企業がナレッジを蓄積する重要性とは?効果的な方法やよくある失敗を解説
多くの企業が注目するナレッジの蓄積。蓄積したナレッジは業務効率化などで活かせますが、そもそも企業がナレッジを蓄積する重要性とは何なのでしょうか。本記事では、そんなナレッジを蓄積する重要性について、効果的な方法やよくある失敗などとあわせて解説していきます。
目次
ナレッジを蓄積する重要性
ナレッジとは付加価値のある知識や組織に有益な情報で、ナレッジを蓄積すると、企業の利益が向上します。しかし、ナレッジの蓄積には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、ナレッジを蓄積する重要性を解説します。
属人化の防止につながる
終身雇用する企業が減る中で人材の流出が増えている現代において、俗人化を防止するためにナレッジの蓄積は重要です。もしナレッジが社内に蓄積されていないと、担当者の退職や長期で働けなくなったときに業務効率が悪化します。
属人化を防ぐためにも、従業員の業務を平準化していきましょう。誰でも同じように業務をおこなう環境が整備できれば、属人化のリスクを軽減できます。またナレッジを社内で共有すれば、担当者以外の方でも業務に携われ業務効率の向上にもつながります。
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業務の効率化が図れて生産性の向上につながる
ナレッジが共有されていない場合、担当者が変わるたびにやり方を一から覚えるのでとても非効率です。しかしナレッジを蓄積しマニュアルにしておけば、担当者が不在でも別の担当者が作業を進められます。
またナレッジをマニュアルにすると、すべきことが明確になるため業務の進め方がわからなかったり、担当者と連絡が付かず業務が滞ったりすることを防げます。他にも新しい担当者が入った際に時間をかけて教育する必要がないため、既存の担当者の時間も無駄にすることがありません。
成功体験の蓄積
社内の成功体験を蓄積すれば、従業員のスキルアップや帰属意識の向上につながります。例えば営業成績の良い従業員のナレッジを共有し他の従業員に共有することで、社内全体で営業成績が向上する可能性もあります。また困ったときの対応方法や業務の効率を上げるポイントなどの理解を深めると、個々のスキルアップにもつながるでしょう。
他にも利益拡大だけでなく人材確保という点でもナレッジの蓄積は重要です。従業員が目標達成や効率的なやり方を習得すると、モチベーション向上も期待できます。従業員のモチベーションが高まれば、会社への貢献度や成功体験の共有など好循環が生まれます。
製品の質やサービス向上につながる
顧客とのやり取りをナレッジで蓄積すれば、担当者ごとの顧客対応に差がなくなるのでサービスの向上につながります。また顧客のクレームなどもナレッジとして蓄積すれば、より品質の良い製品のアイデアに活かせます。
ナレッジを蓄積することで製品の質やサービス向上につながれば、顧客にとってさらに良い製品が生まれ顧客満足度が向上することで会社の業績にも影響します。
ナレッジを蓄積するための効果的な方法
ナレッジの蓄積は、生産性の向上や業務の効率化に大きく影響します。しかし、どのようにナレッジを蓄積すれば良いかわからない方も多いはずです。ここでは、ナレッジの蓄積に効果的な方法を2つ紹介します。
ナレッジマネジメントツールの導入
ナレッジマネジメントツールとは、ナレッジの蓄積に特化したITツールです。ツールを活用すると、ナレッジの共有がスムーズにできデータの一元管理もできるので、資料を探す手間が省けます。
また製品の仕様書や社内の機密情報など社内にある情報を、まとめてナレッジマネジメントツールで管理できます。なおナレッジマネジメントツールは主に4つあり、種類と概要は以下の通りです。
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専門知識型
ヘルプデスク向けのナレッジマネジメントツールです。社内のFAQをデータベース化してとりまとめたもので、困ったときにいつでも確認できます。そのため担当者が業務時間外でも確認でき、専門知識がある従業員が社内の対応業務にとられる時間を軽減できます。
