労働基準法上の休憩時間のルールについて|定義や3原則などについて解説!

最終更新日時:2024/03/26

労務管理システム

休憩時間の取り方

労働基準法では、6時間を超える労働者に対して休憩時間を与えることが義務付けられています。会社の経営者や労務担当者が休憩時間について曖昧な認識のままでいると、従業員とのトラブルに発展することもあるでしょう。そこで本記事では、労働基準法で定められている休憩時間のルールや労務管理上で起こったトラブルの事例について解説していきます。

八木 香苗

監修者 八木 香苗 ウッドエイト社会保険労務士事務所 代表 公認会計士事務所、税理士事務所での長年にわたる税務・財務戦略支援の経験を活かし、全員経営で利益体質の強い組織作りに力を入れた、経営目標作成支援、風土醸成型就業規則作成、人事制度構築、各種研修、採用定着支援等を行う。 東洋哲学をベースに、長寿企業の暗黙知として承継されるノウハウを体系的に就業規則の形に纏める100年就業規則の作成をライフワークとする。
著書:IPOの労務監査標準手順書(共著)
DVD:世界が驚く!100年企業の人材育成プログラム
公式サイト:ウッドエイト社会保険労務士事務所

労働基準法上の休憩時間とは?

労働基準法上における休憩時間とは、労働者が仕事から完全に解放され、十分に休憩することが保障されている時間のことです。

労働基準法のルールでは、休憩時間について以下のように明記されています。

  • 6時間を超え、8時間以下の場合:少なくとも45分
  • 8時間を超える場合:少なくとも1時間

こうしたルールが定められている理由は、連続した労働により疲労が蓄積し、能率が下がることで労働災害が起こる事態を防止するためです。飲食店や接客業など決まった時間に休憩をとることが難しい業種であっても、同様に休憩を与えなくてはなりません。ただし、農業や畜産などの第一次産業に従事する者や、機密事務取扱者など、労働基準法が適用されない業種もあります。

また、休憩時間中は業務の指示や連絡をしてはいけません。そのため、就業規則などのルールを守っていれば、食事や休息など自由に行動できます。

八木 香苗監修者八木 香苗

「休憩時間」とは、「単に作業に従事していない手待時間は含まず、労働者が労働から離れることを保障されている時間をいう」とされています。現実に作業をしていなくても、使用者からの就労の要求がいつあるか分からない状態で待機している手待時間は、就労しないことが保障されていないため休憩時間ではなく労働時間となります。

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労働基準法上の休憩時間の概要

労働基準法の第34条では、労働者が長時間の労働による疲労やストレスを軽減できるよう、基準が明記されています。従業員の健康と働きやすさを維持するためにも、休憩時間についてのルールを把握しておきましょう。

休憩時間のルール

労働基準法で定められているルールによると、労働時間によって取得すべき休憩時間の最低ラインが異なります。ここでは、労働時間ごとの休憩時間の違いについて見ていきましょう。

[出典:e-Gov 労働基準法 第三十四条]

4時間労働の場合

法律上は6時間以内の勤務時間ですので、企業は休憩時間を与える義務がありません。ただし、予定よりも労働時間が延長され6時間を超える場合、45分の休憩時間を取らせる必要があります。

6時間労働の場合

6時間を超える労働が発生する場合、企業は45分の休憩時間を与える義務があります。残業などにより労働時間が8時間を超える場合は、労働基準法の規定により1時間の休憩時間を設けることが必要です。

11時間労働の場合

8時間を超える労働をする場合、労働時間の増加にかかわらず、1時間の休憩時間を与えなければなりません。ただし、1時間というのは最低基準です。労働災害やミス防止の観点から、仕事内容や労働時間に応じた休憩時間を設けることを検討しましょう。

雇用形態による違い

労働基準法で定められている休憩時間については、正規雇用者とパート・アルバイトなどの非正規雇用者とで違いはありません。どのような雇用形態であっても、同じ規定が適用されます。

