生産性向上への第一歩は業務のデジタル化!推進すべき対象の業務とは?
生産性を向上させるために、職場でのデジタル化は欠かせません。本記事では、日本の労働生産性の低さについて論じた上で、業務をデジタル化するメリットやデジタル化を推進すべき対象の業務を紹介します。生産性向上のツールも紹介するので合わせてご覧ください。
目次
日本は労働生産性が低い
日本は労働生産性が低い国として知られています。実際に、主要先進国中で最下位というデータが世界的に知られています。
公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2019」の調査によれば、日本における1時間あたりの労働生産性は、OECD加盟国36カ国中21位とのことです。加えて、G7(主要先進7ヵ国)の中では1970年から2018年までの48年間最下位のままというデータもあります。
つまり、日本はその他先進国と比較して労働生産力が低く、さらに長期にわたって低い水準のままということがデータによって示されているのです。
[出典:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2019」]
日本の労働生産性が低い理由とは?
前項目では、日本の労働生産性が低いというデータを紹介しましたが、その理由はどのようなものなのでしょうか。ここでは、主に考えられる理由を4つ紹介します。
(1)残業が当たり前になっている
日本では残業が当たり前になっています。残業時間は他の国と比較して長く、上司が帰宅するまで部下は帰れないという文化が定着しているため、残業時間が長い傾向にあるのです。
しかし、実際のところ、2020年にOECD(経済協力開発機構)が調査した「世界の労働時間国別ランキング」によれば、日本の労働時間は1,598時間で、46ヵ国中26位という結果が出ています。そのため、世界水準で見ればそこまで残業時間が長いというわけではなさそうです。
とはいえ、日本企業では「隠れ残業」や「サービス残業」が常態化している職場や業種もあり、データに反映されていない残業もあると考えられます。そのように考えると、日本の残業時間はもう少し長くなる可能性がありそうです。
実際、2020年に日本経済団体連合会(経団連)が行った「労働時間等実態調査」によると、一般労働者における総実労働時間(年間平均)は、2,000時間となっています。これを先のOECDのランキングに当てはめると、46ヵ国中44位となります。
このことから、サービス残業をはじめとする労働時間の長さが、日本企業の生産性の低下に大きく影響していることが考えられます。
[出典:OECD「労働時間」]
[出典:日本経済団体連合会「2020年 労働時間等実態調査」]
(2)年功序列に基づく賃金制
日本の大企業では「年功序列制度」が導入されているケースがほとんどでしょう。優秀な人よりも長年勤めた人のほうが良いとされている社会的背景があります。
そのため、多くの企業では若い人がどれだけ働いても高い給与をもらえず、モチベーションアップ低下などにつながり、労働生産性が低くなってしまう原因となっているのです。
最近では、年功序列の給与形態を改善している企業も徐々に増えてきています。とはいえ、いまだ多くの企業で根強く残っている文化です。
(3)チームで働くため、他の人の仕事を行う時間ができる
「チームで働くことが良い」と考える企業は多く、それによって効率化を進めている企業も一部あります。
ところが、多くの企業ではチームの「遅れている人」に対してサポートをすることが求められ、自分の業務ではない他人の業務に時間を取られているというケースも多いようです。
本来、集中して自分の仕事をこなせば高い生産性を発揮できる人材が、別の業務にリソースを割かねばならないため、全体として労働生産性が下がっているというのが日本の現状です。
(4)精神論を押し付けがちだから
研修という名目で強制的に合宿を行う企業があります。分析に基づいて、パフォーマンスを向上できるよう正しい知識を与える研修なら効果が期待できる一方で、精神論を押し付けたり形骸化している研修が行われているケースもあります。
「自分達の時は24時間働いた」など、精神論で問題を解決しようとすると、最悪の場合社員が辞めてしまうといったケースにつながりかねません。
また、長時間労働が良いものという認識で働く人が増えると、作業の効率化や見直しなどが行われないために労働生産性が低いままということになってしまいます。
業務のデジタル化・生産性向上によるメリット
業務のデジタル化を進めることで生産性が上がります。とはいえ、実際のところ生産性向上によるメリットとは、どのようなものなのでしょうか。
ここでは、主なメリットを5つ紹介します。
