フェアトレードとは?基本的な定義や仕組み・商品についてわかりやすく解説
貧困をなくすために世界で取り組みが進められているフェアトレード。日本でも多くの企業が取り組みを進めていますが、果たしてフェアトレードのメリットとは一体何なのでしょうか。本記事では、そんなフェアトレードについて、基本的な定義から仕組みまで徹底解説していきます。
目次
フェアトレードとは?
フェアトレードとは、直訳で「公正な取引」を指します。発展途上国の生産者がつくった製品が、市場で適正な価格かつ継続的に購入されることにより、生産者の生活を支援するという意味があります。
「オーガニック」や「サスティナブル」「エシカル」という言葉が広まってきていますが、フェアトレードも同様に、地球環境を守りつつ、労働力が不当に搾取されたり、小さな子どもが強制的に労働させられたりといった社会問題を解決するためのスローガンです。
これらが注目されている背景には、いまだに発展途上国で生産に関わる人たちの貧困が解消されておらず、児童労働など社会的な問題がまだまだ残っていることにあります。
子どもたちが普通に教育を受けられるようにしたり、医療を充実させたり、地域発展の支援したりすることが積極的にフェアトレードに取り組む目的です。
フェアトレードが広まった背景
フェアトレードの歴史は古く、普及し始めたのは1960年代であり、公正な取引と貿易を目的として世界的に広がってきています。
世界中に広がってきた理由としては、グローバル化によって商品の製造が世界中でおこなわれるようになったものの、発展途上国の生産者には十分な利益が還元されておらず、労働力が搾取されているという現実があるためです。フェアトレードは製品が適正な価格を維持し、継続して購入されるための仕組みとして注目されています。
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フェアトレードの仕組み
フェアトレードには取引や労働などについて、厳格な基準が設けられています。厳しい基準でつくられた商品が適正な価格をつけられて世に出回ることで、貧困に苦しむ人たちが本来得るべき収入を得られるようになり、労働環境改善や品質アップにつながっていきます。
このようなフェアトレードの仕組みによって、良いサイクルをどんどん回すことが、発展途上国で苦しむ人たちを救うことになるのです。
フェアトレードの歴史と現在の市場規模
フェアトレードの歴史と現在の市場規模について、フェアトレードはどのように始まり、市場規模はどれくらいあるのでしょうか。下記でくわしく解説します。
フェアトレードの始まり
フェアトレードとは、1945年の第二次世界大戦終了後、アメリカのNGOで勤務していた女性が、中南米の国プエルトリコの女性たちが手作りした工芸品を販売したのが始まりといわれています。
その後はヨーロッパに広がっていきましたが、当時は慈善事業としての側面が強く、関わる人すべてがWin-Winにはなっていませんでした。しかし、1960年代に入って慈善事業という意味合いから脱し、フェアな取引をおこなおうという考えに変わっていきます。
フェアトレードが生まれた背景には、西ヨーロッパ諸国が20世紀までおこなってきた、植民地支配や奴隷制度が関係しています。
第二次世界大戦後、植民地支配を受けていた国々はどんどん独立していきましたが、独立した国が経済的な立場も公平になったとはいえない状態でした。そのような不公平な世の中を打ち破るための取り組みとして、フェアトレードが誕生したのです。対象となる商品は現在、食品や衣料など、さまざまな分野に広がってきています。
フェアトレードの市場規模
フェアトレードは、日本でも1970年代の高度経済成長期の頃から広がり始めました。フェアトレードの開始から40年以上経った現在では、一般の企業やNGOだけでなく、行政でもさまざまな取り組みがおこなわれています。
日本国内のフェアトレード認証製品の推定規模は、2020年が131.1億円、2021年は157.8億円と、市場規模は年々拡大してきています。
フェアトレードの基準と指針
フェアトレードの基準と指針にはどのようなものがあるのでしょうか。基準と指針についてくわしく解説します。
フェアトレードの3つの基準
フェアトレードが世界中で広がりをみせるなか、統一の基準が設けられました。その一つが1997年に発足したフェアトレードラベル機構(FLO)の「国際フェアトレード基準」です。
