ストレスチェックは50人未満であれば対象外?実施するメリットを紹介
常時50人以上の労働者を雇用する事業場に義務付けられている「ストレスチェック」。雇用している労働者が50人未満であれば、ストレスチェックは実施しなくて良いのでしょうか?本記事では、従業員が50人未満の企業のストレスチェックについて、実施するメリットなどをあわせて紹介します。
目次
ストレスチェックとは?
ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルスを評価し、ストレスの有無や程度を把握するための制度です。具体的には、従業員が職場で感じているストレスや心身の健康状態、ワークライフバランス等を57項目のチェックシートを用いて確認します。
この制度は、2015年の労働安全衛生法の改定により、原則として50人以上の従業員を持つ事業所に義務付けられました。また、検査結果をまとめた報告書を労働基準監督署に提出する必要もあります。50人未満の事業所については、ストレスチェックを実施する義務はありませんが、労働者の健康を維持するために、自主的な取り組みが推奨されています。
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労働者が50人未満であればストレスチェックは努力義務
労働安全衛生法により、50人以上の従業員を持つ企業はストレスチェックの実施が義務化されています。しかし、50人未満の従業員を持つ企業では、努力義務となっているのが現状です。努力義務とは、法律によって厳密には義務づけられていないが、企業として可能な範囲で最善の努力を行うべき事項を指します。
特に中小企業やベンチャー企業では、一人ひとりの貢献が組織全体のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。そのため、50人未満の企業でも、従業員のストレス管理を行うことは非常に重要となります。
従業員が50人以上の場合、労働基準監督署への報告が必要になりますが、仮に50人未満の企業が任意でストレスチェックを行ったとしても、報告書の提出義務はありません。
労働者50人未満企業のストレスチェックは助成金の対象
50人未満の企業においても、ストレスチェックの実施は重要です。その取り組みを支援するため、政府からいくつかの助成金が提供されています。以下に主な助成金の概要を説明します。
小規模事業場産業医活動助成金(産業医コース)
小規模事業者が産業医と契約する際にかかる費用に対して支給される助成金です。産業医と「産業医活動に係る契約」を締結し、産業医活動を実施した際に支給されます。助成の内容は以下のとおりです。
- 1事業場あたり6か月ごとに10万円を支給
- 事業場あたり2回まで(最大20万円)
小規模事業場産業医活動助成金(保健師コース)
小規模事業場が保健師と契約する際にかかる費用に対して支給される助成金です。保健師と「産業保健に係る契約」を締結し、保健師活動を実施した場合に支給されます。助成内容は以下のとおりです。
- 1事業場あたり6か月ごとに10万円を支給
- 事業場あたり2回まで(最大20万円)
小規模事業場産業医活動助成金(直接健康相談環境整備コース)
小規模事業場の従業員が直接産業医や保健師に健康相談できる環境を整備するための助成金です。契約した産業医・保健師が活動を実施した場合に支給されます。助成内容は以下のとおりです。
- 1事業場あたり6か月ごとに10万円を支給
- 事業場あたり2回まで(最大20万円)
ストレスチェックの実施促進のための助成金
ストレスチェックの実施促進のための助成金は、小規模事業場においてストレスチェックを行い、その後の医師による面談までを実施することで支給されます。助成内容は以下のとおりです。
- ストレスチェックを実施した人数分の実費額:1人につき500円(税込)が上限
- ストレスチェックに関する医師の活動費用(上限3回):1事業場あたり1回の活動につき21,500円(税込)
労働者50人未満の企業がストレスチェックを実施するメリット
小規模企業がストレスチェックを実施することには多くのメリットがあります。以下では、具体的なメリットについてみていきましょう。
今後の事業拡大・労働者増加に備えられる
企業が成長するにつれて、その労働環境も変化します。規模が拡大し、従業員数が増加すると、組織全体のストレス管理がより重要となるでしょう。特に、労働安全衛生法により、50人以上の従業員を持つ企業はストレスチェックを実施することが義務づけられています。
そのため、早期からストレスチェックを行うことは、組織としてのストレスマネジメント体制を整備することにもつながるでしょう。また、今後50人未満の企業のストレスチェックが義務化された場合の対応もスムーズに行うことが可能です。予期せぬ問題を防ぎ、組織の安定した成長を支える重要なステップとなります。
労働者のストレス状態を把握できる
ストレスチェックは、企業が従業員のストレスレベルを客観的に評価し把握する有効な手段です。ストレスチェックによって、従業員一人ひとりがどのような要因でどの程度ストレスを感じているかを理解することができます。
この情報は、個々の従業員のメンタルヘルスを維持・改善するだけでなく、組織全体としての働きやすい環境をつくるための重要な指標となります。また、従業員がストレスを感じている要因を明確にすることで、それを解消するための具体的なアクションを計画・実施することも可能です。その結果、従業員の離職率の低下にもつながるでしょう。
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労使トラブルを未然に防げる
ストレスチェックの結果を活用することで、労使間のトラブルを未然に防ぐことが可能です。高ストレス状態が続くと、従業員のパフォーマンス低下、長期休職、あるいは退職といった問題が発生することがあります。これらは従業員の幸福度だけでなく、企業全体の生産性にも影響を与えるでしょう。
ストレスチェックで事前にストレスのサインを見つけることができれば、早期に適切な対策を講じられ、大きな問題が起きる前に状況を改善し、労使間のトラブルを避けることができます。これは企業の人事コスト削減にも繋がります。
企業のイメージアップを図れる
ストレスチェックの実施は、企業が従業員のメンタルヘルスを重視しているという印象を外部に発信する手段としても有効です。企業が従業員の心身の健康に配慮していることを示すと、求職者や取引先、顧客などからの評価が上がり、企業のブランド価値や信頼性の向上に寄与します。
特に、現代では働き方改革やワークライフバランスが求められている中、企業の社会的責任(CSR)としてもメンタルヘルスの取り組みは重要視されています。その結果、優秀な人材を引きつけ、競争優位を保つための一つの手段ともなるでしょう。
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ストレスチェックを実施するための流れ
ストレスチェック制度を導入する際の基本的な流れは以下のとおりです。細かな手順や注意点については、各企業の事情や制度の内容により異なる場合があります。
- ストレスチェック実施の方針を決定
- ストレスチェックの方法を選定
- 従業員への説明・同意取得
- ストレスチェックの実施
- 結果のフィードバック
- 必要に応じたフォローアップ
まず、経営層はストレスチェック制度を導入する意義と方針を決定します。その後、具体的なチェックの方法を選定します。大きな企業であれば専門の部署や外部の専門家を活用することも可能ですが、小規模企業では外部のサービスを利用することもあります。
その後、従業員への説明と同意取得を行い、ストレスチェックを実施します。チェックの結果は、個々の従業員に対してフィードバックし、必要に応じてフォローアップを行います。
これらの流れは大まかなものであり、具体的な運用は各企業の事情や制度の内容によります。ただし、従業員のプライバシー保護や個人情報の適切な管理については、どの企業も厳格に守るべき重要な事項です。
▷ストレスチェックの実施者と実施従事者とは?役割や要件を解説
労働者50人未満の企業もストレスチェックを積極的に取り入れよう
ストレスチェックは、従業員の健康状態の把握や離職の防止、社会的信頼性の向上にも寄与します。また、将来的には50人未満の企業であっても、ストレスチェックの実施が義務付けられるかもしれません。助成金などをうまく活用しながら、積極的に取り組んでいきましょう。
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