働き方改革の推進
業務のデジタル化によって生産性向上を図ることで、働き方改革につながります。例えば、生産性向上によって残業や休日出勤が減るでしょう。それによって長時間労働の是正が期待でき、仕事とプライベートの両立にもつながります。
ワークライフバランスの向上は心身の健康にも好影響を及ぼし、さらなるパフォーマンスアップにも寄与するでしょう。また、テレワークの推進によって、フレキシブルな働き方を進めていけば、シニアや女性など多様な人材の活躍の場が広がります。
多くの求職者にとって、柔軟な働き方ができる企業は魅力的に感じるでしょう。これにより、人手不足に悩む企業、多様な働き方を求める労働者双方がメリットを享受できることになります。
正規・非正規雇用の格差の解消
非正規雇用者と正社員の業務内容と責任が同じ場合、同様の賃金を与える「同一労働同一賃金」という制度が2020年から施行されています。
労働者にとってはメリットの大きい制度ですが、企業においては非正規雇用者に対して支払う給与が増えることで人件費が増加する可能性もあります。
しかし、そもそも生産性を向上させられれば、コストに関して悩むことはありません。生産性向上によって生まれた分の利益を非正規雇用の従業員に対して分配すれば良いため、格差がなくなります。
コスト削減・利益増加
生産性を向上させることでコスト削減につながります。例えば、長時間労働の是正によって残業代が削減され、テレワークの推進によって交通費や電気代、オフィス賃料などの固定費の削減効果が期待できます。
また圧縮したコストを新商品の開発などに充てることで、売上や利益を増加させられる可能性もあるでしょう。
優秀な人材の確保や離職率の低下
日本の労働人口は減少しているため、多くの企業では人手不足の問題に直面しています。企業にとっては、優秀な人材の確保や既存社員の定着率向上は解決すべき大きな課題となっています。
例えば、業務をデジタル化することでフレキシブルな働き方を取り入れたり、定型的な業務を自動化してより魅力的な業務に従事できるようになれば、優秀な人材が仕事や会社に魅力を感じてくれるかもしれません。
また、これまで子育てや介護によって離職を余儀なくされていた従業員も、テレワークが導入されている職場であればそのまま在宅で仕事が続けられるかもしれません。
ノウハウや成功事例の蓄積・活用
デジタル化を進めることで、社内において、ノウハウや成功事例の蓄積が可能になります。例えば、これまでハイパフォーマーやベテラン社員が個人で蓄積していた営業手法やノウハウをデジタルツールの導入によって、共有することができます。
また事務系の仕事においても、作業効率を高めるタスク管理方法や仕事の進め方をチームで共有することもできるでしょう。
蓄積されたノウハウや成功事例を部内やチーム内で活用すれば、スキルの平準化が期待できます。結果、組織全体の生産性向上にも寄与することになるでしょう。
デジタル化を推進すべき対象の6つの業務
ここまで、デジタル化を進めるメリットについて紹介してきましたが、デジタル化しやすい業務とそうでない業務が存在します。具体的には、どのような業務をデジタル化できるのでしょうか。ここでは、デジタル化を推進すべき6つの業務を紹介します。
(1)紙の文書や資料の印刷・管理
最も素早くデジタル化に踏み切りたいのは、紙の文書です。紙ベースで保管されている文書は印刷のコストがかかるだけでなく、保管スペースも必要とします。印刷して配布している資料をデジタル化するだけでも大幅なコスト削減につながります。
近年は、クラウド上で各種データ類を保管可能な上、既存の書類はOCR等で簡単にデータ化できるため、ペーパーレス化の推進もそこまでハードルが高くありません。
(2)名刺や顧客データ管理
増え続ける名刺や顧客情報もデータ上で蓄積・共有することができます。溜まり続ける名刺や紙ベースでの顧客関係の書類の保管場所が不要となるため、コストカットにもつながります。
加えて、オンライン上で管理することで、従業員がどこにいてもデータを確認可能となります。出先や自宅、客先などから「急ぎでデータを確認したい」と考えている営業担当者にとっては、いちいちオフィスに戻らなくて良いので、生産性や効率性の向上につながります。
(3)契約書・稟議書のサインや印鑑
契約書や稟議書も電子化できます。日本ではこれらの書類に担当者の印鑑を押すことが慣習となっていますが、実際のところは印鑑不要で契約や稟議を行えるという事実があります。
電子化すれば、テレワーク時にも自宅でサインが可能になるので、わざわざ出社する必要がありません。
また紙ベースの場合、特定の担当者が書類を止めてしまいがちですが、フローを電子化すれば、どの過程で滞っているか一目瞭然になります。そのため、作業を促すことができ、これまでより早く処理が可能になります。
