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【簡単】働き方改革とは?目的・取り組み背景・内容をわかりやすく解説

2023/01/13 2023/02/07

働き方改革

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最近よく耳にする「働き方改革」ですが、そもそも働き方改革とは具体的にどのような施策なのでしょうか。この記事では、働き方改革の目的や背景・具体的な内容を解説します。大企業と中小企業の取り組み事例についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

働き方改革とは?

働き方改革とは、労働者の事情に応じて働き方を選択できる社会を実現するための改革です。具体的には労働者の権利を守りつつ、日本に固着した労働格差を是正することで、働き方の多様化を目指しています。

働き方改革は、生産年齢人口の減少による労働力不足、多様な労働ニーズへの対応、長時間労働の是正、ワークライフバランスの実現などを目指す取り組みです。

2018年に働き方改革関連法が成立したことで、働き方改革は世間の注目を浴びることになりました。関連法の施行に伴い、多くの企業は多様な人材が活躍できる職場環境の構築に注力しています。

働き方改革の背景を解説

働き方改革が求められるようになった背景には、主に2つの課題があります。次の2点について解説していきましょう。

  • 労働者不足による生産性の低さ
  • 働き方のニーズが多様化

(1)労働者不足による生産性の低さ

日本は第2次ベビーブームが起こった1970年代以降、出生率が減少傾向にあり、次代を担う労働人口の低下が問題視されています。

この打開策として女性の社会進出支援や高齢者の就業率の改善に取り組んだものの、業務効率化の推進が不十分だったこともあり、日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)加盟38ヵ国中23位という芳しくない状態になっているのです。

[出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較」]

(2)働き方のニーズが多様化

女性の社会進出支援や高齢者の就労促進に加え、グローバル化による海外労働者の雇用など、働き手を増やすことで生まれたのが、働き方に対するニーズの多様化です。

人生100年時代といわれる現代において、ライフスタイルやキャリアプランを制限するような画一的な働き方では、結果的に働ける人材が限られてしまい、労働力を確保できません。そのため、企業はダイバーシティの推進を通じて、多様なニーズを持った人材が働けるための環境づくりを求められています。

働き方改革の3つの目的

ここでは3つの柱と呼ばれる、働き方改革の目的について紹介します。

  • 労働力を増加させる
  • 長時間労働を削減する
  • 正社員と非正規社員の格差を是正する

(1)労働力を増加させる

1つ目の目的は、労働力の増加です。少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少している日本では、これまでの性別役割分担意識や60歳定年という固着した考え方から、多様な人材を受け入れる社会にシフトする必要があります。

性別、年齢、国籍、家庭環境、障害などの有無にかかわらず、誰もが働ける環境を整備することで、労働力の増加を目指しています。

(2)長時間労働を削減する

2つ目の目的は、長時間労働の削減です。日本は2013年に国連から過労死対策の勧告を受けるほど、長時間労働の常態化が問題となっています。これは労働力の不足分を、長時間労働によるマンパワーで補おうとしたことが原因といわれています。

さらに、サービス残業が横行していたり、有給休暇の取得に対する現場の厳しい目線があるために休みづらい風土が根付いていたりするなど、労働者の健康に支障をきたしかねない職場環境もありました。

これらの問題を解決するために、業務を抜本的に見直していくことで、長時間労働の是正を図っています。

(3)正社員と非正規社員の格差を是正する

3つ目の目的は、雇用に関する格差の是正です。これまでは正社員・非正規社員という雇用形態の違いによって、給与、待遇、教育、キャリア形成などに格差が生まれていました。

これらは働き方の選択における自由を制限する要素であり、労働力の確保という点で機会を損失してしまいます。

そのため、働き方改革を通じて格差の是正を図り、労働者が生活環境に応じて働き方を選ぶ際、納得感のある選択ができる環境を整えようとしています。

働き方改革で注目されている8つの内容とは

ここでは、働き方改革で注目されている8つのポイントを紹介します。

(1)時間外労働の上限規制

1つ目は、時間外労働の上限規制です。大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月より残業時間の上限が月45時間/年360時間に定められました。

臨時的な処置として36協定を締結すれば、年720時間以内まで拡大可能ですが、複数月平均80時間以内や月100時間未満(休日労働をふくむ)という条件があり、違反した場合は罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科せられる可能性があります。

