高度プロフェッショナル制度とは?対象者やメリット・デメリットを解説

記事更新日:2022/07/29

働き方改革

プロフェッショナルの文字とビジネスマン

働き方改革が進められる中、新たな制度として注目が集まる高度プロフェッショナル制度。特定の業務を対象とした高度プロフェッショナル制度とは、一体どのような制度なのでしょうか。本記事では、そんな高度プロフェッショナル制度について詳しく解説していきます。

高度プロフェッショナル制度とは?

「高度プロフェッショナル制度」は働き方改革の一環として、2019年4月から施行された制度です。

まだ導入から日が浅いため、十分に浸透しているとはいえませんが、一定の年収があり、一部の専門職に従事する労働者に、労働時間ではなく成果で賃金を支払う仕組みです。

欧米のホワイトカラーエグゼンプションを日本に導入したもので、金融商品の開発・ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発業務などが対象。「残業代ゼロ制度」「脱時間給制度」などとも呼ばれています。

ここでは、高度プロフェッショナル制度がどのようなものなのかを解説します。

高度プロフェッショナル制度の基本内容

高度プロフェッショナル制度の目的は、高度な専門知識・技能を要する業務の従事者が、時間ではなく成果によって評価される働き方を実現することです。対象となる労働者は、労働基準法の定める労働協定・割増賃金支払義務の適用から除外されます。

頭脳労働者、いわゆるホワイトカラーの業種は、労働時間と成果が比例するとは言えません。そのため、労働時間による拘束は、かえって生産性を低下させてしまう可能性もあります。

本制度によって、労働成果が評価される雇用形態を実現し、労働者の能力の発揮、生産性の向上、多様な働き方の実現が期待されています。一方で、労働基準法の制限から外れることで、長時間労働や健康被害などが発生する危険もあります。

そのため、高度プロフェッショナル制度の導入にあたっては、企業は労使委員会を設置する、労働者の健康を確保する、労働者の同意を得る、などのさまざまな規定に従う必要があるのです。

裁量労働制との違い

高度プロフェッショナル制度は、労働時間を労働者の裁量で決めるという点で、裁量労働制によく似ていますが、両者は何が違うのでしょうか。

まず、高度プロフェッショナル制度では、休日労働、深夜業の割増賃金が発生しません。裁量労働では、休日労働は3割5分増以上、深夜業では2割5分増以上の割増賃金を支払わなければなりませんが、高度プロフェッショナル制度はこのような、労働基準法第4章の定める規定は適用されません。

そして、労働に対しての評価の仕方が異なります。裁量労働は、業務の性質上、業務遂行の手段・時間を労働者にゆだねる必要があることから生まれた制度です。そのため、評価はあくまで労働時間であり、法定労働時間を超えた分の労働には2割5分増以上の割増賃金が発生します。

一方、高度プロフェッショナル制度は、成果によって評価がおこなわれるため、法定労働時間を超えた労働をしても、残業代が発生することはありません。

高度プロフェッショナル制度の対象要件

高度プロフェッショナル制度には、対象となる労働者が年収と業務内容により限定されています。ここではこれらについて、具体的に解説していきます。

年収要件

高度プロフェッショナル制度では、基準となる年収が規定されており、使用者から支払われる年収が、1,075万円を超えていなければなりません。

この1,075万円という数値は、「労働者の基準年間平均給与額の3倍相当」と定められていることから算出し、規定されたものです。

対象業務

高度プロフェッショナル制度では、対象業務は労働者の裁量で労働時間を決められるものと規定されています。言い換えれば、使用者が労働者に具体的指示をおこない、労働者の裁量を奪うような業務は対象になりません。

厚生労働省が定める、高度プロフェッショナル制度の対象業務は以下のとおりです。

①金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

②資産運用(指図を含む。以下同じ)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務

③有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務

④顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務

⑤新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

[出典:厚生労働省「高度プロフェッショナル制度の概要」]

高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナル制度には、どのようなメリットがあるのでしょうか。働く人のワークライフバランスの向上や成果への正当な評価など、代表的なものをご紹介します。

ワークライフバランスの向上

高度プロフェッショナル制度を活用することで、ワークライフバランスを充実させられます。本制度では、労働時間の規定がありません。そのため、働く人は成果を出せば時間に拘束されることがなくなります。

フルタイム労働ではむずかしかったライフスタイルを実現できるので、プライベートをよりよいものにできるでしょう。

成果への正当な評価

高度プロフェッショナル制度では、より正当な評価を与えられるようになります。従来の時間労働制では、給与が労働時間ベースで決まっていました。そのため、相対的に成果への評価が反映されにくいという性質がありました。

高度プロフェッショナル制度では、評価対象となるのは成果です。自分の仕事が認められていると実感することは、労働者のモチベーションの向上につながるでしょう。

生産性の向上

高度プロフェッショナル制度では、生産性の向上が期待されています。時間に拘束されないため、成果を出せば労働時間は短時間でも問題ありません。そのため、労働者にとっては、仕事を早く終わらせる強い動機付けになります。