特に、稟議書の電子化を進めている企業はいまだ少なく、いち早く取り入れるだけで意思決定のスピードが増すので、他の企業と比較して優位性を確保できるでしょう。
(4)社内マニュアル
社内マニュアルを電子化することで、管理が簡単になります。必要な書類に素早くアクセスできる他、検索性が高く、欲しい情報を素早く入手できるでしょう。
また、マニュアルを変更する場合にも役立ちます。新たな情報が必要な場合や、変更点がある場合にはスムーズな対応が可能です。つまり、より効率的に業務を行うことができます。
(5)コミュニケーション
デジタル化を進めることで、ビジネスにおけるコミュニケーションを素早く行えます。例えば、スピーディーな情報共有にはビジネスチャットツールが有効です。
チャットツールは、テレワーク時や外出の多い営業担当者などとの連携に特に役立つでしょう。素早くメッセージを送信できるビジネスチャットは、気軽に発言できるという特性があるため、メールよりも使い勝手が良いのが魅力です。
(6)会議
今まで会議室やミーティングルームに集まって会議を開催していた場合には、Web会議に切り替えることで多くのメリットが享受できます。例えば、資料の印刷代、会議資料作成の工数、会議室を押さえる手間などが削減できます。
日常の連絡や簡単な情報共有ならば、チャットツールなどで行えますが、資料を見ながら説明したい時や定例会議などには、画面を共有しながら話ができるWeb会議を活用しましょう。
また営業会議や客先との商談でも、内容やクライアントとの関係性によっては対面ではなくオンライン商談を導入したほうが、スピーディーかつ低コストで会議を行えるのでおすすめです。
業務のデジタル化に役立つおすすめツール
ここでは、業務のデジタル化において役立つツールを機能別に紹介します。
- 電子契約サービス
- オンライン会議ツール
- ドキュメント管理ツール
- ビジネスチャットツール
それぞれ詳しくみていきます。
(1)電子契約サービス
電子契約サービスとは、従来書面で行っていた契約をクラウド上で行うサービスのことです。電子化を進めることで契約の締結がスムーズになり、取引をスピーディーに行えるという特徴があります。
#1: クラウドサイン
クラウドサインは、弁護士監修の電子契約サービスです。最も大きな特徴は、契約書を閲覧・確認するたびにユニークなURLを発行する機能があるということです。官公庁・金融機関も利用している安心のセキュリティで契約書のデータを守ります。
また、契約締結、タイムスタンプ、契約書管理などがシンプルなUIでまとまっているため、ITに不慣れでも安心して利用できます。
提供元 | 弁護士ドットコム株式会社 |
---|---|
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
※Freeもあります。 |
導入実績 | 130万社以上 |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
#2: ジンジャーサイン
ジンジャーサインは最短1分で契約書を送付できる「速さ」が特徴の電子契約サービスです。契約ステータス管理で、依頼中、締結済、却下など契約状況を細かく管理できるため、互いに状況を把握しやすくなっています。
また、使用頻度が高い契約書をテンプレート化し、すぐに呼び戻せる点も魅力です。
提供元 | jinjer株式会社 |
---|---|
初期費用 |
|
料金プラン |
※送信件数1件につき200円 |
導入実績 | 不明 |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
(2)オンライン会議ツール
オンライン会議ツールは、リアルタイムで通信しながら会議を行えるサービスです。多くのツールで、会議を円滑に進めるためのチャット機能や、データ共有、画面共有などの機能が備わっています。
#1: zoom
オンライン会議ツールの中でも比較的知名度が高いzoomは、PCもしくはモバイル端末でWeb会議を行えるツールです。手軽にどこでもミーティングを始められるうえ、使用する通信量が少ないため、いつでも安定した会議を進められます。
また、ワンタイムキーを使用して情報を守ったり、ミーティング後31日以内に共有したファイルが削除されたりするため、画面共有におけるセキュリティが高い点も特徴です。
提供元 | Zoom Video Communications, Inc. |
---|---|
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
※年間料金 ※オプションのアドオンプランもあり |