また、国際フェアトレード基準には「社会的基準」「環境的基準」「経済的基準」の3つが定められています。
「社会的基準」では生産者や労働者が安心安全に働ける環境や子どもたちを強制労働させない、「環境的基準」は薬品を大量に使わない、有機栽培を積極的に進めていくこと、「経済的基準」は奨励金の支払いや最低保証価格などについて定められています。
フェアトレードの10の指針
国際フェアトレード基準は製品を対象としていますが、団体を対象とした基準もあります。
1989年に設立された世界フェアトレード連盟(WFTO)は、フェアトレードを推奨する各国内にある組織の連合機関です。団体として認定を得るには以下の10の指針をクリアしなければなりません。
- 生産者への仕事の機会の提供
- 事業の透明性確保
- 公正な取引の実践
- 生産者への公正な対価支払い
- 児童労働および強制労働排除
- 差別せずに男女平等と結社の自由を守る
- 安全かつ健康的な労働条件を守る
- 生産者のキャパシティビルディングを支援
- フェアトレード推奨
- 環境への配慮
どれも細かくて厳格な基準があるものの、それらをクリアして認定を得ているところは信用できる団体だといえるでしょう。
フェアトレードのメリット
フェアトレードのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。生産者や消費者、企業の立場にわけて、メリットを紹介します。
生産者側のメリット
生産者は、収入が増えることで安定した生活を送れるようになったり、子どもが労働することなく平等に教育を受けられたりといったメリットがあります。事業者が適正な価格で製品を購入するようになると、生産者や労働者の収入が増えます。
その結果、働く人たちの生活を安定させ、子どもたちが強制労働から抜け出し、学校で教育を受けられる機会を得ることにつながるのです。
教育を受けた子どもたちは仕事を選択する自由を得られ、留学させて海外で学んだことを還元してもらうようにするなど、フェアトレード推進が発展途上国を成長させる力となることでしょう。
このように、フェアトレードによって生産者側にもメリットが生まれます。
消費者側のメリット
消費者側のメリットは、安心安全な商品や高品質の商品を手に入れられることにあります。
取り組みが広がることで十分な収入を得られるようになると、生産者や労働者は生活が安定し、新しい技術を学び、より質の高い製品をつくれるようになります。
たとえば、オーガニック農法によって農薬をできるだけ使わない、安全安心なカカオづくりに取り組むことが可能です。
また、一般の店に並ぶフェアトレード認証マークがついたチョコレートを選ぶことで、他よりも比較的安全安心な高品質のチョコレートを食べられます。
フェアトレード認証された商品はコンセプトやパッケージデザインにこだわりがあるものも多く、プレゼントにするにもいいでしょう。
企業側のメリット
企業にとってはイメージアップにつながったり、ESG投資や株式によって資金調達がしやすくなることがメリットです。
基準に従って原材料や製品を調達している企業は、生産者に配慮している、途上国を支援していると見られるため、消費者や他の企業からのイメージが良くなります。さらにESG投資の対象となったり、市場で株式による資金集めがしやすくなったりするメリットが期待できます。
フェアトレードが抱えている問題点
フェアトレードが抱えている問題点について解説します。フェアトレードは良いことばかりではないため、現状で抱えている問題点をしっかりと確認していきましょう。
商品の価格が高くなってしまう
フェアトレード商品は、生産者が一つひとつ丁寧につくっているものが多く、一度に大量の商品をつくることができないため、価格が高くなってしまうのが問題点のひとつです。
一般的な商品の場合、価格は市場動向によって上下しますが、フェアトレードの基準を守ってつくられた商品については一定の価格が守られているため、消費者が一般商品と比較したときに高いと感じてしまうかもしれません。
品質に差が生じてしまう
フェアトレード商品は手作業で制作していることから、同じ商品でも品質の差が出てしまうのも問題点です。
特に日本の場合、厳格な輸入基準が定められているため、パッケージの破損など商品そのものの品質には影響していないとしても不良品とみなされることがあります。
