労務費とは?定義や人件費との違い・適した計算方法を詳しく解説

最終更新日時:2024/04/03

労務管理システム

労務費とは

労務費とは人件費のひとつで、会社の利益に大きな影響を与えるため、正しく把握したうえで管理する必要があります。正確に管理するために、労務費について理解を深めておきましょう。労務費には何が含まれるのか、人件費や労務管理費との違い、計算方法などを紹介します。

この記事の要約

・労務費とはサービス、製品を精算するための労働量にかかる費用のこと
・労務費は人件費の一部であるものの、携わる業務によって費用が分類される
・労務費の種類は、直接労務費と間接労務費の2つに分けられる

労務費とは?

労務費とは、製品やサービスを生産するための労働力にかかる費用のことです。人件費のひとつであり、製造部門や制作部門など製品製造に直接関わる従業員に支払う給与や手当などが該当します。

労務費は製造原価に算入される費用です。製造原価とは、製品の製造に要した費用を指し、労務費・材料費・経費の3要素で構成されています。会社の利益に影響する要素であるため、労務費は正しく管理・計算しなければなりません。

労務費の内訳

労務費は以下の5つの費用から構成されます。

  • 賃金:製造・制作部門の従業員に支払う給与
  • 雑給:製造・制作部門で働くパートやアルバイトに支払う給与
  • 従業員賞与手当:製造・制作部門の従業員に支払う賞与や手当
  • 退職給付費用:製造・制作部門の従業員に将来支払う退職金のうち、当期負担分費用
  • 法定福利費:製造・制作部門の従業員に対する社会保険料の会社負担分費用

いずれも、製造部門や制作部門で働く従業員に関わる費用です。労務費に該当する業務には、建設現場での現場作業や工場での製造作業のほか、広告制作やITコンテンツ制作など、あらゆる製品・サービスの生産が該当します。また対象者は正社員の作業員だけでなく、監督者やパート・アルバイト従業員もすべて含まれます。

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労務費と人件費の違い

人件費とは、企業で働く従業員に関わる費用全般を指し、給与・賞与手当・法定福利費・研修費用などが該当します。労務費も従業員に支払う費用である点は同じですが、企業で働く従業員のうち、製造や制作に関わる労働力に限定される点が異なります。

たとえば製造会社において、製造部門の従業員に対する費用は労務費に分類されるのに対して、営業・販売部門や総務部門などは、製品の生産に直接的に関わる業務ではないため、労務費には該当しません。ちなみに、営業部門や販売部門などの従業員に対する費用は販売費に、総務部門などの従業員に対する費用は一般管理費に分類されます。

労務費は人件費のひとつです。しかし、同じ企業のなかでも、関わる業務によって費用が細かく分類されているのです。

労務費の種類

労務費は、以下の2つに分類されます。

  • 直接労務費
  • 間接労務費

それぞれの違いを説明します。

直接労務費

直接労務費とは、製品やサービスの生産に関する、直接的な業務に対して支払う賃金を指します。たとえば、工場での製品組立や、建設現場での工事作業などです。

製品やサービスを行う人のことは直接工と呼ばれ、生産現場で作業をする組立工や機械工などが該当するため、直接労務費は、直接工が行った製品製造業務に対して支払われる賃金ということになります。

直接労務費は、直接工が生産に関わった作業時間および賃率によって算出されますが、直接工が製品製造とは直接関係のない業務をした時間については、直接労務費とならないため注意が必要です。

間接労務費

間接労務費とは、製品の生産に対して間接的に関係している費用のことです。たとえば、直接工が製品製造に使用する機械を修理した場合は、直接的に製品を製造したわけではないため、間接労務費に算入されます。

間接労務費として、以下の費用が該当します。

  • 間接作業賃金:直接工が製品製造に直接関わらない業務を行った際に支払われる賃金
  • 間接工賃金:製造機械の整備士など、間接工に支払われる賃金
  • 手待手当:待機時間など、作業ができなかった時間に支払われる賃金
  • 給料:製造部門に関係する事務職員や管理者に支払われる賃金
  • 従業員手当:賞与や各種手当
  • 従業員賞与:従業員に支払われる賞与
  • 退職給与引当金繰入額:将来支払われる退職金の当期までの見積金額
  • 福利費:社会保険料などの会社負担分費用
  • 休業賃金:従業員が休業した際に支払われる賃金

間接労務費は直接工に限らず、間接的に製造業務に携わる従業員に対する費用も含まれます。製造・制作に関わる費用のうち、直接労務費を除いたものが間接労務費となるのです。

