メンタルヘルスとは?意味や具体的な症状・改善方法をわかりやすく解説
テレワークの普及により、メンタルヘルス対策の重要性が高まっています。自分は大丈夫と思っていても、気づいたときには心の病気を発症していることも。そこで本記事では、メンタルヘルスの意味や心の不調時に現れる症状について解説します。心を健康に保つためのセルフケアも紹介するので、是非参考にしてください。
目次
メンタルヘルスの意味とは?
メンタルヘルスとはこころの健康状態を意味する言葉で、WHOでは下記の通り定義されています。
「すべての個人が自らの可能性を認識し、生命の通常のストレスに対処し、 生産的かつ効果的に働き、コミュニティに貢献することができる健全な状態」
引用:国際看護師協会(ICN)所信声明メンタルヘルス
なお、メンタルヘルスという言葉は特定の病気を表す言葉ではなく、気分の落ち込みや不眠、食欲の減退などの症状が続く状態のことを「メンタルヘルスの不調」と言ったりします。現代の日本では、こうした不調を訴える人が増えているのが現状です。
厚生労働省の調査では、精神疾患で治療を行っている患者数は約420万人(2017年)いることがわかっています。また、生涯を通じて4人に1人がこころの病にかかると言われています。
こころの健康状態は目に見えづらく、本人も自覚症状なく過ごしてしまう傾向にあるため、兆候や具体的な症状をあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。
メンタルヘルスの不調で起こる具体的な症状
メンタルヘルスの不調で起こる3つの症状について見ていきましょう。
こころの面での症状
1つ目はこころの症状です。具体的には以下のような感情・感覚が該当します。
- 悲しみ・憂うつ感
- 不安感・緊張感・イライラ
- 無気力・やる気が出ない
このような感情・感覚を覚える場合は、こころからストレスサインが出ている可能性があります。表面上はわかりづらく自覚症状によるものなので、セルフチェック・セルフマネジメントが重要です。
行動の面での症状
2つ目は行動に現れる症状です。客観的に知覚できる症状のため、日頃から行動を共にしている人ほど変化に気付きやすい傾向があります。
- 何事に対しても消極的
- 周囲の人との交流を避ける
- 飲食・喫煙量が増える
- 身だしなみがだらしなくなる
- 落ち着きがなくなる
周囲に思い当たる人がいる場合は、適切なコミュニケーションを取ってこころの状態を確認すると良いでしょう。
体の面での症状
3つ目は体に変化が現れる症状です。体の変調は、自覚症状と客観的に知覚できる症状の2種類があります。
- 食欲がなくなる
- 痩せてくる
- 寝付きが悪い・朝の目覚めが早くなる
- 動悸がする
- 血圧が高くなる
- 手や足の裏に汗をかきやすくなる
自分自身や身近な人に上記のような症状が見られたら専門家へ相談しましょう。
メンタルヘルスに起因する精神疾患の代表例
メンタルヘルスが損なわれた状態を放置すると、何らかの精神疾患を引き起こすことがあります。ここでは代表的な5つの精神疾患について詳しく見ていきましょう。
うつ病
うつ病を発症すると「こころの症状」と「体の症状」の両方が現れます。いわゆるうつ病と呼ばれる病気は、気分の落ち込みや眠れなくなるといった抑うつ状態が続くのが特徴です。
あまり聞きなれないかもしれませんが、症状の程度が重いものを「大うつ病性障害」、比較的症状が軽度なものを「小うつ病性障害」と呼ぶことがあります。また、抑うつ状態と病的なまでに気分が高揚する躁状態を繰り返す「双極性障害」はうつ病とは違う病気です。
双極性障害は、かつては「躁うつ病」と呼ばれていたこともあり、うつ病の一種と思われていました。しかし、この2つは違う病気であり、それぞれ治療法も異なります。
うつ病は過度なストレスが原因となるケースが多いものの、生活環境・性格・服用中の薬・遺伝的資質などさまざまな要因が重なって発症するため、原因の特定が困難とも言われています。
日本では100人のうち約6人がうつ病を経験すると言われており、誰がいつ発症してもおかしくない精神疾患と言えるでしょう。
睡眠障害
睡眠障害は、不眠・過眠・睡眠時の病的行動などの総称で、精神疾患のひとつです。以下のような症状が1か月以上続く場合は、睡眠障害の疑いがあるとされています。