雇用形態に関係なく、労働時間に応じた適切な休憩時間をとらせることが必要です。

休憩時間を与えなかった場合のリスク

休憩時間については労働基準法に規定されています。適切な休憩時間を与えなかった場合、法律に違反していることになるため注意が必要です。

労働基準法に違反することによる罰則

違反した場合の罰則は、労働基準法119条1号に明記されています。雇用主が労働時間に応じた休憩を与えなかった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられるでしょう。

また、労働基準監督署からの是正や改善の勧告を受けたり、重大な違反と判断された場合には、行政処分や事業停止になる可能性もあります。そうならないためにも、労働基準法に沿った休憩時間を確保しましょう。

[出典:e-Gov 労働基準法 第百十九条一項]

労働者からの訴え

適切な休憩時間を与えないことで、従業員が疲労の蓄積で体を壊したり、ストレスによる心身の不調を起こすことがあります。これを放置すると、従業員の健康被害はもちろんのこと、労働基準監督署に訴えるといった大きなトラブルに発展することも考えられるでしょう。

労働環境の悪化

休憩時間を与えないことで従業員全体のストレスが蓄積し、労働環境が悪化する恐れがあるでしょう。適切な休憩が行われない職場では、従業員のモチベーションは低下します。その結果、生産性も大きく低下し、企業の業績は悪化することでしょう。

十分な休憩時間を与えることは、従業員だけでなく企業を守ることにつながります。企業は労働基準法を守り、従業員に適切な休憩時間を与えるという強い意識が必要です。

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休憩時間の三原則

休憩時間はただ与えればいいというわけではありません。ここでは、労働基準法上における休憩時間の三原則を紹介します。

途中利用の原則

休憩時間は、原則として労働時間の途中に設けることとされています。

たとえば8時間労働の場合、就業開始から休憩せずに7時間働いて、残りの1時間を休憩にするということは認められません。このようなケースは、労働基準法の規定に反しているということになります。

自由利用の原則

休憩時間は労働者が仕事をしなくても良い時間です。仕事以外のことで自由に過ごしてもらう必要があるので、業務の指示や連絡をしてはいけません。

従業員の休憩時間中に、かかってきた電話や来客の対応をさせた場合、労働から完全に解放されているとはいえないでしょう。そのため、別途休憩時間を設ける必要があります。

八木 香苗監修者八木 香苗

休憩時間の自由利用について、会社施設の管理上の必要な規制や一定の行為を禁止することは、休憩時間本来の目的を損わない限度内で認められると考えられます。行政通達でも「休憩時間の自由利用について事業場の規律保持の必要上必要な規制を加えることは、休憩の目的を損わない限り差し支えない。」としています。

一斉付与の原則

労働基準法では、休憩時間を全員一斉に与えるのが原則です。これを「一斉付与の原則」と言います。しかし、業種によっては一斉に休憩をとるのが難しい場合があり、一斉付与の原則には例外も設けられています。

一斉付与が排除されている業種

運輸業や交通業、商業、金融、広告業、保健衛生業、接客業などは、一斉付与の規定が適用されない業種です。そのため、規定を守らなかったとしても法律違反とはなりません。

労使協定を締結している場合

労使協定を締結し、労働者も合意の上で基準を決めておくと、特定の業種以外でも原則を守る必要がなくなります。原則を守るのが難しい場合は、例外の適用も検討しましょう。

八木 香苗監修者八木 香苗

休憩時間の一斉付与が適用されない業種で、休憩時間を一斉に付与しない場合でも、休憩時間に関する事項は就業規則の必要的記載事項のため、休憩時間の交替制の仕組みなど、休憩時間の与え方について就業規則に具体的に定めておく必要があります。

休憩時間は分割することは可能?

