経営リスクとは?種類やリスク対策に向けた管理体制構築のポイント
企業を経営する上で起こり得る「経営リスク」。どの業界にもさまざまな経営リスクが存在しますが、経営者・経営層には常に正しいリスクの把握が求められています。そこで本記事では、経営リスクとは何かをはじめ、リスク対策に向けた管理体制構築のポイントを詳しく解説します。
目次
経営リスクとは?
経営リスクとは、企業の経営活動において生じる損失の可能性を指す言葉です。これには、リスク発生時に受ける影響も含まれます。
経営リスクの要因は、事業体制の不備や外部環境の変化、市場の動向の変化など多岐にわたります。
会社を経営している以上、経営リスクを避けることはできません。そのため、どのようなリスクが起こり得るかを認識し、適切な対策や予防策を講じることが重要です。
万が一リスクが発生した場合、企業の収益性や存続に大きな影響を及ぼす可能性があるでしょう。そのため、経営者や関連ステークホルダーは、常にリスクを意識しながら戦略的な判断を下す必要があります。経営リスクの管理は、企業の持続的な成長や安定した運営を目指す上での核心的な要素と言えるでしょう。
経営リスクの種類とは?
経営リスクは、大きく分けて純粋リスクと投機的リスクの二つに分類されます。ここでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
1. 純粋リスク
純粋リスクとは、損失のみを発生させるリスクのことをいいます。具体的には、自然災害や事故、情報の不正な流出など、予期しない出来事が原因となるリスクです。これらは事前に完全に予測したり防止することが困難であり、適切に管理してリスクを最小化するための方策を講じる必要があります。
純粋リスクは、さらに以下の4つに分類できます。
- 財務リスク
- 事故・災害リスク
- 情報漏洩リスク
- コンプライアンスに関するリスク
それぞれのリスクについて、詳しく見ていきましょう。
財務リスク
財務リスクは、企業の資金繰りや与信などの財務活動に関連するリスクを指します。主な要因としては、金利の変動や為替レートの変化、取引先の倒産などが考えられます。たとえば、借入金の金利が急激に上昇すると、利息負担が増加し企業の収益性に影響を与える可能性もあるでしょう。
また、国際的な事業を展開している企業の場合、為替の変動による損益の影響も財務リスクの一部として考慮されます。企業は、これらのリスクを最小化するための適切な資本政策を採用する必要があります。
事故・災害リスク
事故・災害リスクは、台風や地震などの自然災害や事故、設備の故障などの突発的な出来事により生じるリスクを指します。また、企業にとっては従業員の労働災害も大きなリスクです。これらのリスクは、企業の物的資産の損失や生産活動の中断、社員の安全への影響など、幅広い影響をもたらす可能性があります。
とくに、自然災害は正確に予測することが難しいため、事前の危機管理計画や適切な保険加入が不可欠です。また、事故や設備の故障に関しては、定期的な点検やメンテナンス、従業員の教育や職場環境の配慮などの対策を通じて、リスクの発生確率や影響を低減する努力が求められます。
情報漏洩リスク
情報漏洩リスクは、企業が管理する機密情報や、顧客データが不正に外部に流出することなどが挙げられます。サイバーセキュリティの脆弱性、従業員のミス、第三者による攻撃などが主な原因となるでしょう。とくに、データの不正な取得や改ざん・削除が発覚した場合、企業の業績やブランドの信頼性に甚大な損害をもたらす可能性があります。
現代のデジタル社会では、情報漏洩は企業の経営にとって重大な課題となっています。そのため、高度なセキュリティ対策の導入や従業員の継続的な教育、定期的なセキュリティチェックなど、多岐にわたる予防策の実施が求められるでしょう。
コンプライアンスに関するリスク
コンプライアンスに関するリスクは、企業が関連する法規制や業界の規範、社内規則を遵守しないことから生じるリスクを指します。遵守を怠ると、罰金や業務停止命令などの制裁を受ける可能性があり、企業の信用や評価を損なう恐れもあるでしょう。
