目標管理制度(MBO)とは?メリット・デメリットや実施手順、OKRとの違いをわかりやすく解説

最終更新日時:2024/03/11

人事評価システム

目標管理制度とは

ピーター・ドラッカーによって提唱された、「目標管理制度」。多様化する現代社会では時代遅れともいわれていますが、実際にはどのようなメリットがあるのでしょうか。本記事では、目標管理制度とは何かを、メリット・デメリットや目標と成果の管理(OKR)との違いなどと併せて解説します。

この記事の要約

・目標管理制度(MBO)とは、会社の指針と社員が目指す方向をすり合わせた上で目標を設定し、達成するまで管理する手法
・目標管理制度(MBO)には、「課題達成型」「人事評価型」「組織活性型」の3種類
・目標管理制度(MBO)とOKRでは、目標を見直す頻度や達成基準、目標の共有範囲などに違いがある

目標管理制度(MBO)とは?

目標管理制度(MBO)とは、会社の方針と社員の目指す方向を擦り合わせて目標を設定し、その目標を達成するまでを管理する手法のことです。目標達成までの道のりやアクションを社員が主体的に考える点にこの制度の特徴があります。

目標管理制度には、課題達成型・人事評価型・組織活性型の3つのタイプがあるため、ここではそれぞれを詳しく見ていきましょう。

課題達成型

課題達成型の目標管理制度は、トップダウン方式を原則としています。つまり、企業としての目標達成を第一とし、そのために必要なことを個人の目標として設定するということです。

たとえば、全社での年間売り上げ目標を部署別に分け、さらにチームと個人といったレベルに落とし込んでいくと考えるとイメージしやすいでしょう。この方式は、企業としての目標達成を一貫して目指すことができる一方で、ノルマにばかり目が行ってしまうと社員のモチベーション低下を招きます。目標の達成・未達成に着目するだけでなく、プロセスも適正に評価する必要があるでしょう。

人事評価型

人事評価型の目標管理制度では、社員の目標達成の度合いと業務内容の評価を併せて行い、個人の能力の向上を目指します。

この方式では、目標の設定を社員本人が行うことにより、企業へのエンゲージメントを高めることができます。トップダウンで目標が課されるわけではないため、モチベーション維持も可能です。適切な人事評価を行い、待遇面に具体的に反映していくことで、企業が求める人材となるよう育成することができるでしょう。

組織活性型

組織活性型の目標管理制度では、社員一人ひとりに目標を設定させ、自主性を引き出します。日本ではこのタイプの目標管理制度がオーソドックスだといえるでしょう。

社員の意思を尊重し、反映させていくことで、チームや組織の活性化を促します。社員は自分の考えや思いを汲み取ってもらった結果としてエンゲージメントが高まり、組織全体の一体感も向上するでしょう。

目標管理制度(MBO)とOKRの違いとは?

目標管理制度(MBO)と目標と成果の管理(OKR)は、共に組織の目標達成を支援するフレームワークですが、目標設定や運用の方法に大きな違いがあります。ここでは、2つの違いについて詳しく見ていきましょう。

目標を見直す頻度

目標管理制度(MBO)では年に一度、もしくは半年ごとに目標を見直して再設定し、それに基づいて業務を進めますが、目標と成果の管理(OKR)は四半期ごとか、組織によってはそれよりも短期間で目標を見直します。

目標と成果の管理(OKR)の短いスパンでの目標の見直しは、変化に対する柔軟性を持たせ、常に最適な目標を見据えて業務を行うことを可能にします。市場や環境の変化に対応できるよう、より迅速に目標や軌道を修正できるのです。

一方の目標管理制度(MBO)には人事評価の側面もあり、ノルマをどの程度達成できたかも評価基準の1つです。見直しの頻度があまりに多いと適切な評価が困難になるため、ある程度長いスパンで見直す必要があります。

目標達成の基準

目標管理制度(MBO)では、個々の目標達成度を評価の基準とし、これに基づいて個人の成績や昇進を決定するため、基本的には100%の達成を目指します。一方、目標と成果の管理(OKR)では、チャレンジングな目標が良しとされ、完全達成は必ずしも期待されていません。

