サマータイムとは?制度の仕組みやメリット・デメリット、日本の現状について

最終更新日時:2023/07/18

働き方改革

サマータイムとは

サマータイムとは、日照時間が長い一定の期間に活動時間を1時間から2時間進める制度です。欧米諸国をはじめ世界で60以上の国や地域が導入している制度です。本記事では、サマータイムの仕組みやメリット・デメリット、日本の導入状況について紹介していきます。

サマータイムとは

サマータイムとは、3月〜11月の日の出時刻が早まる時期に活動時間を1〜2時間早めて、太陽が出ている時間帯を有効活用することを指します。

普段の活動時間が9時〜18時である場合、サマータイムを導入すると7時〜16時に活動時間を移行することになります。

このサマータイムは欧米を中心に導入されており、アメリカではこの制度を「太陽光を有効活用する時間」という意味合いの「デイライト・セービング・タイム(Daylight Saving Time)」とも呼んでいます。

サマータイム制度とは?

サマータイム制度は、中高緯度にある国や地域において、夏の一定の期間に取り入れられている制度です。

2007年12月に環境省・経済産業省が公表した資料の中で、サマータイムとはどのようなものかについて、以下のように説明しています。

サマータイムは夏時間制度とも呼ばれ、昼間の明るい時間が長い期間(例えば4月~10月)、全国の時刻を標準時より1時間進める制度。この制度を導入することにより、起床・就寝時間、労働時間もこれまでどおりでありながら、明るい夕方の時間が1時間増えるためその時間を有効に活用できる。

また、地球温暖化対策の観点からは、夕方の照明や朝の冷房用電力等が節約されることにより、電力消費を削減することができる。

[引用:環境省・経済産業省「サマータイムについて」]

つまり、1日の活動時間を変えずに、働く時間を日中の明るい時間帯にずらすことをサマータイム制度としています。

また、過去に日本でも、サマータイム制度の導入を実施したことがありますが、電力事情が改善されたことや、当時の社会情勢にそぐわないといった理由から定着しませんでした。

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サマータイム制度の仕組み

サマータイム制度は夏の一定期間だけ、標準時刻を進める仕組みになっています。例えば、通常は9時〜18時を就業時間とする会社が1時間早くサマータイムを設定した場合、始業時間が8時に、そして終業時間が17時になります。

そのため、夜間に照明を使用する時間が減り、エネルギー需要を削減できることがサマータイム制度の目的の一つであり、このことは温暖化対策にもつながります。

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サマータイムを実施している国はどこ?

サマータイムは、主にどのような国で実施されているのでしょうか。サマータイム制度は欧米を中心とする60以上の国や地域で導入されており、これらの国の共通点は、夏の日照時間が長いことです。

次に、各国がどのような形でサマータイムを導入しているのかについて解説します。

アメリカ(一部地域を除く)

アメリカのサマータイムの開始日と終了日は以下の通りです。

  • 開始日:3月第2日曜日・午前2時
  • 終了日:11月第1日曜日・午前2時

アメリカのサマータイムは、まだ寒さが残る3月から始まります。国土が広いアメリカでは、時差があるためエリアによってサマータイムの設定時間が異なります。

同国でサマータイムのことを「太陽光を有効活用する時間(デイライト・セービング・タイム)」と呼んでいるように、エシカルな観点で取り入れられた制度であることがわかります。

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カナダ(一部地域を除く)

カナダのサマータイムの開始日と終了日は以下の通りです。

  • 開始日:3月第2日曜日・午前2時
  • 終了日:11月第1日曜日・午前2時

カナダのサマータイムはアメリカと同じ時期・時間で設定されています。カナダは1908年にサマータイム制度を導入しましたが、デメリットが多い・エネルギーが大きく節約されていないなどの理由で存続について議論されています。また、州によっては既に、サマータイム制度を廃止しています。

ヨーロッパ(一部地域を除く)

ヨーロッパのサマータイムの開始日と終了日は以下の通りです。

  • 開始日:3月最終日曜日・午前1時
  • 終了日:10月最終日曜日・午前1時

EU(欧州連合)ではサマータイムについて、「健康に悪い」「省エネ効果は乏しい」といった声が少なくなかったことから21年を最後に廃止されることになっていましたが、現在、その議論は中断しています。

現在、ヨーロッパでは3月の最後の日曜日の午前1時に1時間進め、10月の最後の日曜日、午前1時に1時間遅らせる形でサマータイムを導入しています。

オーストラリア(一部地域を除く)

オーストラリアのサマータイムの開始日と終了日は以下の通りです。

  • 開始日:10月第1日曜日・午前2時
  • 終了日:4月第1日曜日・午前3時

オーストラリアは南半球にあるため、北半球にある国とは季節が逆になります。そのため、サマータイムの開始は、10月になっています。

10月の第1日曜日、午前2時に1時間進めて、4月の第1日曜日、午前3時に1時間戻すことになっています。

メキシコ(一部地域を除く)

メキシコのサマータイムの開始日と終了日は以下の通りです。

  • 開始日:4月第1日曜日・午前2時
  • 終了日:10月最終日曜日・午前2時

メキシコは国土が広く、州によって時差があることから、サマータイムの設定も地域によって異なります。また、アメリカとの国境付近に位置する一部の地域では、アメリカのサマータイムを導入しています。

