【解説】働き方改革の問題点とは?企業が直面する課題と解決策について

記事更新日:2022/07/25

働き方改革

残業に疲れた男性・働き方改革

働き方改革の問題点を理解せずに導入を進めると、かえって逆効果になってしまう可能性があることをご存知でしょうか。本記事では働き方改革の導入を検討している人に向けて、働き方改革の問題点と解決策などを紹介します。ぜひ参考にしてください。

働き方改革とは?

働き方改革とは、多様な働き方を可能にすることで、すべての人が活躍できる社会を目指す取り組みのことです。政府主導の取り組みであり、法制度(働き方改革関連法)の整備や助成金の提供などを通じて、企業側の実施をうながしています。

働き方改革の背景と目的

働き方改革が求められた背景として、少子高齢化や働き方の多様化が挙げられます。

国立社会保障・人口問題研究所の推計調査によると、日本の生産年齢人口(15〜65歳)は1995年から減少傾向になり、2065年には4,500万人程度にまで落ち込むものと予測されています。また、共働き夫婦や未婚者の増加などにともない、従来の働き方にはない柔軟なワークスタイルを望む人たちが増えてきました。

こうした少子高齢化や働き方の多様化に対応する施策として、動き出したものが働き方改革です。働き方改革の最大の目的は、労働力の流動性を高め、日本の経済を活性化させることにあります。

すべての人が活躍できる社会(一億総活躍社会)を実現させることが、少子高齢化への対策や、多様な働き方を受け入れることに繋がるのです。

働き方改革によるメリット

働き方改革を推進すると、企業側や従業員側にさまざまなメリットがもたらされます。企業側のメリットは以下のとおりです。

  • 労働時間の短縮により、生産性を意識した職場環境へと転換できる
  • 柔軟な働き方の導入によって、優秀な人材が集まりやすくなる
  • 社会的な評価を得られる

続いて、従業員側のメリットを見ていきましょう。

  • 時間外労働の減少により、プライベートの充実が図れる
  • 非正規雇用者でも正規雇用者と同様の待遇や賃金を得られる(同一労働同一賃金)
  • 自分のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができるようになる

このように、働き方改革を実施するメリットが多数あることから、実施に意欲的な企業や協力的に応じる従業員も少なくありません。

働き方改革の問題点を立場ごとに解説

メリットの多い働き方改革ではありますが、一方で問題点も存在します。ここでは、企業側・従業員側それぞれの問題点をチェックしていきましょう。

(1)企業や経営側の問題点

まずは、企業や経営側が抱える問題点を5つ見ていきます。

#1: 利益や生産性の低下

働き方改革のポイントのひとつに、労働時間の是正があります。残業時間が減ることで労働時間内の作業効率が向上するケースもあれば、以前は1日で完了した仕事に数日かかってしまうケースも見受けられます。

日々の業務スピードが遅くなると、自社商品の生産サイクルや販売活動が停滞する恐れがあり、場合によっては利益が減少することもあるでしょう。

ほかにも、働き方改革の推進に従事する人材が本業に注力できず、売り上げに貢献する直接部門の人的リソースが不足する事態も考えられます。

#2: 残業代減少による従業員のモチベーションの低下

働き方改革によって残業時間が是正されると、結果的に社員の残業代が減ります。プライベートの時間が生まれることを良しとする人もいれば、収入が減ることに不満を抱く人も出てくるでしょう。

会社としては残業規制により人件費の削減効果が期待できる一方で、モチベーション低下により社員の業務効率が著しく下がったり、競合他社へ転職してしまったりするリスクも存在します。

#3: 人件費増加の可能性

働き方改革の中心的な施策である「同一労働同一賃金」は、非正規労働者と正規労働者の賃金格差をなくす取り組みです。これによって非正規労働者の労働環境を改善できる一方で、企業側の人件費負担は増加します。

同一労働同一賃金では、基本給や賞与だけでなく、福利厚生や教育訓練といった待遇差の是正も求められます。働き方改革の推進を試みる企業は、取り組みによって自社の人件費が増加する可能性があることを覚えておきましょう。

