フードロスとは?SDGsの目標との関係や企業・個人の取り組みについて

最終更新日時:2023/08/01

SDGs

フードロスとは

国連の統計によれば、世界の飢餓人口は最大8億2800万人で、今も増加し続けているといいます。しかしその一方で、本来は食べられるはずだった食品の廃棄である「フードロス」が深刻な問題となっています。本記事では、フードロスとSDGsの関係、企業や個人でも取り組める行動を紹介します。

フードロスが起こってしまう原因

フードロスとは、本来食べることができたはずの食品を廃棄してしまう行為です。このフードロスは、企業がビジネスを行う上で発生するロスと家庭内で生まれるロスの2つがあります。

前者は、小売店や飲食店などの売れ残り、飲食店での仕込みすぎや食べ残し、規格外品や商品破損、調理過程などにおいて発生します。また、農作物などは、生産者における規格外作物の廃棄などもあるでしょう。

また、家庭では、調理の際の野菜の皮などの過剰除去、食べ残し、買いすぎによる賞味期限切れなどにより、食べることができたはずの食品が捨てられてしまっています。特に、家庭におけるフードロスの約57%は、食べ残しによるものだといわれています。

[出典:消費者庁「平成29年度徳島県における食品ロス削減に関する実証事業の結果の概要(ポイント)」]

国内外のフードロスの現状

2020年は世界全体のフードロスとして、約9億3,100万トンの食品が廃棄されています。

一方、日本国内に目を向けると、農林水産省の調査によれば同年の日本のフードロスは、522万トンであり、2019年の約612万トンから、90万トンの削減したことになります。

しかしながら、現状でも1人あたりのフードロスは年間約41キロです。大体ごはん茶碗1杯分の食品を毎日捨てている計算になることを想像すると、改善すべき数字であることがわかるでしょう。

ちなみに企業における問題として、節分商戦で過剰に作られた恵方巻きが大量のフードロスにつながったニュースが記憶に新しい方もいるのではないでしょうか。このようなビジネス上で発生するフードロスは、2020年の日本国内のフードロスのうち275万トン(53%)を占めています。

一方、家庭から発生するフードロスも、年間で247万トン(47%)発生しており、フードロスの削減には、企業と個人の双方での努力が不可欠であることがわかります。

フードロスと食品ロスの違いは?

日本においては、一般的にフードロスと食品ロスは、同意語として使われているのがほとんどです。

しかし海外では、サプライチェーン前半で発生した食品の質の低下や廃棄品、つまり消費者に届く前の段階で発生した食品廃棄を指す言葉としてフードロスが使われ、賞味期限切れや食べ残しを示すフードウェイストとは、その定義が分けられています。

そのため、日本と海外では、フードロスの意味に違いが生じることがある点は注意しておくと良いでしょう。

フードロスとSDGsの関係について

フードロスは、「もったいない」だけでなく、処理される際には、大量の二酸化炭素が排出されるため、温度上昇・異常気象・空気汚染の原因にもなるなど、地球環境にも影響を及ぼしてしまう行為です。

SDGsは、世界全体の環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を解決するための計画・目標です。そのため、フードロスとSDGsの達成は密接な関係にあるといえるでしょう。

SDGsには、達成すべき17の目標と169のターゲットが掲げられており、目標2「飢餓をゼロに」、目標12「つくる責任、つかう責任」は、フードロスにも大きく関係しています。

SDGsとフードロスの関係

フードロスに関しては、2番「飢餓をゼロに」・12番「つくる責任、つかう責任」の2つの目標において言及されています。

より具体的には、SDGsのターゲット「12.3」として、2030年までに、企業や消費者(家庭)から出る食料廃棄の1人あたりの量を半分に減らすことが目標となっているのです。

表:つくる責任、つかう責任での主な目標

ターゲット内容
12.1
  • 開発途上国の状況や能力を考慮し、持続可能な消費と生産に関する10年計画を策定
  • 先進国が計画策定や進捗状況などに関してサポート
12.3
  • 2030年までに小売・消費レベルで、世界全体で1人あたりでの食品廃棄量を半減
  • 生産やサプライチェーンにおける食品ロスの減少
12.4
  • 国際的な枠組に基づき、環境上適正な化学物質や廃棄物の管理を実現
  • 化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減
12-6
  • 大企業や多国籍企業に対し、持続可能性に関する定期報告を努力義務として推奨
12.a
  • 開発途上国に対し、持続可能な消費・生産形態促進に向け、科学的・技術的能力の強化を支援

フードロス問題が注目される理由

フードロスが注目される背景は、主に「環境への負荷」と「飢餓と食料不足の課題」の2点が挙げられます。

焼却・埋め立てによる環境負荷

廃棄された食糧は、埋め立てや焼却によって処理されます。

国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が、気候変動を科学的に解明・分析するために共同で立ち上げた組織であるIPCCの報告書では、2010〜2016年に排出された温室効果ガスのうち、フードロスとフードウェイストによる温室効果ガスの排出は、約8%あると推定され、自動車の約10%と同等なほどに高いことが発表されました。

