ウェルビーイング経営とは?取り組み事例や健康経営との違いを解説

最終更新日時:2022/07/25

働き方改革

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企業は、従業員の健康が保障され社会的に満たされるような経営を行う必要があります。そこで注目を集めているのが「健康経営」や「ウェルビーイング経営」といった経営戦略です。本記事では、ウェルビーイング経営とは何なのかについて、健康経営との違いや事例と合わせて解説します。また、具体的な実現方法や注意点も紹介します。

ウェルビーイング経営とは?

ウェルビーイングとは心身ともに健康で、さらに社会的にも幸福な状態を表す言葉です。

ウェルビーイング経営とは、従業員をはじめ、企業に関わるすべての人がウェルビーイングな状態になることで、企業の成長を目指す経営戦略のことです。

具体的には、良好な人間関係や、仕事に加えてプライベートの充実、家族の健康などが満たされるとウェルビーイングな状態といえるでしょう。

従業員がウェルビーイングな状態になることで、仕事へのモチベーションや生産性が上がります。従業員の身体的健康だけではなく、精神的健康、社会的な幸福を大切にするウェルビーイング経営は、多くの企業で取り入れられています。

健康経営とは?

健康経営とは、従業員の身体的健康と精神的健康を経営的課題として、より良い労働環境を整える取り組みです。従業員が健康に働ける環境を整えることで、モチベーションや生産性が上がり、業績向上が見込めるでしょう。

経済産業省は「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人認定制度」により、健康経営に取り組む企業を可視化しています。その結果、健康経営に取り組む企業は社会的に評価され、企業イメージの向上にもつながっています。

ウェルビーイング経営と健康経営の違い

健康経営は、従業員の心身の健康を重視し、働きやすさを経営的課題としています。これに対し、ウェルビーイング経営は従業員の心身の健康だけではなく、社会的な幸福も重視しており、働きがいや生きがいも大切にする取り組みです。

したがって、ウェルビーイング経営は健康経営を包含しており、ウェルビーイング経営を達成するためには健康経営は欠かせません。

ウェルビーイング経営の考え方

ここでは、ウェルビーイング経営の考え方について解説します。

パーパスマネジメント

パーパス(Purpose)とは「存在意義」のことです。パーパスマネジメントは、自社の存在意義をパーパスとして言語化することで、従業員や企業全体、ひいては社会全体のウェルビーイングにつなげる手法です。パーパスには、企業の独自価値と社会的意義の両方が含まれていなければなりません。

企業がパーパスを策定することで、従業員一人ひとりが仕事の意義ややりがいを見出し、モチベーションが向上します。その結果、生産性やメンバーの関係性の向上が期待できるでしょう。

さらに、企業の存在意義を明確にすることで、組織に一体感が生まれます。パーパスは経営上の判断軸となるため、組織におけるスムーズな意思決定を可能にするでしょう。

パーパスの策定は社会全体のウェルビーイングにも寄与します。社会課題をパーパスとして掲げている場合、組織全体の社会貢献が推進されます。また、パーパスに共感した顧客がファンとなり、自社製品を買ってくれることもあるでしょう。

このように、自社のパーパスを明確にすることで、企業内だけではなく社会全体のウェルビーイングを追求できます。

PERMAモデル

PERMA(パーマ)モデルとは、アメリカのセリグマン博士によって提唱されたポジティブ心理学におけるフレームワークのことです。以下の5つの要素が満たされると、ウェルビーイングな状態に近づくことができると考えられています。

  • Positive emotion:ポジティブな感情
  • Engagement:没頭できるもの
  • Relationship:良好な人間関係
  • Meaning:人生の意味や意義
  • Accomplishment:達成感

このPERMAモデルをビジネスで活用することで、従業員一人ひとりのモチベーションが向上し、組織全体のパフォーマンス向上につなげられます。

ギャラップ社が唱えた5つの要素

ウェルビーイングの考え方について、アメリカの調査会社であるギャラップ社が唱えた5つの要素があります。

  • Career Wellbeing:キャリアのウェルビーイング
  • Social Wellbeing:人間関係のウェルビーイング
  • Financial Wellbeing:経済的なウェルビーイング
  • Physical Wellbeing:身体的なウェルビーイング
  • Community Wellbeing:所属組織でのウェルビーイング

キャリアのウェルビーイングは、仕事に限らず趣味や家庭生活など日常的に取り組んでいること全般に対しての幸福度のことです。

人間関係のウェルビーイングは、信頼できる人間関係を築けているかどうかを指します。

経済的なウェルビーイングは、安心して暮らせるだけのお金の管理ができているかどうかのことです。

身体的なウェルビーイングは、やりたいと思ったことができるだけの身体的健康や精神的エネルギーがあるかどうかを指します。

所属組織でのウェルビーイングは、企業や地域社会など所属するコミュニティ全般への満足度を示しています。

これら5つの要素がウェルビーイングな状態になることが重要で、なかでもキャリアのウェルビーイングが最も大切な要素です。

ウェルビーイング経営が必要とされる理由

企業は経済的成長だけではなく、持続可能な社会の構築や、社会課題の解決も重視すべきだという考え方が広まり、ウェルビーイング経営が必要とされるようになりました。単純に利益を追求するだけでは企業の成長にはつながらなくなったのです。

