BPR推進に有効なフレームワーク9選を紹介!成功させるポイントも解説
戦略や組織を抜本的に見直す手段として知られるBPRは、適切に行うことで業務プロセスの大幅な改革が実現できます。本記事では、そんなBPRの推進に有効とされるフレームワークを紹介するほか、成功させるポイントなども解説しています。
目次
BPR(業務改革・業務再設計)とは
BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)とは、ビジネスにおける業務プロセスやフローを見直し、改善点を元に業務プロセスを根本から見直す施策のことを指します。
BPRと混合されがちな取り組みの一つに業務改善が挙げられますが、BPRは、あくまで目標を達成するための「プロセス」や「組織構造」の見直しに軸をおいた施策のため、業務そのものの改善は含まれません。その点が、業務改善とは大きく異なることになります。
フレームワークとは
ビジネスアイデアや思考をある特定の枠組みに落とし込み、現状のビジネスにおける課題と改善点の洗い出しを体系化して見つけやすくするものがフレームワークです。
フレームワークを効果的に活用することで、組織や慣習にとらわれることなく、論理的かつ効率的なビジネスにおける意思決定が可能となります。
課題の洗い出しや解決にフレームワークを活用する具体的なメリットとしては、「議論のテーマや目的がぶれにくくなる」「顕在課題だけでなく潜在的な課題も洗い出せる」「現状の的確な把握が可能になる」といったメリットが挙げられます。
これらのことから、業務における課題解決を効率的に行う上で、有効な手段といえるのです。
BPR推進に有効なフレームワーク9選
BPRを推し進める上で、有効なフレームワークは以下の9種類です。
- MECE
- 4P分析
- 4C分析
- SWOT分析
- STP分析
- シックスシグマ
- ECRSの原則
- AARRRモデル
- エンタープライズアーキテクチャ
BPRを社内で実施する際に、客観的な視点で論理的な改善策を見つけるためにも、これらの基本的なフレームワークについては、理解を深めておく必要があります。
MECE
MECE(ミーシー)とは、「全体的に漏れなく、お互いに重複がない」ことを表す、以下の頭文字をとった意味のフレームワークです。
- Mutually:相互に
- Exclusive:重複せず
- Collectively:全体的に
- Exhaustive:漏れのない
主にビジネスにおけるロジカルシンキングの基本として活用されています。
MECEの基本的な考え方は、「トップダウンアプローチ」と「ボトムアップアプローチ」の2種類に分類されます。
トップダウンアプローチは、問題を大枠で捉え、そこに詳細な要素を当てはめて考えていくというロジカルシンキングの方法です。問題点を全体像から把握していくため、目標やゴールを見据えた課題解決がしやすい点が特徴と言えます。
一方のボトムアップアプローチは、思い浮かんだアイデアなどの細かい要素から問題の全体像を把握していく考え方です。そのため、未知の領域や目標が明確になっていない状況における思考のフレームワークとしても活用することができます。
4P分析
4P分析とは、以下の4つのPの相互関係の中でビジネスを考えるフレームワークです。
- Promotion:広告宣伝
- Price:価格
- Place:流通
- Product:製品
それぞれの視点でビジネスや商品・サービスのあり方、販売戦略について考えることで、無駄のないビジネス分析が可能になります。
例えば、価格面でビジネスを見る際は、需要と供給の関係を見たプライシング戦略や割引戦略を考えます。その一方で、製品自体の品質や機能について見る時は、製品の性能や品質について考えるので多面的にビジネスを分析できるのです。
4C分析
4C分析とは、顧客にとっての製品価値という側面からビジネスや商品・サービスを分析する考え方です。具体的には、以下の4つの側面から分析します。
- Communication:対話
- Convenience:利便性
- Cost:費用
- Cosutomer Value:顧客が感じる価値
顧客の感じる価値や利便性、コストパフォーマンスといった側面からビジネスを検討するので、顧客目線の価値がある商品・サービス開発に役立つフレームワークだといえるでしょう。
SWOT分析
SWOT分析とは、ビジネスの内部要因と外部要因とに分けて、ビジネス戦略を考えるフレームワークです。具体的には、内部要因であるビジネス上の強み・弱み、外部要因である機会と脅威の面から、ビジネス上のメリットとデメリットについて分析します。
現行のビジネスのあり方を多角的に見直すことだけでなく、将来におけるビジネスモデルの強みと弱みを検討することで、ビジネスプランの選択にも役立ちます。
STP分析
STP分析とは、新しいビジネスを展開するにあたって自身のサービスの立ち位置や目的、どの市場に向けた商品・サービスなのかを明確にするフレームワークです。
