RPAとは?意味や導入する手順・メリットをわかりやすく解説!
ビジネスシーンにおいて注目を集めているRPA。導入を検討しているが、具体的な仕組みやメリットがわからない、そもそもRPAとは何かわからない、と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。本記事では、RPAの意味とは何か、導入する際の手順やメリットを詳しく解説します。
目次
RPAの意味とは?
RPAは「Robotic Process Automation」の略で、パソコン上で作業する仕事をロボットで自動化するテクノロジーを指します。
このロボットは、歩いたり手を動かしたりするような物理的なロボットではなく、PCやクラウド上で動くソフトウェアです。
RPAとAIの違い
ロボット、自動化と聞くとAIを連想しがちですが、RPAとAIは違います。
RPAは、パソコン内のアプリや社内ネットワークを横断して業務を自動化できるツールです。一方、AIは「人工知能」といわれるように、コンピュータ上で構築された頭脳を指します。
つまりRPAは「手」、AIは「脳」ということです。
RPAが注目を集める理由
昨今、RPAはビジネスシーンにおいて注目されています。ここからは、RPAが注目を集める理由について解説します。
(1)働き方改革によるニーズの多様化
RPAが注目される理由のひとつが、働き方改革によりニーズが多様化していることです。
今後はさらに就業機会を広げつつ、一人ひとりが意欲を持って能力を存分に発揮できる環境をつくっていかなければなりません。
RPAを活用すると複雑な作業を自動化し、単純業務を効率化できるため、一人あたりの生産性が高まります。RPAは働き方改革に欠かせないツールといえるでしょう。
(2)少子高齢化による人手不足
加速する日本の超高齢化社会による人手不足も、RPAが求められる理由です。今後も日本の総人口は減り続け、2053年には1億人を割るといわれています。
これまで人手で行ってきた作業を自動化できるため、労働人口の不足に悩む日本企業において、RPAの存在感はより増していくでしょう。
RPAの仕組みとは?
RPAの仕組みは記憶と実行によって成り立っています。
業務の内容によって「クラス1」「クラス2」「クラス3」の3つのクラスを選択することが必要です。
クラス1:RPA
RPA(Robotic Process Automation)は定型化された業務のみ自動化できます。日本企業の多くが導入しているRPAはクラス1です。
クラス2:EPA
EPA(Enhanced Process Automation)はAIと連携することにより、定型業務だけでなく、一部の非定型業務も自動化することが可能です。
クラス3:CA
CA(Cognitive Automation)はEPAよりも高度なAIとの連携により、業務プロセスの自動化のみならず、意思決定まで自動化できます。
クラス3ではすでに、学習機能・認知技術・自然言語の解析技術によって情報不足を補いつつ実行可能なRPAが開発されています。
参照元:総務省「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」
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RPAの提供形式
RPAの提供形式は大きく分けて「サーバー型」「デスクトップ型」「クラウド型」の3種類です。それぞれの特徴を解説します。
サーバー型
サーバー型は自社のサーバー内で働くRPAで、統括的に作業を自動化することが可能です。
一度にたくさんのロボットが動くため、複数のシステムや業務を横断して大量のデータを一括管理できるという特徴があります。
また、サーバー内に必要なデータを取りまとめておくことで、デジタルレイバーがルールどおりに働いてくれるため、さまざまな業務を自動化可能です。全社レベルでも使いやすく、大規模での導入に適しているといえるでしょう。
デスクトップ型
デスクトップ型はそれぞれのパソコンでの個別作業を自動化するRPAです。
パソコン1台ごとにデジタルレイバー1台を導入することで、特定のパソコンで行う作業の自動化が可能となります。
担当者レベルでRPAを管理できるため、企業規模にかかわらず導入しやすく、他のパソコンと連携しないため、機密情報を扱っていても情報漏れのリスクを低減できるでしょう。
クラウド型
クラウド型はインターネットを活用することで、Webブラウザなどのクラウドサーバー上で行う作業を自動化できます。
パソコンやサーバーにインストールする必要がないため、インターネット環境があればスムーズに導入できます。
RPAのメリット
RPAを導入すると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。7つのメリットを解説します。
(1 )人件費の削減
RPAで定型業務を自動化することにより、人件費が削減できます。経費の大部分を人件費が占めている企業は多いでしょう。
複数の人が関わっている単純作業をRPAに任せると、25〜50%の人件費が削減できるといわれており、利益率アップにつながります。
(2)ビジネス環境の変化に対応
RPAはビジネス環境の変化への対応に必要なツールです。
