ISOの取得要件に規定される文書管理とは?要件や役割・管理方法を紹介
業務上作成されるあらゆる文書を段階的に管理する、文書管理。文書管理の適正化を推進し、品質に関する国際規格ISOを取得する企業も増えています。本記事では、ISOにおける文書管理の役割とは何か、要件・要求事項、管理方法をあわせて紹介します。
目次
ISOの取得要件に規定される文書管理とは?
文書管理とは、データを含む書類のあらゆる管理を一元的におこなうことです。厳格な文書管理は、品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001の取得要件の一つであり、ISOを取得すると自社の製品・サービスがグローバルスタンダードであることを対外的に示すことが可能です。
一般的な文書管理では、会社法などの法律に適応しつつ、企業のビジネスモデルや行動様式に合わせた独自のルールが設定される傾向があり、社内の特性にマッチする文書管理がおこなえる一方で、海外企業を含む他社との取引では予期せぬトラブルが生じてしまいます。
このことから、国際規格であるISO9001に準拠した文書管理をおこなう企業が増えています。文書の作成や保管はもちろん、閲覧・破棄・活用の方法に至るまで、国際基準の文書管理が広まっているのです。
ISOとは?
ISO(International Organization for Standardization/国際標準化機構)は、スイスのジュネーブに本部を置くNGO(非政府機関)、あるいはその機関が発行する規格のことです。
ISOは160カ国以上の代表的な標準化機関から成り、国際取引を円滑化することを目的に、組織活動における国際規格の作成をおこなっています。
ISO規格が制定されることで、製品・サービスの品質やレベルに関する世界的な基準が生まれ、各国の企業がその基準をもとに製造や販売をおこないます。ISOの取得は世界基準を満たすことに等しいため、異国の製品も安心・安全に利用することができるのです。
ISOの種類
ISOには製品の質量や長さなどを定めるモノ規格と、企業の品質・環境に関する活動の仕組みを定めるマネジメントシステム規格があります。文書管理に関わるISOのマネジメントシステム規格のうち、代表的な2つの規格を紹介します。
ISO9001(品質マネジメントシステム)
ISO9001は、品質管理・品質保証の仕組みを定めた品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格です。QCD(Quality/品質、Cost/価格、Delivery/納期)のバランスとPDCAサイクルを整えることで製品・サービスの品質水準の上昇と維持に努め、顧客満足度を向上させることがISO9001の目的になります。
品質だけを追い求めてしまうと、価格の高騰や納期の遅延が常態化し、顧客の要求を満たせない恐れが高くなります。ISO9001を通じてQCDのバランスを共通認識化し、プロセスを適切に整備していくことが重要です。
また、ISO9001は一過性の品質だけを問うものではありません。継続的に品質を維持することはもちろん、維持のための製造プロセスを構築することも規格の意図に含まれます。
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ISO14000(環境マネジメントシステム)
ISO14000は、環境保全の仕組みを定めた環境マネジメントシステム(EMS)の国際規格群の総称です。環境マネジメントシステムのガイドラインであるISO14001を中心に、環境監査や環境パフォーマンス評価など、複数の規格によってISO14000ファミリーが構成されています。
近年はカーボンニュートラルの実現に向け、サプライチェーン全体での環境負荷の低減が求められています。ISO14000を取得している企業であれば、サプライチェーン上の取引先に対して、環境負荷の低減に向けた取り組みの調査・指導ができるのです。企業イメージの向上や、環境対策に伴う無駄なコストの削減効果なども期待できます。
▷eディスカバリ(eDiscovery)とは?EDRMの流れや文書管理の考え方
ISO9001における文書管理の役割・目的とは?
