文書管理で必要なルール作りのポイント|失敗しない運用方法も紹介
日々、業務で使用する文書は種類・量ともに膨大です。そのため、ルールがないまま管理してしまうと、重要な文書が共有されなかったり、紛失してしまったりとトラブルの元になってしまうでしょう。文書管理で必要なルール作り、そして、ミスを防ぐ失敗しない運用方法のポイントをご紹介します。
目次
文書管理にルールが必要な理由とは?
「自社の文書管理は問題ない」と思っていても実際には適切に管理しきれていないケースは少なくありません。
文書管理の目的は、「適切な方法で保管し、文書の保管場所を明確にした上で、必要な時はいつでも閲覧できる状態を保つ」ことにあります。会社が扱う文書は、見積書や請求書、契約書といった社外に向けた文書のほか、報告書、手順書、稟議書などの社内文書もあり、その種類や量は膨大です。
そのため、ルールなく管理してしまうと、必要な書類が見つからない、重要な文書を誤って廃棄したり紛失したりする、共有すべき書類が共有されないといった事態が発生してしまいます。また、文書が社員各々の「個人ルール」で管理されていると、当該社員の退職によって書類の所在が全く分からなくなってしまうこともあるでしょう。
文書管理のルールは、業務効率化を目的するだけでなく、属人化を防ぎ、重要文書の紛失といった、さまざまなトラブルを未然に防止するうえで、不可欠なものなのです。
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文書管理ルール作成前の準備におけるポイント
文書管理ルールの作成にあたっては、まず、自社業務では、日々どのような文書が取り扱われているのかを把握するなど、適切なルールを作るための準備が必要です。
文書管理の目的を明確にする
いくら適切なルールを作っても、ルールが守られなければ、適切な文書管理は実現できません。そのため、なぜ文書管理を行うのか、その目的を明確にし、作成したルールとともに社内に周知しましょう。
文書管理を徹底する目的は、業務効率化、生産性向上、ナレッジ共有・蓄積、内部統制の強化など、企業によってさまざまですが、目的の明確化は、ルール作りの軸となるだけでなく、運用後、文書管理の重要性の理解を深めるうえでも役立ちます。
業務で発生する文書を棚卸する
次に、日々の業務で発生している文書を棚卸していきます。文書管理台帳がない場合は、棚卸しつつ台帳を作成すると良いでしょう。文書管理台帳では、主に以下のような項目を記載し、管理します。
- 文書名/ファイル名
- 閲覧権限
- 作成日/作成者名/作成部署
- 保存期間
- 保存場所
- 保管形態
- 保存期限満了後の措置
社内でどのような文書があるのかを可視化することで、文書管理の対象となる文書やルールも作成もしやすくなります。文書管理台帳はノートなどの紙ベースやExcelでも作成できますが、文書管理システムを活用することで、より効率的に文書管理がおこなえます。
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文書管理ルールとして決めることとは?
目的の明確化と既存文書の棚卸しができたら、実際に運用する文書管理ルール作りに着手します。ここからは、文書管理ルールとして決めるべき項目や内容を紹介します。
ただし、ルール作りの大前提として、実務を想定した運用ルールであることを意識しましょう。
必要項目の選定
まずは、文書管理ルールとして必要な項目の選定を行います。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
- 対象となる文書
- 保存期間
- 保存方法
- 編集・更新
- 廃棄
- ルールの変更
- ルール違反が起きた場合の対処法
各項目について、具体的に見ていきましょう。
対象となる文書
文書管理ルールの対象となる文書を指定します。適用範囲は、機密文書などの重要文書に限定するか、それとも業務にかかわるすべての文書を対象とするのかといった点について明記します。
また、ルールにおける「文書」は紙の文書のみを対象としているのか、電子記録も含むのかについても明確に定義しておきましょう。
保存期間
保存期間を設定します。その際、法定保存文書は、法律により保存期間があらかじめ定められているため、注意しましょう。
法律による保存期間の定めがない文書については、関連部署に文書の使用状況をヒアリングしたうえで、社内独自の保存期間を決定します。
保存期間 | 文書の一例 |
30年 |
|
10年 |
|
7年 |
|
5年 |
|
3年 |
|
1年 |
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保存方法
文書の閲覧性や高い検索性は、業務を効率化する上で最も重要なルールとなります。保存方法として決めるべきルールは、任意ですが、主に以下の項目は基本ルールとして定めておくと良いでしょう。
- ファイル名や文書名、フォルダ名の命名規則
- 書面もしくはデータなどの保存形態
- 保管場所
- ファイリング方法
- 閲覧権限範囲
そのほか、保存するタイミングやファイリングする際の分類方法(ワリツケ式・ツミアゲ式)などの詳細を必要に応じて決めておきます。
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編集・更新
文書管理システムや文書管理台帳で文書を管理する場合は、システムや台帳の更新はいつ・誰が行うのかについてもルールを決めておきます。
誰でも随時更新できる体制は、リアルタイムでの情報更新がしやすくなりますが、セキュリティ管理の面では、情報漏洩などのリスクが高まる恐れも出てくるでしょう。管理する文書の範囲や対象文書の特性などを考慮しつつ、効率と情報管理のバランスを見極めた管理体制を目指しましょう。
廃棄
