テレワーク中の労務管理方法|課題と解決策・他社事例を解説

社員の労働状況や労働環境を整備する、労務管理。昨今普及がすすむテレワークにおいては、どのような労務管理が必要とされているのでしょうか。本記事では、テレワーク中の労務管理の方法とは何か?テレワーク中の労務管理の課題と解決策、企業事例や注意点等を詳しく解説します。
目次
テレワーク中の労務管理の方法とは?
労務管理とは、労働時間や就業規則の管理、給与計算など、従業員の労働状況に関する管理業務のことです。
テレワーク中は、従業員の勤怠状況を把握しにくいなどの理由により、適切な労務管理が難しいという課題があります。では、テレワーク中の労務管理はどのような方法でおこなえばよいのでしょうか。
労働基準法に基づいた管理が必要
労働基準法に基づいた管理が必要です。具体的には以下の内容が挙げられます。
- 就業規則・契約の変更
- 勤務形態・人事評価方法の見直し
- 作業環境の整備
- 労働時間管理方法の適正化
たとえば、テレワーク中は1人で作業を進めるため、気づいたら長時間労働になっていたということも考えられます。この場合、時間によって社内システムへのアクセス制限を設けたり、長時間労働の注意喚起をおこなったりするなどの対策が必要です。
このように、テレワーク実施にあたって、労働基準法に基づいた労務管理方法の見直しが必須となります。
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テレワーク中の労務管理の課題
テレワーク中の労務管理の課題には、以下のような内容が挙げられます。
- 勤務状況の把握が難しい
- 就業時間の管理が難しい
- 費用負担の基準があいまい
- 労災認定判断が難しい
- 適正な人事評価がしにくい
- コミュニケーションが減少する
- 情報漏洩のリスクがある
- 健康状態・労働環境の管理が難しい
- 人材育成が難しい
勤務状況の把握が難しい
勤務状況の把握が難しい点は、テレワーク中の労務管理において最も多く挙げられる課題です。
オフィスに出勤していれば、従業員の勤務状況を直接目で見て把握できます。しかし、テレワーク中は従業員が自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外の場所で各自業務を進めるため、勤務状況の把握が困難です。
自宅で1人作業を進めるとなると、休憩が多くなったり業務効率が低下したりなど、オフィスでの勤務状況とは異なる場合があります。このように、テレワーク中の勤務状況は、把握や管理が難しいという課題を抱えています。
就業時間の管理が難しい
テレワーク中は出退勤時間や休憩時間など、就業時間を正確に把握することが困難です。自宅で作業をする場合、就業時間中でもついついスマホを見たり家事をしたりと、中抜け時間が多くなる傾向があります。
また、一人ひとりの業務負担を把握しにくいために業務負担が大きくなった従業員や、オンオフの切り替えがうまくできない従業員は、長時間労働に陥る可能性も考えられます。このように、テレワーク中は就業時間を正確に把握することが難しいという課題があります。
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費用負担の基準があいまい
オフィスには、個々に仕事用のイスや机が用意されており、光熱費や通信費なども会社負担となります。しかし、テレワーク中はオフィスのように設備が整っていない場合も多く、テレワークで発生する費用をすべて従業員が支払うとなれば、従業員の負担が大きくなってしまいます。
ただ、テレワークにおける費用負担の基準が曖昧な企業が多いことも事実であり、会社への不満や従業員のモチベーション低下を招きかねません。
労災認定判断が難しい
労災認定判断が難しいことが挙げられます。テレワーク中でも、業務中のケガや病気には労災保険が適用されますが、プライベートとの線引きが難しく、ケガや病気が業務に起因するものかどうかの判断が困難です。
また、このことから、「テレワーク中のケガ・病気は労災の申請に応じない」という企業が稀に存在しますが、この対応は違法行為に該当します。
適正な人事評価がしにくい
テレワーク中は勤務状況を正確に把握できず、同時に適正な人事評価がしにくいという課題もあります。営業や技術職であれば成果を数値で把握できるため、大きな問題はありません。しかし、事務職といった成果を把握しにくい職種では、評価が難しくなってしまいます。