コンプライアンス違反の例として、環境法やデータ保護法、労働法の違反が挙げられます。このリスクは、組織の文化や経営陣の姿勢、従業員の行動に深く関連しています。そのため、定期的な教育や監査、明確なガイドラインの策定などを行うことが重要です。適切なコンプライアンスの取り組みを怠ると、企業の持続可能性にも影響を及ぼすことがあります。
2. 投機的リスク
投機的リスクとは、経済状況や政治などの変化によって起こるリスクのことをいいます。投機的リスクは純粋リスクとは異なり、損失だけでなく利益を生む可能性もあるのが特徴です。
ここからは、投機的リスクのひとつである「経営戦略に関するリスク」について解説します。
経営戦略に関するリスク
経営戦略に関するリスクは、企業の中長期的な方針や目標を達成するための戦略が期待通りの成果を上げないことに起因するリスクを指します。例えば、新しい市場進出の策略、製品開発の方針、競争戦略などが該当します。これらは市場の変動や技術の革新、消費者ニーズの変化などが原因となることが多いです。
経営戦略は、経営の核心に関わるものであり、影響が組織全体に及ぶことがあります。そのため、戦略の策定時にはリスク管理や継続的な市場調査、そして柔軟な戦略修正が不可欠になります。
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経営リスク対策に向けた管理体制構築のポイント
経営リスクに対する対策は、企業の持続可能性と成長に直結します。そのため、リスクを管理する体制を整えることが大切です。ここでは、経営リスクの対策に向けた管理体制を構築するためのポイントを紹介します。
リスクマネジメント推進チームを発足する
経営リスク対策の核心として、リスクマネジメント推進チームの設立は欠かせません。このチームは、企業のさまざまなリスク要因を洗い出し、それに対する戦略的な対策を策定します。主な役割としては、リスクの特定や評価、対応策の立案と実行を担当します。また、社員への教育を実施しリスク意識の醸成と共有を図り、継続的なリスク監視を行い、適時対応策を見直していくことも重要です。
リスクマネジメントを効果的に行うには、経営のトップ層が積極的に関与することが求められます。経営層の強いリーダーシップのもと、異なる部門や職種から選ばれたメンバーで構成されることが理想的です。多様な視点と専門知識を持ったチームが、組織全体のリスクを最小化し、企業の持続的な成長をサポートするでしょう。
組織の現状を把握しリスクを洗い出す
経営リスク対策の基本は、まず組織の現状を正確に把握し、考えられるリスクを洗い出すことです。この作業は、アンケートなどを通じて組織内の業務フローや情報流通、人間関係、業務に関わる外部環境などの幅広い要素を詳細に調査することを含みます。現状の明確な理解を持たなければ、リスクの原因や影響を正確に判断することはできません。
次に、洗い出されたデータを元にリスク要因を特定します。これには、事業戦略や業務プロセス、技術的側面など多岐にわたる情報の分析が必要です。とくに、突発的な事象だけでなく、長期的な視点でのリスクも考慮に入れる必要があります。
最後に、これらのリスク要因を評価し、優先度を付けます。優先度の高いリスクから順に対策を考えていくことで、効果的なリスク管理が可能となるでしょう。
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業務マニュアル・危機管理マニュアルを作成する
次に、業務マニュアルおよび危機管理マニュアルの作成を行います。
業務マニュアルは、日常の業務手続きや流れを体系的にまとめ、社員が業務を正確かつ効率的に行うための指南書となります。これにより、新入社員の教育や業務の引き継ぎがスムーズになるだけでなく、誤解やミスを減少させることも可能です。
一方、危機管理マニュアルは、予期せぬ事態や緊急事態が発生した際の対応策を明文化するものです。これには、危機の種類や段階に応じた対応フロー、責任者の指名、外部とのコミュニケーション方法などを詳細に記載する必要があります。
これらのマニュアルは、組織の知識として蓄積し、継続的な見直しを行うことで、時代や状況の変化に柔軟に対応することが可能となります。
