シェアリングエコノミーとは?市場規模やメリット・デメリットを解説
新しい経済の形として企業も注目するシェアリングエコノミーとは、一体どのような概念なのでしょうか。本記事では、そんなシェアリングエコノミーについて、基本的な知識から市場規模やメリットなど詳しく解説していきます。
目次
シェアリングエコノミーとは?
近年、シェアリングエコノミーという言葉は、テレビや新聞などでもよく見かけるようになりました。シェアサイクルや民泊などが例として紹介されるので、シェアリングエコノミーがどういうものかは、なんとなくイメージできるかと思います。
しかし、具体的に説明するとなると、意外にむずかしいのではないでしょうか。ここではシェアリングエコノミーの定義と例を紹介していきます。
シェアリングエコノミーの定義
シェアリングエコノミーとは、個人や組織が所有する資源を多くの人々が利用することで、限られた資源を有効に活用しようという経済的取り組みのことです。
土地や建物、乗り物など、世の中には数多くの活用されていない遊休資産が眠っています。これらは所有者にとっては活用が難しく、宝の持ち腐れになることも。しかし、このような資産を必要な人が利用できる仕組みを用意することで、新たな価値を生み出せるようになります。
シェアリングエコノミーは、資産の所有者とそれを必要とする人のニーズを満たせるのが特徴です。例えば、土地の一部や使わない乗り物を貸し出すことで、所有者と借り手はお互いに利益を得られます。
昨今はITインフラの発展により、不特定多数とのコミュニケーションが容易になりました。スマートフォンの普及やオンラインでの貸し出しシステムの登場により、個人間でのやりとりがスムーズになったため、シェアリングエコノミーはますます活発になると期待されています。
シェアリングエコノミーサービスの種類
シェアリングエコノミーの対象となる資産は大きく分けて5種類あります。
- 空間
- 移動
- お金
- スキル
- モノ
各項目の内容を紹介します。
空間のシェア
駐車場や会議室の貸し出し、ホームシェア、民泊などがこれに該当します。
移動のシェア
同じ目的地の人間同士の相乗りや、車や自転車を貸し出すカーシェア・シェアサイクルがあります。
お金のシェア
多数の人々が一つのプロジェクトに出し合う、クラウドファンディングが代表的です。
スキルのシェア
通訳や家事、観光、教育など、個人が持つスキルを必要とする人に共有するものです。ここ数年で利用が拡大したクラウドソーシングなどは、このスキルのシェアをおこなうサービスといえるでしょう。
モノのシェア
モノのシェアは、フリーマーケットでの売り買いなどが該当するため、最も一般的におこなわれているシェアリングエコノミーではないでしょうか。また、最近では、ベビー用品や洋服など、「今は使わないもの」をレンタルする形でシェアするサービスも拡大しています。
このように、一口にシェアリングエコノミーといっても、さまざまな種類があります。この定義に照らせば、多くの人々が何かしらのシェアできる資産を所有していると考えることもできるでしょう。そのため、シェアリングエコノミーは、非常に門戸が広いものといえるのです。
シェアリングエコノミーが普及している経緯
シェアリングエコノミーは、以前は今ほど注目されていませんでした。なぜ、ここまで普及するようになったのでしょうか。それには、主に2つの理由があります。
まず、消費者動向やニーズが、モノ消費からコト消費へと移行した点が挙げられます。従来は、「所有すること」に価値を見出すモノ消費が重視されていました。
しかし、現在はモノを通して得られる体験を重視するコト消費の時代へとニーズが移り変わっています。そのため、所有や製品の機能そのものではなく、そこからどのような体験や価値を得られるのかが重視されるようになっています。
シェアリングエコノミーはモノを所有せずに、必要な時に利用しようという考えの元に成り立っています。そのため、コト消費の社会と非常に相性がいい特性を持っているのです。
次に、通信環境の発達やモバイル端末の普及が挙げられます。誰もが場所を問わずインターネットを利用できるようになり、個人においても必要な時にリアルタイムでのやり取りが容易におこなえるようになりました。
これにより突発的な需要にも応えられるシステムの構築が実現し、さらには、個人間や個人との経済活動も可能になったのです。その代表的なサービスと言えるのが、販売者と配達者、そして消費者の3者を結ぶ、食事のデリバリーサービス「Uber」です。
このほかにもシェアリングエコノミーをビジネスに生かしたサービスは多々存在し、コト消費の加速とインターネット技術の発達により、シェアリングエコノミーは、身近な経済活動の形として浸透しつつあります。
シェアリングエコノミーの市場規模
シェアリングエコノミー市場は、現在どのようになっているのでしょうか。一般社団法人シェアリングエコノミー協会の調査によると、日本国内のシェアリングエコノミー市場規模は、過去最大の2兆4198億円を記録しました。
シェアリングエコノミー市場は、今後も成長を続けると考えられます。というのも、シェアリングエコノミーには課題が多く、改善の余地がまだまだあるからです。
