ニューノーマルとは?ウィズコロナ時代の新たな働き方と抱える課題について
世界的なパンデミックをきっかけに生活様式が一変したという人も少なくありません。ニューノーマル時代ともいわれ、ある意味で「常識」が変わろうともしている現代においては、どのようなスキルや働き方が必要になるのでしょうか。本記事では、そんなニューノーマルとは何かについて、新しい働き方や必要なスキルなど詳しく解説していきます。
目次
ニューノーマルとは?
近頃「ニューノーマル」という言葉をビジネスシーンのみならず、日常生活でも耳にする機会が増えています。
しかしながら、「ニューノーマルってなに?」と、いまいち実態がわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、ビジネスシーンにおけるニューノーマルとはどのような意味なのか。新たな働き方や課題について、わかりやすく解説していきます。
ニューノーマルの意味
そもそもニューノーマルという言葉には、どのような意味があるのでしょうか。
「最近耳にするようになった」というビジネスパーソンも多いと思いますが、ニューノーマルは決して新しい言葉ではありません。
実は、ニューノーマルという言葉自体は、2000年初頭のインターネットの普及やテックカンパニーの台頭、2009年のリーマンショック後など、これまでも時代の変化に伴って働き方や生活様式が変わる際に用いられてきました。
そして、新型コロナウイルス感染症による生活様式の変化が、3回目のニューノーマル時代となるのです。
ニューノーマルに明確な定義はないものの、「New Normal」の言葉通り「新しい常態」や「新しい日常」を表す言葉であり、さらには、変化の前に戻ることは難しいという意味合いが込められていると考えることができます。
ウィズコロナ時代のニューノーマル
ウィズコロナ時代のニューノーマルにも、これまでと同様「変化する前に戻ることは難しい」というニュアンスが含まれていると考えていいでしょう。
しかし、ウィズコロナ時代のニューノーマルは、主に接触機会の減少やソーシャルディスタンスを確保しながらの経済活動やライフスタイルがテーマとなっています。
その過程において、サービスのオンライン化やテレワークの導入といった変化が起こり、企業においても組織の在り方やビジネスモデルの変革が求められるようになりました。
変化を受け入れ、時代に合わせたライフスタイルや働き方へのシフトが、ウィズコロナの急務となっているのです。
ニューノーマル時代に働き方はどう変わる?
次にニューノーマル時代における、働き方の変化を解説していきます。すでに浸透しつつある変化もありますが、ニューノーマル時代が訪れることで次の6つの変化が起こると考えられています。
- テレワークの普及
- オンラインへの切り替え
- DXの推進
- インサイドセールスの増加
- BCP策定率の上昇
- キャリアへの考え方の変化
課題や備えておくべきスキルを知る前に、まずはすでに起こっている、またはこれから起こる変化を整理していきましょう。
テレワークの普及
ニューノーマル時代における、代表的な働き方の変化がテレワークの普及です。感染リスクを回避するために、多くの企業が自宅で業務を進められる体制を整えています。
そして、こういったテレワークは、厚生労働省が主導する「新しい生活様式」としても推奨されている働き方です。「出社せずに働ける従業員を7割にまで高める」ことを目標に、各企業や経済界への働きかけが進められています。
▷テレワークとはどんな働き方?日本の現状や導入メリットをわかりやすく解説
業務のオンライン化やシステム化
各企業の競争力に直結すると考えられている変化が、オンラインへの切り替えです。BtoBやBtoC、取り扱う商材によって異なる点もありますが、あらゆるビジネスシーンにおいて対面からオンライン、アナログからシステム化へと業務移行が進められています。
オンラインツールの活用による非対面での営業活動、チャットボットによる問い合わせ対応のシステム化などは、「感染症リスクに配慮した取り組み」の代表例といえるでしょう。
DXの推進
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いることによる生活およびビジネスの変革を目的とした取り組みを表す言葉です。
そして、ニューノーマルによって多くの企業が変化を求められるなかで、その変化の中核を担うとされているのが「DXの推進」です。
IT化と似た印象を与えるDXですが、IT化は手段を指し、DXは最終的な目的である「先端技術の活用による企業優位性や競争力の維持」を達成するための取り組みであるという明確な違いがあります。
「ビジネスシーンや生活様式における変化を受け入れ、ITを活用する」という考え方を推進する姿勢そのものを、ウィズコロナ時代を迎える多くの企業が備えておくべきといえるでしょう。