導入実績 | 不明 |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
#2: Google Meet
Google Meetは、Googleアカウントを持っていれば誰でも活用できるオンライン会議ツールです。チャット機能や画面共有機能、参加者招待機能など必要な機能は一通り揃っており、不自由なくオンライン会議を進められます。
無料版の場合、会議参加者全員がGoogleアカウントに参加しなければならないという制限はありますが、特に問題なければ、無料で利用できます。コストを抑えた上でオンライン会議を行いたい場合には最適なツールといえるでしょう。
提供元 | Google LLC |
---|---|
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
|
導入実績 | 不明 |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
(3)ドキュメント管理ツール
ドキュメント管理ツールとは、文書データをオンライン上で一括管理できるツールのことを指します。社内情報をオンラインで管理することで検索性の高い状態を保ち、必要なタイミングですぐにアクセス可能です。
#1: Google ドライブ
Google ドライブは、様々な書類を一括管理できるクラウドサービスです。書類データを保管しておくことで、必要に応じて呼び出すことができます。
また、同社から提供されている無料のドキュメントやスプレッドシート、スライドなどのデータであれば、シームレスに連携が可能です。リアルタイムで共同編集を行うこともできます。加えて、PCだけでなくスマートフォン・タブレットからも閲覧可能なため、外出先などからの情報確認や情報共有にも効果を発揮します。
提供元 | Google LLC |
---|---|
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
|
導入実績 | 不明 |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
#2: セキュアSAMBA
セキュアSAMBAは、4,000社以上の導入実績があるツールです。高いセキュリティ性が特徴で、アクセス経路とファイルは全て暗号化されています。そのため、社内の重要な情報を社外に漏洩する心配はありません。
また、PCにソフトウェアをインストールするだけでクラウド上での共有が簡単に行えます。ファイル保存にかかっていた時間やサーバーのコスト削減効果も期待できます。月5GBまで、3ユーザーが使えるフリープランも用意されているため、まずは試しに利用してみるのが良いでしょう。
提供元 | 株式会社kubellストレージ |
---|---|
初期費用 |
|
料金プラン |
|
導入実績 | 4,000社以上 |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
(4)ビジネスチャットツール「Chatwork」
ビジネスチャットツールは、ビジネスシーンで活用しやすいチャットツールのことを指します。社内のコミュニケーション効率化を図るため導入されることが多く、メールよりも気軽に送信できる点が魅力となっています。
ビジネスチャットを入れるならChatworkがおすすめです。メールだけではなく、電話やビデオ会議を実施できる機能も付属しています。また、タスク管理やファイル転送など、オンラインで仕事を行う上で必要な機能も充実しています。
シンプルなUIのため、誰にとっても使いやすいツールといえるでしょう。
提供元 | 株式会社Kubell |
---|---|
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
|
導入実績 | 343,000社以上 |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
生産性向上のために業務のデジタル化は欠かせない
本記事では、業務をデジタル化するメリットやデジタル化を推進すべき対象の業務などについて紹介してきました。デジタル化を進めることで、会社全体の生産性向上につながります。
デジタル化を推進する上では、ITツールの導入が不可欠です。ツールには無料・有料を含め様々な種類があり、機能や用途も多種多様です。まずは課題を整理し、自社にとって最適なツールを導入することで、生産性を向上させていきましょう。
デジタル化の記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら