時短ハラスメント(ジタハラ)とは?具体的な事例や企業の対策方法を解説

最終更新日時:2022/07/25

働き方改革

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時短ハラスメントとは、就業時間の短縮を強要する新たな社会問題として注目されている行為のことです。本記事では、時短ハラスメントについて、事例や対策など詳しく解説します。

時短ハラスメントとは?

時短ハラスメント(ジタハラ)とは、上司が部下に対して一方的に定時退社や残業削減を強制する行為のことを指します。

日本企業ではこれまで長時間労働が問題視されており、業務時間の短縮に向けた取り組みが行われてきました。しかし、どんなに業務の効率化を進めても残業が必要となるケースもあります。

勤務時間内に終わらない業務量があるにもかかわらず、無理な時短を強要されれば、従業員は自宅への持ち帰りやサービス残業をしなければなりません。

適切な業務改善や対策を行わずに時短の圧力をかける行為は、従業員の就業環境を害するため、時短ハラスメントとして扱われる可能性があります。

時短ハラスメントが起こってしまう原因

時短ハラスメントはなぜ起こるのでしょうか。ここからは、時短ハラスメントが起こる原因について説明します。

適正ではないノルマや期日の設定

管理者が期日やノルマをマネジメントせず、無理なスケジュールを強要した場合、時短ハラスメントとなる可能性が高くなります。

例えば、これまで最短でも3日かかっていた仕事を、何の施策もなく1日で行うように命令されれば、部下は勤務時間外に対応せざるを得なくなるでしょう。結局、自宅への持ち帰りやサービス残業で間に合わせることを強制されていることと同じです。

上司の丸投げ

上司が就業時間内に終わらなかった仕事を部下に丸投げすることも、時短ハラスメントにつながります。上司に仕事を丸投げされれば、部下は自分の仕事に加えて振られた業務もこなさなければなりません。

仕事が就業時間内に終わるように業務量を調整するのは、管理者の重要な職務です。しかし、部下の状況を把握せずに業務の割り振りを行えば、許容量を超えた業務量になってしまう可能性があります。

時短ハラスメントで発生する問題点

管理者が時短ハラスメントを行うと、会社内でどのような問題が生じるのでしょうか。時短ハラスメントの問題点について説明します。

業務クオリティの低下

就業時間内に仕事を終わらせるために、必要な作業工程やチェック時間が削減される可能性があります。

また、時短を強要されたことでサービス残業が増えることになれば、身体的な疲労だけでなく、心理的なストレスも蓄積されることになるでしょう。その結果、業務のクオリティが低下するだけでなく、徐々に仕事に対する意欲も失ってしまうことになります。

生産性の低下

当然ですが、評価されることのない残業に対して、高いモチベーションを保つことは困難です。そのうえ、仕事に対する正当な報酬を得られないのであれば、さらに従業員のモチベーションは低下するでしょう。

積極性や自主性が失われる結果となり、生産性が低下する可能性があります。

離職率や休職者の増加

時短ハラスメントにより従業員は疲弊していき、職場環境が悪化します。労働時間に見合わない報酬は、従業員の離職を加速する原因となるでしょう。

時短ハラスメントは、労働環境の悪化や社員の満足度の低下へと直結するものであり、企業は貴重な人材の流出といったリスクを抱える事態へと陥るのです。

中間管理職の負担増加

時短ハラスメントによる離職者や休職者が増加すれば、その分の業務は社内のいずれかのメンバーが引き継ぐことになるでしょう。

場合によっては、中間管理職にある上司が部下の仕事を行うこともあります。また、会社の方針として残業を原則禁止とするルールなどがあれば、部下が就業時間内に完了できなかった仕事を上司が引き受けるケースもでてきます。

このような場合、中間管理職の負担が増加し、心身などに影響を及ぼす可能性があります。

時短ハラスメントにあたる事例とは?

時短ハラスメントにあたる事例としてはどのようなものがあるでしょうか。ここでは、時短ハラスメントにあたる可能性がある具体的な事例を紹介します。

持ち帰り残業の強制

業務時間内に終わらせることは不可能な業務量と期日を命じつつ、従業員の残業を禁止するケースでは、従業員は残業を持ち帰らずを得ません。つまり、業務(持ち帰り残業)を余儀なくされる状況にあると言えます。

管理者の指揮命令下の持ち帰り残業は、三六協定違反・割増賃金未払い・長時間労働による従業員の健康障害といったリスクが懸念され、重大なトラブルに発展する可能性もあります。

[出典:e-Gov 労働基準法 第三十二条の三]