テレワークの実施によって評価が不適切になってしまうと、会社への不満が発生したり信頼がなくなったりするなどの問題を引き起こす可能性もあります。
コミュニケーションが減少する
テレワーク中はオフィスに出勤するときと比べ、コミュニケーションが減少するという課題が挙げられます。オフィスに出勤していれば、業務中の質問や休憩時間の雑談など、コミュニケーションをとる機会があります。
しかし、テレワーク中はオンライン会議やチャット以外でのコミュニケーションが難しく、「指示が伝わっているかが分からない」「気軽に質問しにくい」などの弊害があるのです。
情報漏洩のリスクがある
テレワークでは、カフェやコワーキングスペースで提供されている無料Wi-Fiに接続することもあるでしょう。しかし、無料Wi-Fiへの接続はセキュリティリスクが高く、情報漏洩などの大きな問題へと発展しかねません。
また、社内情報が入ったPCやスマホの紛失・盗難による情報漏洩のリスクも考えられます。このように、テレワークでは情報漏洩のリスクが課題として挙げられるため、就業規則などの見直しが必要となります。
健康状態・労働環境の管理が難しい
従業員の健康状態や労働環境の管理も労務管理の一環です。しかし、テレワーク中は勤務状況を把握しにくいために、健康状態の変化に気づくのが遅れることがあります。
また、仕事用のイスや机がなく無理な体勢を強いられたり、定期的な換気をしていないなど、労働環境が悪いと従業員の健康に影響が出てしまうでしょう。このように、テレワークではこのような労働環境の管理も会社側だけでは限界があるといえます。
人材育成が難しい
テレワークでは、コミュニケーションをとる機会が減少するため、人材育成が難しい点も課題です。
上司にとっては「きちんと指示が伝わっているか」「業務内容を理解しているか」といった不安があります。一方で、部下にとっては、上司に質問しにくいために「とりあえず他の業務をやろう」「自己流で進めてみよう」などの行動につながりかねません。
このように、テレワーク中は人材育成が難しく、効果的な人材育成方法に悩みを抱える企業も多いようです。
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テレワーク中の労務管理課題の解決策
昨今働き方の多様化やコロナ渦を受けて様々な企業でテレワークが導入されていますが、労務管理においては様々な課題があります。課題を放置しておくと、業務効率の低下や離職率の拡大などのリスクにつながるケースもあるでしょう。
ここからはテレワークにおける労務課題の解決策について紹介していくので、それぞれチェックしてみてください。
テレワーク実施ルールを策定する
始業・終業の報告やテレワークにおける費用負担基準など、テレワーク実施に際してルールを策定しましょう。例としては以下の内容が挙げられます。
- 出退勤時はチャットで報告
- 残業は許可制
- 時間外・休日・深夜労働は原則禁止
- テレワーク時の光熱費・通信費として手当を支給
- ポケットWi-Fiを支給
このように、テレワーク実施におけるルールを策定し、労務管理がしやすい仕組みやテレワークでも従業員が働きやすい環境を構築することが大切です。また、策定したルールは全社的に共有し、テレワークを行う従業員からの理解を得ましょう。
社内システムへのアクセス制限をかける
業務時間外における社内システムへのアクセス制限を設けることで、長時間労働の抑制につながります。また、社外秘の情報は社内回線に接続しているときのみ閲覧できるといったアクセス制限は、セキュリティ対策として効果的です。
このように、社内システムへのアクセス制限は、長時間労働の抑制やセキュリティリスクの軽減といった効果が期待できます。
メール・チャットを活用する
テレワーク中は相手の状況が分からないため、気軽に電話やオンライン会議をすることが困難です。そのため、相手の状況にかかわらずコミュニケーションをとれるメールやチャットを活用しましょう。
たとえば、業務に関する質問がある場合、上司にチャットで質問を送っておけば、上司は時間のあるタイミングで回答することができます。
ほかにも、出退勤・中抜け・休憩時の報告に活用するなど、勤務状況の把握にも役立ちます。また、PCログを活用すれば、いつ誰がどのような作業を行ったのか履歴が残るため、従業員の勤務状況をより正確に把握できるようになるでしょう。
レンタル・サテライトオフィスを導入する
レンタルオフィスやサテライトオフィスを導入することで、労働環境の整備やセキュリティ対策につながります。