仮に目標を100%達成した場合には、目標自体の設定が低かったと見なされます。期待される目標達成度は60~70%であることが多いでしょう。高すぎるくらいの目標を設定することで、社員のモチベーションアップやチャレンジ精神を養う目的もあるのです。

目標の共有範囲

目標管理制度(MBO)では、目標は設定した社員本人と上司のみで共有されます。目標管理制度(MBO)では目標達成度が人事評価にも反映されるため、上司が直接評価したほうが合理的なためです。

一方の目標と成果の管理(OKR)では、目標は組織全体に公開されます。これは、目標と成果の管理(OKR)が、組織全体の目標に対して個々の社員がどのように貢献できたかを評価するフレームワークであるためです。

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目標管理制度(MBO)はもう古い?廃止すべきといわれる理由

目標管理制度(MBO)は廃止すべきといわれる理由としては、以下の2つが挙げられます。

  • 組織と個人の目標が一致しなくなっている
  • 目標が企業の押し付けになっている

目標管理制度(MBO)が提唱されたのは1950年代であり、その当時と現代では市場の状況だけでなく、企業経営や仕事に対する考え方も大きく異なります。特に、キャリアやワークライフバランスについての考え方など、同じ企業に在籍していても多様な価値観を持つ社員がいることがわかるでしょう。こういった事情から、組織の目標と個人の目標が一致しなくなっているのです。

また、目標管理制度(MBO)を運用していくうちに、社員が自発的に決めるべき目標を企業が押し付ける形になってしまいました。以前のように終身雇用が前提であれば、企業の目標達成に対して社員が努力するという形式が成り立ちましたが、現在は人材や雇用が流動化しています。そのため、企業の目標を一方的に押し付けるわけにはいかず、社員個人のライフプランなども尊重する必要があるのです。

目標管理制度(MBO)のメリット

古いといわれている目標管理制度(MBO)ですが、明確な目標設定を通じて社員のモチベーションと組織全体の成果を向上させるのに効果的な手法であることは確かです。ここでは具体的なメリットを4つ見ていきましょう。

社員の主体性が向上する

目標管理制度(MBO)では、社員が自分自身の目標を設定し、それを達成するためのプランを考えるプロセスを通じて、主体性を育むことができます。

また、企業の目標に対して自分がどのように貢献できるかを模索することで、組織の一員としての自覚も強まるでしょう。目標に対して行動していく中で、自らの仕事に対する責任感や熱意を持つことも期待できます。主体性を持った社員が育つことは、組織を活性化することにつながるのです。

社員の自己管理能力が向上する

目標管理制度(MBO)は、個々の社員が自らの目標達成に向けて進捗を自己管理する機会にもなります。具体的には、時間管理や優先順位付け、モチベーションの維持など、効率的な業務遂行に必要なスキルを養うことができるでしょう。

自律的に行動した結果や成果を上司と振り返ることで、さらなる成長が見込めることは大きなメリットです。

人事評価制度の透明性を保てる

目標管理制度(MBO)では、個人の業務目標が明確に設定されるため、達成度に基づいた明瞭な人事評価を行うことができます。評価プロセスが透明であることは、評価される側の社員にとって重要です。評価の基準が明確かつ公平であれば、社員も納得するでしょう。

また、目標達成に向けた具体的なフィードバックを行うことで、個人の成長やスキル向上を促すことにもつながります。

統一性のある組織運営ができる

目標管理制度(MBO)では、企業としての目標を基に、チームや個人の目標が設定されます。そのため、統一性を持って組織を運営することができ、異なる部署やチーム間でも、共通の最終目的に向かって努力をすることができるのです。

目標管理制度(MBO)のデメリット

複数のメリットがある一方、目標管理制度(MBO)は柔軟性に欠け、一部の職種や状況では適用が難しい場合があります。ここでは3つのデメリットを見てみましょう。

職種によっては目標設定がしにくいケースがある

目標管理制度(MBO)では、目標として具体的な成果を設定するため、創造性の高い分野や研究開発といった成果が目に見えにくい職種には向かないといえます。このような職種では、数値などの明確な目標を設定することが困難なため、成果に対する評価が主観的になるリスクがあるのです。