ロボットを最大限に活用し、人間しかできない仕事のみ人間がするように変えていかなければ、働き方改革や生産年齢人口の減少による変化の激しい現代で突き抜けていくことはできません。
ロボットができる仕事は任せて、人的リソースを別の仕事に充て、ビジネス環境の変化に柔軟に対応しましょう。
(3)業務効率・生産性がアップ
RPAを導入すると、業務効率・生産性がアップします。
ロボットであるRPAは、24時間365日休むことなくいつでも稼働でき、精度やレジリエンスの高さ、作業継続時間の長さが人間よりも圧倒的に優れています。
既存システムの中断も不要で、ローコード開発ができ、現場社員自ら操作できるなど、さまざまな点から業務効率と生産性アップが期待できるでしょう。あらゆる単純作業をRPAに任せることで、人間はコミュニケーションスキルを要求される仕事や、クリエイティブな仕事などに集中できます。
(4)戦略的業務への集中
RPAを活用することで、人間は戦略的業務に集中できます。戦略的に考え、実行することにおいては人間の方がロボットよりも長けています。
つまり、単純作業やルーチン作業はRPA、戦略的業務は人間と、それぞれ仕事を分けることで、より効率良く仕事を進められるでしょう。
(5)エンゲージメントの向上
RPA導入により、従業員のエンゲージメントを向上させられます。RPAが行うのはテキストのコピー&ペースト、ファイル移動など、人間の判断なしでできる単純作業です。
それらをRPAが代替し、自動化することで、従業員は本来やるべき仕事に注力でき、企業に対するエンゲージメントが上がるため、従業員と企業双方にとってのメリットといえます。
(6)コンプライアンスの改善
RPAはコンプライアンス改善にも貢献します。コンプライアンス違反の原因のほとんどは、人間の手によるものです。
悪意はなくとも、ミスや失敗が結果的にコンプライアンス違反になることもあります。
しかしRPAは人間が介在しないため、さまざまなリスクを回避し、コンプライアンスの改善に役立つのです。
(7)費用対効果がわかりやすく導入しやすい
RPA導入は費用対効果がわかりやすいため、導入しやすいのもメリットです。AIなど他のロボットを導入したとしても、直ちに目に見える効果が出るとは限りません。
それに比べてRPAは費用対効果の良し悪しを判断しやすく、最小限の先行投資で導入できます。また長期的に見ると大幅な投資対効果も期待でき、企業にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みのなかでも、比較的導入しやすいといえるでしょう。
RPAのデメリット
RPAはとても便利なツールですが、メリットばかりではありません。5つのデメリットについて解説します。
(1)導入には費用がかかる
RPAの導入には費用がかかります。
初期費用がデスクトップ型は0〜50万円、サーバー型は10万〜最大数千万円かかる場合もあり、クラウド型は30〜50万円程度です。
初期費用に加えてランニングコストもかかるため、導入を検討する際はまず試算しましょう。
(2)習得が困難である
RPAは習得が困難なところもデメリットのひとつです。
RPAを使いこなすにはまず業務を順序立てて整理し、どこをどう動かすと結果に結びつくのかを理解しなければなりません。
単純作業を最初から最後までRPAに任せるにしても、まずは人間がロボットに指示を出す必要があるため、システムエンジニアの知識や経験がないと、習得に苦労する可能性があります。
(3)誤作動の可能性がある
RPAでも誤作動が発生する可能性はあります。
RPA自体の不具合や、連携している周辺システムの仕様変更によって停止してしまう場合があり、決して完璧ではありません。
停止した際は原因を究明して修正する必要があるため、再開に時間がかかります。
(4)業務工程が不透明になる
RPAは自動で動くため、業務工程が不透明です。RPA自体に問題はなくとも、だれかが業務内容を書き換えてしまう可能性があります。
ブラックボックス化されると、業務内容に間違いがあった場合、会社にとってダメージになりかねません。
(5)野良ロボット化する可能性がある
RPAは担当者がいなくなると、野良ロボット化する可能性があります。
RPAはだれもが自由自在に使えるわけではなく、ある程度の知識と操作経験がないと使いこなせないため、操作する人が限られてしまうのです。
担当者が異動や退職でRPAから離れてしまう場合、しっかり引き継ぎされていないと、他の人が扱えず野良ロボット化してしまいます。
RPA導入の手順
RPAの導入手順について解説します。自社にとってベストなRPAを導入できるよう、手順をしっかり理解しましょう。
(1)現状の把握
まずは現状の把握からです。
現場の意見を聞いて課題を洗い出したり、時間がかかる単純作業や定型作業などRPA導入が有効な業務をまとめたりしましょう。
(2)目的の設定
現状を把握したら、RPA導入の目的を設定します。RPAによって何を変えたいのか、どのような効果を出したいのかをよく検討してみてください。
(3)RPAツールの選定・導入
次に、自社に導入すべきRPAツールの選定に入ります。
国内外の企業がさまざまなRPAツールを出していますが、設定した目的を見失わないよう、費用対効果を算出し選定しましょう。
