一億総活躍社会とは?政府が推進するプランや現在の問題点について解説

記事更新日:2022/10/31

働き方改革

一億総活躍社会の文字

少子高齢化による構造的な問題を根本から解決するために、政府が目指していたのが「一億総活躍社会」です。国民一人ひとりが活躍できる理想の社会を描いたビジョンですが、果たしてそのビジョンとは一体どのような内容なのでしょうか。本記事では、一億総活躍社会について解説していきます。

一億総活躍社会とは?

一億総活躍社会とは、誰もが能力を発揮して活躍でき、生きがいを感じられる社会のことです。第3次安倍内閣において、アベノミクスの第2ステージとして打ち出されたスローガンでもあります。

2017年8月3日に閣議決定された政府基本方針によると、少子高齢化の流れに歯止めをかけ、50年後の人口1億人維持を目指す方針です。

その一億総活躍社会の実現のために「新たな三本の矢」を放つと述べられており、そのなかでも最大のチャレンジが「働き方改革」と言われています。なお、新たな三本の矢とは、以下の3つです。

  • 希望を生み出す強い経済(名目GDP600兆円)
  • 夢をつむぐ子育て支援(希望出生率1.8)
  • 安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)

一億総活躍社会が打ち出された背景

第3次安倍内閣において打ち出された「一億総活躍社会の実現」という目標は、経済成長のネックとなっている少子高齢化問題が背景として誕生したものです。

「三本の矢」として進められた大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略は、日本企業の収益が史上最高水準に達したり、就業者数が100万人以上増えたりするなど、一定の成果がありました。

しかし一方で、個人消費や設備投資には力強さがない状況でした。その背景にあるのが、少子高齢化問題です。

1984年には1.81であった出生率は、2005年に1.26まで低下し、あわせて高齢化率も上昇しました。少子高齢化の進行は、労働供給の減少や経済規模の縮小、生活水準の低下、将来に対する不安や悲観につながります。

そこで、この少子高齢化という構造問題に、内閣が真正面から立ち向かう必要があるとして打ち出されたのが「一億総活躍社会」です。

ニッポン一億総活躍プランとは?

ニッポン一億総活躍プランとは、一億総活躍国民会議で取りまとめられ、2016年6月2日に閣議決定されたプランです。ニッポン一億総活躍プランでは、一億総活躍社会の実現に向けた「新たな三本の矢」の目標や、その実現に向けた取組みの方向性について記されています。

ここからは、ニッポン一億総活躍プランで示された「新たな三本の矢」がどのようなものか紹介していきます。

第一の矢「希望を生み出す強い経済」

第一の矢として挙げられているのは、「希望を生み出す強い経済」です。強い経済の実現のため、イノベーションと働き方改革を通じた生産性の向上と、労働力の確保が明記されています。地方創生や規制改革などの政策とあわせ、戦後最大の名目GDP600兆円といった数値目標を掲げた点が特徴です。

第二の矢「夢をつむぐ子育て支援」

第二の矢として挙げられたのは「夢をつむぐ子育て支援」です。最も根源的な課題である人口減少に立ち向かうためには、1人でも多くの人の結婚や出産の希望をかなえることが重要だと示されました。数値目標としては、希望出生率1.8が掲げられています。

第三の矢「安心につながる社会保障」

第三の矢として挙げられたのは、「安心につながる社会保障」です。特に介護離職者の多さを問題として捉え、介護離職ゼロが数値目標として掲げられています。

一億総活躍社会の実現における現在の問題点

第3次安倍内閣において掲げられた「一億総活躍社会」ですが、掲げられていた目標に対する現在の実績はどうなのでしょうか。

実は現在、一億総活躍社会に関する「ニッポン一億総活躍プラン」フォローアップ会合や、一億総活躍国民会議などの会議体は活動を終了しています。

そのため2022年現在、政府は一億総活躍社会の進捗状況を取りまとめていない状況です。一億総活躍社会において掲げられていた目標は、いまだ達成していないものもあり、課題は残されています。