また、日本人は商品の状態に敏感なため、クレームを恐れる販売者側がパッケージが破損した商品を避ける場合もあるでしょう。
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フェアトレード商品を見分ける方法
近年、フェアトレード商品を身近なところで見かけることが増えています。どれがフェアトレード商品かわかるように「フェアトレードマーク」や「国際フェアトレードラベル認証」がついていますので紹介します。
フェアトレードマーク(認証)
フェアトレードマークは、国際フェアトレード基準を満たしている製品につけられるマークです生産者と企業の取引を公平にするためにつくられ、消費者が一目でわかるよう、デザインは統一されています。
以前は自然食品専門店など、一部の店舗でしか販売されていませんでしたが、現在はコンビニやスーパー、百貨店など、身近なところでフェアトレードマークがついた商品を購入できるようになりました。
国際フェアトレードラベル認証
国際フェアトレードラベルは、原料から生産、加工、製造に至るすべての工程で、厳格な基準をしっかり守っていることを証明するラベルです。
ラベルは1種類ではなく、「COTTON」や「TEA」「HONEY」など、原料ごとに複数のタブが設けられています。国際フェアトレードラベルの認証をおこなうには、透明性と専門性が必要であり、2002年に「FLOCERT」というフェアトレードの認証を専門でおこなう独立機関が設立されました。
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フェアトレード商品の具体例
フェアトレード商品の具体例について紹介します。だれもが知っているものばかりなので、対象商品を見かけたらぜひ購入してみてください。
フェアトレードコーヒー
フェアトレードのなかで有名なもののひとつがコーヒーですコーヒーのほとんどは発展途上国で生産されていますが、いくらで買い取ってもらえるかについては、ニューヨークやロンドンなど、国際的な金融市場で決められています。
コーヒーは気象条件や市場の動向が価格に影響するケースが多くあり、国際的な金融市場が価格の決定権を握っていることで買い手有利な取引がおこなわれやすく、生産者の収入は非常に不安定です。
そのため、わずかな収入しか得られない生産者は、がんばって高品質なものをつくろうという気持ちが出てきません。また、過剰に農薬を散布したり、森林の伐採や児童労働などの問題も、意欲がわかないことからいつまでも解消されないままです。
しかし、フェアトレードでは最低価格が保証されるため、収入が増えることで生産者のモチベーションが上がり、品質向上や作業効率をアップできる機材を買ったり、地域に学校や病院などを建設することができるようになりました。
フェアトレードチョコレート
チョコレートの原料であるカカオ豆も、その多くが発展途上国で栽培されています。カカオ豆の生産で大きな問題となっているのは児童労働です。貧しさと労働力不足によって学校で教育を受けられず、過酷な労働を強いられている児童が世界で150万人以上いるといわれています。
カカオ豆の生産は収穫から出荷までには多くの工程と労働力が必要なため、子どもたちまで労働させられることになり、不十分な教育から知識や技術が身につかず、収入を増やすことができないという悪循環に陥っています。
この点でフェアトレードは、一定の価格が保証されているため、認証を受けたチョコレートが世界中に広まることで、つらい思いをする子どもたちが減っていくことでしょう。
▷SDGsにおける問題点とは?7つの課題と企業が取り組むべき解決策
フェアトレードの仕組みや商品について理解を深めておこう
世界中のすべての人たちが取り組むべき課題がSDGsであり、持続可能な社会にしていくにはフェアトレードへの理解は欠かせません。フェアトレードが注目されているということは、発展途上国の貧困や児童労働などの問題が解決していないという意味でもあります。
しかし、フェアトレードはただの慈善事業ではなく、生産者や労働者、消費者、企業それぞれにメリットがあることから、今後さらに広がっていくはずです。フェアトレードの仕組みや商品について、今から理解を深めておきましょう。
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