業務プロセス型
コールセンター向けのナレッジマネジメントツールです。業務内容に関する知識や情報だけでなく、業務の進め方も一緒に確認できます。クレーム対応の方法や顧客満足度の高い従業員のノウハウを真似することで、質の高いサービスを提供できるようになります。
ベストプラクティス共有型
優秀な従業員の暗黙知を共有するナレッジマネジメントツールです。例えば、優秀な従業員の行動パターンや思考パターンを共有すれば業務の質が向上します。
ただし、対象の従業員にメリットがない場合、情報の共有が行われない可能性もあります。ベストプラクティス共有型を導入する際は、暗黙知を保有する従業員への対応策も事前に考えておきましょう。
▷【解説】暗黙知と形式知とは?意味の違いや変換する方法をわかりやすく解説
経営資産・戦略策定型
ナレッジを経営戦略で有効活用するための解析ツールです。その他のナレッジマネジメントツールに比べて取り扱う情報量が増えるため、DWH(データウェアハウス)などを活用する必要があります。成功した事例や重要な情報は、それぞれ比較したり必要条件を導き出したりすることで今後の経営に役立てることができます。
社内Wikiの整備
社内Wikiとは、会社全体で情報を蓄積・共有するツールです。誰でも内容を書き込めるため、従業員のナレッジを気軽に共有できます。
社内Wikiを取り入れるメリットは、導入ハードルの低さと従業員の一体感が出やすい点です。書き込みをすると簡単にナレッジをまとめられるため、何度も同じ質問があったことを書き込むと担当者の手間を省くことができます。また、従業員が一丸となって作り上げる中で、コミュニケーションの活性化も期待できます。
ただし、社内Wikiは社内で浸透しにくいため注意しましょう。そもそも社内Wikiを知らないケースや、操作性が悪く利用をやめてしまうケースも少なくありません。社内全体で社内Wikiを周知して、操作性が良いツールの導入を検討しましょう。
▷ナレッジマネジメントツール導入による8つのメリットと効果について
ナレッジマネジメントでよくある失敗事例
導入する会社が増えており浸透しつつあるナレッジマネジメントですが、導入したにも関わらず効果が実感できていない会社も多くあります。ここでは、実際に起こったナレッジマネジメントの失敗事例を紹介します。
導入目的を明確にしなかった
導入する会社が増えているという理由だけでナレッジマネジメントを導入しても、目的が明確でないと効果が出ず失敗する可能性が高いです。また従業員の負担も増えてしまうので、悪循環になります。どのようにマネジメントすべきか何をゴールにすべきかが不明確だと、思うような成果を実感できません。
リーダーを選任し現場に明確な目的を伝えてから導入を進めることで、失敗を未然に防ぎましょう。導入を決定する人と実際に利用する人は違う場合が多いので、ナレッジマネジメントを導入する際は従業員全体に周知をおこないましょう。
また社内でも部署やチームによって導入目的が異なる場合があります。その際は、問題点を抽出して確実に成果が出せる仕組みから始めるのがおすすめです。
▷ナレッジは活用しないと意味がない?活用方法のステップや必要なツールを解説
ツールの操作性が合わなかった
実際に利用する現場従業員にとってツールの操作性が悪いと、せっかく導入しても作業効率が悪くなりナレッジマネジメントツールを利用しなくなる可能性があります。特にどの機能を使うかわからず多機能ツールを導入し結局使わないという会社は多いです。
機能がたくさんあっても活用できなければ意味がありません。また機能が豊富だとその分コストも高くなります。ナレッジマネジメントツールを提供している会社によって特長は異なるため、必ず導入前に自社に必要な機能の洗い出しをおこないましょう。
ツールによっては、無料トライアルやデモ画面の体験ができる場合もあります。実際に使う従業員に使用感を確認してもらい導入を進めてください。
社内にツールが浸透しなかった