現代社会における最も大きな課題は、新型コロナウイルス感染リスクです。シェアリングサービスによるモノの共有では、内容によって感染リスクが高まることもあります。そのため、感染リスクを懸念する「利用控え」の傾向は、今後も続くと考えられます。
もう一つの大きな課題は、シェアリングエコノミーの認知度の低さです。シェアリングエコノミーという名称は広まっているものの、実際の利用には至っていないケースも多くみられます。取引の安全性に対する不安など、心理的なハードルがまだまだ高いことも事実でしょう。
シェアリングエコノミー協会では、この2つの課題を解決した場合に見込まれる市場規模として、2030年度には14兆2799億円に達する予測を立てています。
[出典:株式会社情報通信総合研究所・一般社団法人シェアリングエコノミー協会「シェアリングエコノミー関連調査」]
シェアリングエコノミーが成長し続ける要因
シェアリングエコノミーは、ニューノーマルの到来で勢いを失うのではないかという声があります。ここでのニューノーマルとは、新型コロナウイルスの感染拡大による、生活様式の変化を意味します。
たしかに、シェアリングエコノミーは、モノや空間を共有するという特性上、物理的な距離が近くなる恐れがあります。しかし、実際はシェアリングエコノミーは今後も成長を続けると考えられます。主な理由は3つあります。
1つ目は、シェアリングエコノミーでも感染リスクのあるタイプのものはそれほど多くないという点です。
物理的に距離が近くなるものは、相乗りや民泊などですが、それ以外のシェアリングは、さほど感染リスクは高くないのが実状です。
また、お金やスキルのシェアは、そもそも物理的に距離が近くなることはありません。このように、コロナ感染症の影響があるシェアリングエコノミーは限定的と言えます。
2つ目は、シェアリングエコノミーは社会のニーズとマッチしているという点です。現在は、所有よりも体験を重視するコト消費の時代です。
そのため、資産を所有し続けることの価値が低下しつつあります。必要な時に必要な分だけ利用するシェアリングエコノミーは、そのような社会の価値観にマッチしています。
3つ目が、デジタル技術の発展です。どこでもインターネットが利用できる環境と通信の高速化によって、リアルタイムのやり取りが可能になりました。
シェアリングエコノミーサービスは、「必要な時に、必要な分(モノ)を」といった概念のため、通信環境の発達と活用は不可欠な要素となります。そのため、利用しやすい環境が整ったことが、成長の大きな足掛かりとなっているのは間違いないでしょう。
シェアリングエコノミーのメリット
シェアリングエコノミーには、どのようなメリットがあるのでしょうか。5つに分けて解説します。
様々なコストの削減
シェアリングエコノミーは、多くの側面からコスト削減につながります。物を所有することは、その物の値段以外にもさまざまなコストを必要とします。
例えば、車は購入後もメンテナンスや税金などの継続的な維持コストがかかりますし、オフィスの確保にも、設備投資などの初期費用や維持費用が必須です。
使用頻度や期間によっては、このような所有コストを支払う価値があるかもしれません。しかし、短い間しか使わない、たまにしか使わないという場合は、これらのコストは割に合わないものになります。
シェアリングエコノミーは、必要な分だけものを利用できるようにする仕組みのため、既にモノを所有する人から借りることによって利用者は所有コストを払わずに済むのです。
新たな価値の付与
シェアリングエコノミーは、資産に新しい価値を与えることができます。資産を所有していても、思うように活用できないということは少なくありません。
大きな部屋や車、高いスキルを持っていても、使う機会がなければ価値を生み出すことはできないのです。シェアリングエコノミーの利用で、そのような資産を必要としている”需要”を見つけることができます。
部屋を借りて大事な楽器を保管したい人、数日だけ車を利用したい人、数十分だけ通訳を利用したい人たちとつながることで、遊休資産が利益と価値を生み出すようになります。
経済発展の促進
シェアリングエコノミーは、モノを安く利用できることだけがメリットではありません。社会全体で見れば、経済発展の促進につながります。
例えば、カーシェアリングは、これまで「車がないと行きづらい」と躊躇していたエリアへのお出かけを促進する効果が期待できます。
また、前述の「Uber」も、利用することにより気になっていたお店の食事をデリバリーで気軽に楽しめるようになりました。このようにシェアリングエコノミーは、新たな経済活動のきっかけにもなるのです。
ビジネスとして成立しやすい
シェアリングエコノミーには、ビジネスとして成立しやすいという特徴もあります。シェアリングエコノミーは、すでに所有している資産を活用するため、設備投資などの初期費用を必要としません。そのため、ビジネスとしてはローリスクでスタートできる事業といえます。
また、シェアリングサービスには、「Uber」のほかにも、民泊のマッチングサービス「Airbnb」やクラウドソーシングのプラットフォームなどがすでに確立されているため利用者を探す手間も最小限に留めることができるでしょう。このようなプラットフォームには多くのユーザーが集まるため、効果的なマッチングが可能です。
このように、シェアリングエコノミーは、リスクを抑えた展開が可能なため、比較的に着手しやすいビジネスといえるのです。
