ複業・副業は珍しくありませんが、当時認めている会社は少なかったと思います。

成果を出すために、パフォーマンスを上げるために必要な人材に参加してもらうには、どのようなシステムや環境が最適かを考えていました。つまり、制度があるから人を集めるのではなく、「この人と一緒に働きたい。そのためにはどのような制度が必要か」という視点から、働き方を柔軟に考えてきました。

テレワークを実践しているメンバーの割合も高いようです。

斧:完全在宅勤務が7割くらい。週1日〜2日のみ出社している人も入れると96%はテレワーク勤務です。出社する日数やテレワークにするか否かも、すべてメンバー自身が自由に決めていますが、すべての業務がオンラインで成り立つため、このような働き方が可能になっています。

コロナ禍以前からテレワークに取り組まれています。導入した理由はなんでしょう。

斧:2019年に試験導入し、最初はエンジニア系の部署から始めました。他社で働いている優秀なエンジニアがいて、「この人と一緒に働きたい」と思った時に、本人が望むテレワークという働き方を提案したのがきっかけです。試してみた結果、成果が見えてきたため、エンジニア以外の部署にも広がって仕組み化されていきました。

正式導入にあたっては、社員へのアンケートでテレワークのメリットやデメリットについて意見を聞き、業務に支障がないことを確認した上での導入だったので、コロナ禍でテレワークを余儀なくされた時には、不安なく全社的に展開できる体制が整っていました。

テレワークの場所も自由で、ほかにも子どもの年齢に関係なく時短勤務ができたり、御社のポリシーを具現化した、柔軟な働き方の選択肢が多いですね。

斧:具体的には、週4日勤務も可能ですし、隔週で週4日が良いというメンバーにも対応しています。休憩時間もシステムを変えて、1日に何回でも小刻みに取れるように就業規則を改定しました。

たとえば、子育て中の社員は、保護者会で1時間半仕事を抜けたり、夕食の準備で1時間抜けたりするなど、必要に応じて時間をやりくりしつつ、メンバー個々の生活事情に合わせた働き方ができていると思います。

どのようなケースで「週4日勤務」が利用されているのですか。

斧:現在、週4日勤務を実践している社員は3人いますが、1人は前職の仕事も続けたいということで、業務委託という形で週1日はその仕事の処理などにあてています。ほかの2人のうち、1人は隔週で週4日勤務。子どもと過ごす時間に充てたり、キャリアアップのための勉強時間にしたりしているようです。

また、時短勤務では、原則1日最大2時間まで勤務時間を短縮できます。子どもの年齢による対象制限は設けていませんが、一応育児や介護などの事由により使う制度にはしています。

それでも、もし別の理由で使いたいとの申請があれば認める可能性はありますね。ただ、テレワーク勤務が増えて、移動時間の制約がなくなってからは、時短の必要がなくなったのか、使う人は前よりかはいなくなりました。それでも、お子さんの入学や環境の変化に合わせて「時短勤務を利用したい」という相談がくることは多く、その都度対応をしています。

柔軟な働き方がメンバーのパフォーマンスや組織全体の雰囲気、業績などに影響していることはありますか。

斧:柔軟な働き方は採用に大きな影響を与えていると思います。当社はメンバーが当事者として制度を作り上げる会社です。優秀な人材はどこでも働ける選択肢がありますが、同時に家庭や子ども、ワークライフバランスなど自分にとって大切な要素を優先できる組織で働きたいという思いも存在します。

当社にそれを実現できる環境であると納得して入社してくれた社員がいるのは、結果的に、家庭の事情などでフルタイム勤務が難しい優秀な人材の採用につながったということであり、人材のボトムアップが図られていると感じています。

また、メンバーの意見が反映された柔軟な働き方がおこなわれているため、お互いに感謝の気持ちを持ち、様々な事情を抱えるメンバー同士が助け合うスタンスも根付いているのです。当社は人のキャリアをサポートする会社であり、このような姿勢はサービスの品質にも反映されていると考えています。

組織を硬直化させない相互理解の取り組み

助け合う企業風土を支えるのは社員同士のコミュニケーションかと思います。社員の「トリセツ」を作る取り組みもされていましたよね。

斧:これは創業者のアイデアです。誰しも初対面の人との接し方には戸惑うところがありますよね。そこで、自分の性格や趣味、嗜好を他のメンバーが知ることで、よりスムーズに関わりやすくなったり、仕事がしやすくなったりするだろうと考えての取り組みです。

そこで当時は、社内の情報共有ツールを使って「自分の取り扱い説明書=トリセツ」を開示していました。現在は、方法や仕組みこそ変わったものの、相互理解には今でも相当力を入れています。

