女性活躍推進法とは?公布の背景や事業者の義務・改正内容について解説
女性の活躍を推進するための法律として制定された女性活躍推進法。近年では、活用する企業も増加している女性活躍推進法ですが、果たしてその目的とは一体何なのでしょうか。本記事では、そんな女性活躍推進法について、公布の背景や改正内容など詳しく解説していきます。
目次
女性活躍推進法とは?
女性活躍推進法とは、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の略称です。2015年8月28日に国会で成立しました。
女性活躍推進法は、働こうとする女性が個性や能力を十分に発揮して活躍することが重要であるとし、女性の職業生活における活躍の推進について基本原則を定めています。
基本原則は女性活躍推進法第2条に定められており、要約すると次のとおりです。
- 女性の採用や昇進等の機会の積極的な提供と活用、性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること
- 職業生活と家庭生活の両立を図るために必要な環境の整備をし、円滑かつ継続的な両立を可能にすること
- 女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと
この基本原則にのっとり、国や地方公共団体は女性活躍推進に関する施策を策定・実施することが義務付けられ、事業主は積極的な職業生活の機会の提供や必要な環境整備などの取組を実施するよう努めなければならないとされています。
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女性活躍推進法の目的と背景
女性活躍推進法の目的と成立の背景について確認しておきましょう。まず、女性活躍推進法で掲げられている目的は次のとおりです。
(目的)第一条 この法律は、近年、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍すること(以下「女性の職業生活における活躍」という。)が一層重要となっていることに鑑み、男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)の基本理念にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進について、その基本原則を定め、並びに国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに、基本方針及び事業主の行動計画の策定、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置等について定めることにより、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、もって男女の人権が尊重され、かつ、急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化その他の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することを目的とする。
[引用:e-Gov「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第一条」より]
女性活躍推進法は、働こうとする女性が個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍することを、迅速かつ重点的に推進することを目的としています。
さらには、男女の人権を尊重し、少子高齢化の加速や国民需要の多様化など、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会の実現も目的の1つです。
女性活躍推進法が成立した背景には、日本が諸外国と比べて男女共同参画について立ち遅れている厳しい現状が挙げられます。実際、2022年7月に世界経済フォーラムが公表した「ジャンダー・ギャップ指数2022」では、日本は世界146か国中116位でした。
昭和時代に形成された制度や男女間の賃金格差を含む労働慣行、固定的な性別役割分担意識など、制度・慣行・意識の3要素からなる構造的な問題が大きな要因であると指摘されているところです。
このような課題に対して対応の鍵とされるのが「女性の経済的自立」であり、政府は、政府が目指す「新しい資本主義」の中核に女性の経済的自立を位置づけています。
[出典:World Economic Forum「The Global Gender Gap Report 2022」]
女性活躍推進法が定める3つの義務
女性活躍推進法が定めている3つの義務は次のとおりです。女性活躍推進においてどのようなことをやる必要があるのか、確認しておきましょう。
- 自社の女性の活躍状況の把握・課題分析
- 行動計画の策定・届出・公表
- 自社の女性の活躍状況の公表
なお2022年10月31日現在は、常時雇用労働者数が100人以下の事業主については義務ではなく努力義務とされています。
1.自社の女性の活躍状況の把握・課題分析
女性活躍推進にあたりまず行うべきことは、自社の女性の活躍に関する状況の把握と課題分析です。もっとも、状況把握においては女性活躍推進法の省令において、状況を把握すべき事項(基礎項目)が定められています。
- 採用労働者のうち女性労働者の割合(雇用管理区分ごと)
- 男女の平均継続勤務年数の差異(雇用管理区分ごと)
- 労働者の各月の平均残業時間数等の労働時間の状況
- 管理職者のうち女性労働者の割合
- 男女の賃金の差異(常用雇用労働者数301人以上の事業主は義務)
2.行動計画の策定・届出
続いて、一般事業主行動計画の策定と届出を行います。一般事業主行動計画には次の要素が必要です。
- 計画期間
- 数値目標
- 取組内容
- 取組の実施時期
計画期間については、おおむね2~5年間で区切りつつ、定期的に進捗を検証して改定を行うことが望ましいとされています。
一般事業主行動計画を策定したら、労働者に対して行動計画を周知したうえで、策定した旨を都道府県労働局に届け出ましょう。
3.自社の女性の活躍状況の公表
公表に際しては、自社ホームページを利用するほか、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」で公表する方法があります。
2022年10月31日時点では、「女性の活躍推進企業データベース」に登録してデータを公表している企業数は23,247社、行動計画を公表している企業数は33,342社です。
女性活躍推進法の改正内容
女性活躍推進法は、2015年8月28日に成立して以降、2019年5月29日に改正案が成立(令和元年度改正)しています。
改正は2020年6月1日から施行(一部は2020年4月1日、2022年4月1日)されました。
