デジタルデバイドによる高齢者の問題とは?原因と今後とるべき対策について

最終更新日時:2022/07/06

デジタル化

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日本はデジタル後進国とも言われており、高齢者の「デジタルデバイド」が問題になっています。デジタル機器の情報格差を意味するデジタルデバイドが、高齢者や社会にどのようなデメリットを与えているのでしょうか。この記事では、高齢者が抱えるデジタルデバイドの現状とその原因、そしてデジタルデバイドによって起きる問題と対策について解説しています。

高齢者のデジタルデバイドの現状

技術の発展や時代の流れから、さまざまなものがデジタル化していますが、中でも高齢者のデジタルデバイドが深刻化しており、日本でも問題視されています。

下記の2点が高齢者のデジタルデバイトの現状です。

  • 60歳以上のスマホ利用率が低い
  • スマートフォン自体に抵抗を持つ高齢者が多い

ここでは、それぞれの現状について詳しく解説をしていきますので、デジタルデバイドについて知りたい人は参考にしてください。

(1)60歳以上のスマホ利用率は低い

若い世代を中心に、多くの人が使用しているスマートフォン。今ではスマートフォン一つで買い物やナビゲーション、予約や連絡といったさまざまなことができますが、60歳以上のスマホ利用率は高いとはいえません。

モバイル社会研究所で行った「2021年一般向けモバイル動向調査」の調査では、下記のような結果が出ています。

シニアのスマホ所有率:関東1都6県・60~79歳男女

60代80%
70代72%

[出典:NTTドコモ モバイル社会研究所「2021年一般向けモバイル動向調査」]

60代では約2割、70代では約3割の人がスマートフォンを所有していないのが現状です。

上記の背景としては、60代・70代の人は若い頃に携帯電話の利用が少ない世代になるため、「不便を感じていない」「家の電話で十分と考えている」と考える人が少なくないことが考えられます。

(2)スマホ自体に抵抗を持つ高齢者も多い

高齢者がスマートフォンを持たない理由として「操作が難しい」「今さら難しいものを覚えるのに抵抗がある」「周りに教えてくれる人がいない」といった声も多く聞かれます。

年々操作性が良くなっているスマートフォンですが、利用したことのない高齢者にとっては、基本的な使い方がわからず、抵抗感を持っている人も少なくないでしょう。

「アプリ」「SNS」「LINE・Skype」といった用語は、スマートフォンを使い慣れていれば一般的なものでしょうが、これまでスマートフォンを利用したことのない高齢者にとっては難解に感じるかもしれません。

これまで利用してこなかったデジタル機器に、今さら挑戦してもどうせ使いこなせないだろうという諦めの気持ちから、スマートフォンを持つ人が少ないことも、容易に想像できます。

高齢者にデジタルデバイドが起きる原因

デジタルデバイドが高齢者で起きている原因は下記の2通りです。

  • そもそもデジタルデバイスに必要性を感じていない
  • デジタルデバイスに興味はあるが使い方が分からない

それぞれの原因について詳しく解説をしていきますので、参考にしてみてください。

(1)そもそもデジタルデバイスに必要性を感じていない

高齢者の間でデジタルデバイドが起きている最大の原因は「必要性」で、普段の生活でも十分満足しているため、さらに便利な道具は必要としていません。今ではスマートフォンやパソコンを活用すればインターネットで買い物ができます。

しかしその必要性を感じておらず、デジタル端末やインターネットを使わなくても問題なく暮らしていけることは、デジタルデバイドが起きている理由の一つになっています。

(2)デジタルデバイスに興味はあるが使い方が分からない

全ての高齢者がデジタルデバイスに必要性を感じていないわけではなく、興味があるものの、周りに教えてくれる人がいないため、使い方が分からないという点で抵抗を感じている人もいるでしょう。

使ってみたい気持ちはあるけれど、その操作方法がわからないから所持しても意味がないのではないかという点から、デジタルデバイドが起きているケースも少なくありません。

高齢者のデジタルデバイドがもたらす問題

高齢者によるデジタルデバイドは、日常生活だけでなく仕事などあらゆる面で問題が生じる懸念が示唆されています。下記は高齢者のデジタルデバイドによって起こりやすい5つの問題です。

  1. ベテランのITリテラシーの低さで生産性の低下
  2. コミュニケーション不全による孤立
  3. 災害・非常事態時に情報が即座に伝わらない
  4. 詐欺や事件に巻き込まれるリスクが高い
  5. 日本全体のデジタル競争率が下がる

それぞれの問題について詳しく解説をしていきますので、デジタルデバイドがもたらす問題について知っておきたい人はチェックしておきましょう。

(1)ベテランのITリテラシーの低さで生産性が下がる

DX推進によって多くの企業はさまざまな業務をデジタル化し、生産性を高めています。しかし、高齢のベテラン社員のITリテラシーが低い場合、システムの仕組みや操作がわからず使いこなせないケースがあるため、生産性の低下が懸念されます。

デジタルデバイドは、企業において生産性や業務効率の低下を生む危険性を秘めていると認識しておきましょう。

(2)コミュニケーション不全で孤立する

新型コロナウイルス感染症や働き方改革の影響から、周囲の人との接点が減る中でデジタルデバイドが起きると、コミュニケーション不全で孤立した状態になる高齢者が少なくないことも気になります。

スマートフォンやパソコン、タブレットといったデジタル端末を持っていない・使いこなせない高齢者は特に、周りの人とのコミュニケーションがとりにくい状況に陥りがちです。