具体的な施策は何でしょうか。

斧:オンラインのつながりだけではなく、オフラインの交流も重視しています。たとえば、四半期ごとにバーベキューを開催する部署があり、同じく四半期に一度は全社ミーティングで顔を合わせます。

さらに、直属の上司だけでなく、他部署の上司とも毎月1度、3カ月にわたりカジュアルな会話ができる「シャッフル1on1」も実施しています。これはメンバーの成長を多角的にサポートするとともに、メンバー自身も普段の上司とは異なる角度からフィードバックを得られる機会を提供しています。

今後、予定している施策としては、チャットツールを使い、メンバーが自分の仕事を紹介する取り組みがあります。仕事でのこだわりやコツ、また、仕事に限らずプライベートなトピックを盛り込むのもOKです。完全テレワークの場合、雑談が減ってしまいますが、次に公開する人を指名するリレー形式のため、お互いの理解を深めるとともに、コミュニケーションの活性化も期待しています。

オンラインであっても話す機会を意識的に作ることが重要だということですね。

斧:部署単位では、人数が10人程度なので、比較的交流ができていると感じています。そのため大きな問題は起こりません。一方、部署間の横のつながりは希薄になっています。

当社のメンバーは、現在60人弱ですが、半数近くが過去2年以内に入社しています。入社時の自己紹介などで、既存のメンバーには、新入社員が認識されていますが、逆に新しいメンバーは既存のメンバーについてわからないことが多いのです。このような課題を解決するために、シームレスなコミュニケーションの取り組みを進め、新しいメンバーが業務やプロジェクトを把握し、無駄な作業を避けることができるようにしています。

また、組織を硬直化させないためにも、様々な人とのつながりを持ち、多様なコミュニケーションが生まれるようにしておきたいと考えています。組織が閉鎖的になると内輪で固まり、クローズなコミュニケーションが増えてしまうことがありますので、多角的なコミュニケーションを促進することが求められています。

つまり、テレワークだからこそ、テキストコミュニケーションも業務連絡だけでなく、組織づくりのツールとして積極的に活用されているということですね。そのコミュニケーション強化は、組織全体の良好な関係構築につながっていますでしょうか。

斧:テレワークでは気持ちが沈んでいたり、仕事で落ち込んでいる人を発見するのが難しくなりますが、テキストコミュニケーションを可能な限りオープンにし、情報を透明化したことで、組織が活性化され、同時に個々や組織の相談事についても適切な人に届くようになりました。

それらをシャッフル1on1といった制度で受け止め、解決への道筋を考える機会にもなりました。意図的にコミュニケーションを増やしている成果と捉えていますし、組織全体の雰囲気の改善につながっている一因ではないかと思います。

さらに、テキストベースの思考の流れが上手くなったと感じています。身振りや雰囲気を含めたコミュニケーションが得意であってもオンラインではそうはいきません。テレワークによってテキストベースのコミュニケーションが多くなり、意見を文章で構造的に表現したり、意思決定を迫ったりすることが必須となり、ビジネススキルのボトムアップにもつながっていると感じています。

企業の考え方をアップデートさせる組織でありたい

組織づくりについて、今後の展望をお聞かせください。

斧:人材紹介業は本質的に労働集約型の産業であり、当社で紹介する候補者が増えれば、エージェントやキャリアパートナーも同様に必要となる、という課題があります。
業種に限らず人材不足が叫ばれる社会背景の中で、労働集約型に依存しないビジネスモデルの開発を目指しています。しかし、一方で候補者とともにキャリアを考える人材は必要不可欠です。技術の範囲で可能なことと人がおこなうべきことを分けることで、人材への投資は継続的におこなう方針です。

事業の収益性を維持しつつ人材への投資を通じて、より良いキャリア形成をサポートする環境を構築していきたいと考えています。その結果として、人材紹介業における新しいパラダイムの提示につながればいいですね。

人材に関連する企業ですから、社員がどのように良い形で働けているかが問われます。

斧:テレワーク特化の人材紹介や、地方在住でもテレワークを通じて東京の企業で働ける機会の提供など、新しいビジネスモデルを展開してきました。

当社が完全テレワークで良好な組織やビジネスを維持していることが、ほかの企業の考え方を変えるきっかけにもなると信じています。「私たちもこれで成功していますから、一度試してみてはいかがでしょうか。そうすれば地方でも優れた人材を採用することが可能です」と提案できますから。個人と企業の両方をアップデートし、全体として社会がより良くなることを目指していきたいです。

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