電子契約で収入印紙が不要になる理由とは?法的根拠やコスト削減例を解説

最終更新日時:2022/09/29

電子契約システム

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契約書を締結する際、その内容によっては印紙税が課されるため、収入印紙による印紙税の納税が必要です。しかし、電子契約の場合、契約内容や金額にかかわらず収入印紙の貼付は不要です。そこでここでは電子契約で収入印紙が不要な理由と、その法的根拠について解説するとともに、電子契約の導入によりコスト削減に成功した企業事例もご紹介します。

電子契約には収入印紙が不要な理由と法的根拠

収入印紙が必要になる、つまり印紙税がかかる書面は「課税文書」と呼ばれ、この課税文書の対象となる文書の種類については、国税庁「印紙税額の一覧表」に詳細がまとめられています。

しかしながら、対象となる文書と同内容の契約を電子契約で交わした場合にも、印紙税は課税されません。

印紙税法の基本

その理由は、印紙税法における課税文書の作成は、以下の通り「用紙への記載」が前提として定義されていることが挙げられます。

法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

[引用:国税庁「法令通達 第7節作成者等第44条」より]

このことから電子契約における電子ファイルの送信・交付は、そもそも課税文書の「作成」には該当しないことになり、印紙税は課税されないといった背景があるのです。

ちなみに、領収書も内容によっては印紙税の課税対象となりますが、「電子領収書」については、電子契約同様に「紙で発行されていない」ことから、印紙税はかかりません。

つまり、現行の法律では印紙税は「紙で発行された文書」に課税されるものと定義されているのです。

国税庁の電子契約に関する見解

実際に国税庁のHPにて公開されている、課税文書の作成に関する回答においても、電磁的記録にしたものを電子メールでやり取りしたケースは、課税文書の作成にあたらないとする内容を確認することができます。

また、「課税文書に該当するかどうかの判断」においても課税文書の条件を以下3つに当てはまる文書としているため、電子データを含まないとされています。

(1)印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。

(2)当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。

(3)印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

[引用:国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」より]

[出典:国税庁「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(別紙)

政府の電子契約に関する見解

政府の見解についても、小泉純一郎内閣時代に電子文書は非課税であることが、以下の通り明確に示されています。

文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。

[引用:参議院「参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書」より]

電子契約書を印刷した場合はどうなるの?

では、交付された電子契約書を印刷した場合は、印紙税が課税されてしまうのかについてが気になるところですが、この場合も印紙税はかかりません。これは、電子取引にて実行された電子契約の原本は、あくまで電子データであるからです。

ただし、契約締結前に印刷し、紙の契約書で契約を取り交わした場合には、当然ながら上に契約書が原本となるため、印紙税が課税される点に注意しましょう。

電子契約書は「データ保存」が義務化

さらに現在は、2022年1月に施行された電子帳簿保存法の改正により、電子取引によって交付された契約書については、データでの保存が義務付けられています(2023年12月末までの猶予期間あり)。

そのため、電子契約書は保存においても印刷する必要はなく、むしろ、「データ保存」の要件を満たせる環境を整えておく必要があるのです。

電子帳簿保存法における電子取引データの保存要件

電子帳簿保存法では、電子契約書を含む電子取引データの保存要件について、以下の通り定めています。

契約内容と文書の可視化当該データの可読性を確保された上で、必要に応じて速やかかつ明瞭に提示できる状態にしておくこと
データ保存の義務化電子取引により授受したデータは、電子データのまま保存すること
保存期間と保存場所

  • 電子保存する場合も、紙の書類と同様に法律で決められた期間を保存すること
  • 取引書類が作成・受領された日本国内の納税地にて保存すること。ただし、海外のサーバーで保存する場合は、国内からアクセス可能であれば要件を満たすこととする
タイムスタンプの付与「完全性」「機密性」を確保するためタイムスタンプを付与すること

ただし、電子書類の訂正や削除履歴の確認可能なシステム、訂正や削除ができないシステムの利用により、タイムスタンプは不要

見読性の確保電子データの保存に使用しているシステムには、必ず操作説明書などを備え付けておき、誰でも速やかに開示や出力ができるようにしておくこと
検索機能の確保「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できるようにしておくこと

現在の保存要件に関するポイントをおさらい!

電子帳簿保存法は、これまで頻繁に改正が実施されており、主に「緩和」が目的の法改正とはいえ、どの要件が現行なのか混乱してしまう場合もあるでしょう。

そこで電子契約などの電子取引における、保存要件に関するポイントを詳しくおさらいします。

タイムスタンプの付与について

電子取引にて、電子データを授受する場合は、発行者側においてタイムスタンプを付与する必要があります。

ただし、改正後は、受領する側が受け取ったデータを改変できない、あるいは、訂正・削除した履歴が記録されるシステムやサービスを使用している場合に限り、タイムスタンプのい付与は不要となっています。

電子データであっても国税関係書類は7年間保存

税法上の保存期間に関しては、データか紙媒体かの違いがありませ。そのため、帳簿書類は7年間(法人で繰越欠損金の控除を受ける場合は10年)保存することが義務付けられています。電子契約においても、この保存期間は例外ではないため注意しましょう。