▷DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味・定義・重要性をわかりやすく解説
インサイドセールスの増加
インサイドセールスの増加も、ニューノーマル時代における変化の一例です。インサイドセールスとは、オンラインツールを用いた非対面での営業活動を指します。
従来は、見込み客へのアプローチから初回のアポ獲得までを行い、その後は、フィールドセールスと呼ばれる対面営業の担当者へとつなぐ役割を担っていました。
しかし、非対面での営業が普及したことから、インサイドセールスの役割も担当者へのトスアップだけでなく、クロージングまでの一連の営業活動を行うポジションへと変化しています。
BCP策定率の上昇
BCP策定率の上昇も、ウィズコロナ時代の到来によって起きる変化の1つです。従来のBCP策定は、事業が立ち行かないほどの危機的状況に対し、損害を最小限に抑えつつ、重要な業務を継続しながら、いち早く復旧することが目的とされていました。
地震大国である日本を拠点とする多くの企業は、「東日本大震災をきっかけにBCP策定の重要性を理解した」とされています。
さらに、コロナ禍という未曾有の事態を経験したことにより、従業員の安全を確保しながらの事業の継続といった観点を中心に、BCP対策としての業務やビジネスのIT化の重要度が高まったといえます。
キャリアへの考え方の変化
ニューノーマル時代の訪れは、ビジネスパーソン一人ひとりのキャリア観にも大きな影響を与えました。
「働き方改革」は、ライフスタイルの多様化や労働人口の減少に対応するための取り組みとして以前より進められていましたが、コロナ禍による経験や時間が、仕事とプライベートの在り方、つまりワークライフバランスを、見つめ直すきっかけとなった人も少なくありません。
多くの人が、プライベートを重視した働き方を求めるようになり、ワークライフバランスを軸にしたキャリア形成を考えるようになりました。
就職・転職市場においても、今では「リモートワークが可能かどうか」を条件に、就職活動を行う求職者は珍しくないのです。
ニューノーマル時代の新しい働き方が抱える課題
業務のリモートワーク化やオンライン化といった変化によって顕著となる課題は、主に「コミュニケーション不足」「セキュリティ関連リスク」「モチベーションの低下」の3点であるといわれています。
以下で詳しく確認していきましょう。
コミュニケーション不足への懸念
ウィズコロナ時代の1つ目の課題が、コミュニケーション不足への懸念です。
すでに実感しているという方もいるかもしれませんが、オンライン化によって、対面でのコミュニケーションの機会は激減しました。
ビデオ会議ツールの活用により、顔を合わせながらのやり取りはできるものの、オンラインでは相手の表情や仕草といった非言語情報をつぶさに読み取るのは困難です。
また、オフィス勤務時のように、作業の合間の雑談から相談をしたり、相手の状況を伺いつつ話しかけたりすることができないため、悩みや不明点を一人で抱え込んでしまうことも問題となっています。
このようなコミュニケーション不足は、特に入社歴の浅い社員においては、大きなストレスとなってしまいがちです。
セキュリティ問題
セキュリティ問題も、ウィズコロナ時代の課題の1つと考えられます。
リモートワークでは、オフィス外にパソコンなどの端末を持ち出し、自宅だけでなくカフェやコワーキングスペースといった不特定多数の人が行き来する場所などでも作業をすることになります。そのため、情報漏洩や端末のウイルス感染といったリスクが高まる可能性があるのです。
そのリスクに対し、企業は「リモートワーク」を前提にしたセキュリティ対策が求められることになるでしょう。
具体的な対策としては、セキュリティソフトの導入、社員へのセキュリティ教育などが挙げられます。しかしながら、インターネットを介して業務を行う以上は、サイバー攻撃などのリスクを「完全に排除」することはできない点を認識しておく必要があるでしょう。
モチベーション管理
ウィズコロナ時代の到来によって、「モチベーションの管理が複雑化した」という声も聞かれ始めています。特にコミュニケーション不足によるストレス、生活様式の変化によるストレスが、ビジネスパーソンのモチベーション低下の主な原因です。
「気軽な会話ができない」のは、些細なことと捉えられがちですが、孤独感や孤立感を招くことにより、モチベーション低下の大きな要因にもなり得る変化といえます。
また、リモートワーク特有の「相手の状況が見えない」が故の気遣いの負担が、徒労感へとつながり、モチベーションの維持が難しくなるケースも多いようです。
ニューノーマル時代に必要となるスキルとは?