ISO9001に準拠した文書管理は、文書の正確性や最新性を確保するほか、文書共有の円滑化を促す役割があります。情報の利用やアクセスの最適化、リスクマネジメントの徹底も目的です。
正しい情報を効率的に共有することで、社内外のコミュニケーションを円滑に進める働きがあります。ISO9001という基準によって管理プロセスが統一でき、業務の属人化予防にも寄与するでしょう。
ISO9001取得には情報の使い方や保管方法、セキュリティの基準も高く求められます。基準を満たす文書管理によって、必要な情報に素早くアクセスできるだけでなく、改ざんなどの不正行為の防止にも効力を発揮するのです。
ISO9001の認証を獲得することは、管理体制の向上による製品・サービスの改善につながり、顧客満足度の向上にも役立つでしょう。さらに、企業活動の健全性を証明することにもつながります。BtoBビジネスの領域では取引要件にISO9001の認証取得を定めている企業もあるため、取引拡大のチャンスにもなるのです。
ISO9001の文書管理における要件・要求事項
ISO9001の文書管理では、以下2つの要件・要求事項があります。
- 文書が必要なときに必要なところで入手・利用できる状態
- 機密性・完全性が実現している状態
これらを踏まえて、文書の細かな要件・要求事項について解説します。
文書の種類
ISO9001における文書には、見本・デザイン画・写真・図表などの種類がありますが、企業活動に必要と判断されるすべてのものが該当します。具体的には製品・サービスの供給プロセス表や業務手順書、取引先リストなどが挙げられます。
文書の管理
ISO9001において、文書の管理には以下の要件が求められます。
- 検索性の高い保管
- 読みやすい状態の維持
- 適切なバージョン管理
- 文書の堅牢な保護
- 情報の閲覧・変更・廃棄に関する設定
文書の保管期限
ISO9001が要求する文書の保管期限は、種類や重要度によって異なる場合があります。一般的には法定保管期間に準拠するのが適当です。主な文書の法定保管期限は以下のとおりです。
文書 | 保管年数 |
帳簿 | 7年 |
身元保証書、誓約書、健康診断個人票 | 5年 |
雇用保険の被保険者に関連する書類 | 4年 |
労働者名簿 | 3年 |
社会保険、災害補償に関連する書類 | 2年 |
ISO9001における文書の管理方法
ISO9001を取得するには、機密性・完全性を保った状態で文書を管理する必要があります。要件を満たすため、主に2つのポイントを押さえることが重要です。
文書の分類・作成・管理のルールを定める
ISO9001を満たす文書管理において重要なのは、ルールを定めることです。ルールの例として、文書の必要性を定義した文書体系図の作成が挙げられます。文書の種別とレベル感に沿ってカテゴライズした図のことで、活用により文書に関する共通認識を敷くことができます。文書体系の分類例としては、主に以下のような種類があります。
- 1次文書(品質マニュアル)
- 2次文書(規程書・基準書など)
- 3次文書(手順書など)
- 4次文書(フォーマット・記録書など)
1次文書ほど重要性が高く、厳格な作成・管理が求められます。文書の分類を定めることで、不要な文書の作成・更新・配布・廃棄といった管理コストの削減が可能です。文書化の範囲が広すぎると管理コストの増大だけでなく、文書の重複・矛盾のリスクが高まることにもつながります。
ISO9001に準拠した文書管理を実現するためには、文書の重要度や必要性をもとに、明確な管理ルールを決めていくことが大切です。
文書管理をルール通りに進める
文書の取り扱いルールに従って管理をおこないましょう。ISO9001に基づいたルールを敷いても、従業員が遵守できなければ意味がありません。
ルールを正しく理解してもらうためには、文書の作成・配布から廃棄までのプロセスを適切に周知することが重要です。
ルールの最適化を図るには、文書管理システムを活用する方法もあります。手作業だけでは困難な文書管理も、システムによって作業の自動化ができ、ルールに則した管理が容易になるのです。
最初から完璧な状態を実現することは難しいため、文書管理の監査を定期的におこない、ルールの遵守度を評価して改善策を投じましょう。
▷文書管理システム導入後の失敗する原因!失敗例からわかる成功へのカギ
▷文書管理で必要なルール作りのポイント|失敗しない運用方法も紹介
ISO9001の要件・要求事項を理解し適切な文書管理をしよう
近年、ISO9001による品質マネジメントシステムの構築ニーズは高まっています。高品質を追い求める時代から、QCDのバランスを調整することが重視される時代に移り変わったことが一つの理由です。
文書管理においても注目され、ISO9001を通じた世界標準の管理体制が求められるようになりました。高精度の品質マネジメントシステムが構築できると、製品・サービスの品質水準が高まり、顧客との信頼関係を深めていくことにもつながるでしょう。
本記事を参考にISO9001の要件・要求事項を理解し、文書管理の改善を図ってください。
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