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【2024年問題】医師の働き方改革とは?制度内容や対策をわかりやすく解説

2022/12/05 2022/12/05

働き方改革

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一般企業においては、2019年に施行されていた働き方改革関連法ですが、医師については業務の特殊性から、規制の適用に5年間の猶予期間が設けられていました。しかし、2024年にはその猶予期間も終了します。そこで、医師も適用の対象となる働き方改革について制度や対策をわかりやすく解説します。

医師の働き方改革について

2019年に働き方改革関連法が施行され、多様な働き方の実現に向けた取り組みが各業界で加速しています。そのうえで医療分野の効率的なサービス提供を実現するための体制確保として注目されているのが、医師の働き方改革です。

ここでは2024年問題として話題の改正労働基準法を中心に、医師の労働環境における変更点や問題点を解説します。

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2024年4月から順次施行!医師の働き方改革

2024年4月から順次施行となる医師の働き方改革にけるポイントは主に3つです。

それぞれを詳しくみていきましょう。

時間外労働賃金率の引き上げ

1つ目は、時間外労働賃金率の引き上げです。これまでは月60時間を超える時間外労働への割増賃金率が、大企業と中小企業で異なっていました。

しかし、2024年の改正労働基準法に先行するかたちで、2023年から時間外労働の割増賃金率は50%に統一されます。これに伴い、時間外労働が月60時間を超えた場合は、50%以上の割増賃金率を算出し、支払いを行う必要があります。

追加的健康確保措置の実施

2つ目は、追加的健康確保措置の実施です。具体的には28時間の連続勤務時間制限、9時間の勤務間インターバル、前述の2項を実施できなかった場合の代償休息を設けることで、医師の健康面に配慮し、医療の安全と品質を両立することを目指しています。

また、時間外労働が月80時間を超えた段階で睡眠・疲労の状況確認、月100時間を超えた際には面接指導をそれぞれ行い、医師の健康確保に注力することが求められています。これは複数の医療機関に勤める場合も同様です。

時間外労働時間の規制

3つ目は、時間外労働時間の規制です。改正労働基準法により、2024年4月1日から医師にも36協定による時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。

そのため、医師の時間外労働時間にも、原則として月45時間、年360時間の上限が設けられ、さらに、特別条項つきの36協定を締結した場合に限り、月100時間未満/年960時間以下(休日労働を含む)の時間外労働が認められます。

ただし、時間外労働が1860時間を超える医療機関も多いという現状を鑑み、医療機関の機能不全を避けるためなどの理由から、特定の医療機関や臨床経験などのカテゴリに該当する医師には、例外的に月100時間未満/月1860時間以下(休日労働を含む)の上限が適用されるようになっています。

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医師の働き方改革が推進された背景

医師の働き方改革が推進された背景には、「長時間労働の常態化」と「休日の確保が困難」という2つの課題があります。

長時間労働の常態化

医療現場における長時間労働の常態化は、労働基準法第32条に定められる週40時間を基準値とした場合、病院勤務医で基準値を超えている割合は全体の84.8%という実態から、その深刻さが伺えます。

医師の勤務時間が長引いてしまうことには、診察・入院説明・診断書作成などの患者対応の多さや、業務の移管・共同化の不十分さなどが挙げられます。

さらに患者ファーストの職業意識から、診療時間外にも対応せざるを得ない労働環境になっており、当直やオンコールなどの夜間勤務もふくめ、医師の健康確保における大きな課題となっています。

[出典:厚生労働省「医師の働き方改革について」]

休日の確保が困難

長時間労働の常態化の原因となる特殊な勤務環境により、休日の取りにくさも課題となっています。休日の確保は医師の健康状態を左右し、医療の安全と品質にも直結する重要なポイントです。

厚生労働省の資料では、労働時間が長引くほど医療事故やヒヤリ・ハットの経験が高まる傾向にあることがわかっています。

さらに労働時間の詳細を見ていくと、当直をふくむ最長の連続勤務時間は32時間以上が61.1%で、勤務間インターバルは9時間未満が43.1%と、こちらも深刻な状況です。

