中小企業のSDGs取り組み事例を紹介!必要性や進め方も解説

最終更新日時:2022/08/02

SDGs

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昨今、SDGsが多くの人に認知され、積極的に取り入れる企業が増えてきました。本記事では、中小企業が取り組んでいるSDGsの事例を紹介しています。合わせてその必要性と進め方も解説しているので、SDGsへの理解を深めて取り組みに役立ててください。

SDGsとは何なのか

SDGsは、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」です。

人々が地球環境や気候変動に配慮しながら、持続可能な暮らしをするために取り組むべき世界共通の行動目標で、17の目標と169のターゲットによって構成されています。

「地球環境」「ジェンダー平等」「社会・経済」などさまざまな課題の目標について、2030年までの達成を目指しています。

中小企業におけるSDGsの必要性

SDGsへの取り組み姿勢は取引から人材採用、資金調達にまで影響を与えます。SDGsに取り組む企業は成長が期待され、SDGsに取り組まないことはリスクにもなる時代です。

SDGsに取り組まない企業は、ビジネス界の競争に勝ち残れない可能性が高まります。なぜならSDGsへの取り組みは、企業間の取り引きや資金調達、そして人材採用などの企業活動に影響を与えるからです。

例えば大企業をはじめとするSDGsに取り組む企業では、環境負荷の高い活動やジェンダー差別といった課題を持つ企業との取り引きを不可とするケースが生じてくるでしょう。

また、行政と金融機関が一体となった動きとしては、SDGsへの取り組み姿勢で資本投資や融資における資金調達に差が広がることが予想されています。

さらに、特に若い世代では、働く環境にエシカルな考えを求める傾向が高まっています。求職活動をする際、SDGsへの意識が低い企業にマイナスのイメージを持つ人が増えているため、SDGsへ取り組んでいない中小企業は、優秀な人材の採用が難しくなってくるでしょう。

SDGsに取り組まないことは、結果として企業の存続にかかわってくることが予想されているのです。

中小企業でのSDGs取り組み状況

SDGsへの認知度は昨今、急速に高まっていますが、現状、中小企業におけるSDGsへの取り組み状況はまだ低い状況です。

経済産業省の関東経済産業局が500社を対象に行ったSDGsに対する調査では、SDGsの取り組みに前向きな意見が得られた企業は10社のみでした。日本の中小企業では、SDGsの認知度は高まりつつあるものの、実施にまでは至っていない企業が多いのが現状です。

[出典:経済産業省 関東経済産業局「中小企業の SDGs 認知度・実態等調査結果 (WEB アンケート調査)」]

SDGsが中小企業にもたらすメリット

SDGsの取り組みをおこなうことで、中小企業が得られる下記のメリットについて解説します。

  • コストを削減できる
  • 他社との差別化ができる
  • ビジネスチャンスが生まれる
  • 企業のイメージが良くなる
  • 社会がかかえる課題に対応できる

コストを削減できる

SDGsの取り組みには「省エネ」や「省資源」など、環境負荷を低減させるような内容が多数あります。例えば、日本でも取り組みが進んでいるペーパーレス化もSDGsの取り組みのひとつで、森林伐採などの環境負荷を減らします。

SDGsの取り組みで期待できるCO2の排出やエネルギー消費の削減はコストの削減にもつながるでしょう。

他社との差別化ができる

前述したように、中小企業でSDGsに取り組んでいる中小企業はまだ少ないのが現状です。他社がやっていないことに取り組むことは、差別化につながります。

例えば同じような商品が並んでいるとき、環境や人権に配慮された商品・サービスが選ばれる時代です。SDGsの取り組みが中小企業に浸透していない今だからこそ、SDGsの取り組みが自社の価値を高める要因のひとつにもなるのです。

ビジネスチャンスが生まれる

2017年に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、「SDGsの達成を目指すことで、2030年までに12兆ドル以上の経済価値をもたらし、最大3億8,000万人の雇用が創出される可能性がある」と発表されました。

SDGsによって新たな市場が創出されています。SDGsに取り組む他社・他業種、行政などと連携したり協力を得られる可能性も考えられます。自社だけでは挑戦できなかった分野にも挑戦できるという、ビジネスチャンスの機会も増えるでしょう。