情報セキュリティに関する方針を定める
情報は企業にとっての貴重な資産の一つであり、適切な管理と保護を行うことが極めて重要です。情報セキュリティに関する方針は、企業の情報資産を適切に保護するための基本的なスタンスや取り組みを明示するものです。
方針を定める際には、まず情報資産のカテゴリーや重要性を明確にし、それぞれの資産に対する脅威やリスクを洗い出します。次に、それらのリスクを緩和するための具体的な対策や手段を検討し、それを元に方針を策定します。
方針には、アクセス権の管理や物理的・技術的なセキュリティ対策、緊急時の対応手順、定期的なセキュリティ監査や教育の実施など、幅広い項目を取り入れることが望ましいです。
情報セキュリティに関する方針は、組織全体での共通の認識や行動基準を作るためのものであり、定期的な見直しとアップデートを行うことで、変化する環境に柔軟に対応できます。
社員の勤務状況・健康状態を管理する
社員の勤務状況や健康状態の管理は、企業の持続的な成長と経営の安定性を確保するための不可欠な要素です。適切な環境で労働を行うことで、生産性が向上し、長期的なビジネスの継続性も確保されます。
勤務状況の管理は、労働時間の監視、休憩時間の取得状況、過労の有無などを中心に行います。これにより、適切な労働環境を維持し、社員の過労を防ぐための対策を講じることが可能です。
一方、健康状態の管理は、定期的な健康診断の実施や、メンタルヘルスに関する支援体制の構築などが含まれます。また、健康に関するセミナーや研修を実施し、社員自身が自らの健康状態を意識する機会を増やすことも重要です。
これらの管理を通じて、社員の満足度やモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させることを目指しましょう。
社員に対してリスクに関する教育を継続的に行う
企業の経営リスクを最小化するためには、社員一人ひとりがリスク意識を持ち、日常の業務の中で予防的な行動を取ることが求められます。そのため、社員に対してリスクに関する教育を継続的に行うことが極めて重要です。
リスクに関する教育を行う際は、危機が起こったときにどう対処すべきか実践的な訓練を行う「シミュレーショントレーニング」や、報道陣などへの対応力を身に付ける「メディアトレーニング」を実施するとよいでしょう。
また、教育は一度きりのものではなく、継続的に行うことで新しいリスクや最新の情報を社員に伝え、意識を常に高いレベルに保つ必要があります。これにより、企業全体としてのリスク管理の体制を強化し、安定した経営を実現するための基盤を築くことができます。
定期的に見直しをする
経営の現場は常に変動しており、その環境の中でリスクも絶えず変化しています。このような状況の中で、一度設定したリスク対策や管理体制が過去のものとしてそのままにされてしまうと、新たなリスクに対応できなくなる恐れがあります。そのため、リスク管理のプロセスや方針を定期的に見直すことが大切です。
見直しの際には、過去に設定したリスクの評価基準や対策の有効性、外部環境の変化、業務プロセスの変動などを詳細に検討します。これにより、現在の経営環境や業務状況に適したリスク管理の方針や、手法を再設定することができます。
また、定期的な見直しを行うことで、組織全体のリスク意識を常に高め、リスク管理の文化を浸透させる効果も期待できるでしょう。
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経営リスクを把握し対策に向けて管理体制を構築しよう
経営リスクは、企業の存続に大きな影響を与えます。起こりうるリスクを把握し対策を講じることは、組織の持続可能性と成長を支えるために不可欠です。
経営リスクは経営環境や社会情勢によって変化するため、これまでにはなかったリスクが顕在化することも考えられます。リスクに応じた適切な対策がとれるよう、日ごろからリスクマネジメントを実施して万が一に備えておきましょう。
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