具体的なフレームワークの活用方法としては、まず市場をセグメントごとに細分化して、商品・サービスのターゲットを明確化します。そして、類似商品や競合他社の商品と自社商品の相互関係がどうなっているかを確認するという流れです。
「どのように顧客の届く商品やサービスを作るか」という観点から、適切な商品・サービス開発をするのに役立つフレームワークだといえます。
シックスシグマ
シックスシグマとは、データ誤差である標準偏差(σ)の値を6σの値に抑えることで、エラーの回数を抑えていくことを目的としたフレームワークです。
ただし、他社や過去のビジネスデータと比較して、シグマの値を基準にビジネスのあり方を改善していくこともシックスシグマの一環だといえます。
ビジネスにおけるエラーを減らし、より利益が大きいビジネスを展開していくために、有効活用されるフレームワークです。
ECRSの原則
ECRSの原則とは、既存のビジネスにおける改善点を浮き彫りにするフレームワークのことです。実際にフレームワークを活用する時は、以下の順にビジネスの見直しを図ります。
- Eliminate:排除
- Combine:結合
- Rearrange:交換
- Simplify:簡素化
「排除」の段階では、「既存のビジネスが本当に必要なのか?」という観点から、不必要だと判断したビジネスは排除していきます。習慣的に行っている業務や完了までのプロセスが想定よりも長い業務は、排除も検討するべきだと考えられるでしょう。
また、同じような業務やビジネスの場合には、一つの業務にまとめられないかを「結合」の段階で検討していきます。そして、「交換」の段階で、細かい業務プロセスの調節をしていきます。
最後に、「簡素化」の段階で、業務を簡素化してコストを軽減できないかを考えるという流れです。複雑な業務は従業員にとって負担であり、企業にとってコストや負担が大きい業務である可能性もあります。簡素化できるかどうかを考えることは非常に大切です。
AARRRモデル
AARRRモデルとは、会員ビジネスにおける基本戦略で、実店舗だけでなく、Web上の会員ビジネス戦略で活用されているフレームワークです。
具体的には、以下の段階や顧客の状況などによって戦略のプロセスを分けて考えます。
- Acquisition:ユーザー獲得
- Activation:利用を開始
- Retention:継続利用
- Referral:紹介
- Revenue:収益化
その上で、顧客獲得から収益獲得までの流れを再構築していくフレームワークとなっています。
エンタープライズアーキテクチャ
エンタープライズアーキテクチャとは、企業が保有する人的資源や技術・情報・データを階層化して、適切な人的・情報・技術の資源配分に役立つフレームワークです。
有能な社員や貴重なシステム、技術を本当に必要な部署や場所に配分できるので、企業全体としての業務効率の見直しにも役立つでしょう。また、重複しているシステムを統合することで、業務上の無駄を削減できるメリットもあります。
BPR(業務改革)推進によるメリット
BPRを実施するメリットとは一体何でしょうか?業務プロセスを見直して、ビジネスのあり方を根本から考え直すBPRは、業務全体の問題点を改善する良い機会となるでしょう。
ここでは、BPRを導入する具体的なメリットについて解説します。現状のビジネスを改善して、より無駄のない業務を展開しようと考えている方は参考にされてみてください。
業務効率・生産性向上
BPR実施の一番のメリットは、ビジネスの再設計によって業務上の無駄を見直し、業務プロセスを抜本的に改革できるという点にあります。
日常的に行っている業務においても、時間の経過とともに「非効率さ」が発生してしまうことはあり得ると言えるでしょう。
そのような「ボトルネック」や「課題」を洗い出し、それぞれのプロセスの最適化を行うBPRは、まさに生産性の向上といったメリットに直結するはずです。
顧客満足度向上
BPRを実施することで、顧客にとって利便性が高く、付加価値の高い商品やサービスを生み出せるようなビジネス体制を構築できる可能性があります。
顧客満足度を向上させるためのビジネス上の施策として、BPRの実施は非常に効果的な方法だといえるでしょう。
企業が商品・サービスのターゲットを再設定し、顧客目線の業務改善を心がけることで、顧客満足度を向上させる効果が期待できます。
社員のスキルアップ
BPRを実施する過程においては、現状課題の洗い出しを行うことになります、「何が足りていないのか」「どこの何が問題なのか」が可視化されることで、研修や教育プログラムの必要性が顕著になることもあります。
最適な研修プログラムが構築できるBPRの実施は、間接的に社員のスキルアップやモチベーションアップを促すことにもつながるのです。
BPR(業務改革)推進の手順
BPRのメリットが把握できたところで、今度はBPRを実施する手順について順番にみていきましょう。