そもそも高齢者の孤立が問題視されている昨今、デジタル化の影響で人との接点が減っていることからも、デジタルデバイド問題は早期に解決したい課題です。

(3)災害・非常事態時に情報がリアルタイムで入らない

地震大国とも呼ばれている日本。全国的に度々地震が発生している中、今やデジタル端末はライフラインの要となっているといっても過言ではありません。

デジタルデバイドの影響で命綱ともなる情報をリアルタイムで受け取れず、非難に遅れてしまうことが心配されます。災害や非常事態が発生した時は、リアルタイムでの情報共有が生存率を高めるため、高齢者のデジタルデバイド対策は重要です。

(4)詐欺や事件に巻き込まれるリスクが高い

詐欺や事件でも昔と比べて高度化し、おれおれ詐欺といった事件に巻き込まれる高齢者も少なくありません。

デジタルデバイドによってデジタル機器に抵抗感を持っている高齢者は、デジタル系の情報を受け取ろうとしづらい傾向があります。またそのような高齢者をターゲットとし、嘘の情報を流して金銭を騙し取るといった事件も増加しています。

情報は生きていく上では欠かせないものとなっており、デジタルデバイドによって詐欺や事件に巻き込まれる可能性も否めません。周囲にデジタルデバイドが気になる高齢者がいる場合は注意が必要です。

(5)日本全体のデジタル競争率が下がる

日本のデジタル競争力が下がっており、問題になっています。2021年にスイスの国際経営開発研究所が発表した「IMD World Digital Competitiveness Ranking」(IMD世界デジタル競争力ランキング)によると、日本のデジタル競争力は64ヵ国中28位と、高いいえない状況です。

デジタルデバイドはさらに日本のデジタル競争率を下げてしまう危険性があるため、早急な改善が求められます。

[出典:International Institute for Management Development「World Digital Competitiveness Ranking 2021」]

高齢者のデジタルデバイド対策とは

デジタルデバイドを生み出さないためにも、多くの人ができる対策としては下記の5つがあげられます。

  1. 高齢者向けデジタル活用支援
  2. IT研修の実施
  3. ITツールを用いたコミュニケーション
  4. Webサイトを高齢者向けに変更
  5. デジタルデバイスへの認知向上

それぞれの対策について詳しく解説をしていきますので、デジタルデバイド問題の解決を行おうと考えている人は参考にしてみてください。

(1)自治体での高齢者向けデジタル活用支援

総務省が各自治体を補助しながら、行政手続きや利用ニーズが多い民間サービスの支援・助言を行う「デジタル活用支援」は高齢者におすすめの支援策です。

全国展開型や地域連携型があり、スマートフォンの使い方やパソコンを活用したオンラインサービスの利用方法などを教えてくれるため、ITリテラシーが低い高齢者にも勉強になるでしょう。

(2)企業によるIT研修の実施

働き方改革の影響からデジタルツールを導入する企業が増え「ITリテラシー」について注目する企業が増えています。

高齢の従業員を含め、社内全体のITリテラシー問題を解決するためにさまざまな企業がITの基礎知識から応用まで教示するIT研修を実施しています。IT研修を行うことで社内のITリテラシーを向上させられるだけでなく、社内の生産性向上も期待できます。

(3)ITツールを用いたコミュニケーション

テレワークの導入や新型コロナウイルス感染症の影響で、離れた場所でのコミュニケーションを円滑に行うためにWeb会議ツールやビデオ通話システムを利用する人が増えています。

具体的な例で挙げると、多くの企業がオンライン会議として活用しているWeb会議システム「Zoom」を活用してオンライン飲み会を行うことにより、Zoomに対する操作の理解やZoomを使う抵抗を和らげることが可能です。

高齢の従業員でも、実際に使ってみると意外と簡単だったという人は少なくありません。企業としても、オンライン飲み会などを推奨し、プライベートでもITツールへの理解を深めてもらうことは有効でしょう。

(4)Webサイトを高齢者向けに変更

高齢者にとって、Webサイトのフォントが小さくて見づらいという声はよく聞かれます。サイトの文字を大きくする方法をわかりやすく表示したり、シンプルなデザインにすることなどで、高齢者が馴染みやすいサイト作りを意識することも大切でしょう。

高齢化社会の今、デジタルデバイド対策にもなる、高齢者向けのWebサイト作りは重要です。

(5)デジタルデバイスへの認知向上

スマートフォンやパソコン・タブレットといったデジタルデバイスは使ってみたいけれども抵抗があるという高齢者も多いため、実際に使用をしてもらい、どのようなものなのかを知ってもらうのもおすすめの対策になります。

携帯ショップなどの高齢者向けスマホ教室などは、同年代の参加者と受講できるといった安心感もあり、関心を持つ高齢者も少なくないでしょう。

デジタルデバイドの認知向上を目指すことも、さまざまな対策に結び付くのです。

高齢者のデジタルバイド対策を検討しましょう!

高齢者のデジタルデバイドは深刻な問題となっており、日本全体で対策を取っていく必要があります。同時に、高齢者自身がデジタルデバイドを認識することも大切ですが、周りの人のサポートも望まれます。

そして、日本のデジタル競争力を高めて生産性の向上を目指すとともに、高齢者を様々なリスクから守るためにも、社会全体でデジタルデバイドを生み出さないように意識していきましょう。

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