くわえて、労働時間が減り、プライベートが充実すると、労働者の心身によい影響を与えます。良好なコンディションで仕事に臨むことで、高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

高度プロフェッショナル制度のデメリット

高度プロフェッショナル制度にはメリットもある一方、デメリットも指摘されています。導入をおこなう前に、この問題点をしっかり把握しておかなければなりません。

長時間労働につながるリスクがある

高度プロフェッショナル制度の導入によって、労働者が長時間労働を強いられるおそれがあります。

時間労働制の場合は、所定時間の労働をおこなえば、労働者としての最低限の責務はクリアしていました。しかし、本制度は労働者を時間ではなく成果で評価します。そのため、思うような成果が出ない場合は、労働時間が大幅に増加するおそれがあります。

本制度では、労働者の健康確保措置のために、休日や健康管理時間の規定が定められてはいます。しかしその範囲内であっても、長時間の労働が常態化すれば、労働者のワークライフバランスは崩壊してしまうでしょう。

評価基準が不透明

高度プロフェッショナル制度では、評価基準が不透明だという指摘もあります。本制度は評価対象を成果としていますが、対象業務の中には評価がむずかしいものもあります。

たとえば、アナリストや研究職は成果がわかるまでに、長い期間を必要とします。そのため、半年や1年ごとの定期的な評価では、どのような成果を出したのかわかりません。

このような不透明な評価のもとで給与や待遇を決めると、労働者のモチベーションの低下、人材流出などの問題が発生するおそれがあります。

手当の支給義務がない

高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者には、労働時間に応じた手当の支給義務がありません。

本制度の評価対象は時間ではなく成果であるため、労働時間残業手当、深夜手当、休日出勤手当のような、労働時間に見合った給与は発生しません。そのため、今までよりも給与が下がる、労働時間が長くなるリスクがあります。

長時間労働抑止および健康管理のための措置

高度プロフェッショナル制度では、労働対象者は労働基準法が定める労働時間、休憩、休日などの規定が適用されません。

それに代わり、本制度の導入にあたっては、労働者が健康な状態を維持できるように、企業側がおこなうべき措置が規定されています。それぞれについて解説していきましょう。

健康管理時間の把握

使用者は、労働者の健康管理時間を正確に把握しなければなりません。健康管理時間とは、労働者が事業場内にいる時間と事業場外において労働した時間を合計した時間を指します。そのため、事業場内での休憩なども、健康管理時間に含まれます。

使用者は、タイムカードや勤怠管理システム、ICカードによる入退場記録など、健康管理時間を客観的に把握できる手段を講じなければなりません。記録した時間は医師の健康診断にも用いられるため、一ヶ月ごとの合計時間を把握しておく必要があります。

休日の確保

使用者は、労働者に年間104日以上の休日を与えなければなりません。また、休日は4週間を通じ4日以上を取得することが求められます。

また、労働者本人が年間を通じた取得予定を決定し、使⽤者に通知すること及び取得状況を使⽤者に明確に提示すること、長期間の連続勤務を避けるため適切な頻度で取得することが望ましいとされています。

選択的措置

使用者は労使委員会設置の上、対象労働者の健康のために、以下のいずれかの措置を講じます。

①勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限

始業から24時間を経過するまでに、11時間以上の継続した休息時間を確保しなければなりません。加えて深夜業は1ヶ月中、4回以内に制限されます。

②健康管理時間の上限の設定

1週間に40時間を超える分の健康管理時間が、月に100時間以内、または3ヶ月240時間以内に制限されます。

健康管理時間とは、労働者が会社にいた時間、会社以外の場所で働いた時間の合計値です。会社での休憩時間もこれに含まれます。

③連続した休暇の確保

1年に1回以上の連続2週間の休日を労働者に与えます。なお、本人が請求した場合は、「連続1週間の休暇を2回以上」に替えることも可能です。

④健康診断の実施

1週間あたり40時間を超えた健康管理時間の合計が、1ヶ月で80時間を超過した場合、健康診断を実施します。この条件を満たさなくても、労働者からの申し出があれば健康診断を実施します。

健康・福祉確保措置

労働者の健康・福祉確保措置として、以下のいずれかを実施します。

①選択的措置の追加実施

前述した選択措置から、追加で措置を選びます。

②医師による面接指導

③代償休日又は特別な休暇の付与

④心とからだの健康問題についての相談窓口の設置

⑤適切な部署への配置転換

⑥産業医等による助言指導又は保健指導

高度プロフェッショナル制度の導入方法

ここでは高度プロフェッショナル制度の導入について、1から順に説明していきます。

労使委員会の設置

はじめに、対象となる事業場で労使委員会を設置します。この委員会は労働者側と使用者側の両方で構成されていて、労働者は委員会の半数を占めなければなりません。なお、労働者1人と使用者1人という構成は認められません。