さらに当直明けの勤務状況に関して、負担軽減の取り組みはないと答えた割合が全体の73.7%と半数を超えています。フィジカルヘルス・メンタルヘルス面において、医師の健康確保に課題がある状態といえるでしょう。

[出典:厚生労働省「医師の働き方改革について」]

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医師の働き方改革の主な目的

医師の働き方改革における主な目的は、「医師の健康確保」と「医師の勤務環境の改善」の2点です。

医師の健康確保

医療を良質かつ安全に提供するためには、医師の健康確保が欠かせません。医師も人間です。疲労やストレスが蓄積し、回復できない状況での勤務が続けば、ケアレスミスが増えるだけでなく、医療事故を引き起こす可能性もあります。

病院の信頼性や患者の安全性を損なわないためにも、医師の健康状態を良好に保つ必要があるのです。

医師の勤務環境の改善

医師の健康状態には、当直やオンコールなどの特殊な勤務や、救急搬送などの可及的速やかな対応が求められるシチュエーションを要因とした拘束時間の伸長が影響してきます。また、業務範囲の不明確さや業務プロセスの煩雑さなどが相まって、非効率的な業務も多く存在しています。

だからこそ、医療の現場にメスを入れ、拘束時間の短縮化を実現するための環境改善が求められています。

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医師の働き方改革3つの水準

医師の働き方改革には、医療機関の特性や臨床経験年数に伴い、「A・B・C」の3つの水準が用意されています。

A水準

A水準に該当するのは、診療従事勤務医と呼ばれる、病院や診療所などで働く医師です。常勤医師・非常勤医師にかかわらず、すべての医師が含まれます。後述するB水準・C水準に該当しない医師は、A水準になります。

B水準

B水準に該当するのは、地域医療確保暫定特例水準と呼ばれる、救急医療などの緊急性の高い医療を提供する医師です。具体的には救命救急センター機能を有する病院の勤務医などで、病院勤務医の約1割が該当するといわれています。

C水準

C水準に該当するのは、集中的技能向上水準と呼ばれる、研修医・専攻医などの短期集中的な症例経験を必要とする医師です。具体的には初期臨床研修医や新専門医制度の専攻医などで、病院勤務医の約3割が該当するといわれています。

B・C水準における追加的健康確保措置

前述した「追加的健康確保措置」について、A水準は「努力義務」であるのに対し、B・C水準においては、「法的義務」となっています。

そのため、遵守に努める必要があることを認識するとともに、その背景には、B・Cで水準の医師の労働環境に関して、より強く健康確保措置が求められている点を理解しなければなりません。

医師の働き方改革が抱える課題

医師の健康確保や労働環境の改善を目的とした医師の働き方改革ですが、推進には複数の課題を抱えています。

  • 医師ごとに異なる労働環境の意識
  • 機能しにくいチーム医療
  • 同時遂行が必要な多量の業務
  • インターバルなしの勤務体制
  • 不明確な緊急時の対応

これらの課題について、それぞれ解説していきます。

医師ごとに異なる労働環境の意識

1つ目は、医師ごとに異なる労働環境の意識です。この意識差は世代間ギャップに通ずる部分があり、長時間労働に耐性のあるベテラン医師と、効率的な働き方を求める若手医師で、意見が分かれやすい傾向にあります。

世代間ギャップによって問題となるのは、集団同調性バイアスの発生です。集団同調性バイアスが発生すると、指導医が夜遅くまで業務を続けている状況下で、研修医が先に帰るのは失礼であるという空気感が生まれます。この状態が持続すると、いつまで経っても働き方改革が実現されません。

だからこそ、医師の働き方改革を推進させるには、世代間ギャップを埋めるための意識改革が求められます。

機能しにくいチーム医療

2つ目は、機能しにくいチーム医療です。医療現場では役割分担が進んでいるように見えるものの、個々の責任領域や専門性などの問題から、他の担当者に業務を移管しにくい側面があります。担当患者は自分が支えるという意識の強さもあって、業務の適切なバトンパスができていないことも多いと言えるでしょう。