さらに、働き方改革により、従業員の働きやすさや幸福度を考えることが重視されるようになりました。従業員の幸福度が向上するとモチベーションや帰属意識が上がり、長時間無理に働かせるよりも生産性やパフォーマンスが向上します。

また、従業員を大切にする企業には優秀な人材が集まるようになり、企業のさらなる成長につながるのです。

このように、従業員一人ひとりの働きやすさや幸福度を上げることが、企業の業績やイメージ向上につながります。さらに、社会全体への影響力も上がるため、ウェルビーイング経営に取り組む企業が増えました。

ウェルビーイング経営の事例

ここでは、ウェルビーイング経営の事例について解説します。

事例1:楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社は、新型コロナウイルス感染拡大を契機に「コレクティブ・ウェルビーイング」に関するガイドラインを作成しました。

このガイドラインは、ニューノーマル時代に合った持続的なチームの在り方を考えるきっかけとして作成され、企業と働く個人の両側面から、「仲間」「時間」「空間」の「三間」の設計と、それぞれに「余白」を設けることが大切だと唱えています。

また、企業や個人向けにガイドラインに沿った具体的な施策リストや、日々の会議や面談で活用できる独自開発の簡易ツールも公開されており、誰でもダウンロード可能です。

[出典:楽天グループ株式会社『ニューノーマル時代に向けて、 コレクティブ・ウェルビーイングを考えよう』]

事例2:丸井グループ

丸井グループでは、「ウェルネス経営」を掲げ、「丸井グループのサービスによって心が豊かになる」ことを目指しています。

丸井グループは、創業当時から健康経営に取り組み、従業員の健康維持に関する施策を多く取り入れていました。また、2016年に健康経営推進プロジェクトを発足し、2014年に発足した健康推進部(現ウェルネス推進部)のサポートとともに、健康の次のステップであるウェルビーイングな状態を目指す取り組みを開始しています。

このような取り組みの結果「健康経営銘柄」「健康経営優良法人(ホワイト500)」などに継続的に選ばれており、グループ全体の活力向上につながっています。

[出典:株式会社丸井グループ『人と社会のしあわせを共に創る「ウェルネス経営」』]

事例3:アシックスグループ

アシックスグループでは、「ASICS健康経営宣言」を掲げ、従業員とその家族のウェルビーイングを目指し、健康推進活動をおこなっています。

企業独自の健康推進プログラムやメンタル研修をおこなうなど従業員の身体的健康、精神的健康のサポートが中心です。また、体調を崩してしまった従業員に対して治療と仕事の両立支援をおこなっています。

このような取り組みにより「健康経営優良法人2021~大規模法人部門(ホワイト500)~」に選出されています。

[出典:株式会社アシックス『アシックスの健康経営』]

事例4:株式会社デンソー

株式会社デンソーでは、従業員がウェルビーイングな状態で働ける環境を目指して健康経営に取り組んでいます。

従業員の健康を経営的な観点でとらえ、仕事とプライベートの両方を大切にし、チームで働くことを重視しています。さらに、健康推進部の設置や、各部署に健康リーダーを置くことで、現場に合った施策の実施を可能にしています。

このような取り組みの結果「健康経営優良法人(ホワイト500)」に継続的に選ばれており、従業員がウェルビーイングな状態で働ける環境が整っているといえるでしょう。

[出典:株式会社デンソー『サステナブルな社会は、「健康」から始まる』]

事例5:PwCグループ

PwCグループでは、コーポレートサイトでウェルビーイングの推進について宣言しています。従業員やその家族のウェルビーイングを効果的に推進するために、PwC健康保険組合と連携し、各種施策をおこなっています。

PwCグループではウェルビーイングをPhysical(身体面の調子が整っているか)、Mental(タスクに集中できているか)、Emotional(世界をどのように見て、それが物事の理解や感じ方にどう影響しているか)、Spiritual(人生の目的や価値観が働き方や生き方と調和しているか)の4つの領域でとらえています。

4つの領域それぞれにアプローチする施策をおこなっており、なかでも、Physicl、Mental面でのサポートが手厚いのが特徴です。

[出典:PwCグループ『ウェルビーイング(健康経営)』]

ウェルビーイング経営を実施するメリット

ウェルビーイング経営を実施することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、4つのメリットについて解説します。

満足度の向上

ウェルビーイング経営を実施することで、従業員の心身の健康だけではなく、幸福度が上がる環境を整えられます。その結果、働きがいのある企業として従業員満足度が向上します。

生産性の向上

従業員が心身ともに健康で、幸福度の高い状態になるとモチベーションが向上します。その結果、ワークエンゲージメントが上がります。

ワークエンゲージメントとは、仕事への「活力」「熱意」「没頭」の3つが揃ったポジティブで充実した心理状態のことです。ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事にやりがいを見出し、いきいきと熱心に働くでしょう。