企業のイメージが良くなる

SDGsは世界共通の課題です。そのため、SDGsに取り組む企業は、社会貢献に積極的な企業としてイメージアップが期待できます。そして、先進的な企業として注目される機会も増えるでしょう。

企業イメージが向上すれば、企業の信頼獲得や優秀な人材の確保、売上の向上につながる可能性も生じます。

社会がかかえる課題に対応できる

社会問題への対応は、経営リスクの回避にもつながるといえます。SDGsは世界共通の課題で、既に大企業の多くはSDGsに取り組んでいます。

環境問題を疎かにする企業は大手企業との取り引きが不可となるなど、ビジネスのチャンスを失う可能性もあります。SDGsに取り組み、社会がかかえる課題に対応することは、企業の存続においても重要なことなのです。

中小企業のSDGs取り組み事例

ここからはSDGsに取り組む中小企業について、それぞれの取り組み事例をご紹介します。

株式会社ワンダフルライフ

ワンダフルライフでは、海岸のごみを拾う「ワンダフルCHITA」という活動を開始しました。ヘアサロンを経営していた同社は、「ヘアサロンでは大量の水を使い環境に負荷をかけているため、水に関連する活動をおこないたい」という考えがきっかけでした。

当初は従業員とその家族だけでおこなっていましたが、今後は一般市民にも参加してもらうイベントとして展開していく予定です。

流通株式会社

流通株式会社は、引越や片付けなどのサービスを展開している企業です。同社では、経済的な理由でランドセルを購入できない子どもにランドセルを贈る試みを実施。

きっかけは、勤務中の従業員の「多くの家には使われなくなったランドセルがある」という気付きでした。この取り組みで集まった約200個のランドセルを社員がメンテナンスし、同社の倉庫で譲渡会を実施。

子どもたち自身が好きなランドセルを選ぶ「ランドセル FOR ALL」はテレビや地方紙などのメディアでもたびたび紹介され、大きな反響を呼びました。

八光建設株式会社

建設業を営む八光建設では年に1回、従業員をたたえる「アワードセレモニー」を開催しています。

この取り組みでは、「後輩の面倒をよく見ている」「自主的に社内の清掃をおこなっている」など、数値化できない貢献にも光を当てて評価。総務や経理などで働く女性を評価する賞もあります。

働きがいのある会社づくりやセレモニーの開催で、社員のやる気や結束力が向上し、従業員のモチベーション維持につながっているといいます。

株式会社ワンプラネット・カフェ

株式会社ワンプラネット・カフェは、SDGsやサステナビリティの講演や研修などを行う企業です。同社では日本初のフェアトレード認証のプロデューサーとなったことでも知られています。

サステナブルな現場を体験できる視察ツアーも開催しており、地域にSDGsを理解してもらう機会も提供しています。

株式会社大川印刷

大川印刷では、SDGsにある17の目標すべてに貢献できる取り組みをおこなっています。環境負荷低減のため、運送には電気自動車もしくはディーゼル車を利用しており、コピーにはエコ用紙を使っています。

このように、多くの企業が社内でできる取り組みをはじめ、さまざまな側面からSDGs推進に貢献しているのです。

ホットマン株式会社

ホットマンは、タオル製造をおこなうメーカーです。同社では、可燃ごみを固形燃料として再利用、ボイラー燃料の切り替えによってCO₂削減など、タオルの製造過程における環境負荷を低減させています。

また、国内では初の日本製フェアトレードコットンタオルの製造・販売を行っています。そして、工場見学や職場体験などを通じて、SDGsの重要性について教育する場を設けているのです。

[出典:ホットマン「ホットマンSDGsへの取り組み」]

有限会社ワールドファーム

ワールドファームでは、日本における将来的な農業の担い手育成に注力しています。同社では「第六次産業の推進」に大きく貢献しています。第六次産業とは、農業生産から販売までを一貫して行う食農ビジネスの取り組みのことです。

同社は地域の生産者との連携も図りながら、大規模で効率的な農業を目指しています。また、国産野菜の新しい需要を創出するための商品づくりも推進しています。

[出典:ワールドファーム「ワールドファームの取り組み」]