#4: 社内規約変更への対応

働き方改革を実施する場合、社内ルールの大幅な見直しが必要になる場合があります。社内規約に問題のある状態のまま放置していると行政指導が入るケースもあるため、注意が必要です。

通常、社内ルールの見直しは、経営層や人事担当者が主導で行います。そのため、マネジメント側の時間を一定数割かなければならない点を、あらかじめ認識しておく必要があります。

(2)従業員側の問題点

働き方改革の推進によるデメリットは、企業側だけでなく従業員側にも存在します。ここでは、従業員側が抱えるデメリットを5つ見ていきましょう。

#1: 残業代の削減による収入の減少

働き方改革を推進する企業では、長時間労働の見直しや、従業員のワークライフバランスに配慮した労働環境づくりが行われます。フレックスタイム制の導入やテレワークの推進によって、育児や介護がしやすくなる従業員も一定数存在します。

しかし、なかには残業時間の減少にともなう収入減が、大きな負担となるケースもゼロではありません。世帯あたりの人数が多かったり住宅ローンを組んでいたりした場合、残業代の減少は看過できない問題です。

#2: 従業員間での業務負担の偏り

業務効率化を図るために企業が仕事を分担していくと、作業効率の高い従業員に業務が一極集中する恐れがあります。優秀な人材やマネージャーへの負担が増えていくと、結果的に彼らの生産性が低下し、会社全体のパフォーマンスが悪化する可能性もあるでしょう。

長時間労働の是正や働き方の多様性を推進する場合は、同時に労働環境の改善やITツールの導入などを実施しなければ生産性が高まらず、しわ寄せが特定の人材へ集中してしまいます。

#3: 実質的な業務量は変わらない

働き方改革によって残業時間が短縮されたとしても、効率や生産性が向上しないかぎり、必要な業務量は変わりません。その状態でマネージャーから従来の感覚でタスクを割り振られると、1日あたりの労働時間が減少しているため、期限内に業務を遂行することが難しくなります。

経営層やマネージャーが残業時間の減少を把握したスケジュール調整を実施しなければ、一般社員に負担がかかり、業務の遅延→モチベーション低下という悪循環が発生してしまう可能性があるため、ご注意ください。

#4: 高度プロフェッショナル制度による健康被害

高度プロフェッショナル制度とは、一定の条件を満たした人材の労働時間規制を撤廃する制度です。業務時間ではなく「成果」で業務を評価することで、高度なスキルを有する人材の柔軟な働き方を促進する狙いがあります。

働き方改革の一環として制定された本制度ですが、いくつか課題も存在します。なかでも問題視されているのは、労働時間規制が撤廃されることで、残業が発生しやすくなる点です。成果を出そうと考えるあまり長時間労働をし、過労やうつ病状態に陥るケースもゼロではありません。

上手に導入すれば、優秀な人材の生産性向上やワークライフバランスの実現が期待できる制度であるものの、運用を間違えると過剰労働の原因となってしまう恐れがあります。

#5: サービス残業が増加する恐れ

働き方改革によって残業時間が減ったとしても、納期の迫った業務が発生することもあるでしょう。その場合、オフィスに残って作業ができないことから、自宅に持ち帰ってのサービス残業が発生します。

サービス残業が増えていけば、ワークライフバランスの実現から遠のくだけでなく、労働量に見合った報酬が得られないことで、従業員のエンゲージメントも低下してしまうでしょう。働き方改革に取り組む際には、残業時間の減少によってサービス残業が増えていないか注意する必要があります。

働き方改革の問題点に対する4つの解決策

働き方改革の推進によって懸念される問題点は、適切な対策を講じることで解決可能です。ここでは、働き方改革をスムーズに進めるためのポイントを4つ紹介します。

(1)体系的な業務や業務効率化ツールの導入による最適化

働き方改革では、残業に依存しない労働スタイルが求められます。そのため、企業は限られた時間内に業務が完了できるように、業務の体系化やITツールの導入を通じた効率化を図る必要があります。

業務の体系化では、業務マニュアルの作成が一般的です。最近ではノウハウやコツといった暗黙知を社内に浸透させる方法として、動画形式のマニュアルを取り入れる企業も増えています。