従来の行政指導よりも厳しい罰則が与えられるため、企業は自社の信頼性を担保するためにも、残業削減に取り組まなくてはなりません。

(2)同一労働同一賃金

2つ目は、同一労働同一賃金による格差の是正です。これによって給与や福利厚生など、労働者が得られる待遇全般において、職務内容や配置変更の範囲が同一である場合、企業は正規雇用・非正規雇用にかかわず、労働者に同一の条件を提示しなければなりません。

また、労働者に対する説明義務の強化も図られており、待遇差に関する説明を求められた場合、企業は説明責任を負うことが定められました。

(3)年次有給休暇の時季指定

3つ目は、年次有給休暇の時季指定です。これによって、企業は年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての労働者に対して、年間5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられました。

仮に有給休暇の取得日数が5日に満たなかった場合、企業に対して罰則が科せられます。

(4)勤務間インターバル制度

4つ目は、勤務間インターバル制度の導入です。これは勤務終了から次の出勤日までの間に、一定以上のインターバルを設けるための制度を指します。

目安として9~11時間が設定されており、労働者に対して十分な休息・睡眠時間を与えることを、企業の努力義務としています。

(5)法定割増賃金率50%以上が義務化

5つ目は、法定割増賃金率50%以上の義務化です。これまで月60時間を超える時間外労働を行った場合、中小企業は割増賃金率が25%でしたが、2023年4月より大企業と同じ50%以上に統一することが定められました。

(6)フレックスタイム制の変更

6つ目は、フレックスタイム制の変更です。具体的にはフレックスタイム制の清算期間を最長1ヵ月から3ヵ月に延長することで、繁閑に応じて労働者が柔軟に労働時間を調整できるようになりました。

(7)高度プロフェッショナル制度

7つ目は、高度プロフェッショナル制度の導入です。高度プロフェッショナル制度は特定高度専門業務・成果型労働とも呼ばれ、高度な専門知識が必要な業務に従事する場合、労働時間ではなく、成果に対して賃金を受け取ることができる制度を指します。

具体的には年収1,075万円以上で、以下のような専門職種が該当します。

  • 研究開発
  • アナリスト
  • コンサルタント
  • 金融商品のディーラー
  • 金融商品の開発
  • 士業(公認会計士・弁護士など)

(8)産業医・産業保健機能の強化

8つ目は、産業医・産業保健機能の強化です。これによって事業者は産業医に提供する情報において、従来の定期健康診断だけでなく、健康管理に必要な情報を追加で提供しなければなりません。

  • 月80時間を超える長時間労働を行った労働者の氏名・超過時間数
  • 長時間労働者に対して実施したストレスチェックや面接指導
  • その他、産業医が労働者の健康管理を行ううえで必要と認めるもの

この変更で事業者に対する産業医の勧告・アドバイスの精度向上が期待でき、労働者の健康問題に関する企業の意識を高めることを目的としています。

働き方改革にはどんなメリットがあるのか?

労働環境に対する幅広い変化を促す働き方改革には、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは企業側・従業員側のメリットをそれぞれ解説します。

(1)企業側のメリット

企業側のメリットとして挙げられるのが、「生産性の向上」です。働き方改革によって制度や環境を見直すことで、業務の効率化を進めながら、多様な人材を受け入れるための基盤が整っていきます。

これによって人材の流動性が高まり、新卒・中途採用において優秀な人材の獲得につなげやすくなることで、さらなる生産性の向上が期待できます。

また、時間外労働の抑制やテレワーク推進によるオフィス縮小が実現すれば、人件費やオフィス費用の削減にも貢献できます。

(2)従業員側のメリット

従業員側のメリットとして挙げられるのが、「ワークライフバランスの実現」です。長時間労働が抑制され、休暇が取得しやすい環境になれば、これまで以上にプライベートの時間を確保しやすくなります。

これによって趣味や家族との時間を拡充できるだけでなく、十分な休息を確保することで、フィジカルヘルスやメンタルヘルスの安定にもつながり、仕事を続けやすくなるでしょう。

働き方改革において解決すべき課題

労働環境の改善を推進する働き方改革には、解決すべき課題もあります。ここでは企業側と従業員側で抱える課題を、それぞれ解説します。

(1)企業側の課題

企業側の課題には、「生産性を高めるための費用の高騰」と「高度プロフェッショナル制度の濫用」が挙げられます。

生産性の向上には、業務プロセスを見直すだけでなく、ツールによる代替やデータ連携のためのシステム刷新を求められる可能性があります。現行の環境によっては導入コストが膨れ上がってしまうこともあるため、なかなか手が出しにくい企業もあるでしょう。