株式会社水島紙店

紙や紙製品の卸売業などを営む和洋紙の専門商社、水島紙店では、店舗で使用する袋をポリ袋から紙袋へと切り替える「紙袋プロジェクト」を実施しました。

同社は、ポリ袋を利用する店舗に、「紙袋に切り替えないか」と長野県内の約100店舗に提案したのです。提案の結果、プロジェクトに参加した店舗は、38社。紙袋のデザインは、店舗によってオリジナルデザインで製作され、店舗の特徴やイメージを再現した質の高い紙袋を提供しました。

[出典:かぶしき水島紙店「【長野県】株式会社水島紙店 ~事業を多角化し、海洋プラスチック問題の解決と環境・観光県ブランドの支援に貢献~ 」]

株式会社Home Group

株式会社Home Groupが運営する京都831家では、地元の農家で作られた野菜をもとに、無添加の「ドレッシング」「ソース」「ジャム」などを製造しています。

きっかけは野菜の在庫が大幅に余り、食品ロスにつながっていたことでした。そこで、買いに来てもらうのではなく、自ら作って送り出すというビジネススタイルに変更したのです。

また、同社では事務所を持たず、従業員は全員リモートでの勤務。多様な働き方を求められる現代に適した制度を導入しています。

株式会社山翠舎

山翠舎は、空き家となった古民家がただ解体され処分されると、コストがかかるばかりという点に着目しました。同社では、職人が丁寧に解体することで、再利用できる木材の保管・利用を始めました。

木材の処分には大量のCO₂が排出されています。そのため、この取り組みは環境負荷の低減につながっています。

平井建設株式会社

平井建設では、宴会や会食におけるフードロスを削減するため、最初の30分と最後の10分間を食事のみに充てる「30・10運動」を推進しています。

そのほかにも、予防接種の全額負担や毎週水曜日のノー残業デーなど、従業員の健康を考えた制度が取り入れられています。そして、積極的な女性採用など、さまざまな側面からSDGs推進を図っているのです。

[出典:平井建設株式会社「SDGsへの取組み」]

石屋製菓株式会社

石屋製菓は白い恋人を看板商品とする製菓会社です。同社では、看板商品に使うトレーには、バイオマス素材を使用するなど、環境にやさしい素材を活用しています。また、「NO!ハラスメント」宣言をおこない、働きやすい職場づくりに力を入れています。

アイビック食品株式会社

アイビック食品では、日本赤十字への寄付をおこなっています。日本赤十字への寄付は、貧困や飢餓で苦しむ人々の支援になります。

また、従業員の健康を守るために禁煙やがん検診を推進しているほか、女性が働きやすい環境づくりにも努め、従業員の健康やジェンダー平等の実現に向けて取り組んでいます。

中小企業が取り組みを成功させるためのポイント

ここで、中小企業がSDGsの取り組みを成功させるため、下記のポイントについてご紹介します。

  • 経営者が率先して取り組む
  • 優先するべき課題を明確にする
  • 目標設定を高くし過ぎない
  • 従業員のモチベーションに気を配る
  • 会社全体で取り組む

経営者が率先して取り組む

SDGsは世界的な課題であり、企業が取り組む場合は、企業全体で推進していかなければなりません。社内にSDGsを浸透させるためには、SDGsの目的や自社でおこなう取り組みを共有することが大切です。

そのためには、発言力・影響力のある経営陣が率先して取り組み、社内や社外に向けても発信するといった行動が必要となってくるでしょう。一部の従業員に任せきりでは、従業員全体からの協力が得られず、SDGsの取り組みも失敗するリスクがあります。

優先するべき課題を明確にする

SDGsではさまざまな分野の課題が挙げられています。ただし、企業によって貢献できることは異なります。従って、SDGsの観点から見て、自社で取り組むべき課題を明確にしましょう。