労働基準法第34条の規定にある「必要最低限の休憩時間」、労働基準法上の「休憩時間の三原則」を守っていれば分割して取得させることができます。

たとえば8時間労働の場合は、1時間の休憩を15分×4回に分けても違法にはなりません。ただし、分割したことによって適切な休憩時間よりも短くならないよう注意が必要です。

休憩時間が分割されすぎて細切れになる場合

休憩時間を分割すること自体は問題ありません。ただし、休憩時間を細かく分割しすぎて極端に短くなってしまうと、違法と判断されるケースもあります。

これは、1回の休憩時間が短すぎて食事や休息の時間が確保できないためです。休憩時間を分割することで、ただちに違法となることはありませんが、最低限の休息がとれるよう配慮しましょう。

会社都合で休憩を中断させる場合

休憩時間は、仕事から離れて休息する大事な時間です。万が一緊急の仕事が発生したとしても、会社の都合で休憩を中断することは極力避けましょう。

休憩時間を分割している場合、1回の休憩が短くなるため、仕事を頼まれてしまうとほとんど休めません。どうしても人手が必要で休憩時間に仕事をお願いする場合は、改めて休憩を与えるようにしてください。

労働者に休憩時間の分割を知らせていないケース

休憩時間は従業員にとって重要な労働条件のひとつです。そのため、休憩時間の分割についても、雇用時に労働条件として明確に説明する必要があります。従業員に説明しないで休憩時間を分割すると、違法とみなされる場合がありますので注意してください。

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休憩時間に関する労務管理上のトラブル事例

休憩時間の取得に関して起こりうるトラブルを紹介します。

昼休みを返上しての就労

昼休みの一部、またはすべての時間を仕事に使うケースは見聞きしたことがある方も多いでしょう。しかし、その状態が当たり前となり、会社が黙認しているのだとしたら問題です。このような場合、会社が指示して働かせているとみなされる可能性があります。

休憩時間に仕事をするのは禁止であるということを従業員に周知徹底するのはもちろん、昼休みに働いている従業員がいないかについても注意して見ておきましょう。

休憩を返上しての早期帰宅の申し出

1日8時間労働の人が休憩時間を取らずに仕事をし、休憩の代わりに1時間早く退社を希望するケースがあります。この場合、最後に休憩を持ってきているだけのように見えるでしょう。

しかし、労働基準法では労働時間の途中に休憩を与えるのが決まりです。そのため、休憩を返上しての早期帰宅の申し出受理は労働基準法に違反していることになります。

ランチミーティング

定期的なランチミーティングは休憩時間ではなく、企業が従業員を拘束しているとみなされる可能性があります。メンバーと一緒にランチをとりながらミーティングすることは、率直な意見が出たり親密度が深まったりする点がメリットです。

しかし、強制的に参加しなくてはならない場合や業務に関連した話をする場合は、休憩時間を与えていないと判断されます。どうしてもランチミーティングを行う必要がある場合は、別途休憩時間を設けるか、自由参加制にしてください。

残業中の休憩

労働基準法第34条では、残業して8時間を超える労働になったとしても、休憩時間は1時間与えれば良いことになっています。しかし、長時間の残業が長く続きそうな場合は、労働者の心身や仕事内容に影響が出ないように別途休憩を与える必要があります。

残業が発生したときの休憩のとり方については、あらかじめ就業規則で定めておきましょう。

八木 香苗監修者八木 香苗

休憩時間に関する労務管理上のトラブルというのは、未払賃金、休暇等に次いで多いといえます。経営者からすると「たったそのぐらいのこと」と感じるかもしれませんが、従業員の立場からすると「重大な問題」であることも多いのです。休憩時間に関する法的な理解をすることで、トラブル回避につながります。

休憩時間の管理には労務管理システムを導入がおすすめ

労務管理に特化したシステムを導入すると、既存の作業負担が大きく軽減されます。労務管理システムは出勤や退勤時の打刻、シフトの管理、各休暇の申請など、多岐にわたる業務を自動化できるものです。

生体認証やGPS認証による打刻に対応しているシステムもあり、不正やミスを防ぐことが可能です。労務管理システムを導入することで、労務に関する多くの作業を効率化し、負担を軽減できるでしょう。

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労働基準法上の休憩時間の取り扱いを押さえておこう

労働基準法上では、労働時間が6時間を超える場合には45分、8時間を超える場合は1時間の休憩時間を設けなくてはなりません。また、時間だけでなく休憩をとるタイミングや方法についても注意が必要です。

従業員とのトラブルを避けるためにも、適切な休憩時間について理解しておく必要があります。労務管理でお困りの方は、業務を効率化させるシステムなどの導入を検討してみましょう。

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