また、高度プロフェッショナル制度を誤った解釈で濫用すると、労働者からの信用を失うリスクがあります。高度プロフェッショナル制度は、成果を出すために不要な制約を取り払うためのものであり、労働者を酷使するものではありません。労働者とのトラブルを避けるためにも、適切な制度運用が重要となります。

(2)従業員側の課題

従業員側の課題には、「モチベーションの低下」と「業務負担の増加」が挙げられます。

働き方改革には長時間労働の抑制が重点目標に含まれているため、これまで長時間労働による残業手当で収入を上げていた従業員にとっては、収入が下がってしまい、モチベーションの低下につながってしまいます。

また、残業削減を目的に業務の効率化が求められた結果、スケジュールを詰め込みすぎてしまい、逆に負担が増える可能性もあります。余裕を持って働くためには、企業だけでなく、従業員自身も業務負担を軽減する取り組みを積極的に行う必要があるでしょう。

働き方改革の取り組み事例を紹介

ここでは実際に働き方改革に取り組んだ事例を、大手企業と中小企業に分けて紹介します。取り上げる企業は次のとおりです。

<大手企業>

  • 日本生命保険相互会社
  • 大和ハウス工業株式会社
  • 株式会社ベネッセコーポレーション

<中小企業>

  • 鹿児島製茶株式会社
  • ヤマグチ株式会社
  • 宮田織物株式会社

(1)大企業編

大手企業編では、保険業・建設業・教育業をそれぞれ展開する3社の事例を紹介します。

#1: 日本生命保険相互会社

生命保険業を展開する日本生命保険相互会社は、ワークスタイル変革、人財育成、ダイバーシティ推進という3つの柱を掲げ、2015年に人財価値向上プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトは、会社全体の取り組みを社長が主導するというのが大きな特徴となっています。

具体的な取り組みとしては、「育次(次世代育成)」「育自(自己成長)」「育児(ワークライフマネジメント)」「育地(風土作り)」という4つのイクジをテーマに、長時間労働の圧縮、有給休暇の取得促進、多様な働き方の実現に注力しています。

  • フレッシュアップデー(ノー残業デー)の導入
  • ブラッシュアップデー休暇(ニッセイ版プレミアムフライデー)の導入
  • 介護体験セミナーや介護ボランティアの実施
  • 介護短時間フレックスタイム制の導入
  • 企業主導型保育所の全国展開
  • サテライトオフィスの開設

同社はプロジェクトを推進する中で、上記をはじめとする多様な改革を実施し、これらを活用するための風土醸成にも取り組みました。結果として育児や介護に対する従業員の理解が深まり、男性育児休業取得率は4年連続で100%を達成しています。

#2: 大和ハウス工業株式会社

戸建住宅・賃貸住宅事業を中心に展開する大和ハウス工業株式会社では、2003年から社長が舵を取り、長時間労働の抜本的な是正に取り組んでいます。

  • 終業時刻に事務所を閉鎖する「ロックアウト制度」
  • 労働時間の適正化を図るための「PCロックアウトシステム」
  • 有給休暇の取得促進を目的とした「ホームホリデー制度」
  • 長時間労働の社内基準値を超過した事業所への是正指導・ペナルティーを課す「ブラック事業所認定制度」

特に同社は事業所単位での取り組みを強化しており、業績評価では「時間効率」「業務平準化」「ホームホリデー取得率」を追加し、タイムマネジメントと生産性の改善に応じてインセンティブを支給しています。

これらの取り組みの中で、同社は従業員の理解を得るための手直しを繰り返しながら、現場で生まれた好事例を共有していきました。結果として従業員1人あたりの平均残業時間を10%以上削減し、有休取得率を10年間で2.8倍ほど上昇させることに成功しています。

#3: 株式会社ベネッセコーポレーション

教育・学習支援事業を中心に展開する株式会社ベネッセコーポレーションでは、従業員の約3割がワーキングマザーに該当することから、「Value for Time」をキーメッセージに、持続的な企業成長を視野に入れた働き方改革を推進しています。

当時、同社は事業部ごとに特性や繁忙期が異なることから、全社的に同一の目標を背負っての残業削減には限界があることを感じていました。その解決策として、同社は無理に会社全体で取り組むのではなく、事業部単位で残業時間の目標を設定し、個別最適化していく活動にシフトしています。

