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社内通貨ウズポで育てた主体性を発揮する組織文化 ナレッジシェアや業務改善提案、感謝チャットでポイントを付与

取材日:2023/06/02

「自らと若者がウズウズ働ける世の中をつくる」をミッションに掲げ、人材紹介事業を中心に躍進している株式会社UZUZ。社内通貨「ウズポ!」によって育まれた社員の主体性、そして、従業員自らが「ウズウズ働ける」組織づくりについて、詳しく伺いました。※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 川原敬史さん

    川原敬史さん

    株式会社UZUZ

    人材紹介事業部/常務取締役

この事例のポイント

  1. 規模拡大に伴うコミュニケーションの課題を社内通貨で改善
  2. 自ら決めて動く。主体性を引き出すためのKaizen teian手当
  3. 感謝を伝えた人へのポイント付与で、貢献する組織文化を醸成

タダで飲みに行ける楽しみをきっかけに、社内交流が活発化

社内通貨「ウズポ!」について教えてください。

川原:当社の事業規模が大きくなるにつれ、課題が生じていた社内コミュニケーションを活性化させることを主目的に、より良い組織づくりを実現するために導入されました。もう10年くらい経つのですっかり定着しています。

「ウズポ!(以下、ウズポ)」は、社内活動に関わる使途であれば自由に使える社内通貨です。例えば「職場にコーヒーメーカーがあったらいいな」と思えば、コーヒーメーカーを購入して月末に領収書と一緒に「ウズポ10ポイント利用」と申請する。そうすれば、1ポイント=1,000円換算で精算されます。

ウズポはどういう場合にもらえるのですか?

川原:顧客紹介やチームの目標達成といった功績のほか、全社員の投票で決める月間MVPになった人にウズポを付与しています。

ウズポとは別に「サンクスウズポ」という制度もあります。専用チャットグループを使って、お世話になった同僚に「ありがとう」を伝えた人にポイントを付与するものです。これは、社長からアルバイトまで全員参加で、かなり活発に投稿されています。

「ありがとう」を“伝えた側”がポイントをもらえるのですか?

川原:そうです。サンクスウズポの狙いは、「ありがとう」の総量を増やすことにあります。

積極的に、かつ、感謝を言葉で伝えられるカルチャーを醸成し、組織貢献の機運を高めることが目的のため、伝えた人を評価する仕組みになっています。

ウズポの導入は、社内に何か変化をもたらしたのでしょうか?

川原:まず、明らかに社内のコミュニケーションが活性化しました。導入当時、当社の拠点は東京のみ、従業員も10人程度でしたが、組織が大きくなるにつれて、周りがどんな業務をしているのかよく分からない状況も増えていきました。

そのような中で、ウズポは、社員同士の食事会にも使えるので、お互いのウズポをかき集めて飲みに行ったり、手持ちがなければ、ウズポを持っている人に「飲みに行きましょうよ」と声をかけたり。ある意味、会社のお金でタダで飲みに行けるわけですから、間違いなく、担当業務や部署の垣根を超えた交流のきっかけにはなっていましたね。

日常的な交流が増えたことで、業務上のメリットもありましたか?

川原:かなり効果があったと思います。私は当時営業職でしたが、ウズポを使った会食で社内のデザイナーと話す機会が増え、そこで得た情報が、サイト作成案件の受注に活かせたこともあります。

ほかの社員の経歴や過去の経験もたくさん聞く機会ができたので、キャリアアドバイザーとしても、求職者へのアドバイスに深みが増したと思います。互いがよく知り合えていない状況は、組織にとっても大きなロスになることを実感しましたね。

さまざま効果を実感されていたウズポですが、近々、制度の廃止が決定されているそうですね。それはなぜでしょうか?

川原:当社もコロナ禍によりテレワークを導入していますが、今後も一つの働き方の選択肢として、テレワークは継続する予定でいます。そのような中、ウズポは、そもそも社員同士の交流の活性化を目的とした制度ですので、社員のワークスタイルによって活用度合いに大きなバラツキが生じるようになってしまったんです。

そのため、インセンティブは賞与への上乗せという形にするなど、組織として公平性が担保できる仕組みに変える予定です。

サンクスウズポは、続けられる予定なのでしょうか?

川原:はい。どのような形になるかは、未定ではありますが、仕組みとして続ける予定です。

実は、サンクスウズポの導入は、社員一人ひとりの組織貢献力を高めることにつながっただけでなく、「縁の下の力持ち」だった従業員にスポットライトが当たるようになったことも大きな成果だと思っています。

例えば、求職者の面談を取るカスタマーサポート部門や法務、労務、営業事務、経理などの管理部門は、営業職と違って、成果や貢献度が見えづらいですよね。

それが、「⚪︎⚪︎さんが丁寧に対応してくれて助かりました!」というようなチャットが交わされるサンクスウズポのおかげで、社長からアルバイトまで全員が知れるようになった。

社内の雰囲気や互いの関係性がよりプラス思考になったと感じますし、こういった文化醸成は、まさにウズポ制度があったからこそだと思います。

ウズポがきっかけになっていた交流の機会が、制度がなくなることで失われる不安やリスクなどはないのでしょうか?

