テレワークで不公平を感じる原因は?生じる不満や解消方法を解説

最終更新日時:2022/10/06

テレワーク

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通勤時間削減など社員にとってのメリットが多い印象のテレワーク。政府の働き方改革も後押ししテレワーク人口が増加する一方で、「テレワークができない人」や「テレワークならではの不満」に対して、不公平さを抱く人もいるようです。本記事では、どのようなことに不満が生じるのか、原因と解消方法をあわせて解説します。

テレワークに不公平を感じる人も存在する

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、テレワークは急速に浸透しつつあります。

総務省が公表した資料によれば、民間企業におけるテレワークの実施率は、2020年3月時点の17.6%から、2021年3月には38.4%にまで上昇。さらに企業規模別では、企業規模の大きさに比例してテレワーク実施率も上がり、大企業においては2021年3月時点で実に7割近くの企業がテレワークを実施している状況です。

しかし、テレワークが浸透する一方で、同じ会社にいながら職種や業務によっては、どうしてもテレワークができない社員もいます。

そのような状況に不公平さを感じたり、勤務環境や形態が変わっているにもかかわらず、評価制度が変更されないことに対して不満を感じたりするケースも少なくありません。

[出典:総務省「テレワークの実施状況」]

テレワークで不公平を感じる原因は?

そもそも不公平感は、「判断や処理、処遇の偏り」を感じたときに生じるものです。

そういった意味で、テレワークの、通勤時間がなくなる、働く場所を自由に選べる、自分のペースで仕事ができる、といった特徴をメリットとして捉えている人は多く、同じ組織内で業務上テレワークができない人が不公平さを感じるのは、当然と言えるかもしれません。

また、新型コロナウイルス感染症が流行し、続々と企業がテレワークへの移行を進める中で、「テレワークができる人は勝ち組」という非常に偏った見方が、一部インターネット上で見受けられた点も、不公平さを助長する一因となったとも考えられるでしょう。

しかしながら、テレワークをする社員は全く不満がないのかというと、必ずしもそうとは限りません。その代表的な例としては、評価基準の不透明さや自宅で働くことによって発生するさまざまなコストの負担などが挙げられるでしょう。

テレワーク社員が抱く不満の理由は?

そこでまずはテレワーク社員が抱く不満について解説していきましょう。

テレワークができる社員は、それによって通勤時間や通勤ストレスを削減できるなどのメリットがありますが、良いことばかりとは限りません。

人事評価への不安

テレワークを行う社員にとって、人事評価は不安要素のひとつです。

テレワーカーは、上司の目の届かない場所で仕事をすることになります。この場合、評価はどうしても目に見える成果のみに偏りがちで、取り組む姿勢やプロセスでの評価は困難になってしまうのです。

営業職など、成果が数値化しやすい職種であれば、成果主義の評価でも問題ないかもしれませんが、バックオフィス業務など成果の数値化が難しい社員にとっては、評価基準が不透明になりがちであり、不満が発生しやすくなってしまいます。

気持ちの切り替えが必要

テレワークでは、上司・同僚などの周囲の目がなくなることから、より「自分を律する力」と「自主性」が求められます。

また、テレワークを導入する企業においては、自宅でのワークを原則としている企業も多いでしょう。働く場所が普段の生活空間に限定され、どうしても集中しにくい環境で仕事をしなければならないことが、ストレスになる場合もあります。

環境整備・維持費用の負担

テレワークを、自宅で行う場合、エアコンや照明などの電気代、水回りを使用することによる水道代、Wi-Fiなどの通信費用が発生します。

さらには、より良い仕事環境を作るために専用デスクやイス、モニターを準備することもあるでしょう。このような仕事環境の整備にももちろん費用が発生します。仮にこのような費用に対して、会社からの支援がなく、自己負担となっているのであれば、いずれ不満や不公平感の種になると考えられます。

時間外労働が発生しやすい

出社していると、退勤時間になり周囲が仕事を切り上げて帰り始める社内の雰囲気が、自分にとっても一つの区切りになることがあります。

しかし、テレワークだとそのような変化が感じられないため気づくと退勤時間が過ぎていたり、さらには公共の交通機関を利用しないことから帰宅時間を気にすることなく、深夜労働をしてしまったりします。

この点は、テレワークによって強いられることではなく、自主的にコントロールが可能な領域ですが、テレアークによる変化として不満に感じてしまう場合もあるでしょう。

孤独を感じる

自宅でのテレワークを指定されている場合、一人で黙々と作業をする時間が1日の大半を占めることになるため、人によっては強い孤独感や孤立を感じてしまうこともあります。

なかには、当たり前のように周囲とのコミュニケーションがあった日常から、一日中誰とも話さない状況になった人もいるでしょう。一人で仕事を行う環境を「周囲に気を遣わなくて済む」などのメリットとして捉えられる人もいれば、逆に上司や同僚との適度なコミュニケーションが仕事の活力になっていたという人もいます。

後者にとっては、テレワークが望まない環境であることも多く、不満を感じる結果となってしまいます。

テレワークできない社員が抱く不満の理由は?