ITツールとしては、勤怠管理システムやビジネスチャットの導入が有効です。勤務状況の適切な管理と社内コミュニケーションの活性化を意識することで、リモートワークで働く従業員とも効率的なやり取りが交わせるようになり、事業遂行スピードの向上が期待できるでしょう。

(2)インセンティブ制度の導入

インセンティブ制度とは「成果を出した従業員に報酬を与える」制度です。インセンティブ制度を導入することで、従業員はモチベーションが高まり、目標を達成しようと努力します。また、働き方改革によって残業量が減ったことによる収入減の緩和も図れます。

インセンティブ制度を導入する場合は、「全社員を対象」とすることに加え、「実現可能な目標」を設定するよう心がけてください。特定の社員のみが対象のインセンティブでは不公平感を生んでしまい、達成不可能な目標だと従業員のモチベーションが高まらないためです。

(3)日々の業務や働き方改革の目的を共有

経営陣や人事担当者が一方的に働き方改革を推進しても、従業員がその目的を理解していなければ効果も半減します。日々の業務においても同様に、「この仕事は何のためか」という点を理解しているのといないのとでは、生産性に大きな差が生じるでしょう。

働き方改革を導入する際は、働き方改革の概要や目的に加え、付随して実施していく施策それぞれの目的を従業員へ説明することが大切です。従業員が納得感を持って日々の業務や働き方改革に取り組むことが、社内全体のパフォーマンス向上に繋がります。

(4)根本的なワークフローの見直しと改善

働き方改革の推進には、社内ルールの変更や労働環境の整備に加え、ワークフローの見直しも重要なポイントといえます。新しいルールや労働環境に合わせて、ワークフローも最適化する必要があるためです。

具体的な見直しの流れとしては、まず現状のワークフローを可視化し、どのような点を改善すべきか組織内で確認していきます。

「本当に必要な業務なのか」「この仕事は労働量に見合った価値を提供しているのか」といった視点で各業務を精査し、効率化の妨げとなっている点を改善していくとよいでしょう。

働き方改革を成功させるための注意点

ゼロから働き方改革に取り組む場合、具体的なアクションを知ることも大切ですが、推進する際の心構えを押さえることも重要なポイントです。

そこでここからは、働き方改革の成功に必要な2つの考え方を紹介していきます。

全社で取り組む必要がある

働き方改革を社内に浸透させるには、全社単位で取り組むことが重要です。マネージャーや人事担当者が主導で進めてしまいがちですが、現場の理解が追いついていないと、働き方改革のメリットが十分に発揮できません。

働き方改革を目指した新たな取り組みを実施する際には、マネージャーから一方的に指示を出すのではなく、従業員が一致団結して施策にあたる意識が大切です。現場からの意見やコメントが出やすくなれば、問題や課題が可視化されやすくなり、自社の働き方改革の進め方も見えてくるでしょう。

長い目で見る必要がある

働き方改革は、すぐに企業へ利益をもたらすものではありません。特に新しい働き方や社内ルールを導入する場合は、従業員が新しい労働環境に慣れるまで時間を要するため、一時的に生産性が低下する可能性も考えられるでしょう。

短期的な視点で働き方改革をとらえてしまうと、「残業をなくして人件費が節約できた」「サービス残業してくれる社員がいて、助かる」といったように、誤った認識を企業が抱く可能性があります。

そうした事態を防ぐためにも、働き方改革を導入する際は、あらかじめ効果に時間を要することを認識しておき、長期的な視野に立って取り組む意識が重要です。

自社の課題を見極めたうえで解決策を実施すること

本記事では、働き方改革の問題点や解決策などを紹介してきました。働き方改革を効果的に推進していけば、企業側は生産性の向上や優秀な人材の確保といったメリットが期待できます。

また、従業員側も柔軟な働き方ができるようになり、モチベーションアップやワークライフバランスの実現が図れることでしょう。

ただし、働き方改革には、企業が直面しやすい問題や課題も多く存在するため、導入の際には適切な対応が求められます。本記事の内容を参考に、企業の継続的な成長をもたらす働き方改革を実施していきましょう。

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