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労務費を計算する方法

労務費は製造原価に算入されるものであり、正しく計算しなければなりません。労務費の計算方法は、直接労務費と間接労務費で異なります。それぞれの計算方法を解説します。

直接労務費の計算方法

直接労務費は以下の計算式で求められます。

直接労務費=賃率×製品製造に要した時間

賃率とは時間あたりの単価であり、以下の式で求められます。

賃率=直接工の賃金÷総直接作業時間

直接労務費は1つの製品、サービスごとに計算しなければなりません。直接工は複数の製品製造に携わっている場合が多いため、賃率を計算して直接労務費を算出します。直接労務費を計算する際には、間接作業の時間を含めないよう、しっかり区別しましょう。

間接労務費の計算方法

間接労務費は、労務費のうち直接労務費以外の費用となります。したがって、以下の計算式で求められます。

間接労務費=労務費-直接労務費

上記の計算式のほか、該当する間接労務費用を加算して算出しても問題ありません。その際には、計算ミスのないよう気を付けましょう。

労務費を計算する際のポイント

労務費を計算する際は以下の3つのポイントを押さえましょう。

  • 固定費や変動費になる
  • 定期的な見積りを行う
  • 計算方法の違いを理解する

それぞれ詳しく説明します。

固定費や変動費になる

一般的に、労務費は固定費に分類されます。固定費とは、生産量や売上に関係なく発生する一定費用のことです。たとえば、人件費や家賃、水道光熱費、設備の減価償却費などが該当します。

しかし、労務費は一部を変動費に変えることが可能です。変動費とは、売上に比例して増減する費用のことで、材料費や仕入原価、外注費などが該当します。ただし、繁忙期に一時的にパートやアルバイトを増員したり、正社員の賃金体系が変化したりする場合には、その分を変動費とすることができるのです。

労務費の一部を固定費から変動費にすることは、コストの削減につながります。特に従業員の賃金は固定費の中でも大きな割合を占めており、固定費を削減することで製造原価もカットできるため、利益向上が期待できるでしょう。

定期的な見積りを行う

労務費は、定期的な見積を行うことが大切です。

労務費は基本的に、製品が完成し、総製造時間が確定しなければ算出できません。しかし、定期的に見積もりを行いながら管理しなければ、知らぬ間に費用が予算を超過してしまう恐れがあります。

製造過程で労務費を管理することは、経費削減にもつながります。これまでの労務費のデータを参考にしながら定期的に費用を算出し、労務費を適切に管理しましょう。

計算方法の違いを理解する

労務費は各製品やプロジェクトごとに算出しなければならず、計算方法もそれぞれ異なります。労務費を正しく計上するために、計算方法の違いを理解しなければなりません。それぞれの賃金率や、直接労務費、間接労務費の算出方法について理解し、正確に計上しましょう。

複数の製品やプロジェクトを扱っている場合は、管理業務が煩雑化してしまう場合もあるかもしれません。そのような際には、業務管理ツールなどを活用することで、効率的に労務費を管理することができるでしょう。

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労災保険料の算定に必要な労務費率について

最後に、労務費率について説明します。

労務費率とは、建設業の請負工事などにおいて労災保険料を算出するためのもので、請負金額に対する賃金総額の割合を表しています。

一般的な企業では、企業単位で労災保険に加入しますが、建設業においては、業務の特性上、現場単位で加入することが定められています。もし下請会社の労働者に労働災害が発生した場合、元請会社の労災保険が適用される仕組みです。

しかしながら、建設業などは複数の下請・孫請業者と施工を行う場合が多く、保険料の計算も複雑化します。そこで法律では、事業内容ごとに労務費率を定めており、「請負金額×労務費率」によって「賃金総額」を算出し、以下の計算式によって保険料を計算します。

労災保険料=賃金総額×労災保険率

労務費率は事業内容によって異なります。2023年11月現在、厚生労働省によって以下のように定められています。

事業の種類労務費率
水力発電施設、ずい道等新設事業19%
道路新設事業19%
舗装工事業17%
鉄道又は軌道新設事業24%
建築事業(既設建築物設備工事業を除く)23%
既設建築物設備工事業23%

機械装置の組立て又は据付けの事業

組立て又は取付けに関するもの

その他のもの

38%

21%

その他の建設事業24%

労務費率は定期的に更新されるため、最新の労務費率を利用して計算しましょう。

[出典:厚生労働省「労務費率表」]

厚生労働省が定期的に比率を更新している

厚生労働省は定期的に労務費率を更新しています。これは、建設労働者の人件費や資材の高騰などの社会情勢の変化に応じて、適切な労務費率を設定するためであり、建設業事業者に対して定期的に労務費調査を行い、賃金実態の把握および労務費率の見直しを行っています。

労務費率は毎年変更されるわけではありませんが、労務費を計算する際には当年の労務費率をよく確認し、正確に算出しましょう。

労務費とはどのような費用か把握し労務管理に役立てよう

労務費について解説しました。労務費は人件費の一つであり、特に製品やサービスの生産に関係する費用です。また、労務費は製造原価に影響する費用であり、正しく管理・計算する必要があります。本記事を参考に労務費とは何かを把握し、労務管理に役立ててください。

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