では、テレワークができない職種の社員はどのような理由で不満を抱くのでしょうか。

出社までに要する時間や労力の負担

非テレワーク社員は、毎日職場へ通勤しなければなりません。とりわけ満員電車への乗車は、心身ともにストレスとなるのではないでしょうか。都内の平均通勤時間は往復でおよそ1時間半程度です。

テレワークであれば、通勤時間がなくなり、朝ゆっくりと過ごしたり、退社後のプライベートな時間が増えたりするのは事実としてあるため、ワークライフバランスの不公平さは否めません。

[出典:総務省統計局「通勤・通学時間が長い!?ランキング」]

業務に集中できない

オフィスに出勤する社員は、電話対応や来客対応など、自分ではタイミングをコントロールできない業務も多数発生します。また、「集中したい業務」を行なっている時に、周囲から話しかけられてしまうこともあるでしょう。

さらには、テレワークによってオフィス出社する社員が減ったことで、そのような負担が、「出社組」に集中する上、取次業務も増えてしまいます。会社が何らかの改善策を講じなければ、業務の偏りによる不満はどんどん膨らんでしまいます。

業務の分担がしにくい

オフィスにいれば業務分担について意思疎通も取りやすいですが、テレワーク社員に対しては逐一メールやウェブ会議などで説明をしなければなりません。

テレワーク社員同士であればそれもいつものことだと割り切れるかもしれませんが、出社組とテレワーク組の両方が存在するチームなどでは面倒に感じることもあるでしょう。

「自分のペース」を保つことができない

勤務時間中であっても、業務の区切りにちょっとした間食をとったり、数分程度の適度な休憩を取ることもあるでしょう。しかし、オフィス勤務だと、周囲の目を気にして、リフレッシュのための休憩でさえも気を遣ってしまいます。

適度な休憩は問題ないはずでも、遠慮しなければならない雰囲気を感じている人にとっては、テレワーク社員の自由度の高さとの違いに不公平さを感じるでしょう。

テレワークに対する誤解がある

働く様子が見えないことから生じる、テレワーカーに対する決めつけや思い込みも不公平感を生じさせる要因です。出社しなくなると仕事に取り組む姿勢を目視できないため、テレワーク社員の業務状況は不透明になりがちです。

そのため、少しコミュニケーションがすれ違っただけでも「さぼっているのではないか」という疑念が生じやすくなります。事実はどうであれ、「こっちは休憩も取らず働いているのに、テレワークは、いつでもサボれる」などの思い込みは、不平不満のもとになってしまいます。

テレワーク社員の勤務態度への不満

これはテレワーク社員に対してに限らず、双方が感じやすい不満とも言えますが、テレワークによって、メールやチャットなどのテキストコミュニケーションが増加することになります。

相手の表情や声のトーンなど、非言語情報のないテキストコミュニケーションでは、相手の真意が分からず、何となく「責められてる?」「怒られてる?」などと感じたことのある人も多いのではないでしょうか。

このようなコミュニケーションのズレは、積もり積もって人間関係に軋轢を生じさせてしまいます。その結果、お互いが不満を抱くようになってしまうのです。

テレワークに関する不満の解消方法

テレワークができる・できない、どちらの立場にも不満や不公平さはあることをご説明しました。しかし、テレワーク自体は、多様化した現代社会のライフスタイルに合った働き方のひとつであり、今後も拡大・定着していくと予想されます。

そのため、不満をぶつけ合うのではなく、企業と社員、テレワーク社員と非テレワーク社員が協力して解決方法を模索するべきと言えるでしょう。ここからは、その解決方法の例をいくつか紹介します。

双方の意識改革

まずは全社員に対し、テレワークの必要性や目的を十分に説明することが挙げられます。働き方にかかわらず、同じ組織に属している以上、同じ目標に向かう仲間であることを再認識しましょう。

その際、テレワーク社員に対しては、勤務場所を選べる自由に対する責任について理解を高めてもらうことも重要であり、「見えないこと」が誤解の要因になっているのであれば、毎朝朝礼をビデオ会議で行うのも人間関係を円滑にする一つの手段です。