このような状況下では、すべての医師が緊急時に備えて待機しているようなもので、チーム医療に求められる業務の連携や補完が実現できません。医療の高度化・複雑化が進む中で、患者の状態に合った医療を提供するためにも、タスクシフトやタスクシェアを加速させる必要があります。

同時遂行が必要な多量の業務

3つ目は、同時遂行が求められる業務の多さです。医師は患者の診察・治療に加え、診断書の作成をはじめとする事務作業、研修医への指導、臨床研究など、多くの業務を同時に抱えています。

これほど多くのタスクを抱えている状況下で、時間外労働時間の上限を設定しても、時間内で業務を完結することは難しいでしょう。そのため、業務を時間内に完結させるには、デジタル化による業務効率の改善や、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を通じた業務プロセスの抜本的な改革が求められます。

インターバルなしの勤務体制

4つ目は、インターバルなしの勤務体制です。施設によっては、慢性的な人手不足、勤怠管理や時間外労働の設定の曖昧さなどが原因で、医師がインターバルなしで勤務を行っているケースもあります。

インターバルなしでの勤務が常態化すると、連続勤務時間を超過するだけでなく、長時間の現場拘束が医師の健康状態に悪影響を及ぼしてしまいます。

そのため、医師の働き方改革を推進するには、看護師などのポジションのように勤務体制を整備する必要があるでしょう。

不明確な緊急時の対応

5つ目は、不明確な緊急時の対応です。特に新型コロナウイルス感染症の影響で医療機関がひっ迫した際は、多くの医療従事者が対応に追われる事態となりました。このような予測不能な事態に対してガイドラインが策定されていないと、場当たり的な対応を行わざるを得ず、結果的に労働時間が膨れ上がってしまいます。

そのため、医師の働き方改革によって長時間労働を抑制する場合、平常時だけでなく、非常時を含めて事前に対策を練ることが重要となるでしょう。

【解説】働き方改革の問題点とは?企業が直面する課題と解決策について

医師の働き方改革への対策

医師の働き方改革の課題を乗り越えるため、検討すべき対策は主に5つあります。

  • 当直を含む出退勤時間の把握
  • 36協定の見直し
  • 産業保健センターやサービスの活用
  • 女性医師への支援
  • タスク・シフティングの導入

これらの対策について、それぞれ解説していきます。

当直を含む出退勤時間の把握

1つ目は、当直を含む出退勤時間の把握です。医師の出退勤時間を把握することは、時間外労働時間の算出にも役立ちます。

近年は勤怠管理システムを導入する医療機関が増えており、リアルタイムでの労働時間管理に加えて、集計の自動化やシフト管理などの機能を通じて、オーバーワークの抑制が期待されています。

36協定の見直し

2つ目は、36協定の見直しです。36協定には労働基準法の改正により、時間外労働の上限が設定されています。そのため、36協定で定めた時間外労働数が守られているかの実態把握が重要です。

もし規定の時間外労働数を超過している場合は、負担が増えている原因を特定し、業務の効率化や分散化を実施しましょう。

働き方改革による36協定の変更点とは?時間外労働の上限規制や罰則について

産業保健センターやサービスの活用

3つ目は、産業保健の活用です。全国47都道府県の産業保健総合支援センターでは、相談・研修・情報提供などを通じて、メンタルヘルス対策の支援を無料で受けることができます。

このようなサービスの活用は、メンタルヘルス対策に関する理解を深めるだけでなく、対策の進め方といった事例を知れる機会となるなど、実践的なナレッジを得る場としても役立つでしょう。

女性医師への支援

4つ目は、女性医師への支援です。多様な働き方の実現に向けて女性の社会進出が活発化する一方で、出産や育児など、ライフステージの変化を受けやすい女性医師の長期的なキャリア形成の課題はより顕著になりつつあります。

具体的には、労働環境などの問題から復帰が難しい、あるいは、復帰を躊躇してしまうケースが非常に多いのです。

実際、2015年のOCEDなどの調査結果をもとに厚生労働省が発表した資料では、日本の女性医師の割合が他国と比べて低く、長期的なキャリア形成が難しいことが明らかとなっています。

