SDGsビジネス成功のポイントは?今後の可能性や企業の取り組みを紹介
日本や世界でもビジネスとして注目され始めているSDGs。すでにSDGsビジネスで頭角を現している企業も多く、中小企業も狙うことのできる巨大市場です。本記事では、そんなSDGsビジネスについて、成功のポイントや企業の取り組み事例などを詳しく解説していきます。
目次
SDGsビジネスとは?
SDGsビジネスとは、SDGsに関連する取り組みを導入した事業のことです。そもそも、SDGsは2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発目標」を指します。
社会・経済・環境問題に対する世界共通の目標であり、問題解決を図りながらビジネスチャンスを見いだす企業が増えています。
SDGsビジネスの市場規模
SDGsでは、17の目標と169のターゲットが掲げられています。各目標の市場規模の大きさは異なりますが、大手コンサルティング会社のデロイトトーマツの調査によると、小規模の分野で70兆円、大規模の分野では800兆円以上の市場が存在すると考えられています。
すでにSDGsに取り組んでいる他社や行政と連携できる可能性もあるため、SDGsビジネスへの参入は、新たな市場獲得のチャンスと捉えることもできるでしょう。
[出典:デロイト トーマツ「SDGsビジネス」の市場規模 - デロイト トーマツ グループ」]
世界や日本での取り組み状況
日本では大企業だけでなく、中小企業もSDGsに取り組む企業が増えつつあります。帝国データバンクの調査によると、業界別では「金融」「農林水産」がSDGs推進に積極的です。
業界 | SDGsに積極的と答えた割合 |
---|---|
金融 | 56.0% |
農林水産 | 55.6% |
[出典:帝国データバンク「SDGsに関する企業の意識調査(2021年)」]
また、SDGsを推進させるために作られた団体「SDSN」では、毎年SDGsの達成度を数値化し、各国のランキングを発表しています。2022年に発表されたレポートでは、日本は19位という結果でした。
順位 | 国 | 点数 |
---|---|---|
1 | フィンランド | 86.5 |
2 | デンマーク | 85.6 |
3 | スウェーデン | 85.2 |
4 | ノルウェー | 82.3 |
5 | オーストリア | 82.3 |
(中略) | ||
19 | 日本 | 79.6 |
[出典:SDSN「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT2022」]
このように、各国でSDGsが推進されているものの、日本の取り組みはまだまだこれからの状況です。
SDGsビジネスに企業が取り組むメリット
ここからは、企業がSDGsビジネスに取り組むメリットを見ていきましょう。
企業のブランドイメージ向上
SDGsは世界共通の目標であるため、積極的に関与することで社会貢献企業としてのイメージアップが図れるでしょう。企業イメージが向上できれば、取引先や消費者などから信頼を得られるようになり、自社商品やサービスの売上にもプラスの影響が期待できます。
新たなビジネスチャンスの創出
SDGsには17の目標と169のターゲットがあり、ビジネスチャンスとして狙える分野はさまざまです。これまで関わりのなかった分野に参入できる可能性も、ゼロではありません。
また、SDGsに取り組むことで、他社や行政との連携・協力を得られる可能性があるため、自社だけではできなかったことにも挑戦できます。
優秀な人材の確保
就職先を選ぶ基準として、「社会に貢献している企業であるか」を重視する就職希望者が増えつつあります。
例えばSDGsには「ジェンダー平等」という目標があります。女性が働きやすい社会づくりに精力的な企業があれば、それに魅力を感じて入社を希望する人材も一定数存在するということです。
このようにSDGsへの取り組みは、人材獲得においてもプラスに働きます。SDGsへの取り組みが対外的に広まっていけば、優秀な人材に自社を知ってもらう機会も増えるでしょう。
リスクヘッジの強化
SDGsに取り組まないということは、世界共通の課題に関心がない企業だと思われるリスクを含みます。企業イメージの低下だけでなく、将来的にサプライチェーンから排除されたり、株主離れを引き起こしたりする可能性もゼロではありません。
SDGsへの理解を深め、問題解決に関与していくことは、将来的な経営リスクの回避にも繋がっていきます。
SDGsビジネスに企業が取り組むデメリット
メリットの多いSDGsビジネスではありますが、デメリットも少なからず存在します。ここでは、主なデメリットを3つチェックしていきましょう。