- 寝付きが悪い
- 十分寝ても寝足りないと感じる
- 夜中に何度も目が覚める
- いびきが多い
睡眠障害の原因は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
- 環境要因:睡眠中の騒音、寝具が体にあっていないなど
- 身体的要因:高血圧、呼吸器疾患、体の痛みなど
- 精神的要因:極度の悩み・緊張・不安など
特に精神的要因はうつ病と併発している場合もあるため、専門医による診察や検査を行って原因を特定する必要があるでしょう。
依存症
依存症とは、特定の物質や行為がやめられない精神疾患です。
衝動に駆られたり物事に異常に執着したりと、自分の気持ちがコントロールできなくなり、日常生活に支障をきたす場合もあります。
依存の対象はアルコール・タバコ・ギャンブルだけではありません。薬物や万引きなどの違法行為に依存するケースも多く見られます。依存している行為をすることで一時の快感を得られますが、次第に感度が鈍り行動がエスカレートしていくのが特徴です。
本人だけで依存を断つのは非常に困難なため、専門機関での入院治療や同じ境遇の人たちとの共同生活で克服を目指すといった治療方法があります。
パニック障害
パニック障害とは、衝動的に強い不安に駆られる精神疾患です。
動悸・発汗・手の震えなどは「パニック発作」と呼ばれており、いつ発作が起きるかわからないという不安が追い打ちをかけてしまうケースも珍しくありません。
パニック障害の原因については解明されていませんが、近年では心理的な要因・脳神経系の異常が原因という説が有力となっています。
治療は薬物療法・精神療法を並行して行うのが一般的です。早期に治療をすれば完治も可能ですが、再発しやすいという特徴があります。そのため、症状が落ち着いても長期的に様子を見ながら治療を続ける必要があるでしょう。
適応障害
適応障害とは、ストレスによる感情や行動が原因となり、通常の生活を営むことが困難になる精神疾患です。
新しい環境に適応できなかったり、強いストレスが原因で発症するとされ、会社であれば新入社員や人事異動をきっかけに発症するケースが目立ちます。
表面的な症状はうつ病とよく似ていますが、適応障害は原因を特定しやすいのが特徴です。その原因さえ遠ざければ症状が落ち着くという点については、うつ病と大きく異なります。
メンタルヘルス不調に陥りやすい出来事
メンタルヘルスの不調は、日常の出来事により引き起こされる場合多々あります。ここからは、職場と生活面で起こりがちな、こころに影響しやすい事象について見ていきましょう。
職場で起こりやすい出来事
職場では、以下の4つのシーンが考えられます。
- 業務上のミスを強く指摘された、責任を問われ追い詰められた
- 仕事量・仕事内容・勤務場所や時間帯が大きく変化した
- 上司・同僚・部下・取引先などと人間関係のトラブルがあった
- 昇進・降格・配置転換など、役割や職場環境が大きく変化した
人それぞれ耐性は異なりますが、ショックな出来事や大きな環境の変化には少なからず抵抗感やストレスを感じるものでしょう。
このような出来事が起こる(起こった)従業員に対して、適切なフォローを行う体制を整えておくとメンタルヘルスの不調を未然に防止できる可能性があります。
生活上で起こりやすい出来事
生活面では、以下のような状況でメンタルヘルスの不調が起こることがあります。
- 引越しによる住環境の変化
- 騒音による継続的なストレス
- 自分や家族が病気・怪我・被災などで窮地に陥った
- 親子喧嘩・夫婦関係の悪化
- 収入の減少・ローンや借金などの金銭問題
このように、大きな環境の変化や強い不安を感じる出来事がメンタルヘルスに大きくかかわっています。
思い当たる出来事や症状がある場合は、なるべく早くカウンセラーなどの専門家に相談しましょう。
メンタルヘルス不調を示す2種類のサイン
メンタルヘルスの不調が示すサインは、2種類に分けることができます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1.行動における変化
1つ目は行動における変化です。会社生活のなかで以下のような変化が見られる場合は特に注意が必要です。
- 遅刻・早退・無断欠勤が増えた