取り組みの優先順位について、SDGsの取り組みの妨げになっているなど、自社にとって課題であるものから検討することが大切です。

目標設定を高くし過ぎない

目標を高く設定しすぎると負担も大きくなる可能性があります。負担が増えれば、本業がおろそかになることや、途中で頓挫するリスクが予想できます。

そのため、本業とSDGsの取り組みを両立できる範囲で、現実的な目標を設定することが成功へのカギをにぎっているのです。

従業員のモチベーションに気を配る

SDGsは長期的な課題であるため、すぐに成果が出なくても致し方ないといってよいでしょう。ただ、利益につながりにくい業務は、従業員のモチベーションが下がりやすいため、モチベーションを維持させる工夫が必要です。

従業員のモチベーションを維持・向上させるためには、SDGsに取り組む目的や、将来的な効果を伝えることが効果的です。そして、働く人の意見にも、積極的に耳を傾けましょう。従業員の意見を取り入れることは、モチベーションの維持や取り組みの改善にもつながります。

会社全体で取り組む

SDGsは、会社全体で推進することが大切ですが、従業員のなかにはSDGsについて知識がない人がいるかもしれません。すべての従業員がSDGsを理解するために、研修やワークショップを実施すると効果的です。従業員がSDGsを理解し、自分ごととして考えるようになると、社内にSDGsが浸透してくるでしょう。

中小企業が行うSDGsの進め方【6step】

中小企業がSDGsに取り組む際の進め方を6ステップでご紹介します。

  1. SDGsについて理解を深める
  2. 課題を洗い出す
  3. 目標を決める
  4. 自社の経営と統合する
  5. SDGsの取り組みを実行する
  6. 活動報告を発信する

1.SDGsについて理解を深める

SDGsについて理解を深めることも大切です。SDGsについての知識がなければ、取り組む意味や目的が伝わらず、協力体制を構築できない可能性があります。

SDGsにおける17の目標や169のターゲットなどのSDGsの基礎知識だけでなく、自社がSDGsに取り組む際の方向性なども社内で共有しましょう。

2.課題を洗い出す

SDGsで掲げられている目標をもとに自社の課題を洗い出し、現状を分析することが大切です。

そしてSDGsの課題と照らし合わせながら、自社が貢献できる分野を探すとよいでしょう。企業によってSDGsに貢献できる分野は異なるため、独自の取り組みを見つけてみてください。

3.目標を決める

課題を洗い出したら具体的な目標を設定します。この時、できる限り具体的に、数値を用いて目標を設定すると、行動しやすくなります。

目標が曖昧になると、途中で方向性を見失いがちです。そのため、「○○年で××%アップ」など、具体的に目標を定めましょう。同時に取り組む計画も立てましょう。最終的な目標だけでなく、段階的に計画を練ることで、目標までに遅れがあれば、早期発見や改善につなげます。

4.自社の経営と統合する

決定した目標を、どの部門が担うのかまで想定します。課題に対して関わりの少ない部門が中心となっても、取り組みはなかなか進まないでしょう。

ジェンダー平等の課題に取り組むのであれば、採用や育成をおこなう人事部が主体となるなど、各部門に落とし込むのです。部門を横断して取り組む課題があれば、専門のプロジェクトチームを編成してもよいかもしれません。

5.SDGsの取り組みを実行する

実際にSDGsの活動を実行に移します。実行する直前には今一度、自社がSDGsに取り組む目的や効果を、社内全体で確認するとよいでしょう。SDGsの認識のズレや方向性の違いを、実行前に正すことができます。

6.活動報告を発信する

SDGsの取り組みは、活動報告として積極的に発信しましょう。社内報告にとどめず、社外にも発信することが大切です。社外に発信することで、社外からの意見や協力を得られる可能性があります。

また、活動報告をする際は、同時に計画の見直しや改善をおこなうとよいでしょう。定期的に進捗状況を確認することで、取り組みの遅れや新たに生じた課題を早期発見できます。

中小企業も積極的なSDGsへの取り組みが必要

SDGsは世界が掲げる取り組むべき課題です。そのため、一部の国や地域、企業だけでは、各目標は達成できないでしょう。

また、SDGsに取り組むことは、企業にさまざまなメリットをもたらします。イメージアップだけでなく、採用市場においても注目度が高まるでしょう。したがって、中小企業でも積極的にSDGsの取り組みを取り入れていくことが大切です。

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