長期的な取り組みが必要になる
SDGsは2030年までの達成を目指していることから、長期的な目標といえます。そのため、企業がSDGsに取り組んでも、すぐに目標が達成できるわけではありません。
また、社会的な課題とビジネスを組み合わせたSDGsビジネスは、多くの企業にとって新たな試みです。手探りの状態で進める必要があるため、事業を軌道に乗せるまでに時間を要してしまう可能性もあるでしょう。
このように、SDGsビジネスでは長期的な取り組みが求められることから、ある程度の時間や人的リソースを割く覚悟が必要です。
プロジェクトが進まない可能性がある
SDGsを推進するにあたり、複数のプロジェクトを立ち上げても、取り組みそのものが進まないケースもあります。取り組みが進まなければ、プロジェクト立ち上げにかかった時間や資金など、コストを無駄にすることになります。
また、企業活動にはSDGsの取り組みだけでなく本業もあるため、片方に注力すれば、もう片方がおろそかになる可能性も考えられるのです。
SDGsウォッシュのリスクがある
SDGsウォッシュとは、SDGsに関する目標を掲げるばかりで、実状がともなっていない状態のことです。
つまり、SDGsに取り組んでいると見せかけている様子を意味します。もちろん、SDGsビジネスに真剣に取り組んでいるにもかかわらず、なかなか成果が出ないケースも存在するでしょう。
しかし、故意でないSDGsウォッシュの場合でも、「SDGsウォッシュだ」と批判される可能性は避けられません。こうした批判は、企業のイメージダウンに繋がります。
SDGsビジネス成功のポイントとは?
SDGsビジネスを成功させるポイントは、主に7つあります。ここからは、それぞれのポイントを詳しく解説していきます。
成長する市場の選定
SDGsへの取り組みは、長期的に実施していく必要があります。そのため、将来的に成長する市場を選択することが、ビジネスとして展開する際に必要な視点です。伸びしろのありそうな市場を分析し、自社の強みと照らし合わせながら市場を選定していきましょう。
十分な資金の確保
ビジネスとしての採算性も目指すSDGsビジネスでは、十分な資金確保が求められます。会社の自己資金だけでなく、外部から資金調達することも視野に入れておくとよいでしょう。
SDGs関連の事業であれば、政府機関からの補助金を得られやすいことに加え、SDGsビジネスの推進に賛同する民間ファンドによる出資も期待できます。
長期的な視点での事業戦略
SDGsビジネスを成功させる場合、10年単位の長期的な計画が求められます。短期的な計画では事業規模も小さくなりやすく、社会的インパクトのあるプロジェクトに繋がらずに終わるケースも少なくありません。
SDGsビジネスで取り組む多くの社会問題は、長いスパンで解決を図る問題です。そのため、資金調達計画から社内のチーム編成に至るまで、継続性を意識した戦略を練り上げていきましょう。
カスタマーファーストでの取り組み
事業にSDGsを取り入れるにしても、企業が実施するのはあくまでビジネスです。つまり、自社の利益にも注目しなければなりません。
利益を出すためには、顧客のニーズをつかむことが大切です。例えば、安全な水にアクセスできない開発途上国の地域へ浄水器を販売していく場合、地域住民にとって使い勝手の良い製品でなければ普及は難しいでしょう。また、交換部品の調達が現地で難しいようであれば、交換部品をあわせて販売する戦略も有効です。
SDGsビジネスを成功させてきた企業の多くは、プロジェクト対象地域に住む顧客のニーズや悩みと向き合うことで、市場に受け入れられる製品・サービスを生み出してきています。
優秀な人材の確保
ビジネスの成功には人材が不可欠です。特にSDGsという先進的な課題に取り組むには、主体的に行動を起こせる優秀な人材が必要となるでしょう。
SDGsビジネスでは、開発途上国への進出を視野に入れる企業も珍しくありません。現地で優秀な人材を確保するためには、給与や教育体制などを充実させ、他社との差別化を図る必要があります。
現地企業とのネットワーク構築
SDGsビジネスを成功させるためには、他社とのネットワーク構築が大切です。特に海外へ事業展開する場合、現地企業との連携が成功のカギを握ります。
現地企業であれば、その国の法律や事情にも精通しているため、的確なアドバイスを受けることが可能です。また、現地企業の求めるノウハウや技術を日本企業側が提供することで、新たなビジネスチャンスが生まれるケースもあります。
社内へ浸透させる仕組みの構築
SDGsビジネスを社内全体に浸透させるには、経営陣だけでなく社員の協力も必要です。そのため、SDGsビジネスに取り組む目的やその内容を、事前に社員へ共有するプロセスが欠かせません。