川原:長らく運用していたウズポによって、活発なコミュニケーションが交わされる文化が醸成されていることもあり、特に不安は感じていません。

当社は現在、東京、大阪、北海道の3拠点あるのですが、他拠点の社員同士による情報交換や交流を促すための「ワーケーション」という制度があります。年に1回交通費の全額を会社が負担するので、社員の負担もないですし、例えば、普段は話す機会のない他拠点の営業担当者でノウハウを共有することによって、営業力の底上げも図れます。

ウズポの廃止を機に導入した制度ではなく、以前から行っている取り組みではありますが、こういった施策は、今後もコミュニケーションの活性化に一定の効果があると考えています。

そのほかにも施策はあるのでしょうか?

川原:「ナレッジシェア」と「Kaizen teian」という仕組みもあります。

ナレッジシェアは、社内ノウハウを全社的に積み上げるための仕組みです。従業員から上がってきたナレッジは役員がチェックした後、情報共有ツールを通して全社員に共有されています。

ナレッジが採用された従業員には、現在、ウズポのポイントを付与していますが、制度廃止後も本人への評価として還元する予定です。

Kaizen teianは、職歴や社歴に関係なく、誰でも改善提案ができる専用グループチャットでで、その内容はさまざまですが、「保育園のお迎え時に大変なので、サンダル一律NGというドレスコードを見直してほしい」という日常のちょっとした内容が提案されることもあります。

改善案は、役員が採否を判断して、早ければ即日適用します。採用された提案者には1件当たり500円を賞与に上乗せするので、組織の改善につながる提案をすればするほど賞与がアップする仕組み。これは、アルバイトでも業務委託でも全員同じ条件です。

社内クラウドファンディングでYouTubeチャンネル開設

ウズポに関連した多くの施策を実行してきた中で、社内クラウドファンディングが立ち上がったこともあるそうですね。

川原:はい。ウズポを資金とした社内クラウドファンディングです。

ちなみに、発案したのは私なのですが(笑)。

当時(2017年)、キャリアアドバイザーとして活動するうちに、「求職情報の地域格差をなくすため、YouTubeを活用したらどうか」というアイディアが私の中で生まれました。

元映像系の仕事をしていた社員と企画を練る中で、「ちゃんとやるなら機材がいるな。」となって、「じゃあクラウドファンディングで、みんなからウズポをもらおう!」という流れになったのです。実際、ウズポを資金にYouTubeチャンネルの開設に必要な機材を買い揃えることができました。

社内クラウドファンディングという方法は面白いですね。

川原:思い立ったら即実行でしたね。会社の全体会議の場で「ウズポを集めてYouTubeを始めたい」と、クラウドファンディングを呼びかけました。同僚たちも「面白そう!」と好意的で、あっという間に目標の50万円調達に成功。おかげで「UZUZ就活チャンネル」をスタートできました。

現金ではなく、ポイント制の社内通貨なので、集まりやすかったのだと思います。「全部使って!」と気前よく寄付してくれた同僚もいました。声を掛けた時点で、総計60万円相当のポイントが従業員に付与されていたので、その80%が託されたという感じですね。

このチャンネルは、現在、「ウズウズカレッジ」という、求職者のための有効な情報チャネルとして運用されているだけでなく、今では社長の岡本(啓毅氏) による就活YouTube「ひろさんチャンネル」も開設し、2チャンネル合わせて10万人以上の登録者を集めています。

社内のノリが良さそうだという印象を受けました。

川原:当社は、従業員がものを言いやすい環境とスピード感を何よりも大事にしています。

「自らと若者がウズウズ働ける世の中をつくる」というミッションに向かっている会社ですし、自分の興味関心、つまり何にウズウズするのかは、自分自身で主体的に見出さなければならない部分も多い。そういう意味では、アイデアや意見を言いにくい組織になってしまったら、その時点で、組織としてかなりの危機だと思っています。

主体性とは「自分の内面から生まれたもの」を追求する状態

御社の軸になっているミッションについて詳しく教えてください。

川原:「自らと若者がウズウズ働ける世の中をつくる」。このミッションにある「ウズウズ」の意味は、主体性があり、自分が決めたことを追いかける心の状態です。

自主性と主体性は違うということは、社内でも事あるごとに伝えていますが、その際は、自主性は「上司や会社から与えられたものを追求する状態=have to」で、主体性は「自分の内面から生まれたものを追求する状態=want to」と説明します。

一人ひとりの主体性を尊重すると、全社的な方向性が崩れませんか?