新しい人間関係の構築
人間関係が広がることも、シェアリングエコノミーの魅力だといえるでしょう。シェアリングエコノミーを利用する目的は、モノの共有です。
さらに、その利用過程を通じて、多くの人々と知り合う機会が増えます。新しい友人や趣味の合う仲間、ビジネスパートナーなどとの出会いを得られる機会は、何者にも代えがたいものでしょう。
現在は、モノ(所有)よりもコト(体験)が重視されている社会です。多くの人々とのネットワークは、今後の人生をより充実したものにしてくれるでしょう。
シェアリングエコノミーのデメリット
シェアリングエコノミーには、注意すべきデメリットもあります。デメリットを把握しておけば、想定外のトラブルの回避に役立つかもしれません。
シェアリングエコノミーのデメリットを3つに分けて解説します。
補償制度が整っていない
シェアリングエコノミーはまだ新しいサービスです。そのため、事故やトラブルが発生したときの補償制度が追いついていない状態であることは否めません。
プラットフォームによっては、トラブル時の補償が用意されているものもありますが、その内容はサービスによって様々です。利用前の補償内容の確認は必ずおこないましょう。
法律の整備が進められていない
新しいサービスとして、法律による整備が追いついていない実状があり、グレーゾーンの事業などが多く存在していることもデメリットとして挙げられます。
現状は、利用者の自己責任のもとでサービスを利用することが求められているため、サービスの内容や取引の方法などを十分に理解したうえで利用しなければなりません。
トラブルの発生リスクがある
シェアリングエコノミーに関連したサービスでは、「初対面の相手(個人)との取引」も増えるため、トラブルが発生するリスクにも十分に注意する必要があります。シェアリングエコノミーを利用する人の中には、多少なりともマナー違反を犯す人がいることは確かです。
また、企業との取引とは違って、ビジネスマナーを心得ていない人もいるでしょう。違約金などの事前の取り決めをしても、確実に履行される保証はないため、万が一トラブルが発生した際にも自己責任の許容範囲内で利用しなければなりません。
シェアリングエコノミーサービスの代表例
シェアリングエコノミーサービスとして、代表的なものを5つ紹介します。
Airbnb
Airbnbは世界191か国以上の国々で展開されている、世界的な民泊のマッチングサービスです。このサービスでは、空き家や空き部屋のあるホストと、宿泊場所を探している利用者(ゲスト)のマッチングをしています。
ホテルや旅館のような宿泊施設に比べて、安価に利用できること、また、海外からの旅行者にとっては、よりその国の文化を感じられる滞在ができる点が特徴です。
ドコモ・バイクシェア
ドコモ・バイクシェアは株式会社ドコモ・バイクシェアが提供する、全国のサイクルポートに設置された電動自転車をレンタルできるシェアリングサービスです。
東京都などの都心部を中心に展開しており、観光や交通手段として利用されています。自転車の返却は、どこのサイクルポートでも可能です。例えば、千代田区で借りた自転車で港区まで行き、港区のサイクルポートに返却という使い方ができます。
ストアカ
ストアカは、ストリートアカデミー株式会社が運営するマッチングサービスです。勉強、ノウハウ、相談など、教わりたい人と教える人がつながることができます。
語学、Web、IT、起業のような実用的なものから、料理、ハンドメイド、アウトドアなど、趣味の講座まで幅広く用意されているのが特徴です。
サービスの規模は非常に大きく、累計受講者数は103万人以上、掲載講座数は6.8万以上となっています。
タスカジ
タスカジは株式会社タスカジが提供するハウスキーパーマッチングサービスです。掃除、料理、ペットケア、チャイルドケアなど、さまざまな家事代行依頼が可能です。
ハウスキーパー(タスカジさん)は運営との面接後にサービスに参加できます。空いた時間を有効に利用できるため、パートタイムでの労働よりも融通が利く働き方を希望するワーカーや複業としての利用に適しています。
ランサーズ
ランサーズはランサーズ株式会社が運営するクラウドソーシングサービスです。SE、デザイナー、マーケター、ライターなど、様々な請負業務のマッチングが行われています。
発注側は、業者よりも比較的安価での作業の募集・発注ができ、作業者(ランサー)側は、契約や請求などの面倒な処理をシステムを通じて管理できる点が魅力です。
またランサーズは、サイト上で常時約210万件以上の募集案件を閲覧し、自身のスキルとマッチする案件に、直接アピールできるなどのメリットもあります。
シェアリングエコノミーで新しいビジネスの形が広がる
シェアリングエコノミーは、限りある資産を有効に活用することで、新たな経済活動を生み出すだけでなく、環境負荷を軽減する目的においても効果が期待できる試みです。
大量生産・大量消費の時代を経て、現代はどのような体験を得るかを重視する時代になりました。そのため、モノをシェアすることで、体験の機会を増やすシェアリングエコノミーは、今後もますます活発になっていくことが予想されています。
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