人事評価の項目とサンプル|種類や作るポイント・事例を解説

最終更新日時:2024/04/02

人事評価システム

人事評価の項目

人事評価は従業員の処遇に影響するため、慎重かつ適切に行う必要があります。それでは、従業員を公平に評価するためには、どのような人事評価項目を設定すればよいのでしょうか。本記事では、人事評価の項目とサンプルを紹介し、評価項目の種類や設定のポイントを解説します。

人事評価制度とは?

人事評価制度とは、従業員の能力や業績を評価し、その結果を根拠に給与などの処遇を決める制度の総称です。人事評価制度には、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つの機能があります。

等級制度

等級制度とは、あらかじめ設定した基準に基づいて従業員をランク分けする制度です。等級を決める基準としては役割・職務・成果・能力などが用いられますが、内容は企業によって大きく異なります。

等級制度は従業員にとってわかりやすい基準であるため、個々の従業員がキャリアパスを描く際に参考にできるというメリットもあります。

評価制度

評価制度とは、従業員の貢献度を評価する制度です。企業が従業員に求める行動や成果などを段階別に評価基準に盛り込むことで、従業員は「何を」「どのくらいやれば評価されるのか」がわかります。

企業側の期待に沿った行動や成果を適切に評価することで、従業員のモチベーション維持と企業の継続的な成長を両立できるでしょう。

報酬制度

報酬制度とは、等級制度・評価制度に基づき、従業員に支払う報酬を決定するための制度です。

どんなに等級や評価が高くても、報酬に反映されなければ従業員は不満を抱いてしまうでしょう。等級・評価を報酬制度と適切に連動させることで、評価と報酬の間に透明性と一貫性が生まれます。

適切な報酬制度を整えることは、従業員からの信頼やエンゲージメント、モチベーションの向上などに直接的に影響するため重要です。

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人事評価の目的

ここからは人事評価における4つの目的を解説します。

企業理念や行動指針を意識付けるため

人事評価は、企業理念や行動指針を意識付け、具体的な行動を促すことを目的としています。人事評価の項目に理念や指針が盛り込まれていれば、従業員の意識や行動が自然とそれに沿ったものになっていくでしょう。

理念や指針に沿った行動を適切に評価する制度を構築できれば、企業と従業員双方の成長や目標達成を叶えることができます。

従業員の処遇の公平性を保つため

従業員の処遇に対する公平性を保つことも、人事評価の目的です。評価基準が不透明であったり、評価者のさじ加減で評価が決まったりする状況では、「頑張っても正当に評価してもらえない」と従業員が不満を抱きやすくなります。

従業員のエンゲージメントやモチベーションを高めるためには、評価者の私情や意思とは関係なく、「やるべきことをやればしっかり評価してもらえる」と従業員が思える環境を作ることが重要です。

人材を育成するため

人事評価の目的には、人材育成も含まれています。

評価制度が明確であれば、従業員一人ひとりが自分の職務やポジションに求められるスキルや能力を理解できます。それは同時に、不足している部分を自覚することや、何に対して努力すべきかが明確になることを意味します。

このように、評価制度は従業員一人ひとりが成長するための具体的な指針にもなり得るのです。

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人員配置の根拠にするため

人事評価の結果は、人員配置の根拠としても活用されます。評価制度を運用することで、従業員一人ひとりの能力や特性を客観的に把握できるためです。

従業員本人にも配置転換の根拠を明確に示せるうえ、特性に応じて人員を配置することで、やりがい・生産性・パフォーマンスなどの向上が見込めるでしょう。

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人事評価の種類|基本3項目について

人事評価には「業績評価」「能力評価」「情意評価」の3種類があり、これらはまとめて「基本3項目」と呼ばれています。

業績評価

業績評価とは、評価期間内における業務成績や目標達成度を基準とした評価項目で、以下のようなものが該当します。

  • 売上目標に対する達成率
  • 目標に対する受注件数
  • 企画やプロジェクトの進捗や成果

評価方法は企業によって異なりますが、「達成か未達か」の2択ではなく、達成率や行動プロセスも評価に加えるのが一般的です。

業績評価には具体的な数字などを用いて、誰から見ても明らかな客観的評価を行うことが理想です。ただし、バックヤード職のように数値目標を設定しづらいポジションもあるため、職種・職務に応じて評価項目を工夫する必要があります。

能力評価

能力評価とは、業務遂行に必要な能力・スキル・知識などを基準とした評価項目で、以下のようなものが該当します。

  • 特定の技能やスキル
  • リーダーシップ
  • リスク管理能力
  • 実行力

業績評価が数値目標や客観的指標によって明確に評価するのに対し、能力評価は数値として表しにくい業務遂行能力や関連スキルなど、成果を上げるためのベース部分の評価が中心となります。

また、求められる能力は部署や職務、役職などによって大きく異なるため、それぞれに適した項目を設定することが重要です。

情意評価

情意評価とは、勤務態度や取り組み姿勢などを基準とした評価項目で、以下のようなものが該当します。

  • 積極性
  • 協調性
  • 責任感
  • 学習意欲

情意評価は基本3項目の中でも特に主観に左右されやすいため、自社が求める業務への態度や姿勢を具体的に盛り込むのが一般的です。

情意評価は業績評価・能力評価とは切り離して行うべきであり、評価基準が評価者によってぶれないよう注意や工夫が必要です。

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人事評価項目を作るポイント

ここでは、人事評価項目を作る際のポイントを2点解説します。

企業理念・行動指針を反映する

人事評価には、企業理念や行動指針を反映させましょう。人事評価の項目によって、従業員の意識や行動が促されるためです。

企業理念や行動指針が適切に反映されていれば、各従業員が評価項目を達成することによって、自社が求める人材の育成や経営課題の解決などが実現します。

部署・職種に合わせて評価項目を調整する

人事評価項目は、部署や職種に合わせて調整することが重要です。求められるスキルや行動が部署や職種によって大きく異なるためです。

たとえば、営業職には交渉力や数字の達成が求められますが、事務職には正確に業務を遂行することやコスト意識が求められます。部署や職種を細分化し、それぞれの役割に応じた目指すべき姿や果たすべき役割を評価項目に盛り込みましょう。