川原:厳密に言うと、「ウズウズ働く」と「ウズウズする」は違います。当社のミッションは「ウズウズしながら働く」ことを目指しているので、主体性を発揮して好き勝手にやるだけではダメなんです。

働くとは、世の中や周りの人たちに貢献すること。だから、主体性を発揮して貢献することが重要です。そもそも、自由と責任、権利と義務ということもありますよね。ここは普段から社内で繰り返し伝えている大事な部分です。

自分が任されたことをやっていないのに「これやりたいです!」と言っても通りませんよ、ということ。まず責務を果たす。その上で、主体性を持って提案する。その提案が会社のミッションに沿っていればGOを出す。その部分については、日ごろのコミュニケーションの中でかなり意識して伝えています。

インナーコミュニケーションはどう行っていますか?

川原: 社長が発行する「週刊ひろき」というレポートは、社会の課題に対して自分たちがどんな解決策を目指していけるかという方向性や岡本の考えを共有するものですが、インナーコミュニケーションの大事なツールです。

そのほか、部署ごとのキックオフや全従業員が出席する全社共有の場でも、「自分たちは何のために働くのか」というミッションやビジョンについて必ずシェアしています。

主体性を発揮できる人材かどうか、見極めるポイントはありますか?

川原:そもそも、人はみんな主体性を出せると思っています。繰り返しになりますが、主体性とはwant toの状態であること。つまり、誰かに止められてもやりたくなることは何なのか。そこを認識できるかどうかだと思います。

例えば私の場合、黙って座って書類のチェックをしておけと言われても絶対に無理ですが(笑)、ただ、アイディア出しや事業の立ち上げを任せられたら俄然燃えるタイプです。

人によってwant toの中身は違いますが、自分が何に対してその状態になるのか分かりさえすれば、みんな必ず主体性を発揮できるはずです。そういう世の中を作りたいので、アルバイト、業務委託に関わらず、全員一緒にそのあり方を目指しています。

お話から、従業員一人ひとりの可能性を信じる姿勢を強く感じます。

川原:第二新卒向けの人材紹介事業からスタートした当社ですが、実は、社員も第二新卒、既卒入社が中心です。社長以下全員、それまでの人生で1回は失敗を経験している。

私自身、新卒で入った会社をすぐ辞めて無職になった時期があります。当時は本当に夢も希望もなかった。それが今は、こうして大きなミッションに向かう喜びを感じながら仲間とウズウズ働けています。

過去に失敗していても、能力がないわけじゃない。私たちの組織は一人ひとりの可能性を強く信じているし、若い人材にチャンスを届けたいという思いが強くあります。

教育と就業をつなげて「ウズウズ働ける」機会を提供したい

これからの展望を聞かせてください。

川原:今、当社は昨年対比180%の成長率となっています。年商もグループ全体で12億円となり、次のフェーズに進む段階となりました。これからは、世の中の課題を解決するための子会社を少しずつ増やして、ホールディングス経営に移る計画です。

ホールディングス経営の目的は、ウズウズ働ける人材を育てる教育環境づくりです。日本でも、経済的な事情で教育を受けられない若者が増えていますよね。その課題解決のため、ホールディングスの売り上げの一部を使って、独自の奨学金制度を作りたいと考えています。

そのために必要なのが、公益財団法人と学校法人の設立です。ホールディングスからの寄付金を公益財団法人が運用。その運用益を、当社が設立した学校法人で教育を受ける学生のための奨学金に充てる構想です。

壮大ですね!どんな学校を作りたいと考えていますか?

川原:まずは、ITに特化した専門学校です。地方の若者が都会に出なくても学べる環境、就業につながる教育を提供したい。いずれは、実社会で仕事を学べる専門職大学も設立したいと思っています。

それから、外国人向けの日本語学校も作ります。アジア圏から就労目的で来日する人は多いですが、しっかりしたフォローがなく、来日のための借金を背負ったまま困窮してしまうケースも少なくありません。私たちは適切なエージェントとして、就労までフォローする仕組みを作ろうとしている最中です。

人材紹介業と学校法人、奨学金をつなげるのは素晴らしいスキームですね。

川原:私たちは新卒で就職につまずいた人をたくさん見てきたのですが、その原因を深掘りすると、大学教育で「働くこと」を学べていない要因が大きいのではないかと思い至ったのです。

今まで先生の指示を仰ぐ環境だったのが、就職活動の中で突然、「自分の人生は自分で考えろ」と扱われるからミスマッチが起きてしまう。だから、「ウズウズ働ける」人材を育てる仕組みを備えた学校法人を作るというアイディアが生まれました。

会社の利益が、学校に行けない人たちの奨学金になったり、教育環境のクオリティを上げるために使われたり。世の中を良くする一助になる。人間、自分のために頑張れる範囲には限界がありますが、自分の仕事と成果が、目に見えてサポートを求める誰かのためになる。このスキームなら、従業員もウズウズ働き続けられるのではないでしょうか。だからこそ、「自らと若者がウズウズ働ける世の中をつくる」というミッションに向かい続けられると考えています。

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