納期やノルマが守れなかったことへの厳しい叱責

残業禁止の中で無理な納期やノルマを課せられた場合、納期に遅れるケースも出てくるでしょう。これを上司が部下の責任として叱責したり懲罰を与えたりする行為は、時短ハラスメントに該当する可能性があります。

叱責したり、注意したりすること自体が問題視されるわけではありませんが、その内容や方法によっては、相手の尊厳を傷つける深刻なハラスメント行為としてみなされることがあります。

業務量の見直しや調整を行わない上司

業務量の見直しは、従業員の判断だけでは決められません。上司が業務量の見直しや調整を行わず、不当に業務時間の短縮を要求する場合は、時短ハラスメントとみなされます。

さらに、会社の決定事項だからと残業を禁止するだけで、業務調整を部下に任せて放置する場合も問題です。

時短ハラスメントを防止するための対策方法7選

時短ハラスメントを防止するための対策としてはどのような方法が考えられるでしょうか。以下では、時短ハラスメントを防止する具体的な対策方法を7つ紹介します。

1.円滑なコミュニケーションをとる

従業員の状況や日常業務の量などは、1週間・1ヶ月などのスパンの中での変動も含めて、しっかり把握できるようヒアリングする必要があります。

管理者と従業員の間で円滑なコミュニケーションによる情報共有が適宜おこなわれていれば、業務量の見直しや調整もスムーズに進み、時短ハラスメントを未然に防ぐことができるでしょう。

2.適正な業務量かどうか見直す

同じ仕事であっても、従業員の適性や能力によって処理スピードは異なります。そのため、管理者は個々に合った適正な業務量を見極めなければなりません。

また、パフォーマンスの高い従業員の業務フローを、教育や育成の機会に活用し、チーム全体の効率化を図ることも重要です。

業務の効率化、人員配置の見直しなどの手を尽くしても時間内に業務を完了できない場合は、採用や人事移動など新たな人材確保を検討してみるとよいでしょう。

3.相談窓口を設置する

時短ハラスメントに限らず、ハラスメント行為は、当事者にその問題意識がなく、気づかぬうちに言動がエスカレートしていくことも少なくありません。

また、その被害に遭っている側は、ハラスメントを告発してしまうと何らかの不利益を被るのではと不安になり、沈黙してしまうことも珍しくはないのです。

声を上げやすい体制を整えるためにも、産業医など組織外のメンバーも交えた相談窓口を設置し、ハラスメントの告発により、不当な扱いを受けることはないことも併せて周知するようにしましょう。

4.定期的に実態調査を行う

業務量のコントロールが必要とはいえ、毎日のようにそれらを行うのは、効率や手間の面において現実的ではありません。そこで、業務量と就業時間のバランスをとるための定期ヒアリングや調査を習慣としておこなうようにすると良いでしょう。

ヒアリングでは、「実はサービス残業をしている」「業務量に不公平さを感じている」など、数値上の成果からは、わかりづらい現状を吸い上げます。そのためにも現場の声にできるかぎり耳をかたむける対応が必要です。

5.管理職の教育をしっかり行う

管理者側の教育も時短ハラスメントを防ぐためには非常に重要です。

管理者への教育は、講習や勉強会などの教育体制を構築し、どのような行為が時短ハラスメントとみなされるかを管理者側に認識させるところからスタートします。

そもそも管理者が時短ハラスメント自体を認識していないケースは、意外にも多いということを知っておくことが大切です。

6.クライアントに協力を求める

クライアントの要望に応えるために、業務量が過大となっているケースも少なくありません。そのため、自社の労働時間短縮の取り組みは、クライアントにも周知し、理解を得るようにしておきます。

そのうえで、余裕を持った納期の設定などの協力を仰ぐようにしましょう。

7.ITツールを活用する

データ入力や書類整理などのルーティン作業は、業務支援ツールや文書の電子化サービスといったITツールを活用することにより効率化や自動化を図るのも有効な手段です。

特に、RPAと呼ばれる、パソコンの単純作業を自動化できるシステムの導入は、大幅な業務時間の短縮が見込まれます。

ルーティン作業を減らせば、従業員の業務を削減し負担を軽くすることが可能です。さらにITに任せることで人為的なケアレスミスが減るなどのメリットも得られるでしょう。

時短ハラスメント防止のために定期的な業務改善を

管理者は、たとえ「長時間労働を是正するため」の労働時間の短縮であっても、取り組み方を謝ってしまうと「ハラスメント行為」となる可能性があることを認識しておかなければなりません。

適切な対処をせずに、上司が一方的に定時退社や残業削減を強制するといった行為は、まさしく「時短ハラスメント」に該当します。これらの行為は、従業員の心身の健康を損なう恐れのある重大な問題であることを理解し、定期的に業務改善の取組みを進めていくことが大切です。

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