言わずもがなではありますが、時代の変化に伴い、ビジネスパーソンに求められるスキルも変化します。
ここからは、ニューノーマル時代に必要となるスキルを具体的に紹介していきます。リモート化やオンライン化に対応できる能力が、より重視される時代になることを見越しておくことが重要です。
コミュニケーションスキル
これからの時代は、非対面の状況を考慮したコミュニケーションスキルが求められます。
例えば、ボディランゲージで伝えてきた「熱意」や「自信」といった、非言語の情報をオンラインで伝えるのは困難です。
その結果、提示する資料は必然的に情報量が多くなりがちため、資料を事前に配布する、的確で端的な言葉を選ぶといった工夫が求められるでしょう。
また、リアルタイム性が劣ることを考慮した会話の間も必要であり、相手に正確に情報が伝わっているかを確認する頻度も必然的に多くなるはずです。
ニューノーマル時代には、このようなオンライン特有のコミュニケーション能力が欠かせないのです。
問題解決能力
ニューノーマル時代の到来によって問題解決能力の価値も高まっています。
一人で作業をすることの多いリモートワークでは、社員一人ひとりの自主性がより重要となります。また、ニューノーマルの中で新たに発生する問題には、過去の事例を応用できないケースも多々あるのではないでしょうか。
そのため、問題の本質を分析し、自分で対応・解決する「問題解決能力」を備えた人材への需要も自ずと高まるといえるでしょう。自分の頭で考え、解決策をロジカルに展開する能力が必要とされているのです。
セルフマネジメント力
ニューノーマル時代に求められる3つ目のスキルが、セルフマネジメント力です。
すでに実感しているビジネスパーソンも多いと思いますが、リモート環境下で、モチベーションや集中力を維持し続ける自己管理は容易ではありません。
通勤がなくなるなど「当たり前の日常」の変化に順応するのは意外と難しいものです。
問題解決能力にも通じる部分がありますが、ニューノーマル時代は、こういった環境の変化を自分自身で工夫しながら対応し、最適な環境を整える能力が求められます。
モチベーションマネジメントスキル
モチベーションマネジメントスキルも、ニューノーマル時代に必要な能力の1つです。セルフマネジメントスキルとの共通点もありますが、モチベーションマネジメントスキルとは自身だけでなく「他人のモチベーションへ配慮する能力」も含まれています。
企業や組織のポジションによっては、希薄になりがちな関係性への配慮、従業員に対するフォローを率先して行うといったアクションが求められます。ニューノーマル時代には、モチベーションの低下に対する適切な対策を講じる能力も必要です。
セキュリティ管理能力
リモートワークやオンライン業務の普及により、セキュリティリテラシーについては、管理者やシステム担当者だけでなく、社員一人ひとりが高いレベルで備えておくべき能力であるといえます。
「公共性の高い環境で、機密情報を扱ってしまう」、「安全性の低い通信回線を使ってしまう」といった些細なミスが、重大な情報漏洩トラブルにつながってしまうこともあるのです。
ニューノーマル時代に活躍できる人材になるためのポイント
ここからは、ニューノーマル時代に活躍する人材になるポイントを解説していきます。
求められるスキルについては前述の通りですが、新しい時代への移り変わりを予期し、考え方を変化させることが、なにより重要です。
自分で考える力を身につける
自分で考える力を身につけることが、ニューノーマル時代に活躍する人材になる1つ目のポイントです。
過去の好事例やテクニックを調べて、業務改善や課題解決に活かすことも一つの手段です。ただし、時代そのものが変化しつつある現代では、前例のない問題への解決策や、全く新しい視点でのアイデアを求められる機会も多くなります。
自らの視点で本質を見極め、効果的な仮説を見出すことのできる思考力に大きな価値があるのです。
自分の市場価値を常に意識する
ニューノーマルに対応する人材になるためには、自分の市場価値への意識をもつことも重要です。市場価値とは、「自分という商品に対する、社会的な価値」を意味します。