リスク回避のため、最初はスモールスタートがおすすめです。
(4)ロボットの開発
RPAツールを導入したら、実際にロボットを開発していきます。
RPAツールは内製化する場合も多いですが、作成したいロボットの数が多くなるとロボット開発に手間も時間もかかるため、外注を検討してみても良いでしょう。
(5)問題点の洗い出し
次にRPAツールのテストによる問題点の洗い出しです。ロボット開発後のテストを重ねることが、RPAを快適に使いこなす鍵になります。
動作環境によって大きく異なることもあるので、何度もテストして事前に問題点を洗い出し、本番運用に向けて改善していきましょう。
(6)運用方法の策定
RPAは運用方法を策定することが重要なポイントです。運用方法があいまいだと、特定の人にしかわからない状態となり、野良ロボット化します。
野良ロボット化はセキュリティリスクやブラックボックス化のリスクの要因となるため、事前に必ず運用方法を策定してください。
(7)定期的なシステム保守
RPA導入後も定期的なシステム保守が必要です。
RPAは周辺システムの些細な仕様変更でさえも影響する可能性があるため、自社のシステム環境の変更を見落とさないよう、定期的に確認しなければなりません。
RPAは導入したら終わりではなく、システム保守を定期的に欠かさず行いましょう。
RPAの導入事例
RPAは実際にどのように活用されているのでしょうか。自治体や企業、法人のRPA導入事例を紹介します。
茨城県つくば市
茨城県つくば市の市役所は、単純で定型的な作業に多くの労働時間を費やしていました。
確定申告時期の税務処理は特に時間がかかっていましたが、RPA導入により、作業時間の短縮と正確な処理を実現できています。
日本生命保険
日本生命保険は、他社よりも早くRPAを導入しました。
背景には2011年の保険商品の銀行窓口販売の全面解禁により、銀行でも保険の販売が可能になったことがあります。
ビジネス環境の変化に対応するため、日本生命保険は2014年、保険事務を担当する金融法人契約部にRPAを導入しました。
2018年度末までに累計で約140業務に適用され、その後もさらに活躍の場を広げています。
三菱東京UFJ銀行
三菱東京UFJ銀行も他社より早くRPAに注目してきた企業のひとつです。
銀行業務で多くの手作業に時間を費やしていましたが、RPA導入により約20業務をこなし、作業時間を累計2万時間削減することに成功しています。
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングは各ECサイトの定期的な情報収集が課題でした。
しかしRPAで比較サイトのクローリングを行った結果、自社商品の販売傾向が把握できるようになり、売上向上に役立っています。
住友林業情報システム
住友林業情報システムはRPAツールを受託業務での生産性向上に活用でき、外販事業の新たな柱と考えています。
2015年から試験導入を開始し、現在では合計2,000体を超えるロボットが稼働中です。
開発や運用の工数を抑制する独自手法を確立し、さらに汎用的な用途での普及に注力した結果、1日10体というハイペースでのロボット導入を実現しています。
株式会社J:COM
J:COMではオペレーションセンターの業務省力化のため、2018年3月にRPAを導入しました。
第1弾のモバイルサービス申込業務のRPA適用で作業時間とコスト削減の効果が出たことにより、2018年9月からは第2弾として入金業務にもRPAを導入しています。
入金業務のRPA適用により、業務時間短縮と年間コストの削減を実現しました。
マルコメ株式会社
マルコメでは、50社以上に及ぶ卸先企業のPOSデータ収集に多大な時間と手間がかかっていました。
しかしRPAツールを導入したことにより作業が自動化でき、1社あたりのPOSデータ収集作業が4分の1に短縮、約70%の対応時間削減に成功しています。
立命館大学
立命館大学では、定期的に大量発生する手作業の定型業務を解決するため、会計システムにRPAを導入しています。
RPA導入により、支払い手続きのための操作に必要な年間約25万回のクリック作業、1回4時間かかるデータ調整作業、点検作業などの業務効率が大きく改善しました。
職員の心理的な負担は軽減し、付加価値の高い業務に注力できるなど、目に見える効果が出ています。
慈恵大学
医療業界は大きな業務負担、人員不足などの課題を抱えています。
慈恵大学ではRPAを活用して外来患者数報告業務や未作成・未承認の退院サマリ抽出業務をロボットにさせることで、職員が業務を行う場合に比べて約90%の業務時間を削減できました。
慈恵大学のRPA活用の成功事例は、RPAが医療業界の課題を改善し、医療の質を向上させるものとして、今後はさらに期待されるでしょう。
RPAのメリット・デメリットを理解し業務に活かそう
RPAは、パソコン上の作業をロボットで自動化するテクノロジーです。日本が抱えている少子高齢化や労働人口減少などの問題を解決するツールとして期待されています。
RPAの導入は、業務効率化や生産性の向上、人件費の削減などに役立ちます。RPAのメリットとデメリットを理解し、業務に活かしていきましょう。
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