BPRの手順を知っておくことで、適切かつ漏れなく段階的にBPOの施策を実施できる可能性が高まります。
1.検討
企業内で部署や部門を問わずに、社員それぞれから業務上の改善点を聞いていきます。
社員から聞き出した改善点をMECEなどのフレームワークを活用して整理し、会社としての目標・ゴールを決めていくのが一般的な流れです。改善すべき対象を明確にして、改善する範囲や単位を決定していきましょう。
社員からの意見を聞いていく中で、現場から出た業務上の改善点や不満点を見つけられるので、企業全体で業務上の問題を把握する良い機会ともなるはずです。
2.分析
分析ツールやフレームワークを用いて、どのような改善策が妥当であるのかを分析していきます。費用対効果やどのように課題を解決できるのかという側面から、課題に対する改善策を検討していくことになるでしょう。
3.設計
業務上の課題を解決するためには、どのような業務プロセスを設計すれば、課題を解決に導けるのかを考える必要があります。課題一つひとつを重要度順にまとめて、優先度の高い課題を解決できるビジネスプロセスを設計していきましょう。
4.実施
BPRはビジネスプロセスそのものを再設計するので、計画や実施には長い時間を要することがほとんどです。
中長期のスパンで達成すべきBPRの目標が必要となりますが、あまりにも長い期間になってしまうと、目標への意識が低下してしまい、途中で頓挫してしまうことも珍しくありません。
中間目標として短いスパンでのあるべき姿も設定し、BPRの施策が業務の再構築に向けて正しい方向性を維持できているのかを見定めることも大切です。
5.モニタリング・評価
BPRの施策を実施した後は、現状におけるビジネスプロセスへの影響や効果、問題点の有無をモニタリングしていく必要があります。
BPRを実施した当初の目的を達成しているか、どれくらいの効果が見込まれるのかを見極め、必要であれば修正を加えていきましょう。
実施したBPRの施策を適切にモニタリングして、改善策を適宜調節していくことで、本当に必要なBPRの施策が導入できるのです。
BPR(業務改革)導入を成功させるポイント
BPRの導入を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。具体的には、事前にBPRで達成すべき目標を定めて、どのような形で新しく設計したビジネスをスタートさせるのかを考えることが重要です。
ここでは、BPR導入を成功に結びつけるためのポイントを解説します。
目標となる成果を決める
BPRを実施する際には、BPRの実施自体が目的となってしまわないよう、BPRを導入する範囲とその後のゴールについては、必ず定めておく必要があります。
BPR実施の目的を共有して、どのような範囲・目標を持ってBPRを実施するのかを周知しておくことで、会社全体で統一感を持ってBPR施策に取り組めるようになるでしょう。
業務フローの可視化
企業内の業務プロセスやフローを可視化してまとめておくことも重要です。それぞれの業務上の課題と改善点を発見して、BPRの目標について再認識します。
フレームワークを活用して、企業のマーケティング、顧客満足度、商品・サービスのメリット・デメリットといった側面から業務内容について見直しましょう。
真っ新な状態から考える
既存のビジネスプロセスを作り直すBPRの施策は、既存のビジネスにおける慣習や考え方を一旦捨てて、新しい視点からビジネスを練り直す必要があります。
「そもそもなぜこのビジネスが必要とされているのか?」という視点から、BPRを実施することで、ビジネスモデルの問題点を根本から改善できるでしょう。
現場との連携を大事にする
BPRは企業内の業務を根本から作り直す機会なので、業務を行う現場と企業の上層部が共に業務上の課題を認識して、会社全体で課題に取り組むことが重要です。
現場の状況を考慮せずにBPRを実施しても、現場で処理しなければならない仕事が増え、かえって混乱してしまうことも考えられます。
また、BPRの実施が原因で従業員の不満が増え、生産効率が下がってしまう可能性も否定できません。現場の状況を考慮したBPRを実施することが、中長期的な企業の利益につながるのです。
フレームワークを上手に活用してBPR推進へ
この記事では、BPRとは何か、BPRの実施に際して活用できるフレームワークについて紹介し、B PRを成功に導くためのポイントを解説しました。
BPRを成功に導くためには企業が一丸となって業務上の課題を洗い出し、フレームワークを有効活用しながら、客観的な改善策を見つけていくことが基本です。
そして、実際にBPRを実施した後は、PDCAを回し続け「最適化をはかりつづける」ことも重要となります。BPRの施策を実施した効果を適切に振り返り、将来におけるBPRの実施と成功につなげていきましょう。
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