保存期間をすぎた不要な文書は、定期的に廃棄することで、必要な文書が見つけやすくなるだけでなく、保管料などのコスト削減にもつながります。
誰が、どのタイミングで、どのように廃棄するのかを決めておきましょう。ただし、廃棄作業は、属人化しないようWチェックの体制を整えるなど、内部統制の視点を持った上でのルールづくりが必要です。
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文書管理ルールの変更手順
文書管理ルールを変更する際の手順についても、定めておきます。いつ・誰が・どのような変更を行ったのかの経緯が可視化されることが理想です。
また、変更手順には、どのような方法で新しいルールを周知するのかまでを決めておくと安心です。
文書管理は、社内の多くの社員が関わるルールです。ルールが現場作業の生産性を下げていないか、従業員の負担になりすぎていないかなど、定期的に確認し、課題が生じている場合には、速やかに改善を図りましょう。
ルール違反が起きた場合の対処法
文書管理ルールを守らない文書管理を発見した、あるいは、間違った方法で管理していたことが発覚した場合の報告経路(レポートライン)についても策定しておきましょう。
主に、報告先(報告すべき相手)、報告手段、報告内容を定めることになりますが、レポートラインを明確にしておくことで、混乱を最小限に留めつつ、迅速な対処ができるようになります。
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文書管理ルールを作る際のポイント
続いて、文書管理ルールを定める際に押さえておきたいポイントについてもご紹介します。
文書のライフサイクルに適したルールを作る
文書には発生から廃棄まで、一連のライフサイクルがあります。
- 発生(作成/取得)
- 伝達・活用(配布/共有/閲覧)
- 保管(閲覧頻度や活用度の高い文書)
- 保存(閲覧頻度や活用度の低い文書)
- 廃棄(保存期間満了)
1〜3の時期は、日常業務での活用度が高い時期となるため、閲覧性や利便性を考慮した管理ルールが求められるでしょう。ライフサイクルの特性を理解したルールやプロセスにすることで、無理や無駄のないルールづくりが実現します。
紙とデジタル、2つのパターンを作る
業務のデジタル化による、ペーパーレスの取り組みが進んでいるとはいえ、紙の文書が発生するケースは、まだまだ多いという企業は少なくありません。
少々面倒であっても、業務の実態に合わせ、必ずそれぞれの文書管理ルールを決めるようにしましょう。
文書管理に関する法令を遵守する
企業活動の中で発生する文書には、保管方法や保管期間が法令で定められている文書のほか、法令による定めはなくとも、文書の性質上、永久保存すべきだとされる文書が数多くあります。
また、法定保存文書においては、法令に反すると罰則が与えられる恐れもあります。文書管理をする際は法令の内容も確認し、法令に準拠した管理ルールになっているかは、必要に応じて専門家の意見も仰ぎつつ、慎重に決めるようにしましょう。
▷文書管理規定とは?作り方や目的・保存期間について
作成した文書管理ルールの運用を失敗しない方法
適切な文書管理ルールを定めても、社内で正しく運用できなければ、適正な文書管理は実現しません。ルール運用を失敗しないためのポイントについても、あらかじめ確認しておきましょう。
全社員への必要性の周知
適切に文書管理ができていない企業においては、「そもそも従業員が文書管理に関する規定の存在を知らない」「人によって認識に違いがある」といったケースも少なくありません。
ルールは周知することではなく、守ってもらうことで初めて機能するものです。なぜ文書管理が重要なのか、その目的や必要性について、繰り返し共有し、文書管理に対する意識を向上させましょう。
定期的な研修・教育
文書管理に関するルールが複雑な場合は、勉強会や研修など、学ぶ機会を設けるのも良いでしょう。ルールへの正しい理解を促せるだけでなく、研修会や勉強会の実施は、文書管理が全社的に重要視されるルールであることの意識づけにもつながります。
運用状況の確認
文書管理ルールの運用状況は、定期的に確認しましょう。決算時などに全社的に行う、チームや部署ごとに定期チェックのタイミングを設定するなど、確認方法はさまざまです。
また、運用状況の確認とともに、日々の業務のなかで感じた改善点も併せてヒアリングすることで、文書管理に関する問題や課題を素早く発見し、迅速に対応できるようになります。
▷文書管理を効率化させる方法とは?複雑化する原因と改善の秘訣
ルールをやぶったらどうなる?発生する企業リスク
最後に、文書が適正に管理されていなかった場合、どのような企業リスクが発生するのかについても確認しておきましょう。考えられる主な企業リスクには以下のようなものが挙げられます。
- 機密情報や個人情報の漏えい
- 文書紛失による信頼喪失
- 税務リスクの増大
いずれも状況によっては、企業活動そのものが脅かされることもあるような重大なリスクです。日々、業務の延長で行っている文書管理ですが、不適切な取り扱いによって発生するリスクを見るといかに重要な管理項目であるかがわかります。
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ルールを守り適切な文書管理を徹底しよう
文書の適切な管理は、業務の効率化やナレッジ共有による生産性向上だけでなく、内部統制が強化されることによって企業リスクが低減される、といったメリットにもつながります。
しかし、文書管理ルールはあるものの、正しく運用されていない、運用が徹底されていないという企業が多いのも事実です。ルールを策定するだけでなく、文書管理の目的を明確にし、社内全体の意識を高めるといった対策も併せて実行し、適切な文書管理を実現しましょう。
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