たとえば、子育ての環境整備が挙げられます。2024年度末までに約14万人分の保育の受け皿を整備するといった目標が掲げられていますが、2022年4月1日時点で発表された見込みは、約13万人です。

新子育て安心プランの実施方針に基づく各市区町村の「新子育て安心プラン実施計画」の集計を行ったところ、現時点で2024(令和6年度末までに、約13.0万人分の保育の受け皿を拡大する見込みとなっています。

[引用:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)及び「新子育て安心プラン」集計結果を公表」より]

一億総活躍社会の実現に向けた政府の取り組み

一億総活躍社会の実現に向け、政府はどのような取り組みをしてきたのでしょうか。ここでは、主な取り組みを紹介していきます。

働き方改革への取り組み

働き方改革は、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジと言われていました。具体的な改革内容は次のとおりです。

  • 同一労働同一賃金の実現
  • 長時間労働の是正
  • 高齢者の就労促進

それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

同一労働同一賃金の実現

まず、非正規雇用労働者の待遇改善を目的に、同一労働同一賃金の実現に向けた動きが進められました。同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差をなくすことです。

本施策は厚生労働省の政策として推進され、実際に労働契約法やパートタイム労働法、労働者派遣法などが改正されたほか、どのような待遇差が不合理に当たるのかを示したガイドラインが公表されています。

長時間労働の是正

日本は欧米諸国と比べて長時間労働者の割合が多いこともあり、長時間労働の是正も施策として進められました。

長時間労働の是正については、残業時間の上限規制や月60時間超えの残業の割増賃金率引き上げなど、労働時間法制の見直しが盛り込まれた「働き方改革関連法」が2019年4月から順次施行されています。

高齢者の就労促進

働き方改革では、高齢者雇用の仕組みが不十分であることなどを背景として、高齢者の就労促進が図られました。

高齢者就労促進については、70歳までの定年引き上げや、定年制の廃止措置などを企業の努力義務とすることを盛り込んだ「高齢者雇用安定法」の改正案が成立し、2021年4月1日から施行されました。

また、厚生労働省は高齢者雇用情報のポータルサイト「高齢者雇用対策ラボ」を2022年10月中に公開予定です。

「希望出生率1.8」に向けた取り組み

続いて、希望出生率1.8に向けた取り組みを確認していきましょう。

子育て・介護の環境整備

子育て・介護の環境整備として、保育や介護の受け皿整備や人材の処遇改善、労働負担の軽減など総合的な対策が進められました。

2021年度からは、「新子育て安心プラン」として、2024年度末までに約14万人の保育の受け皿を整備することを目標とし、自治体への補助率アップや保育コンシェルジュによる相談支援の拡充などが進められています。

すべての子供が希望する教育を受けられる環境の整備

「誰にでもチャンスがある一億総活躍社会」を創るため、すべての子供が希望する教育を受けられる環境整備が進められました。

具体的には、2019年10月から引き上げられた消費税による財源を活用し、幼児教育・保育の無償化や、高等教育の修学支援新制度がスタートしています。

女性活躍

一億総活躍社会の中核として、女性が自らの希望に応じて活躍できる社会づくりが進められています。2022年現在でも、男女間賃金格差やジェンダーギャップの解消、固定的な性別役割分担意識の解消などの施策が実施されている状況です。

たとえば2022年7月8日からは、常用労働者301人以上の事業主に対し、男女間の賃金格差の開示が義務づけられています。

若者・子育て世帯への支援

子育て中の保護者の約4割が悩みや不安を抱えていることなどを背景として、若者や子育て世帯への支援が進められました。

たとえば、継続的な支援を提供するために、保健師や助産師、看護師、ソーシャルワーカーを配置した「子育て世代包括支援センター(母子健康包括支援センター)」の設置を全国の市区町村が展開しています。