ブラジル(一部地域を除く)

ブラジルのサマータイムの開始日と終了日は以下の通りです。

  • 開始日:10月第3日曜日・午前0時
  • 終了日:2月第3日曜日・午前0時

ブラジルは南半球に位置するため、北半球の国々とは季節が逆になり、開始時期も10月となります。

しかしブラジル政府は、国民生活の変化に伴って節減効果が薄れたことや、体内時計に負担を与えるといった理由から、2019年に、サマータイム制度の実施を取りやめることを決定しました。

ニュージーランド(一部地域を除く)

ニュージーランドのサマータイムの開始日と終了日は以下の通りです。

  • 開始日:9月最終日曜日・午前2時
  • 終了日:4月第1日曜日・午前3時

ニュージーランドも南半球に位置するため、北半球と季節が逆になり、それに伴ってサマータイムも9月から開始されます。

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日本におけるサマータイムの現状

現在の日本でサマータイムは実施されていません。しかし、日本でも過去にサマータイムを導入したことがあるのです。日本でサマータイムが実施されたのは戦後間もない頃で、このときの導入はGHQの指示によるものでした。

しかし、労働時間が長引くことへの不満が増加したことや、国民からサマータイム制度への理解を得られなったことから、サマータイムは4年で廃止されました。

その後日本では、2020年の東京オリンピックに向けた計画の中で、再度サマータイムの導入が検討されました。この目的は、早朝の気温が低い時間に競技を開始することで、選手の肉体的負担を軽減し、熱射病から選手を守ることでした。

しかし、制度の構築が困難で、反対の声も大きかったため、導入には至りませんでした。

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サマータイム導入で得られるメリット

世界各国で導入されているサマータイムですが、サマータイムを導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ここからはサマータイム導入で得られるメリットについて解説します。

消費増加による経済効果

サマータイムの導入によって終業時間が早まるため、就労後に外食や買い物ができるようになり、個人消費が増加することが期待されています。

サマータイムの導入で増益になるとされるのは、外出に関連したサービス業や卸売・小売業等、それに付随する運輸・通信業や製造業などで、経済効果をもたらすことは長所の一つといえるでしょう。

省エネルギー対策

サマータイムの導入は、省エネルギー対策にもつながります。始業時間を早めることで涼しい時間に仕事を始められることから、冷房の使用時間を短縮することができます。

また、明るい時間帯に仕事をするため、照明の使用量も少なくなるなど、省エネルギー対策にも直結します。エネルギー使用量を削減できれば、経費の削減にもつながるでしょう。

犯罪率の減少

サマータイムを導入することで、犯罪率を減少させることも期待できます。犯罪は暗い時間帯に多発します。一方で、サマータイムを導入することで、明るい時間帯に帰宅することが可能となるため、犯罪率の減少につながります。

また交通事故についても同様に考えられており、サマータイムの導入で事故の発生率が低減するとされています。

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サマータイム導入で生じるデメリット

サマータイムを導入することにはメリットがある一方で、デメリットもあります。ここでは、サマータイム導入のデメリットについて解説します。

体調へ悪影響を与える

サマータイムを導入することで、体調に悪影響を与える可能性があるとされています。サマータイムは開始日に、時計の針を1〜2時間程度早めますが、生活する時間帯が突然変わると体が適応できず、体内時計の乱れから不調をきたす恐れがあるのです。

サマータイムに切り替わった直後は、体内時計の乱れによって注意力が散漫になったり、心臓発作などの病状を引き起こしてしまう可能性も否めないとされています。導入後、時間が経つと体も慣れてはくるものの、それまでの期間は体調に気を遣う必要があるでしょう。

労働時間が増える可能性がある

サマータイムの導入により、労働時間が増加する可能性が指摘されています。取引先がサマータイムを導入していない場合は先方に合わせた商談などが必要となり、残業を余儀なくされる可能性があります。

また、明るいうちに帰宅することに気がとがめる人も少なくないでしょう。戦後、導入された日本のサマータイムが廃止された理由の一つが、労働時間の増加によるものでした。労働時間が増加すると、体調へ悪影響をおよぼすといった、悪循環に陥る可能性も否めません。

システム改修が必要になる

サマータイムを導入する際、全てのシステムや時計を1時間早める必要性が生じます。国内の全ての時計を1時間早めることは容易ではありません。

企業や公共の機関、病院や学校、商業施設など数えきれないシステムを改修することが必要となり、サマータイムの開始時と終了時は、システムエンジニアの不足も考えられます。

システムのテストや修正などを繰り返し、事故が起こらないように徹底する運用は膨大なコストと負担を要します。

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サマータイムは世界各地で注目される制度

本記事ではサマータイムについて、制度の仕組みやメリット、問題点などを解説してきました。サマータイムを実施することで得られる効果もあれば、健康面をはじめとするデメリットもあるでしょう。

世界の多くの国でサマータイムが導入されています。地球温暖化が問題となる昨今、サマータイムの主とする目的は節電です。まずはサマータイム制度の目的を理解したうえで多角的視点に立ち、サマータイムについて考えてみましょう。

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