自身が「やりたいこと」だけにフォーカスするのでなく、常に「社会が求める能力や人材」を意識し、キャリア形成に反映していくことで「常に求められる人材」であり続けることができるようになります。
ポジティブシンキングを身につける
ニューノーマル時代に対応する人材になる、3つ目のポイントがポジティブシンキングを身につけるというものです。
ウィズコロナ時代は、「先行きが見通せない」ことが多く、ネガティブな情報が多いことも事実です。ただし、時代の変化に対応できる人材は、ネガティブな状況をいかに好転させられるかに着目しています。
「モチベーションの維持が難しい環境ならば、それを維持できる人材には価値がある」、「先行きが見通せない時代ならば、自分の仮説を試せる」といった発想をもつことが、ニューノーマル時代に対応する人材になるポイントです。
ニューノーマル時代に合わせて働き方を変えた企業事例
最後に、ニューノーマル時代に対応している企業事例を紹介していきます。ここでご紹介する企業は、いずれもウィズコロナへの対応をいち早く開始した企業です。
すべてを真似することは難しいかもしれませんが、参考にすることでよりスムーズな変革を行えるでしょう。
カルビー株式会社
すでにニューノーマル時代への対応を始めている1つ目の企業が、カルビー株式会社です。
カルビー株式会社は、「Calbee New Workstyle」と銘打った働き方改革のもと、リモートワーク化、IT化を推進しています。
同社では、コロナ禍以前の2017年よりモバイルワークの標準化とフルフレックス制度の導入、単身赴任の解除といった方法を取り入れていました。
こういった対策によって業務効率化だけでなく、従業員が自らウィズコロナ時代の働き方を考える社風を構築することにも成功しています。
ヤフー株式会社
ウィズコロナに限ったことではありませんが、新たな取り組みをいち早く取り入れている企業がヤフー株式会社です。
同社では、すでに約9割の従業員が在宅勤務を実施している中で、オフィスを、チームでコニュニケーションを取る場や一人で集中するための空間など、「仕事をする場所の選択肢の一つ」として残しています。
さらに特徴的と言えるのが、ニューノーマルへの取り組みを、管理職や経営層のみで進めるのではなく、社員が参画したうえで進め、社員自身がリモートワーク環境下で生じる課題への対策を講じる体制づくりに成功している点です。
具体的には、自分に合った家具を選んで組み立てられるサービスの開始や、運動量を記録し運動不足解消の目的を達成した社員に達成インセンティブを支払う「グッドコンディションボーナス」などのユニークな取り組みが挙げられます。
ピクスタ株式会社
クリエイティブ・プラットフォーム事業を手がけるピクスタ株式会社は、ウィズコロナに対応するために、数日でリモートワークの導入を決定し、数ヶ月で社員の原則完全リモートワーク化を図るなど、大幅な改革を急ピッチで実行し、成功した企業の1つです。
さらに完全リモート化の数ヶ月後には、リモートワークを「感染症対策の一時的措置」ではなく、「定着化」へと大きく舵を切り、オフィスの縮小と移転、育成計画の変更など、リモートを前提とした改革へとつなげています。
展開する事業がオンラインサービスであり、オンライン化が推進しやすかったという背景があるものの、短期間で感染者の推移に関わらない業務体制の確立に成功しています。
ニューノーマル時代に適応できる新しい働き方の実現へ
ニューノーマル時代に適応するためには、変化する事柄と変化による課題を「先見の明」を持ちつつ、把握することが何より重要です。
多くの企業が、ウィズコロナ時代を受け入れる必要性を感じています。しかし、「これまでと同等の業務が実現できるのか」といった不安から、働き方を変えられてない企業が多いことも事実です。
また、ニューノーマル時代において起こる変化と課題については、前例がない事態も想定しておくべきといえます。
未曾有の事態への対応策、そして、急激な変化にも順応できる柔軟性や思考力は、企業のみならず、働く側も身につけておくべきスキルといえるのではないでしょうか。
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