また、革新的なアイデアの創造や長期的な研究成果を目標とする場合、短期間での成果主義とは相性が悪く、目標管理制度(MBO)が適用されることで、かえって業務を停滞させる恐れがあります。

モチベーションが低下する可能性がある

目標管理制度(MBO)では、設定された目標の達成が主な評価基準となります。そのため、目標が高すぎて達成が困難な場合や、反対に低すぎて容易すぎる場合には十分なモチベーションを保てない可能性があるでしょう。

また、個々の目標達成に重点を置くあまり、チームワークや組織全体の目標達成がおろそかになることもあり、こちらも個人やチームのモチベーション低下の原因になり得ます。

管理職の負担が増加するリスクがある

目標管理制度(MBO)を効果的に運用するためには、徹底した目標設定や進捗管理、評価が必要です。このプロセスには時間と労力が必要なため、管理職の負担が大きくなるリスクがあります。

特に、目標設定の精度や進捗の評価は主観的になりがちなため、公平性を保つために、特段の注意を払う必要があるでしょう。過度な負担がかかれば、管理職のモチベーション低下や業務の効率性低下にもつながりかねません。

目標管理制度(MBO)の実施手順・流れ

目標管理制度(MBO)は、目標の設定から評価まで、明確な手順に従って実施されます。ここでは具体的な手順を見ていきましょう。

目標を設定する

目標管理制度(MBO)の最初の手順は目標を設定することです。目標管理制度(MBO)は企業の目標を達成するための手法であるため、ここで設定する目標は組織全体に及ぶものでなければなりません。

まずは経営層で企業理念や利益に沿った目標を決め、現場の管理職に共有します。その後、現場の管理職が部下一人ひとりとコミュニケーションを取って個人の目標を決めます。この際、個人の目標が企業の目標とズレないよう注意しましょう。

目標達成までの手段・計画を定める

目標を設定したあとは、その目標を達成するための手段や計画を策定します。この段階では、具体的な行動計画を立て、必要なリソース、期限、求められる成果を明確にします。

無理なく実行できる計画を定めたら、想定外の事態が起こることも想定し、異なるプランも練っておくと安心でしょう。計画については定めた本人と上司で確認し、具体性や達成難易度などのすり合わせを行います。目標管理にExcelやスプレッドシートなどのツールを使うかどうかも、この段階で決定しておきましょう。

計画を実行する

この段階では、策定された行動計画に従って具体的な業務を行います。目標管理シートを活用して期日と照らし合わせながら進捗状況を確認するとよいでしょう。

計画通りに進まない場合や課題が発生した場合は上司に相談して計画の修正を行います。また、計画に遅れが出ている社員がいたら部署やチーム内で手助けするなど、助け合って目標を達成する風土を醸成することも大切です。

上司としては、定期的に面談の機会を設けることで、部下の状況を把握し、目標達成まで適切に導くことができるでしょう。

評価・振り返りをする

目標管理制度の最終段階は、目標を達成できたか振り返ることです。この評価プロセスでは、最初に設定した目標に対する達成度合いを確認し、達成できていなかった場合には原因分析を行います。その際、本人による自己評価と上司による客観的なフィードバックを擦り合わせることで、自他の認識のズレを改善するようにしましょう。

この段階で成功した点と改善が必要な点を明らかにすることで、次回の目標設定プロセスに活かすことができるのです。

目標管理制度を取り入れ、組織の成長を実現しよう

目標管理制度(MBO)を取り入れることで、組織全体から一人ひとりの社員までが共通の目標に向かって一丸となることができます。この制度は、目標の明確化・計画の策定・実行・評価という一連の流れを通じて、社員の主体性と自己管理能力を育み、組織の透明性と統一性を高めます。

目標管理制度(MBO)は、組織としての成長だけでなく、社員一人ひとりの成長にも役立つ、価値のある取り組みなのです。

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