【働き方改革】年5日の有給取得義務とは?施行の背景・対象者・罰則について

2022/7/7 2022/07/07

働き方改革

有給休暇の取得義務・働き方改革

働き方改革の一環として、使用者に対して「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務づけられました。しかし、その詳細を正確に理解している人は少ないかもしれません。そこで本記事では、有給取得義務の施行背景や対象者、罰則について紹介します。また、有給取得を促進するために注意すべき点なども解説します。

働き方改革における年5日の有給取得義務とは?

働き方改革とは、労働者が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できる社会の実現を目指すものです。

その改革を一層推進するために労働基準法が改正され、2019年4月から年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が使用者に義務付けられました(労働基準法第39条第7項)。

厳密には、使用者は労働者に対して、年5日については「時季を指定して」有給休暇を取得させなければならないようになりました。

2019年3月までは、年休の取得日数に関して使用者に義務はありません

でした。改正後は使用者が労働者に対して、年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金が課されるおそれがあるので注意が必要です(労働基準法第120条)。

この年5日の年次有給休暇の取得は、あくまでも最低限の基準として義務化されたものです。したがって、真に働き方改革を推進するためには、使用者は、5日だけを年次有給休暇とするのではなく、労働者がより多くの年次有給休暇を取得できるように環境整備を進めることが推奨されています。

(1)有給取得が義務化された背景

年次有給休暇は法律で定められた労働者に与えられた権利です。一定の要件を満たした全ての労働者に年次有給休暇は付与されることになっています。そして、年次有給休暇は、原則として、労働者が請求する時季に与えなければなりません。

しかし実情は、同僚への気兼ねや年次有給休暇を請求することへのためらいなどを理由に、日本企業では取得率が低調な状態が続いています。

そのため、年次有給休暇の取得促進を実現するための具体的な手段が必要とされていたのです。そこで、労働基準法が改正され、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務化されたのです。

[出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」]

年次有給休暇の付与に関するルール

ここからは、年次有給休暇の付与に関する具体的なルールについて説明していきましょう。

(1)年次有給休暇を与えるタイミング

使用者は、原則として、労働者が請求する時季に年次有給休暇を与えなければなりません。そのため、労働者側が具体的な月日を指定して年次有給休暇の取得を希望する場合には、その日に年次有給休暇を与える必要があります。

ただし、使用者には「時季変更権」が与えられており、事業の正常な運営を妨げる場合などは、年次有給休暇の時季を他の時季に変更することが可能です。

(2)年次有給休暇の繰越し

年次有給休暇の取得は年度を超えて繰越すことができます。前年度に取得されなかった年次休暇は、翌年度に取得させなければなりません。

年次有給休暇の請求権の時効は2年と定められています。つまり、労働者は、年次有給休暇の請求権が付与された日から2年以内であれば年次有給休暇を年度を超えて請求可能です。

(3)不利益取扱いの禁止

労働者が年次有給休暇を取得したからと言って、使用者はその人に対して不当な扱いをしてはいけません。年次有給休暇の取得は労働者の権利であり、使用者はその権利の行使を妨げることはできないのです。

労働者に対する不利益な取り扱いには、賃金の減額はもちろん、精皆勤手当や賞与の額の算定に際して欠勤または欠勤に準じて取り扱うことも禁止事項として含まれています。

有給取得義務の対象となる労働者

労働基準法第39条では、原則として、雇入れの日から起算して6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には、年10日の有給休暇を付与することを定めています。

すでに説明してきたように、労働基準法第39条第7項は、年次有給休暇が年10日以上の全ての労働者に対して、使用者は毎年5日確実に年次有給休暇を取得させることを義務付けています。

よって、以下に該当する労働者に対しては、時季を指定して、確実に年5日の有給を取得させなければなりません。

(1)入社後6ヶ月が経過している正社員、またはフルタイムの契約社員

正社員・フルタイムの契約社員については、雇入れの日から起算して6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば10日の年次有給休暇が付与されるので、使用者には、年5日の時季指定義務が発生します。

(2)入社後6ヶ月が経過している週30時間以上勤務のパートタイマー

所定労働時間が30時間以上の労働者については、上記のような正社員・フルタイムの契約社員と同様に年次有給休暇を付与しなければなりません。そのため、週30時間以上勤務のパートタイマーで、入社後6ヶ月が経過している場合も、有休取得義務の対象者となります。

(3)入社後3年半以上経過している週4日出勤のパートタイマー

週4日出勤のパートタイマーであっても年次有給休暇は付与されます。週所定労働日数が4日、1年間の所定労働日数が169日〜216日であり、入社後3年半以上の勤続日数がある労働者には、10日の年次有給休暇が発生します。したがって、このケースも年5日の年次有給休暇の対象者となります。

(4)入社後5年半以上経過している週3日出勤のパートタイマー

週3日出勤のパートタイマーも年次有給休暇が付与されます。週所定労働日数が3日、1年間の所定労働日数が121日〜168日であり、入社後5年半以上の勤続日数がある労働者には、10日の年次有給休暇が発生します。そのためこのパートタイマーのケースでも、規定の有給休暇を取得させることが使用者の義務となります。

