健康診断は労働時間に含む?労務管理をする上で理解しておきたいポイント

最終更新日時:2023/02/15

労務管理システム

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社員の健康状態を管理する、労務管理。健康状態の確認や病気を早期発見するには健康診断の受診が一般的ですが、健康診断の受診は労働時間に含んでも良いのでしょうか。本記事では、健康診断は労働時間に含むのか?健康診断実施に必要な労務管理業務等とあわせて詳しく解説します。

健康診断とは?

健康診断は、従業員一人ひとりが心身ともに健康な状態を保ち、長く労働できるようにすることを目的としています。

企業側は、従業員の健康診断の受診が義務づけられているため、必ず受けさせなければなりません。

健康診断が義務づけられている理由は、従業員に対する健康管理が行き届いていることで、生産性や業績の向上につながると考えられているためです。

健康診断の検査項目

健康診断の検査項目は下記の11項目です。

  • 既往歴および業務歴の調査
  • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
  • 胸部X線検査(定期検診の場合は胸部X線検査もしくは啖呵検査)
  • 血圧測定
  • 貧血検査(血色素量および赤血球数)
  • 肝機能検査(GOT、CPT、r-GTP)
  • 血中脂質検査(LDLコレストロール、HDLコレストロール、血清トリグリセライド)
  • 血糖検査
  • 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
  • 心電図検査

健康診断は義務づけられている

健康診断は義務づけられているのです。企業が従業員に健康診断を受けさせるのは、従業員へのサービスではなく労働安全衛生法という法律によって義務づけられており、違反すると罰則が科せられます。

そのため、「コスト負担を避けたい」「人手不足だから業務中に抜けてもらいたくない」などの理由で健康診断を実施しなかったり、必要とされている診断項目を省いたりすることはできません。

労働安全衛生法には罰則規定があるため、もし企業が健康診断の実施義務を怠った場合は、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

また、健康診断を受けさせないことで従業員に健康被害が生じてしまうと、損害賠償責任を負うリスクが出てくるのです。従業員には健康診断を受けないことによる罰則はありませんが、企業側には従業員に対して安全を配慮する義務があります。

そのため、企業は健康診断を未受診の従業員が出てこないように注意しましょう。

実施が義務づけられている健康診断の種類

実施が義務づけられている健康診断の種類は、大きく2つに分けられます。

  • 一般健康診断
  • 特殊健康診断

それぞれについて解説します。

一般健康診断

一般健康診断は、業種や職種に関係なく実施される一般的な企業健康診断です。定期検診の実施は年1回でその他にも海外赴任者向けの健康診断などもあります。

一般健康診断は下記5種類に分けられます。

雇い入れ時健康診断

雇い入れ時健康診断とは、常時労働させる従業員を新たに雇用する場合に、受けさせなければいけない健康診断のことを指します。

所定の検査項目の省略は不可です。

しかし、例外として、対象の従業員が3ヶ月以内に医師の診断を受けた項目は、受診したことを証明できる書類がある場合に限り、その項目を省くことができます。

定期健康診断

定期健康診断は、常時労働させる従業員が対象で企業は年1回の実施義務があります。

指定されている検査項目は漏れなく受診することが必要ですが、医師が必要ないと判断すれば、20歳以上の人の身長、BMI20未満の人の腹囲計測は省略可能です。

特定業務従事者健康診断

特定業務従業者健康診断は、深夜業務など特定の労働環境で働いている従業員に対して実施する健康診断です。

配置転換のタイミングのほか、6ヶ月ごとに1回、定期健康診断と同じ項目を受診しなければなりません。

ただし、胸部X線検査は1年に1回実施で問題ないとされています。

海外派遣労働者健康診断

海外派遣労働者健康診断は、従業員を6ヶ月以上海外派遣する場合に所定の項目を受診させる義務がある健康診断です。

基本的には定期健康診断と同じ項目ですが、医師が必要と判断した場合、血中の尿酸値の検査、B型肝炎ウイルス抗体検査などの項目が追加される可能性があります。

また、海外勤務に6ヶ月以上従事した人が帰国後に国内での勤務となる場合も、同じ内容の健康診断が必要です。

給食従事者検便

給食従事者検便は、社員食堂や炊事場の業務に従事している人に対しておこなう検査です。

雇い入れ時や配置転換のタイミングで検便をおこなうことが義務づけられています。

特殊健康診断

特殊健康診断は、有害な物質を取り扱う特殊な業務や危険を伴う業務に従事している人に対して実施する健康診断です。

主に下記のような特定業務が該当します。

  • 高気圧作業
  • 放射線を取り扱う業務
  • 特定の化学物質を取り扱う業務
  • 石綿を取り扱う業務
  • 鉛を取り扱う業務
  • 四アルキル鉛を取り扱う業務

健康診断の対象範囲

健康診断の対象範囲は、雇用期間の定めがなく労働契約により雇用されている従業員とされています。

ただし、下記の従業員も含まれます。

  • 雇用期間の定めがあるが、契約期間が1年以上の人
  • 雇用期間の定めがあるが、契約の更新により1年以上雇用される予定の人
  • 雇用期間の定めがあるが、契約の更新により1年以上引き続き雇用されている人

短時間労働者でも、契約期間が1年以上であり、1週間の所定労働時間が通常の従業員の約2分の1以上の場合は、雇い入れ時健康診断をおこなうことが望ましいとされていますので、注意してください。

健康診断は労働時間に含む?