労使委員会設置にあたっては、今後の開催日程、定足数、議事・決議方法、その他必要などのルールを決定します。

労使委員会の決議

労使委員会を設置後、決議をおこないます。委員の5分の4以上の多数により決議されなければなりません。決議すべき事項は以下のとおりです。

1.対象業務

高度プロフェッショナル制度を導入する対象業務を明らかにします。

2.対象労働者の範囲

高度プロフェッショナル制度を適用する労働者の要件を明らかにします。

3.健康管理時間の把握

使用者が労働者の健康管理時間を把握する方法を明らかにします。

4.休日の確保

休日の取得手続きを明らかにします。

5.選択的措置

労働基準法で定められた選択措置の中から、実施する措置を決議します。

6.健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

労働基準法で定められた健康・福祉確保措置の中から、実施する措置を決議します。

7.同意の撤回に関する手続

高度プロフェッショナル制度が適用された労働者が、同意を撤回して本制度の対象から離れる際の手続きを決定します。

8.苦情処理措置

高度プロフェッショナル制度の対象労働者からの苦情に対する処置内容を決めます。

9.不利益取扱いの禁止

高度プロフェッショナル制度の適用に同意しなかった労働者に対して、不利益な取り扱いをしないことを決議します。

10.その他厚生労働省令で定める事項

以下の事項について決議する。

①決議は有効期限内であれば、再決議されない限りは有効であること。
②労使委員会の開催頻度、開催時期
③常時50人未満の事業所の場合は、健康管理がおこなえる医師を専任する。
④本制度にかかわる記録を有効期間中、および満了後3年間保存すること。

労働基準監督署長に決議内容を届出

労使委員会の決議が完了したら、所轄の労働基準監督署長に届けます。届出は、所定の様式(様式第14号の2)での提出が必要です。様式は厚生労働省ホームページから取得できます。

[出典:厚生労働省「『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律』について」]

対象労働者による書面での同意

高度プロフェッショナル制度を労働者に適用するために、対象労働者に書面での同意を得る必要があります。労働者に同意を得る時期、手続きなどは事前に委員会で決議しておきます。

労働者には、あらかじめ下記の事項を書面で明示しなければなりません。

  1. 高度プロフェッショナル制度の概要
  2. 労使委員会の決議の内容
  3. 同意した場合に適用される賃金制度、評価制度
  4. 同意をしなくても、配置・処遇などで不利益な取扱いは受けないこと
  5. 同意の撤回が可能で、撤回しても不利益な取扱いは受けないこと

また、対象の労働者には以下の事項を明示しなければなりません。

  1. 同意をした場合には労働基準法第4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)の規定が適用されないこと
  2. 同意の対象となる期間
  3. 同意の対象となる期間中に支払われると見込まれる賃金の額

以上のことをおこなった上で、対象労働者に書面で同意を得ます。

対象労働者の業務開始

対象労働者の同意が得られたら、対象業務を開始します。この間、使用者は決議した内容に則って、適切に対象労働者の管理・措置をおこなわければなりません。

また、使用者は決議から6ヶ月以内ごとに一度、下記について労働基準監督署長に報告をおこないます。

  • 対象労働者の健康管理時間の把握状況
  • 対象労働者の休日取得状況
  • 対象労働者への選択的措置
  • 対象労働者への健康・福祉確保措置

高度プロフェッショナル制度の導入状況

高度プロフェッショナル制度を導入している企業は現在、多くはありません。令和3年3月末時点では、本制度の導入企業は20社、対象労働者は552人に留まっています。

業種別に分けると、内訳は以下のようになっています。

①金融商品の開発の業務:1人
②有価証券の売買その他の取引の業務:79人
③有価証券市場の相場動向と有価証券の価値の分析・評価・助言の業務:27人
④顧客の事業の調査・分析・考案・助言の業務:441人
⑤新たな技術、商品、役務の研究開発の業務:4人

このように本制度の適用が少数に留まっているのは、高度プロフェッショナル制度導入のハードルの高さが原因だと言われています。本制度の導入には、労使委員会の決議や本人の同意、健康確保措置など、さまざまな準備が必要です。

施行からまだ日が浅いこともあり、制度導入の用意ができていないというのが現状のようです。

高度プロフェッショナル制度を導入する際は人事評価制度の見直しが大切

高度プロフェッショナル制度は、労働時間に縛られない自由な働き方実現のために、働き方改革の一環として施行されました。本制度を有効に活用することで、労働者はモチベーションの向上、良質なワークライフバランスの実現、正当な評価のもとでの労働が可能になります。

しかし、従来の時間制労働と大きく形態が異なるため、運用の方法はしっかりと考えなければなりません。また、労働基準法による制限が一部解除されるため、労働者が予期せず不利益を被るおそれがあります。

とくに、人事評価制度の見直しは必須と言えます。従来の評価制度では高度プロフェッショナル制度に対応しておらず、正確な評価が行えないことが想定されます。場合によっては、成果によって評価されるべき労働者が、適切な評価を得られないかもしれません。

高度プロフェッショナル制度の導入にあたっては、成果に見合った人事評価がおこなえる体制を整えるなど、万全な準備を心がけましょう。

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