1人暮らしで仕事用のスペースを設けることが難しかったり、自宅に家族がいて仕事に集中できなかったりする従業員に、レンタル・サテライトオフィスを提供することで、業務効率の向上も期待できます。
また、個室や自社専用の小さいオフィスを契約すれば、社外の人間と接触する機会も減るため、セキュリティリスクの減少につながるでしょう。
人事評価制度・労災認定基準を明確にする
テレワーク時の人事評価制度や労災認定基準を明確にすることで、適切な評価や労災認定の容易化などの効果が得られます。
人事評価制度の見直しとしては、評価項目の細分化や定期的な個人面談の実施が効果的です。評価項目が細分化されていれば、行動実績といった数値以外の部分での評価も可能となります。
また、定期的に個人面談を実施することで、従業員の積極性やモチベーションを把握できるため、より適正な人事評価ができるでしょう。
労災認定基準を明確化する際は、事務的な基準だけでなく「このような場合は労災として認定する」など、具体例を用いて従業員に説明することが大切です。
セキュリティを強化する
テレワーク時のセキュリティ対策として、情報の取扱方法やアクセス制限の基準などを、就業規則もしくは別途ガイドラインに明記しましょう。また、セキュリティ対策に関する研修をおこなうなど、ルールの明確化や研修の実施などで、セキュリティを強化することが大切です。
また、使用回線の制限やアクセス制限、セキュリティに関する問題発生時の対応の明確化などもセキュリティ強化に役立ちます。
ツールを活用する
テレワーク中の労務管理を適切にしたり効率化する手段として、ツールの活用が挙げられます。具体的には、労務管理システム・勤怠管理システム・コミュニケーションツールなどの活用が効果的です。
たとえば、勤怠管理システムでは、出退勤・中抜け・休憩の入力がボタン一つで完了します。メールやチャットで報告するより楽なため、「報告が面倒で中抜けを申告していない」などの問題防止につながります。
このように、適切な労務管理や管理業務の効率化にはツールの活用がおすすめです。
テレワーク中の労務管理の企業事例
テレワーク中の労務管理の企業事例を2つ紹介します。
株式会社ノハナ
ノハナは、フォトブックアプリを運営する企業です。同社では勤怠管理システムを導入し、勤怠管理・労務管理・給与計算すべてを一元管理し、管理業務の自動化もおこなっています。
勤怠管理システムでは、出退勤以外にも中抜けや休憩などさまざまな打刻が可能なため、テレワークにおいても柔軟な勤怠管理を実現しています。テレワークでも終業時間を正確に把握できることから、テレワークも促進され、働き方の多様化にも柔軟に対応できているそうです。
株式会社KADOKAWA Connected
KADOKAWA Connectedは、KADOKAWAグループへICTサービスの提供をしている企業です。同社ではクラウド型の労務管理システムを導入しました。労務管理を効率化させるために具体的におこなったのは、労務に関する各種手続きの簡略化です。
システムを通じて各種手続きにおける申請・承諾などが可能となり、手続きのために出社が必要といったこともなくなりました。テレワーク中であっても、労務手続きがクラウド上でおこなえるため、テレワークの促進につながったといいます。
テレワーク中の労務管理に関する注意点
テレワークを実施するにあたって、労働時間の管理や就業規則の見直しなど、さまざまな労務管理が発生します。ただ、労務管理は労働基準法に基づいた管理が必要のため、法改正があった際にはその都度対応しなければなりません。
法改正に対応しないまま労務管理をおこなうと、以前まで違法でなかった管理であっても、改正後は違法行為に該当するといったケースもあります。「気づかないうちに違法行為をしていた」という問題の発生防止として、法改正があった場合は、改正にともなう労務管理の見直しを必ずおこないましょう。
労務管理の在り方を理解しテレワークにあわせた見直しを進めよう
テレワーク中の労務管理には、「勤務状況の把握が難しい」「適切な人事評価がしにくい」「コミュニケーションが減少する」など、さまざまな課題が挙げられます。
しかし、正しい解決策を実行すれば、テレワーク中の労務管理における課題も解消できます。したがって、テレワークの導入にともない、労務管理の在り方を見直し、企業側も状況に応じて柔軟に対応していきましょう。
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