ここでは、女性活躍推進法の令和元年度改正の内容を解説していきます。
対象事業主の拡大
女性活躍推進法の令和元年度改正においては、一般事業主行動計画の策定・届出・公表義務について、改正前は常時雇用労働者数301人以上の事業主に課していたところ、改正後は常時雇用労働者数101人以上の事業主と範囲が拡大されました。
なお本規定の施行日は2022年4月1日であり、すでに施行されています。
101人以上の労働者を雇用する事業主
常時雇用労働者が101人以上の事業主は、自社の女性の活躍に関する状況の把握と課題分析を行い、一般事業主行動計画の策定と社内周知・外部公表を行う必要があります。
また、策定した旨を都道府県労働局に届け出る必要がありますが、持参や郵送といった手段のほか、電子申請も認められています。
301人以上の労働者を雇用する事業主
常時雇用労働者数が301人以上の事業主は、改正前から一般事業主行動計画の策定と届出、公表義務がありました。
なお、令和元年度改正においては常時雇用労働者数301人以上の事業主について、数値目標を2つ以上定めた行動計画を策定しなければならないものとされています(施行日は2020年4月1日)。
プラチナえるぼし認定の創設
2020年6月1日からは、「プラチナえるぼし」認定制度が創設されました。
従来から女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主を認定する「えるぼし」認定制度はありましたが、さらに水準の高い認定の段階が創設されたことになります。
「プラチナえるぼし」は、次の条件をすべて満たした事業主が認定されます。
- えるぼし認定を受けた
- 一般事業主行動計画に定めた目標を達成した
- 男女雇用機会均等推進者と職業家庭両立推進者を選任した
- 管理職比率や労働時間など5つの基準のすべてを満たしている
- 女性活躍推進法に基づく情報公表項目のうち、8項目以上を「女性の活躍推進企業データベース」で公表している
企業としては、認定を取得することにより認定マークを商品や広告に利用でき、女性活躍推進企業であることをPRできるメリットがあります。そのほか、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながることも期待できるでしょう。
さらに、公共調達の加点を受けられたり、一般事業主行動計画の策定・届出義務が免除されたりするメリットもあります。
▷えるぼし認定とは?2種類の認定基準や申請方法・取得のメリットを解説
女性活躍推進法を推進する際の問題点とは?
女性活躍推進法に基づき取組みを推進する際には、いくつかの問題点が生じることがあります。
- 管理職を目指す女性がそもそも少ない
- 出産後の再就職が難しいケースがある
- 長時間勤務が条件になるケースが多い
事前にどのような問題が生じるのかを把握し、円滑な推進につなげましょう。
管理職を目指す女性がそもそも少ない
まず挙げられる問題点は、管理職を目指す女性がそもそも少ないという点です。たしかに管理職を目指して働くことに積極的な女性もいますが、男性と比較してそう多くないようです。
実際、「独立行政法人国立女性教育会館」が2019年10月に新卒者726人から回答を得た調査によると、管理職を目指したいと回答した人の割合は、男性と比べて女性が顕著に低い結果となりました。
具体的には、「あなたは管理職を目指したいですか」という設問に対し、男性は80.3%が「目指したい」または「どちらかというと目指したい」と回答している一方、女性は同項目44.9%となりました。
[出典:独立行政法人国立女性教育会館「令和元年度男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査(第五回調査)報告書」]
▷【解説】女性管理職比率の現状と向上で得られる6つのメリット
出産後の復帰が難しいケースがある
仕事を継続したい気持ちはあるものの、出産後は育児によって職場復帰が難しいケースがあります。
理由はさまざまですが、育児など家庭との両立が難しい点や、仕事から離れている期間が長く不安を感じる点などが挙げられます。
なかには「家庭との両立に理解がある職場が少ない」という意見もあるため、事業主としては出産後の職場復帰を円滑に進められる環境の整備が求められるでしょう。
長時間勤務が条件になるケースが多い
出産後の再就職については、子が3歳までは短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置)によって短時間での勤務が原則的な取り扱いとなります。
しかし仕事内容が限定的となってしまい、管理職に向けたキャリア形成においては不利になってしまう場合もあるようです。
女性活躍推進法を活用した企業事例
ここでは、女性活躍推進法を実際に活用した企業の事例を紹介します。
- 株式会社サイバード
- トヨタ自動車株式会社
自社において参考にすべき部分もあるかもしれません。、ぜひチェックしてみてください。
株式会社サイバード
株式会社サイバードは、モバイルコンテンツ・ゲームなどを提供する企業です。
女性向け恋愛ゲーム事業を中心に、プランナーやシナリオライター、デザイナーなど幅広い職種で女性が活躍しています。
業界として優秀な人材の確保と定着が難しいことから、正社員と契約社員の退職率を5%以上引き下げることを目標としました。
在宅勤務制度を育児関連でも利用できるよう適用を拡大させたり、配偶者特別休暇制度を設けたりするなど、女性活躍推進に取り組んだ結果、2016年には当時最高位であるえるぼしの三段目を取得しています。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社は、育児や介護などをしながら安心して働き続けられるよう、環境整備などの両立支援に取り組んでいます。
2020年4月1日から2025年3月31日までを計画期間として、女性管理職数を2014年時点に対して2025年に4倍、2030年に5倍とすることを目標としました。
また、在宅勤務・テレワーク利用者数を2025年時点で全社員の50%以上とする目標も掲げています。
目標の達成に向け、新卒採用時の女性一定比率採用を進めるほか、ITツールの活用により物理的に会社にいなくても大差ない働き方の拡大と浸透などが進められています。
▷【働き方改革】企業における女性活躍を推進する重要性や取り組み方法
女性活躍推進法について理解を深めておこう
女性活躍推進法は、政府が掲げる「すべての人が生きがいを感じられる多様性のある社会」の実現につながる重要な法律です。
この記事では、女性活躍推進法が成立した背景や目的、企業が行うべきことなどを紹介しました。ぜひこの記事を参考に、女性活躍の推進に向けた取り組みを実践してみてください。
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