有給取得義務に違反した際の罰則

年5日の年次有給休暇の時季指定は使用者に対する「義務」であり、罰則規定もあります。

まず、年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、労働基準法第39条第7項違反となり、労働基準法第120条の罰則規定によって30万円以下の罰金が課されます。

また、常時10人以上の労働者を使用する事業場では就業規則を作成しなければならないことが定められており(労働基準法第89条)、使用者による時季指定を行う場合には、就業規則への記載が必要です。

有給休暇は法定の休暇であるため、休暇に関する事項は就業規則に必ず記載する事項(絶対的必要記載事項)となっています。

そのため、就業規則への記載がない場合、労働基準法第89条違反となり、労働基準法第120条の罰則規定によって30万円以下の罰金が課されることになります。

さらに、労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合には、労働基準法第39条(7項を除く)の違反となります。これは労働基準法第119条の罰則規定によって、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されます。

ただし、上記3つの労働基準法違反があったとしても、すぐに罰則規定が適用されるわけではありません。原則として、労働基準監督署が是正指導を行ったうえで、改善されないケースで罰則規定が適用されます。

なぜ有給取得が進まない企業があるのか?

働き方改革の一環として行われている有給取得ですが、なぜ労働基準法で罰則規定を設けて使用者に義務として課さなければならないほど、取得が進んでいないのでしょうか。3つの原因について解説していきます。

(1)体制が整っていない

年次有給休暇の取得が進まない理由の一つは、企業側で労働者に年次有給休暇を取得させる体制が整っていないことが挙げられます。

それぞれの従業員がいつまでに何日の有給休暇を取得できるのか、社内で労務情報が管理できていない可能性があります。取得しないまま繁忙期に入り、結局使わないままという労働者も多いでしょう。

会社側で有給の取得ルールを整備するとともに、労務管理システムの活用などによって、人事担当者や管理職が従業員に取得を促すような社内体制の構築が求められています。

(2)人材不足による業務量の多さ

人材不足による業務量の多さも年次有給休暇の取得が進まない要因の一つです。業務量が多いため、休みたくても休めないという状況が、労働者に対して有給休暇取得をためらわせています。

人材不足による業務の属人化も、年次有給休暇の取得が進まない原因の一つです。仕事がうまく分担されていない職場では、その人でないとわからない業務があるでしょう。

そうした事情から、有給休暇で会社を休むと業務に穴があくことになるので、それを避けるために有給休暇を取得しないのです。

(3)有給取得へのためらい

他の同僚が働いているときに有給休暇を取得しにくいというのは、日本の労働環境に蔓延っている悪習かもしれません。

有給取得に罪悪感を感じるという人も少なくないでしょう。休みづらい雰囲気・有給を取得しにくい企業文化も有給取得をためらわせる大きな要因となっています。

有給取得の促進に向けて注意すべきこと

それでは、有給取得の促進に向けて、企業はどのような取り組みを行っていけば良いでしょうか。3つのポイントを解説していきます。

(1)有給が取得しやすい制度や環境を作る

まずは会社に有給が取得しやすい制度や環境を作ることから始めてみましょう。年度初めに、年次有給休暇の取得計画表を作る、使用者が有給を積極的に取得する時季を示すといった取り組みが有効です。

使用者側から一方的に有給休暇を消化するように指示するのではなく、従業員側が自ら有給休暇を取得できるようにすることが重要になります。

定期的に企業全体の有給取得率を開示して、取得し忘れをなくすと同時に、自分以外の労働者が有給を取得していることを周知すると、安心して有給休暇を取得できるようになるはずです。

(2)適切な人員配置を行う

業務が適切に割り振られていない職場では、残業や休日対応などが慢性化しやすいため、有休取得率の改善は期待できません。

したがって、適切な人材配置を行い、業務が特定の労働者に過度に集中しないように体制を再構築する必要があります。

また業務を分担して、一人が休んでも別の従業員が対応できるような業務フローを作ることも大切です。

(3)業務効率化ツールを導入する

年次有給休暇の取得率を向上させるためには、業務効率化ツールの導入も有効です。関連するITツールを導入すれば、業務プロセスを大幅に効率化することができるでしょう。

例えば、これまで対面で行っていた営業活動に関して、オンライン会議システムを導入することで、効率化による長時間労働の是正が期待できます。

また人事・労務管理システムを活用することで、人材採用や人材配置、給与計算、経費計算など、いままで時間がかかっていた業務の時短化が可能になります。

こうしたITツールの利活用によって一人ひとりの業務負担が軽減すれば、有給が取りやすい職場環境を整えることができます。

働き方改革において重要な有給取得義務をきちんと理解しよう

使用者は、年10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員に対して、少なくとも年5日については時季を指定して有給休暇を取得させる必要があります。使用者はこの義務についてきちんと理解しておく必要があります。

ただし、これは最低限の休暇について規定したものに過ぎません。労働基準法の改正が、働き方改革の一環として、より多くの労働者に年次有給休暇を取得できる環境を提供することを目的としたものであることを忘れないようにしましょう。労働者側も有給休暇は労働者に与えられた権利であることをきちんと理解することが大切です。

その上で、企業は有休取得率の改善を図るための社内体制の整備や、業務効率化を実現させるデジタルツールの導入など、従業員が働きやすい職場環境を作ることが重要です。

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