ナレッジマネジメントツールの導入目的が明確でないと、従業員に重要性が理解されず社内でツールが浸透しません。特にナレッジを共有してほしい優秀な従業員は、自分のノウハウを社内で共有することに良いイメージがない人も多いです。また自分の業務スタイルが確立している人にとっても、ナレッジマネジメントツールの活用は手間です。
結果、ナレッジマネジメントツールの活用が曖昧になり社内で浸透しないことがあります。社内でツールを浸透させるためには、ナレッジマネジメントの重要性を社員に理解してもらうことです。導入の目的や導入することで社員にどのようなメリットがあるかを明確に提示する必要があります。
ナレッジマネジメントを成功させるポイント
ナレッジマネジメントを失敗させないためには、事前に成功のポイントの確認が大切です。ここでは、ポイントを4つ紹介します。
導入目的を明確にする
ナレッジマネジメントを導入する目的を明確にしましょう。目的が明確でないと、ゴールまでの道筋が立てられません。目的を決める際に確認するポイントは3つです。
- 自社にどのような課題があるのか
- どの問題を解決したいのか
- 最終的に求めているものは何か
例えば、「営業成績が人によって大きく異なる」という課題があったとします。この場合、営業成績の良い従業員の営業方法をデータ化したり、FAQを作成し営業の対応方法を共有することで社内全体の営業レベルを底上げします。目標を明確にすることで、問題の解決方法が明確になるでしょう。
フレームワークを活用する
フレームワークとは課題や意思決定・戦略立案など、思考の枠組みのことです。フレームワークを活用することで、問題の整理や計画的な目標達成といったメリットがあります。
ナレッジマネジメントで有名なフレームワークは、SECIモデルです。SECIモデルとは、個々が持つ暗黙知を共有し、形式知に変換して社内全体で情報の共有や管理をするフレームワークです。
なお、SECIモデルを構成するプロセスには次のようなものがあります。
- 共同化:他者と行動を共にし、暗黙知を移転させること
- 表出化:暗黙知を言語化し、他者と共有すること
- 連結化(結合化):複数の形式知を組み合わせ、新しいナレッジを創造すること
- 内面化:新しい形式知を獲得すること
プロセスを繰り返すことで、よりレベルの高い製品の製造やサービスの提供ができます。
▷SECIモデルとは?基本的な考え方やマネジメントへの活用方法を徹底解説
新しい評価制度を設置する
ナレッジマネジメントの導入直後は、ツールへの共有や書き込みをおこなうため従業員の負担が大きくなります。そこでナレッジマネジメントを導入する際には、新しい評価制度を設置するようにしましょう。
新しい評価制度を設置することで、従業員は自分のナレッジを共有することにメリットを感じます。また会社が自分のナレッジを認めることで、従業員のモチベーション向上にもつながります。
「いいね!」や「拍手」などのボタンで相手へリアクションできるナレッジマネジメントツールもあるため、機能を使いこなして社内でモチベーションやナレッジを共有しやすい雰囲気作りをおこなっていきましょう。
スモールスタートで始める
ナレッジの蓄積は長期的な時間をかけて取り組まなければなりません。そのため導入を決めて際には、スモールスタートで初めてみましょう。
最初は失敗もあるかもしれませんが、スモールスタートで成功を積み上げていくことで徐々に展開していくことをおすすめします。またスモールスタートをすることで、操作性や機能性の問題点や社内で展開する際のマニュアル作りにも活かせます。
▷【最新】ナレッジマネジメントの成功事例8選!事例から学ぶ成功ポイント
ナレッジを蓄積する重要性を押さえておこう
ナレッジとは、付加価値のある知識や利益になる情報です。ナレッジを蓄積すると、業務の効率化や従業員のモチベーション向上・企業の生産性向上などの効果が期待できます。
ただし、目的を明確にせずナレッジマネジメントを始めると失敗する可能性が高まります。成功するためには、スモールスタートから初めて導入の目的を明確にし会社全体へ周知することが重要です。ナレッジの蓄積を始めたいと考えている方は、ぜひ本記事を参考にして導入を進めてください。
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