この結果からも、フードロスは地中温暖化や気泡変動などの環境問題にも大きく影響することがわかります。

飢餓と食糧不足の課題

また、食糧バランスの観点からもフードロス削減は重要です。世界の飢餓は、食料の生産量が足りないのではなく、本来は十分に足りるはずの食糧が廃棄されてしまうことで起きています。

先進国における食べ残しや売れ残りなどによって発生するフードロスの総量は、サブサハラアフリカ地域全体の食料生産量に及ぶと言われ、一方、開発途上国などでは、適切な保存方法や管理技術などの知識が乏しいがゆえに、大量の作物を無駄にしてしまっているのです。

フードロスによる飢餓の問題を解決するには、このような開発途上国における、安定的な生産技術の指導やサポートといった取り組みも必要なのです。

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フードロス削減に向けた日本の取り組み

次に、日本ではフードロス削減に向けてどのような取り組みが実行されているのかをみていきましょう。

フードバンク

フードバンクは、さまざまな理由で販売できない食品を企業から寄贈してもらい、団体・施設・家庭に無料で提供する取り組みです。

食品としての安全性や味に問題がなくても、印字ミスやパッケージの破損、過剰在庫などにより販売できない食品は多々あります。このような食品を有効的に活用し、フードロス削減につなげるのが、フードバンクの目的です。

フードバンク団体を通して提供される提供される食品が、福祉施設や生活困窮世帯の支援になるのはもちろん、企業側もフードバンクに参加することで、SDGsや地域社会への貢献による企業イメージの向上、廃棄コスト削減など、多くのメリットが得られます。

賞味期限の見直し

賞味期限表記を「年月日」から「年月」表記へ変更する取り組みもフードロス削減に有効な取り組みの一つです。

厚生労働省が定める加工食品品質表示基準では、賞味期限を表示すべき食品のうち、製造日から賞味期限までの期間が3ヶ月を超える食品は、「年月」のみで賞味期限を表示することが認められています。

しかし、習慣などから「年月日」の記載をする企業が多く、フードロスの要因の一つになっていたのです。しかし、近年は「年月」表記へと変更する企業が増えています。

例えば、味の素では家庭用調味料や加工食品など、全190品目を対象に、2018年秋から年月表記へ賞味期限の表示を変更しています。

シェアリングサービス

フードシェアリングサービスは、飲食店・小売店などで、売り切るのが難しくなってしまった食品と消費者をマッチングするサービスです。お店側が売れ残りを防げるほか、消費者はスマホアプリやECサイトを通じてお得に商品を購入し、フードロスを防ぐことができます。

売れ残ってしまいそうな食品から、自分が食べたいものを選んでお得に楽しめるとして消費者にとっては非常に嬉しいサービスですが、お店側も、食品廃棄の削減だけでなく、新規顧客の拡大や認知度の向上といった利益拡大のメリットが見込めるとして、利用する事業者が増えています。

売れ残り食品を対象とした値引き

目新しい取り組みではありませんが、販売期限や賞味期限が迫った食品の値引き販売も身近なフードロスの削減につながる取り組みといえるでしょう。

このような値引き販売は、かつては売上拡大や廃棄コスト削減など実質的な利益を得ることが目的とされていましたが、現在では、SDGsの観点からの施策として見直されています。

消費者向けのキャンペーン

消費者への呼びかけとして、環境省・農林水産省・消費者庁は、「てまえどり」と「おいしい食べきりキャンペーン」を実施しています。てまえどりは、スーパーやコンビニエンスストアで食品を買う際、棚の手前に陳列されている食品から選ぶよう呼びかける運動です。

一方、おいしい食べきりキャンペーンは、飲食店で食事する際、残さず食べきることを呼びかける運動です。同時に、どうしても食べきれない場合は、容器に入れて自宅へ持ち帰ることも推奨しています。

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【フードロス対策】企業の取り組み事例

続いて、実際に企業において実践されているフードロス削減の事例を5つ紹介します。

オイシックス・ラ・大地株式会社

オイシックス・ラ・大地株式会社は、野菜・肉・米・加工食品など食材の通信販売を行う会社です。同社ではフードロス削減に向けて、給食支援とフードシェアリングサービスに取り組んでいます。

開発途上国への給食支援は、「おにぎりアクション」と呼ばれています。おにぎりの写真をSNSに投稿すれば、スポンサー企業から100円寄付される仕組みです。これまで100万枚の写真がSNSに投稿され、650万食分の給食が開発途上国に届けられています。

一方、フードシェアリングサービスは、「おたすけOisix」と呼ばれるアプリを使い、生産者と消費者をつないでいます。おたすけOisixでは、自然災害によって発生した規格外品を扱い、購入を希望する消費者に販売するサービスです。

生産者はフードロスや廃棄コストを削減できるだけでなく、規格外品発生に伴う売上の損失を最小限に抑えられます。一方、消費者は多少形は崩れているものの、高品質な野菜や果物を低価格で購入できます。