このように、ウェルビーイング経営によってワークエンゲージメントの高い従業員が増えると、企業全体の生産性の向上が見込めます。

定着率の向上

ウェルビーイング経営によって従業員が長く働きたいと思えるような環境が整えば、従業員の定着率が向上します。企業の評判も向上し、採用活動にも有利に働きます。

また、ウェルビーイング経営を実施することで、従業員一人ひとりの変化を敏感に察知することができます。そのため、異変を早期に発見し、離職防止のために対処することもできるでしょう。

定着率の向上により、人材の流出が抑えられると、採用コストの削減にもつながります。

休職者の防止

ウェルビーイング経営によって従業員の心身にストレスがたまりにくい労働環境を整えられます。また、ストレスチェックなどで従業員の異変を早期に発見できるようになります。

その結果、心身のストレスを理由に体調を崩す従業員を減らすことができ、休職者を防止できます。

ウェルビーイング経営における注意点

時代の変化とともにウェルビーイングの考え方も変化します。ウェルビーイング経営を進める際は、時代の情勢や多様な人材の事情を鑑みつつ、柔軟に対応していくことが大切です。

利益だけを追求するのではなく、ウェルビーイング経営の取り組みの成果を可視化することも必要です。

ウェルビーイング経営を推進しても具体的な成果が見えにくく、取り組みが滞るおそれもあります。そのため、従業員の健康診断、ストレスチェックの結果やカウンセリングを活用し、成果を可視化するようにしましょう。

ウェルビーイング経営を実現させる6つの方法

ウェルビーイング経営を実現させるにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、6つの方法について解説します。

1.福利厚生を充実させる

運動、食、レジャーなど従業員のライフスタイルが豊かになる福利厚生を充実させましょう。

例えば、ジムやフィットネスクラブの割引券、トレーニングルームの設置など従業員の身体の健康に関するものや、宿泊施設やレジャー施設、映画鑑賞の優待券などリフレッシュにつながるものがあります。

さらに、ベビーシッターの補助や社員食堂の設置など、従業員の暮らしや食生活を支えることも大切です。

2.労働環境を見直す

長時間労働が問題となっている場合は、速やかに改善する必要があります。企業側の気づかないところで長時間労働が常態化している可能性もあるため、労働時間を適切に管理し、社内アンケートを実施するなど実態を把握しましょう。

また、従業員が働きやすい環境を整えることも大切です。テレワークが広まったことで、オフィスの環境整備はもちろんのこと、従業員一人ひとりのテレワーク環境の整備も重要になりました。

従業員が気持ちよく働ける環境が整っているか、定期的に見直すようにしましょう。

3.適切な評価制度を導入する

企業側で明確な評価基準を定め、従業員が評価に見合った安定した報酬を得られる評価制度を整えましょう。また、期初など節目ごとに従業員に対して目標設定を促し、評価の際に適切なフィードバックをすることも大切です。

このように、従業員一人ひとりに適切な目標設定と評価、フィードバックをし、十分な報酬を提供することで、モチベーションや生産性の向上が見込めます。

4.コミュニケーションの改善を図る

仕事を進める上で、従業員同士の連携は欠かせません。コミュニケーションが円滑になり、社内の人間関係が良好になると仕事に対するパフォーマンスも向上します。

社内コミュニケーションツールの導入や、部署を問わず利用できる共有スペースを設置するなど、従業員同士が積極的に交流できる場を作るようにしましょう。

5.セルフケアを促進する

従業員が、自身の身体面・精神面の健康状態を把握できるようにしましょう。さらに、異常が見られた場合は通院など回復に向けたサポートをすることが大切です。

身体面は、健康診断や人間ドックの費用補助、予防接種の実施などがあげられます。精神面はカウンセリングやストレスチェックの実施などが当てはまります。

テレワークが広まったことで、知らず知らずのうちに心身に負担がかかっていることがあります。セルフケアを促進し、場合によっては回復に向けてサポートすることで従業員の健康を守るようにしましょう。

6.健康増進活動を行う</h3

従業員が心身ともに健康で、幸福な状態で働けるように健康推進活動をおこなうことも大切です。労働環境の改善だけではなく、メンタルチェックや相談窓口の設置など従業員が心身にストレスを溜めない環境づくりをしましょう。

また、運動機会の提供や食生活の改善など、従業員がより健康的に過ごせる取り組みも重要です。

安心して働ける職場環境がウェルビーイング経営を実現する

本記事では、ウェルビーイング経営の考え方や健康経営との違い、事例、実施する際のポイントについて解説しました。

ウェルビーイング経営は、従業員や企業だけではなく、社会全体を幸せにする経営戦略です。すでに多くの企業で取り入れられており、従業員の満足度やモチベーション向上につながっています。

ウェルビーイング経営の概念を理解し、取り入れることで、企業の魅力が上がり、従業員や求職者だけではなく顧客にも選ばれる企業になるでしょう。今回解説したウェルビーイング経営の考え方を参考に、経営戦略に取り入れていきましょう。

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