具体的にはノー残業デーの頻度や有休取得の年間奨励日を事業部ごとに決め、残業削減に向けた計画を立てています。

事業部ごとに完全に独立しているわけではなく、四半期ごとの振り返りで目標が達成できていなかった場合は、他部署の応援依頼やアイデアの収集などを通じて、協力し合う風土を醸成しているのが特徴です。

(2)中小企業編

中小企業編では、製造業・建設業をそれぞれ展開する3社の事例を紹介します。

#1: 鹿児島製茶株式会社

老舗茶屋として、茶の製造・卸小売を展開する鹿児島製茶株式会社では、繁閑の差が激しいことで働き方が不規則になり、休暇を取りにくいという課題を抱えていました。

特にお茶は女性の購入率が高く、女性従業員の声が欠かせない側面がある中で、結婚・出産などのライフステージの変化を機に女性従業員が離職してしまうという慣例もあったようです。

そこで同社は、ワークライフバランスの実現を目指して、休暇制度の改革に取り組みました。

  • リフレッシュ休暇やシーズン休暇の新設
  • 子の看護休暇における対象年齢の拡大
  • 1時間単位の年次有給休暇制度の導入
  • 特別休暇を活用した育児目的休暇の導入

上記の制度を整え、周知を行った結果、同社における女性従業員の育児休業取得率は100%を達成しました。これにより、退職ではなく職場復帰を選ぶ従業員も増えてきたといいます。

これらの取り組みが評価され、同社は子育てサポート企業として2012年にくるみん認定を受け、2016年には鹿児島県初となるプラチナくるみんの認定を受けました。

#2: ヤマグチ株式会社

総合建設業として街づくりに貢献するヤマグチ株式会社は、建設業界に存在する3K(きつい、危険、汚い)というネガティブな印象を払しょくするため、働き方改革の推進を決意しました。

まず同社が取り組んだのが、休暇制度の段階的な改善です。これは急激な変化に対する負担を考慮しつつ、最初に隔週週休2日制を導入し、3年の期間をかけて週休2日制にシフトすることで、従業員の理解を着実に得ていきました。

また、残業削減にも注力しており、現場のICT化を推進し、ドローンやレーザースキャナ計測などでの効率化を進めています。さらにコミュニケーションの領域ではビジネスチャットツールを導入し、進捗状況の共有をベースとした従業員の会話の質の改善も図っています。

具体的には現場担当者が投稿した写真に対して、ベテラン技術者から安全対策や施工方法のアドバイスを受けたり、納期が迫っている場合には近隣の担当者が応援に駆けつけたりなど、対面だけではなし得なかった協力関係が築けています。

これらの取り組みによって同社のチームワークは強まり、現在では定時から1時間以内の帰宅が定着するまでに至りました。

#3: 宮田織物株式会社

大正時代に創業し、デザインから縫製まで一貫体制で生産を担う宮田織物株式会社では、女性従業員が8割を占めており、結婚・出産などのライフステージの変化による退職に課題を抱えていました。

織物は繊細な技術を必要とするため、誰でも簡単にできるものではありません。だからこそ、従業員の退職率を下げるための取り組みが急務となっていました。そこで同社が取り組んだのがライフステージの変化に対応した制度の改革です。

  • 産休・育休の代替要員として採用する従業員の正規雇用
  • 短時間勤務制度の利用期間の延長
  • 休職明けに同じ部署での復職を確約

これらの取り組みによって、従業員の勤続年数が増加するだけでなく、全体の技術レベルが高まり、担当外の業務であってもフォローし合える多能工化が進むという嬉しい誤算も生まれました。

働き方改革の目的や具体的な内容を理解した上で取り組もう

本記事では、働き方改革の目的や背景、具体的な取り組み事例について解説しました。

超少子高齢化社会に突入し、人口ピラミッドのつぼ型化が進む日本にとって、働き方改革は必要不可欠です。

今後の労働人口の減少を踏まえても、多様な人材を受け入れるための環境を整え、AI(人工知能)などのICT技術との共存による業務効率化ができなければ、国内の人材が海外に流出する可能性も現実味を帯びてくるでしょう。

一方で、働き方改革は精神論が先行し、方法論が伴わないケースも多いため、場当たり的な対応にならないためにも事前に計画を立てることが重要です。

理想と現実のギャップを定期的に振り返りながら、着実に改善を進めていきましょう。

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