- 有給休暇取得が増えた
- 明確な理由のない離席・休憩が増えた
- 仕事のパフォーマンスが低下した
- 元気がなくなった・あいさつをしなくなった
直属の上司やチームのメンバーは、このような変化に気付きやすい傾向にあるでしょう。部下や同僚の不調に気づいたときは、その人の行動を指摘するのではなく、まずは声掛けして話を聞くことが重要です。
2.体調における変化
2つ目は体調面の変化です。
体調の変化は自覚症状によるものと、周囲が知覚できる症状に分けられます。症状を自分で訴えられる人はまだ良いですが、口に出さず抱え込む人は要注意です。
また、目に見える変化がある場合はメンタルヘルスの不調だけでなく、深刻な病気が原因になっている場合もあります。
周囲の人がわずかな変化を見逃さず、こまめにコミュニケーションを取りながら本人の状態を確認できるよう意識することが重要です。程度によっては速やかに受診させるなどの対処も必要となるでしょう。
メンタルを改善する方法|セルフケアのやり方
メンタルヘルスの不調は、軽いものであればセルフケアで改善することもあります。心身ともに健康でいるためにも、良い生活習慣を身に付けましょう。
規則正しい生活を実施する
規則正しい生活を送ることがメンタルヘルスにも良い影響を与えます。
生活リズムが不規則になると体内時計が狂い、体調不良や情緒不安定になるリスクが高まるので注意が必要です。ストレスや心の不調を感じてる場合、生活リズムが原因となっていることもあるでしょう。
毎日の起床時間・睡眠時間・入浴時間などをなるべく一定に保ち、できる限り規則正しい生活を心がけることもセルフケアの一環です。
十分な睡眠や休息を取る
メンタルヘルスを健全に保つには、十分な睡眠と休息が不可欠です。
睡眠不足が続くと思考力が低下し、仕事のパフォーマンスも低下します。ミスや指摘されることが増えれば、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすこともあるでしょう。
自分の体にあった寝具を使う、朝起きたら朝日を浴びるといった習慣により、睡眠の質を高めることができます。そのため、就寝環境や朝のルーティンを見直してみるのも良いです。
また、体の疲れをリセットするためには、しっかりと休むことも必要になります。半休や連休などをうまく利用して、こころと体を休ませる時間を意識的につくるようにしてください。
適度な運動習慣を取り入れる
適度な運動習慣は、こころと体を健全に保つための近道です。
誰しも運動をした後に、気持ちがすっきりしたという経験があるでしょう。これは、適度な運動をすることで交感神経が優位になるためです。体を動かすことは、ストレス発散だけでなくストレスに強い体やこころをつくることにもつながります。
また、運動不足は体の不調の原因にもなるため、心身ともに健康でいるためにも負担にならない程度に継続を心がけましょう。
上司や友人など周りの人に相談する
悩みや不安がある場合は、信頼できる上司や友人などに相談するのもひとつの方法です。
メンタルヘルス不調の多くは、悩みや不安を一人で抱え込むことで発症・悪化します。誰かに相談することで気持ちが落ち着いたり、自分では思いつかなかった視点のアドバイスをもらえたりすることもあるでしょう。
しかし、上司や同僚には相談しにくい人もいると思います。そういった方は、メンタルヘルスのサポートを行う相談窓口を利用するのもおすすめです。
専門の医療機関を受診する
自覚症状や客観的な変化に気づいた場合は、専門の医療機関を受診することをおすすめします。
自分では「大したことはない」と思っていても、気付かないうちに悪化して大きな問題に発展しかねません。場合によっては専門家によるカウンセリングや治療が必要になるため、まずは医療機関で原因を特定することが重要です。
メンタルヘルスとは何か理解して対策を実施していこう
メンタルヘルスの不調は、個人のパフォーマンスに大きな影響を与えます。また、深刻化すると休職や離職に発展することもある重要な問題です。
特に経営者や管理職の方は、メンタルヘルスに対する理解を深め、適切な対応を行っていくことが重要といえるでしょう。
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