通常以上にコミュニケーションを重視する必要があることを、双方が改めて認識できるようにしましょう。

電子化の普及

テレワークは導入したものの、業務はアナログのままという企業は珍しくありません。

たとえば押印や承認、経費精算のためだけの出社は、テレワーク社員にとっては、非効率さを感じるだけでなく、実際にコスト(交通費)や時間・労力を費やすことになってしまいます。

テレワークの定着を計画しているのであれば、早急にワークフローを見直し、デジタル化を進める必要があります。

状況に合った新しい働き方の導入

通勤を必要とする社員も柔軟な働き方ができるよう、時間単位で取得可能な有給休暇制度を設けたり、フレックスタイム制を取り入れたりするのも良いでしょう。

どのような制度が社員の不満解消につながるのかは、状況によって異なります。社員の抱えるペインは何かを吸い上げ、その解決につながる働き方ができるようにルールを整えていくとよいでしょう。

評価制度の見直し

テレワーク社員の勤務態度は目に見えにくいため、成果以外で行う「定性評価」は特に難しくなります。したがって、出勤していた時とは異なる尺度での評価が必要となるでしょう。

具体的には、定性的な評価をするための1on1を取り入れる、あるいは、日報などの報告書の提出をルールとするなどの方法が挙げられます。

いずれにせよ大切なのは、何がどう評価され、どのように処遇に反映されるのかの透明性を保つことです。また、評価制度を見直した後も、適切に機能しているのかの定期的なチェックは実施するようにしてください。

それぞれに合った手当制度の導入

環境の変化に応じた手当を導入することも、不満解消の有効な手段です。労働基準法に定められる時間外手当・休日手当・深夜手当以外の手当は、会社の戦略に合わせて任意で設けることができます。

テレワークの場合は、在宅勤務によって発生する光熱費や通信費などの負担を、「在宅勤務手当」などにより、一律で一部補助する方法が一般的です。

また、テレワーク社員が大半を占めるようなケースでは、業務上の都合から出社を強いられる社員に対しては、通勤やワークライフバランスの格差などのストレスを考慮し、「出社手当」を設ける方法もあります。手当については就業規則に記載しなければならないため、変更した際は更新忘れのないようご注意ください。

サポート体制の充実

テレワークによる孤独感や孤立感といった心理的なストレスに対するサポート体制を構築しておくことも重要です。不満や不公平さを感じた際、すぐに周囲に伝えられる人と、そうでない人がいます。

そのため、不平不満が表面化していないからといって、不満がないとは限りません。メンタルヘルスチェックを定期的に行い、高いストレス度が見受けられる社員に対しては、産業医による面談などの適切なサポートができるよう、体制を整えておきましょう。

コミュニケーションの質と量を高める

すれ違いや誤解を防ぐためのコミュニケーションの質と量を高める工夫をすることも大切です。メールや電話だけでなく、フランクなテキストコミュニケーションが可能になるビジネスチャットや、顔を見て話すことのできるオンライン会議ツールなどは、積極的に取り入れましょう。

また、週に一度など適切な頻度でチームミーティングや1on1ミーティングを開くなどコミュニケーションを取る機会をルール化することもコミュニケーションの活性化に効果的です。

担当業務や進捗状況の見える化

チームメンバーがそれぞれに抱える業務や進捗状況を見える化することも不満の解消に有効です。また、業務の可視化は、メンバー間の信頼関係の構築に役立つだけでなく、遅延やトラブルの早期発見など、プロジェクトマネジメントを円滑にする役割も期待できるでしょう。

タスク管理ツールなどを活用して、リアルタイムかつ業務の状況を一元管理することで、業務効率も大きく改善するはずです。

テレワークにおける「見えない社員」の業務を見える化!タスク管理ツール「Jooto」

テレワークの不公平を解消して働き方の多様化を促進させよう

担当する業務特性からテレワーク化が難しい社員にとっては、テレワークにより得られるメリットとの格差に不満を抱くことがあっても無理はありません。

たとえ、それが致し方ないこととわかっていたとしても、企業側がそのような格差を理解し、是正するための取り組みを行わなければ、いずれ離職につながってしまうこともあるでしょう。

しかしテレワーク社員も、働き方の違いから生じるデメリットから不公平さを感じていることもあります。多様な働き方を実現するには、気持ちよく円滑にコミュニケーションを取るためのルールやマナー、環境整備などが必要です。

双方の立場から不公平感を解消する取り組みを行い、生産性の高い職場づくりを目指しましょう。

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