だからこそ、勤務時間や休日取得における制度改革や業務そのものの効率化など、多様な働き方を推し進めていくことが重要です。

[出典:厚生労働省「女性医師キャリア支援モデル普及推進事業の成果と今後の取組について」]

タスク・シフティングの導入

5つ目は、タスク・シフティングの導入です。

タスク・シフティングとは、医師の担当業務のうち、看護師・薬剤師などの医師以外の医療従事者が対応できるものを分担することで、医師への業務の集中を回避するための取り組みです。

近年はAIなどのICT技術を活用とした業務の代替も進んでいるため、医師以外のスタッフの負担も考慮しながら、どの業務をどの担当者に割り振るのかを検討することも重要になるでしょう。

働き方改革の取り組み事例12選!見本から学ぶ推進するコツや注意点

医師の働き方改革の取り組み事例

ここでは2020年に厚生労働省が発表した「医師の働き方改革に関する好事例」をもとに、医師の働き方改革に関する3つの事例をご紹介します。

変形労働時間制を導入した事例

1つ目は、変形労働時間制の導入です。変形労働時間制は月単位・年単位で労働時間を調整できる仕組みであることから、繁閑の移り変わりが激しい現場の働き方改革に効果的であるといわれています。

本事例では1カ月単位の変形労働時間制(1週間あたりの労働時間を40時間に超えないことを前提に、労働日ごとの労働時間を調整する仕組み)を採用することで、時間外労働の削減に成功しました。

外来・手術・当直などをあらかじめスケジュールとして組み込み、1週間単位で繁閑バランスを調整することで、結果として時間外労働の削減を達成しています。

[出典:厚生労働省「医師の働き方改革に関する好事例」]

労働時間該当性の取扱いを明確化した事例

2つ目は、労働時間該当性における取扱いの明確化です。従来の医療現場では労働に対する考え方が曖昧で、関連するすべての行為を業務として捉えていました。

本事例では労働時間に該当するものと、そうでないものを明確に分け、勤務状況のモニタリングを実施することで時間外勤務の短縮や健康状態の把握を徹底しています。

労働時間に該当するもの労働時間に該当しないもの
診療関連(病棟回診、緊急手術、チャーティング、サマリー作成など)休憩時間(食事、睡眠、外出など)
会議・打合せ(参加必須の会議・委員会・勉強会・カンファレンス)自己研鑽(自己学習、症例見学、任意参加の勉強会・カンファレンスなど)
上長の命令に基づく研究・講演(学会発表・外部公演の準備や研究活動・論文執筆)上長の命令に基づかない研究・講演

[出典:厚生労働省「医師の働き方改革に関する好事例」]

勤怠管理システムによる業務改善の事例

3つ目は、勤怠管理システムの導入です。本事例ではBeacon(ビーコン)という小型端末とスマートフォンを使い、電波感知によって滞在時間を記録するというシステムを導入しています。

具体的には院内の各病棟、チームステーション、外来、救急外来、医局にBeacon(ビーコン)を設置し、スマートフォンを持った医師Beacon(ビーコン)のエリアを通過することで、自動的に時間を記録するという仕組みです。

システムによる打刻と日報を照らし合わせることで、どの業務にどのくらいの負担がかかっているかを把握し、業務改善に役立てることができます。

2024年4月より順次施行!医師の働き方改革を把握しておこう

2024年問題として話題を集める医師の働き方改革について、変更点や課題・対策などを解説しました。

新型コロナウイルス感染症のまん延により、医療従事者の負担は増加傾向にあり、抜本的な制度・業務改革が不可欠となっています。長時間労働を抑制しなければ、医療の品質や安全を保つことは難しいでしょう。

一方で、労働時間を削減するための具体的な取り組みは医療機関に委ねられている側面もあるため、現場の状況に合わせて改善すべき優先順位を決め、医師の負担軽減に向けた取り組みを加速させていくことが重要です。

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