法律上、健康診断を受診している時間に賃金の支払い義務はないものの、定期健康診断の受診時間も労働時間として取り扱っている企業がほとんどです。

健康診断は大前提として、従業員が長く働けるように心身の健康を守るためのものですので、労働時間に含むのが適切であるといえるでしょう。

健康診断の費用は企業が負担する

健康診断の費用は企業が負担するのが一般的です。健康診断は、企業による実施が法律で義務づけられているため、健康診断にかかる費用は企業が全額負担します。

基本的な健康診断のオプションとした診察に関しては、社員の自費負担とする企業も多い傾向です

健康診断にかかった費用は、一般的には福利厚生費の科目で損金計上となります。ただし、特定の従業員を対象とした健康診断や高額な人間ドックなどは給与扱いとなり、所得税の課税対象です。

健康診断の実施に必要な管理業務

健康診断の実施に必要な管理業務は、主に下記の関係団体や関係者への対応です。

経営陣

経営陣に対しては健康診断の方針や具体的な方法について確認しましょう。会社としての費用がかかるため、予算の見積もりや請求書作成などの管理業務も必要となります。

経営陣との連携が取れていない場合には、様々な問題が発生するリスクがあるので密接にコミュニケーションを重ねてミスなく進められるようにしましょう。

社員

健康診断の実施方法が決まりまったら従業員に周知しましょう。健康診断の事前準備として、受診日や受診コースの希望確認、問診票の事前送付などがあります。

受診後は、医院やクリニックから送られてくる健康診断の結果を従業員に伝えることが必要です。結果によっては再検査や受診項目追加などの可能性がありますので、状況に応じてフォローしてください。

健康保険組合

受診する従業員の年齢や性別によって、健康保険の補助対象となる健康診断の項目が異なります。そのため、健康診断のコースを決めるには健康保険組合と事前に話をしておくことが必要です。

また、健康保険組合への補助金申請書の提出を求められる可能性もあります。補助金申請書は健康保険組合によって所定の様式があるため、申請が漏れることのないよう、健康保険組合に必ず確認しておきましょう。

医院・クリニック

医院やクリニックで健康診断を依頼する場合、予約ができる日時を確認し、実際の予約やキャンセル、日時変更などの手続きが発生します。

問診表などを事前に送付しなければならない場合はその手配も必要です。また、健康診断実施後は送られてくる結果の受け取り、従業員への通知、医院やクリニックへの支払いなどもおこないましょう。

産業医

健康診断の結果によっては何らかの対応が必要な場合は産業医と連携する必要があります。産業医と健康診断の結果について相談し、就業判定や意見書を出してもらうことが可能です。

また、産業医の判断で作業の転換や労働時間の短縮などの措置が求められる場合があります。

労働基準監督署

健康診断の結果は、所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

常時50名以上の従業員を雇用している企業だと、提出が滞ったり、提出漏れがあった場合は行政指導の対象となります。そのため、健康診断の結果は速やかに労働基準監督署に提出しましょう。

健康診断の労務管理をする上で理解しておきたいポイント

健康診断の労務管理をする上で理解しておきたいポイントを解説します。

  • 受診結果の保管・報告は義務である
  • 要配慮個人情報に留意する
  • 受診拒否社員へは配慮が必要である

受診結果の保管・報告は義務である

受診結果の保管・報告は義務であることがポイントの一つです。常時50人以上の従業員を雇用している企業は、所轄の労働基準監督署に健康診断の結果を報告する義務があります。

労働基準監督署への報告義務は、労働安全衛生法で定められており、報告を怠った場合は違法行為とみなされるため注意してください。

なお、従業員数が50人未満の企業は、健康診断結果の報告義務がないだけで、健康診断を従業員に受けさせる義務はありますので、勘違いしないようにしましょう。

要配慮個人情報に留意する

要配慮個人情報に留意することが大切です。健康診断の結果は、個人情報のなかでも非常にデリケートなものですので取り扱いには十分に注意してください。

社内であっても他人に漏れるようなことは絶対にあってはなりません。そのため、関係者以外が触れることのないよう、健康診断の結果は厳重に管理しましょう。

受診拒否社員へは配慮が必要である

受診拒否社員へは配慮が必要であることも理解しましょう。

仕事が多忙で健康診断を受ける時間もない場合などは、従業員と話し合ったうえで、企業側が仕事を調整し、健康診断受診の時間をつくらなければなりません。

また、人に決して知られたくない病気を抱えている可能性もあります。心と体の問題は非常にデリケートなものですので、丁寧に対応し、健康診断を安心して受けられる方法を検討しましょう。

健康診断の必要性を理解し適切な労務管理に努めよう

健康診断は、従業員一人ひとりの健康を守るためにおこなう企業にとって非常に重要な義務であるといえます。

健康診断の種類や対象者、ポイントを正しく理解し、適切におこなうことが必要です。

従業員が良い健康状態であることは、企業のパフォーマンス向上にもつながるため、健康診断の必要性を理解し、適切な労務管理に努めましょう。

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