おたすけOisixは2022年8月から始まったサービスです。サービス開始から10日で登録ユーザーは1万人、累積販売数は2.1万トンを突破しています。

株式会社クラダシ

株式会社クラダシは、日本初の社会貢献型ECサイトを構築した企業です。同社の取り組みはECサイトの利用を通じて、フードロス削減と生産者支援などの社会貢献が同時に行える点が最大のポイントと言えるでしょう。

具体的には、パッケージ変更により店頭に並ばなくなった商品・消費期限間近・季節限定商品など、フードロスの危機に直面する商品をメーカーから協賛価格で仕入れて最大97%OFFの価格で消費者に提供しています。

2021年9月時点で、16,313トンのフードロス削減に成功しました。経済効果は50億円を超えています。

株式会社コークッキング

料理教室の運営やイベント企画を展開する株式会社コークッキングは、スマホアプリ「TABETE」を活用したフードシェアリングサービスを行なっています。

TABETEは2020年4月から利用されており、累計で36.8万トンの食品ロス削減に成功しました。TABETEの掲載店舗数は、フードシェアリングサービス最多を誇り、今後もフードロス削減が期待されています。

株式会社ロスゼロ

株式会社ロスゼロは、食品・飲料・調味料のオンライン販売を手掛ける企業です。同社は、フードロスに直面した食品のみをパッケージ化したサブスクリプションサービスを提供しています。

スナック菓子やスイーツを中心に、規格外品や賞味期限間近の商品などを集め、2ヶ月に1回消費者へ発送します。消費者は、美味しく食べてフードロス削減に貢献できるだけでなく、どのような食品が届くかわからない、「福袋」のようなワクワク感を楽しむことができます。

デイブレイク株式会社

デイブレイク株式会社は、特殊冷凍機械・業務用特殊冷凍食材を販売する企業です。同社は規格外品や余剰在庫となったフルーツを特殊冷凍し、カットフルーツとして消費者に届ける冷凍技術を活かしたフードロス削減に取り組んでいます。

特殊冷凍によって鮮度・甘味・風味が維持されているので、上質な味わいが堪能できるほか、フルーツタルトやモヒートなど、冷凍フルーツを使ったアレンジレシピもホームページで紹介しており、さまざまな楽しみ方を提案しています。

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【フードロス対策】個人でもできる取り組み事例

もちろんフードロスの削減は、個人にも多くの「できること」があります。少しでもフードロスを削減できるよう、無理なくできることから始めてみましょう。

食材を買い過ぎない

必要以上の食材を買わないために、冷蔵庫の中身を把握し、必要な食材をリストアップしておきましょう。

また、できるだけ「まとめ買い」をやめ、小まめに買い物をすることも有効です。買い物の頻度を上げるのが難しい場合は、食材を何となく買っておくのではなく、メニューを決めて必要な食材を買うことで、食材を無駄にしてしまうことがなくなります。

古い食材から使う

調理をするときは、消費期限が近い食材から使うことを徹底しましょう。消費期限切れを避けるためにも、冷蔵庫内やパントリーは、定期的に整理し、賞味期限を把握しておくようにします。消費電力の観点からも、冷蔵庫には食材を詰めすぎないことが大切です。

食べられる部分を捨てない

野菜の皮や葉っぱなど、本来食べられる部分であれば、できるだけ捨てずに活用しましょう。ブロッコリーの茎、長ねぎの青い部分、大根やカブの葉などは、調理によって美味しくいただくことができます。

食材を保存する

冷凍保存も上手に活用しましょう。ほうれん草・大根・ブロッコリーは、冷凍しても1ヶ月前後保存できます。また、肉の冷凍での保存期間は大体2週間〜1ヶ月前後ですが、保存期間が長いと酸化や乾燥を招きます。

保存袋での密閉や早めに使い切ることを意識して「美味しくいただく」ことを意識しましょう。

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食べ残しを出さない

家庭におけるフードロスの原因で最も多いのが、食べ残しによるものです。食べ残しは、食品を無駄にしているだけでなく、調理の際の水やエネルギーなどの資源も無駄にしています。さらに処理される際には、環境負荷も発生しているのです。

「足りないよりは多い方がいい」の思考をやめ、適量を購入、調理するようにしましょう。また、消費期限が短い肉・魚などの食品は、買いだめをしないことも重要です。

おすそ分けする

おすそ分けは、個人ができるフードシェアです。食べきれない食材をいつまでも手元に置いておくのではなく、消費できる方法を考えましょう。近年では、登録ユーザー間で余った食材をシェアできるサービスなども登場しています。

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フードロス削減には企業と個人の取り組みが重要

フードロスの問題は、SDGsで掲げられた目標の中でも、個人が身近な問題として捉えやすい課題といえます。

また、事業活動の中で発生するフードロスと、家庭から発生するフードロスが、ほぼ半々であることから、フードロスの削減は、企業と個人の双方の積極的な取り組みが求められていることもわかります。

改めて、無意識に捨てていた食品が地球環境に及ぼす影響を理解し、日々の暮らしから見直しを始めてみてはいかがでしょうか。

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ビズクロ編集部
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