【職種別】人事評価項目のサンプル

ここでは、人事評価の基準と項目を職種別に紹介します。なお、情意評価は企業が求める人物像のため、職種に関係なく統一しています。

営業職の評価項目サンプル

営業職は結果を数字で測ることができるため、業績評価として売り上げ目標を設定しています。能力評価には売上目標を達成するために必要な要素を、情意評価には営業職として、また自社の社員として求められる素養を含めるようにするとよいでしょう。

評価基準評価項目
業績評価
  • 売上目標の達成度
  • 目標を達成するために設定した課題の達成度
能力評価
  • 独自で業務を遂行する実行力
  • 目標に合わせたスケジュール管理能力
  • 契約締結につながる交渉力・提案力
情意評価
  • 最後まで諦めずに業務に取り組む責任感
  • 周囲と協調・協力しあえる協調性
  • ルールを遵守した勤務態度

事務職の評価項目サンプル

事務職の業務は数値化しづらいものが多いため、正確性や業務改善を評価軸としています。ただし、以下のサンプルのようにコスト削減などを解決すべき課題として設定することで、事務職にも数字目標を設定可能です。

評価基準評価項目
業績評価
  • 業務目標の達成度
  • コスト削減目標の達成度
能力評価
  • 業務の正確性
  • 担当業務に必要な専門知識の習得
  • 効率化や時短などの業務改善能力
情意評価
  • 最後まで諦めずに業務に取り組む責任感
  • 周囲と協調・協力しあえる協調性
  • ルールを遵守した勤務態度

技術職の評価項目サンプル

ここでは、プロジェクト形式で業務に取り組む技術職を想定し、技術職の業務遂行において特に重要な項目を能力評価に盛り込んでいます。

評価期間中にプロジェクトが完了しない場合は、途中経過を細分化して評価項目を設けるとよいでしょう。

評価基準評価項目
業績評価
  • プロジェクトの進捗・完了度合い
  • 目標を達成するために設定した課題の達成度
能力評価
  • 納期・期限に合わせたスケジュール管理能力
  • 担当業務に必要な新たな専門知識やスキルの習得
  • 事故を起こさない安全管理能力
情意評価
  • 最後まで諦めずに業務に取り組む責任感
  • 周囲と協調・協力しあえる協調性
  • ルールを遵守した勤務態度

管理職の評価項目サンプル

管理職に対しては、チーム全体の成果や成績を鑑みて評価するのが一般的です。マネジメントに必要な素養やスキルを能力評価に加え、他の社員の規範となることを情意評価に盛り込んでいます。

評価基準評価項目
業績評価
  • チーム全体の目標に対する達成度
  • メンバーの育成目標に対する達成度
能力評価
  • チームを取りまとめるリーダーシップ
  • チームメンバーと全体を管理するスケジュール管理能力
  • 経営方針への理解とチームの理解促進
情意評価
  • 最後まで諦めずに業務に取り組む責任感
  • 周囲と協調・協力し合える協調性
  • ルールを遵守した勤務態度
  • 他の社員の規範となる行動・態度

人事評価制度を改善した企業事例

ここでは、人事評価制度を改善した2つの企業の事例を紹介します。

株式会社メルカリ

株式会社メルカリでは、メンバーの能力や成果にランク付けを行わない「ノーレイティング」と、設定された目標をどの程度達成できたかを評価する「絶対評価」を採用していました。

しかし、組織の拡大に伴い、目立つ成果を出した人が評価され、陰で貢献した人が評価されにくくなったことで、バリューに沿った行動を評価する制度へと刷新しました。

制度の根幹は変えないものの、組織フェーズに沿って理解しやすい内容に変更したことで、評価の精度と従業員の納得度を高めることに成功しています。

[出典:株式会社メルカリ「メンバーの活躍を“大胆に”報いる──大幅アップデートされたメルカリ人事評価制度の内容と意図」]

Adobe株式会社

Adobe株式会社は、数値による評価・ランク付け・文書による提出という従来型の人事評価精度をいち早く廃止した企業の1つです。

同社では、2012年に独自の評価制度「チェックイン(Check-in)」を導入しました。この制度は、従業員と管理職の間で明確な目標を定め、評価期間中も頻繁に対話やフィードバックを行うというものです。

この制度を導入したことで、マネージャーが評価制度に要していた時間を年間8万時間(フルタイム従業員40人分)削減できたとしています。また、従業員の意欲や定着率が高まり、各自でパフォーマンス管理ができるようになったと公表しています。

[出典:アドビ株式会社「#アドビ 調査、従業員の #人事評価 のやり方が時代遅れになっていることを示唆」]

人事評価項目は評価目的にあわせて適切に設定しよう

等級制度・評価制度・報酬制度の3つで構成される人事評価制度。従業員は評価制度を自身の行動指針とするため、評価項目は目的に合わせて適切に設定する必要があります。

納得感の高い制度にするためには、業績・能力・情意の観点からバランスよく評価項目を設定することが重要です。従業員に求める要素は、部署・職能・役職などによって異なるため、それぞれに適した項目を分析・設定していきましょう。

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