情報共有の場としては、社内研修やワークショップの実施などが一般的です。SDGsに関する社内コミュニティをつくり、コミュニティ発のイベントなどを通じてSDGsの理解を深めていってもよいでしょう。
SDGsに対する社員の興味関心が高まっていけば、会社全体でSDGsビジネスに取り組む体制が整えられます。
SDGsビジネスに企業が取り組む際の注意点
企業がSDGsビジネスに取り組む際、注意の必要なポイントが3つあります。ここでは、それぞれの注意点について理解を深めていきましょう。
ボランティアやCSRとの混同には注意を払う
SDGsと混同されやすい言葉として、ボランティアやCSRが挙げられます。
ボランティアとは、自主的かつ無償でおこなう社会貢献活動のことです。一方CSRは、企業の社会的責任を意味する言葉で、「Corporate Social Responsibility」の略語です。
これらの言葉とSDGsの違いは、ビジネスを通じた社会問題へのアプローチであるかどうか、にあります。
ボランティアやCSRを推進する企業の多くは、社会貢献を軸にボランティア活動などに取り組んでいます。活動自体に利益を追求する目的はありません。
一方、SDGsの場合は、ビジネス面からのアプローチで社会問題の解決を図ります。ビジネスとしての採算性と社会貢献のインパクトを同時に見ながら展開するのが、SDGsビジネスの特徴です。
企業理念との整合性を保つ
SDGsの取り組みと一口に言っても、各企業がおこなう取り組みはさまざまです。自社に適した活動を展開する場合は、企業理念に沿った分野を検討してみましょう。
例えば、「水と生きる」の企業理念で有名なサントリーホールディングス株式会社では、SDGsの目標のひとつである「すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」に対する活動に重点を置いています。
企業理念とSDGsの取り組みがマッチしているため、会社のノウハウや知識をSDGsへ活用しやすい体制です。SDGsビジネスの参入分野を考えるときには、自社の企業理念との整合性を意識して判断していきましょう。
SDGsウォッシュを防ぐための対策を行う
目標を掲げてばかりで実行に移せていないと、SDGsウォッシュと批判されるリスクがあります。企業イメージの低下を防ぐためにも、SDGsウォッシュに陥らないよう対策を講じていきましょう。
具体的な対策例としては、現実的な目標の設定や、綿密な事業計画の策定などが挙げられます。達成可能な目標を掲げることで、対外的にアピールできる成果を積み重ねることが可能です。
また、目標に対して確実にアクションを起こせるように、会社全体で共有できる事業計画を用意しておくとよいでしょう。
SDGsビジネスに取り組む注目の中小企業の事例
国内の中小企業でも、SDGsビジネスに取り組む企業は増えています。ここでは、ドローン・ジャパン株式会社の活動を紹介します。
ドローン・ジャパンは、農業をテーマとしたSDGsビジネスを展開する会社です。ドローン×IoTの活用に優れている同社では、「ドローンワインプロジェクト」「ドローン米プロジェクト」「ルワンダでのドローン農業支援」「学校でのドローン×農業授業」「ドローン地産地防プロジェクト」といった多岐にわたるSDGsプロジェクトを実施しています。
なかでも、「ルワンダでのドローン農業支援」では、ドローンを用いた生産性の高い農業の実現に成功し、SDGsの目標のひとつである飢餓の撲滅に貢献しています。
SDGsビジネスの今後の可能性
世界的な動きということもあり、SDGsビジネスに意欲的な企業が増えてきています。将来的に、SDGsに取り組まない企業が優秀な人材を確保しにくくなったり、低い評価を受けたりする可能性も考えられます。
SDGsに取り組むということは、長期的かつ持続的なビジネスにチャレンジするということです。コストがかかり、リスクもありますが、新たなビジネスチャンスの獲得手段として検討する価値があるものといえるでしょう。
SDGsビジネスはチャレンジする価値のある巨大市場
SDGsが注目されている今、SDGsへの取り組みの有無は、投資先や就職先の判断基準のひとつとして認識されるようになってきました。
SDGsビジネスを展開することで、企業はブランドイメージの向上や、新たなビジネスチャンスの創出が図れます。見せかけの目標を掲げて批判対象とならないように、実施の際は現実的な目標設定と、綿密な事業計画の策定を心がけてください。
自社の強みを活かしたSDGsビジネスを実施し、新たな市場へと挑戦してみてはいかがでしょうか。
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