【解説】SDGsウェディングケーキモデルとは?概要や3つの階層について
SDGsの目的やターゲットは多岐に渡り把握しにくいため、新しい分類方法が注目されています。注目を集めるSDGsウェディングケーキとは、どのような構造モデルなのでしょうか。本記事では、SDGsウェディングケーキの意味や3つの階層について解説します。
目次
SDGsウェディングケーキモデルとは?
[出典:「The SDGs wedding cake」(Stockholm Resilience Center)]
SDGsウェディングケーキモデルとは、SDGsの概念を表す構造モデルのことです。SDGsの17の目標をウェディングケーキのように図式化し、目標どうしの関わりを示しています。スウェーデンの首都、ストックホルムにあるレジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム博士によって考案されました。
SDGsウエディングケーキモデルでは17の目標を3つの階層に分類し、下から「Biosphere(生物圏)」「Society(社会圏)」「Economy(経済圏)」の順番で積み重なっています。そして、頂点に17番目の目標である「パートナーシップで目標を達成しよう」が置かれています。
SDGsウエディングケーキモデルは、私たちが生きていくために必要な生物圏の基盤が整うことで社会が成り立ち、さらに経済が成り立っていることを示しています。つまり、すべての目標は密接に関わり合っているのです。
SDGsの目標17項目
SDGsの目標17項目は以下の通りです。
目標は、社会、経済、環境の3つの側面から設定されており、総合的に解決しながら継続できるよりよい社会の実現を目指しています。
目標1 貧困をなくそう あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる 目標2 飢餓をゼロに 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する 目標3 すべての人に健康と福祉を あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する 目標4 質の高い教育をみんなに すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する 目標5 ジェンダー平等を実現しよう ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う 目標6 安全な水とトイレを世界中に すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する 目標7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する 目標8 働きがいも経済成長も 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する 目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう 強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る 目標10 人や国の不平等をなくそう 国内及び各国家間の不平等を是正する 目標11 住み続けられるまちづくりを 包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する 目標12 つくる責任つかう責任 持続可能な消費生産形態を確保する 目標13 気候変動に具体的な対策を 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる 目標14 海の豊かさを守ろう 持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する 目標15 陸の豊かさも守ろう 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・ 回復及び生物多様性の損失を阻止する 目標16 平和と公正をすべての人に 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
[引用:外務省「持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組」より]
SDGsウェディングケーキモデル3つの階層
ここでは、SDGsウェディングケーキモデルの3つの階層について解説します。
1.Biosphere|生物圏
生物圏はSDGsウェディングケーキモデルの最下層にあり、17の目標のうち以下の4つが該当します。
- 目標6:安全な水とトイレを世界中に
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
生物圏には環境問題や気候変動に関する目標が含まれています。自然環境なくして、社会を形成し、経済活動をすることはできません。私たちが地球上で生きるための土台となる課題です。
2.Society|社会圏
社会圏はSDGsウェディングケーキモデルの中間層にあたり、17の目標のうち以下の8つが該当します。
- 目標1:貧困をなくそう
- 目標2:飢餓をゼロに
- 目標3:すべての人に健康と福祉を
- 目標4:質の高い教育をみんなに
- 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
- 目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 目標11:住み続けられるまちづくりを
- 目標16:平和と公正をすべての人に
社会圏には健康、差別・偏見、教育に関する目標が含まれています。一人ひとりが人間としての尊厳をおびやかされず生きていくために必要な要素です。生きるために必要な社会基盤を整えることで、さらに上の階層にある経済圏を支えられます。
3.Economy|経済圏
経済圏はSDGsウェディングケーキモデルの最上層にあたり、17の目標のうち以下の4つが該当します。
- 目標8:働きがいも経済成長も
- 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標10:人や国の不平等をなくそう
- 目標12:つくる責任 つかう責任
経済圏には働きやすさを求めたり、人や国に対する不平等をなくすといった目標が含まれています。国や世界の経済成長のために欠かせない要素です。経済の発展は生物圏、社会圏の上に成り立っており、3つの階層は密接に関わり合っています。
さらに、全体の頂点に「目標17:パートナーシップで目標を達成しよう」が位置しています。持続可能な地球を目指すために、全世界の国や地域、企業などが協力する必要があることを示しています。
SDGsウェディングケーキモデルと2030アジェンダの関係
2030アジェンダは2015年9月に国連サミットで採択されました。2030年までに達成すべき17の目標と実施手段、レビューとフォローアップのための枠組みから構成されています。2030アジェンダでは経済、社会、環境の3つの側面から持続可能な開発を達成することを目指しています。
SDGsウエディングケーキモデルも経済、社会、生物(環境)の三層で構成されていることから、2030アジェンダと同じような構造であるといえます。
SDGsウェディングケーキモデルの活用方法
SDGsウェディングケーキモデルを用いれば、持続可能な社会の実現のための企業における課題を洗い出すことができます。SDGsウェディングケーキモデルを使って、自社の事業が各階層のどの部分に悪影響を及ぼしているのかを見つけましょう。
生物圏から始め、社会圏、経済圏の順に整理することで、企業における適切な取り組み方法が浮き彫りにできます。SDGsに取り組みたいと思っていても、どのように事業に取り込めば良いか分からない場合はSDGsウェディングケーキモデルを使って整理するといいでしょう。
SDGsウェディングケーキモデルで見る日本の達成状況
2022年6月の「Sustainable Development Report 2022」で発表された日本のSDGs達成度合いでは、以下の3つの目標が達成済みと評価されています。
- 目標4:質の高い教育をみんなに
- 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標16:平和と公正をすべての人に
SDGsウェディングケーキモデルに照らし合わせてみると、目標4・16は社会圏、目標9は経済圏に該当します。しかし、最下層の生物圏の項目は達成済みの項目がありません。また、以下の6つの目標に深刻な問題があると評価されています。
- 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
- 目標12:つくる責任つかう責任
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
- 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
なかでも、目標13・14・15は最下層の生物圏に該当する項目です。日本はまだ三層ともに改善すべき目標がありますが、とりわけ土台となる生物圏の項目に重要な課題があるといえます。
[出典:SDSN・Bertelsmann Stiftung「Sustainable Development Report 2022」]
目標達成のためにSDGsウェディングケーキモデルを理解しよう
今回はSDGsウェディングケーキモデルについて解説しました。SDGsの目標やターゲットは多岐にわたります。SDGsウェディングケーキモデルを使うことで、SDGsの構造を把握しやすくなるでしょう。
また、企業における課題を洗い出すこともできます。SDGsに取り組む際はこのようなモデルを利用し、課題を抽出したうえで目標設定をしましょう。
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