社会生活を円滑に営むうえでの困難を有する子供・若者等の活躍支援

一億総活躍社会を実現するためには、発達障害などによって円滑な社会生活が困難である子供や若者の活躍が欠かせません。そこで多くの専門機関が連携し、伴走型の支援に取り組みました。

また、若年無業者に対しては、ハローワークや地域若者サポートステーションなどが連携し、就労や自立に向けた取り組みを推進しています。

具体的な取り組みは次のとおりです。

  • キャリアアップ助成金の継続実施
  • 若年者雇用促進法の円滑な施行
  • ジョブ・カードの活用促進
  • 子ども・若者支援地域協議会の設置や活用

「介護離職ゼロ」に向けた取り組み

新たな三本の矢で掲げられた数値目標の1つである「介護離職ゼロ」に向けた取り組みは、以下のとおりです。

  • 介護の環境整備
  • 健康寿命の延伸と介護負担の軽減
  • 障害者、難病患者、がん患者等の活躍支援
  • 地域共生社会の実現

それぞれ詳しく解説します。

介護の環境整備

介護離職ゼロを実現するためには、介護の受け皿拡大が必要です。介護人材の処遇についても改善が図られ、月額平均1万円相当の処遇改善を目指した環境整備が進められています。

2022年度においても、「介護職員処遇改善支援補助金」といった施策を実施中です。また、介護福祉士を目指す人を支援する「介護福祉士修学資金等貸付制度」などの充実が図られています。

健康寿命の延伸と介護負担の軽減

健康寿命とは、日常生活に制限のない期間のことです。健康寿命を延ばすことは、介護負担の軽減につながります。このような考え方を背景として、個人の努力を基本としながらも、次のような取り組みが進められました。

  • データヘルスの推進
  • フレイル(虚弱)対策
  • スポーツ習慣化の推進
  • 高齢者就労支援

なお、健康寿命は2010年の時点で男性が70.42年、女性が73.62年であったところ、2019年には男性が72.68年、女性が75.38年と増加しています。

障害者、難病患者、がん患者等の活躍支援

一億総活躍社会の実現に向け、障害者や難病患者、がん患者等の活躍支援が推進されました。具体的な取り組みは次のとおりです。

  • 障害者就業・生活支援センターにおいてリモート面談の環境整備
  • ジョブコーチの養成と研修の実施
  • 精神障害者等就労パスポートの整備
  • 障害者雇用促進法の改正
  • 法定雇用率の見直し

なお、2021年の障害者実雇用率(法定雇用率)は、民間企業において過去最高を更新する2.20%でした。

地域共生社会の実現

子供や高齢者、障害者を含め、すべての人が共生して高め合える社会を「地域共生社会」と呼びます。地域共生社会の実現に向けた施策としては、社会福祉法の改正を通じて創設された「重層的支援体制整備事業」などが一例です。

一億総活躍社会が与える企業への影響

一億総活躍社会の実現に向けた動きに対して、企業にはどのような影響があるのでしょうか。

まず挙げられるのが、政府が最大のチャレンジと表現した「働き方改革」による影響です。働き方改革によって、労働時間法制の見直しや、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保など、企業は変化への対応を求められました。

今後も、仕事と育児が両立できる環境の整備や生産性向上に向けた取り組みの加速、賃金の引き上げなどが企業には求められています。

一億総活躍社会に関する取り組みについて正しく理解

一億総活躍社会とは、第3次安倍内閣でアベノミクスの第2ステージとして打ち出されたスローガンです。誰もが能力を発揮して活躍し、生きがいを感じられる社会を意味しています。

2022年現在、一億総活躍社会というスローガンこそ掲げられていないものの、働き方改革に代表される複数の施策は進展を見せています。長時間労働の是正や同一労働同一賃金、柔軟な働き方が許容される職場環境、賃金引き上げなど、企業が取り組むべき事項も少なくありません。

一億総活躍社会に関する理解を深め、よりよい社会の実現へ向けてアクションを起こしていきましょう。

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