電子化に関する税務署への事前申請は不要

これまで、国税関連の書類を電子化する場合は、所轄の税務署へ3か月前の日までに適用届出の手続きをしなくてはなりませんでした。しかし、こちらも2022年1月に施行された改正により、税務署長の事前承認制度は廃止されているため、現在はそのような手続きをする必要はありません。

電子契約にすることで削減できるコスト

次に、電子契約の導入によってどのようなコスト削減が実現できるのかを確認していきましょう。

1契約につき400円以上のコスト削減も可能

電子契約にすることで、コスト削減効果が期待できます。書面契約の場合、以下のようなコストがかかってしまいます。

  • 印刷代(用紙代・インク代)
  • 印紙代
  • 郵送料
  • 書類の保管費用
  • 人件費(印刷・製本・郵送)

たとえば、契約書を郵送する場合、郵送料(2022年9月現在)だけでも、定形外郵便物料金120円に加えて簡易書留もしくは一般書留の利用料320〜435円が追加されるため、それだけで400円以上のコストがかかることになります。

その点、電子契約であれば郵送料だけでなく、そのほかの上記コストを完全に削減することも可能です。

作業時間の削減

電子契約にすれば、作業時間の削減にもつながります。書面契約の場合、以下のような作業が必要です。

  • 契約書の印刷
  • 契約書への収入印紙の貼付
  • 宛名を記入した封筒と送付状の準備
  • 郵送手続き
  • 署名・捺印後、返送された契約書の受領と保管

これらの事務作業はどんなに業務に慣れた人がおこなっても15〜20分程度は、どうしてもかかってしまうでしょう。

しかしながら、電子契約であれば、これらの事務作業も大幅に軽減することが可能です。電子取引システムを使用している場合は、契約の進捗状況もシステム上で可視化されるため、契約期限を過ぎた取引が放置されてしまうトラブルも未然に防ぐことができます。

資源の消費削減

電子契約によるペーパーレス化は、環境保全にもつながります。「地球を守る」ための国際社会共通の目標であるSDGsは、当然ながら企業としても取り組むべき課題です。

そうした課題と向き合い、ペーパーレス化などによって実際に行動に移す姿は、企業のイメージアップにも貢献するでしょう。

電子契約でのコスト削減成功事例4社

電子契約によるコスト削減については、すでに実現している企業も存在します。

ここでは4社の事例をご紹介します。ぜひ自社の課題と照らし合わせつつ、コスト削減の実現にお役立てください。

1.株式会社アペックス

アペックスは、自動販売機の設置・運営・管理を行っている会社です。同社では、本格ドリップコーヒーをオフィスでも楽しめる「PODドリンクシステム」の契約を結ぶにあたり、電子契約を導入しました。

導入に踏み切った背景には、書面契約では4,000円の印紙税がかかってしまう点にあります。さらに月100~150件の契約が発生していたため、印紙代だけでも毎月40~60万円ものコストが発生していたのです。導入後は、これらのコストを完全に削減することに成功しています。

2.リノベる株式会社

リノベるは、住宅や商業施設のリノベーションを手掛ける会社です。同社では、顧客や取引先との契約に、契約書回収の手間削減を主な目的として、電子契約を導入しました。すでに電子契約の利用率は全契約の8~9割にも達しており、契約締結に関する事務作業の負担を大きく削減できています。

また、電子契約は、事務作業の負担を軽減するだけでなく、契約書を持ち出す、持ち歩くといった行為がなくなり、情報セキュリティ体制が強化されたといったメリットも得ています。

3.株式会社ティップネス

総合フィットネスクラブを運営するティップネスは、複雑になってしまうトレーナーとの契約の作業・管理の負担を抑えるために電子契約を導入しました。

約2,000人もいるインストラクターとの契約業務を一気に電子化したことで、契約書の作成や締結、管理業務の工数を大きく減らすことに成功。契約の進捗もシステムで確認できるため、同時に情報共有の円滑化も実現しています。

4.株式会社サカイ引越センター

引っ越しサービスの大手企業であるサカイ引越センターでは、運送依頼時の利用運送契約書において、電子契約を導入しています。200以上の契約を電子契約にて再締結したことで、契約締結にかかる時間の大幅削減に成功しました。契約ステータスの可視化は、ミスの軽減にもつながっています。

電子契約の導入で収入印紙のコストを削減しよう

電子契約は、印紙税が非課税となっているため、導入することにより収入印紙にかかるコストを完全に削減することも可能です。電子契約に限らず、電子取引導入は、コスト削減だけでなく、ペーパーレス化、業務の効率化の観点からも、今後、さらに対応やシステムの導入を進める企業が増えてくるでしょう。

ただし、電子帳簿保存法やe-文書法などの法律が関連する電子保存に関する要件は、非常に複雑なため、本格的な導入を目指すのであれば電子帳簿保存法に対応した電子契約システムの導入がおすすめです。

ここでご紹介したポイントやメリットを、ぜひシステム導入を検討される際の材料としてお役立てください。

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