基幹システムで使われる開発言語|トレンドや選定する基準を解説
開発言語の使い分けができれば、プロジェクトに応じた環境の開発が可能です。本記事では、基幹システムで使われる主な開発言語を紹介します。トレンドや言語を選定する基準についても解説するので、基幹システムの開発に役立ててください。
目次
基幹システムの開発で使われるプログラミング言語とは?
プログラミング言語は、コンピュータを動かす命令をするための言葉を指します。
コンピュータは人間の言葉を理解できないため、プログラミング言語が必要です。人間が直接コンピュータに機械語で処理を命令するのは困難ですが、プログラミング言語を利用することで処理を理解しやすくなります。
人間の言語と同様、プログラミング言語にはさまざまな種類があり、特徴や用途によって使い分けることが可能です。
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プログラミング言語には種類がある
プログラミング言語には「コンパイラ型」と「インタプリタ型」があり、それぞれ特徴や利点が異なります。
コンパイラ型は人間が理解できるソースコードを、コンピュータが理解できるバイナリコードに一括で翻訳することが可能です。これは、プログラミング用語で「一括翻訳型」ともいわれます。
メリットは、実行速度が速いという点です。しかし、バイナリコードへ翻訳してからプログラムを実行するため、手間と時間がかかる点がデメリットといえます。
代表的なコンパイラ型言語は、以下のとおりです。
- C/C++
- Java
- Go
インタプリタ型は、一行ずつバイナリコードに変換しながら実行することが可能です。これは、「逐次翻訳型」とも呼ばれています。
コンパイラ型のように一括まとめて実行するわけではないため、即座に処理できエラーを見つけやすいという点がメリットです。その反面、一行ずつ訳しながら実行するので、実行速度が遅い点がデメリットといえるでしょう。
代表的なインタプリタ型言語は、以下のとおりです。
- Python
- JavaScript
- Ruby
基幹システムで使われる開発言語
ここからは、基幹システムによく使われる開発言語を紹介します。
Java
Javaは、1995年にリリースされたオブジェクト指向のプログラミング言語・コンピューティングプラットフォームです。
Java仮想マシン(JVM)上で動作し、マルチプラットフォーム対応であることが大きな特徴です。高速処理が可能なため、大規模システムに適しています。Web・モバイルアプリ・業務システム・組み込み系など、幅広い分野での活用が可能です。
JavaはC言語をベースに開発されていて、Googleなどが開発に用いる三大言語の一ひとつとしても知られています。汎用性が高く堅牢性・セキュリティ性も備えているのが特徴です。
Python
Pythonは1991年に開発・リリースされたオブジェクト指向のプログラミング言語で、シンプルで読みやすい文法が特徴です。
AIやビッグデータ向けのライブラリであるTensorFlowやPyTorchなどが注目され、幅広い開発に活用されています。
また、Pythonは高水準インタプリタ型の汎用プログラミング言語のため、とくにAI分野で活用される傾向があります。科学計算分野のライブラリが充実していて、AI技術の需要の増加に対応している点もポイントです。
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PHP
PHPは1995年にオープンソースとして開発・リリースされたプログラミング言語です。
主に動的なWebページやWebアプリケーションのサーバサイド開発に使用され、WordPressやEC-CUBEもPHPで開発されています。
PHPはシンプルな文法で学習しやすく、データベースとの連携も容易なのが特徴です。一方、記述の自由度の高さからセキュリティに配慮する必要があり、大規模システムには向かないと言われています。
C/C++
C言語は1972年に開発されたプログラミング言語で、C++はC言語にオブジェクト指向を加えたものです。C++はC言語の機能を拡張したもので、互換性も備えています。
C/C++は高速性と汎用性が備えていて、幅広い分野で使われているのが特徴です。最近では特にC++の需要が高まっており、新規開発や既存プログラムの高速化に活用される機会が増加しました。また、C++のなかにもいくつか種類があります。その中でも、Borland C++やVisual C++などが代表的です。
C#
C#はMicrosoftによって開発された、オブジェクト指向のプログラミング言語です。
C#は高速性とマルチプラットフォームに対応した汎用性が特徴で、主に業務アプリケーション・モバイルアプリ開発で利用されています。Unityとの相性もよいため、ゲーム開発にも活用されているようです。
オブジェクト指向の開発方法により、独立性・再利用性・拡張性を実現しています。また、Visual Studioを使うことで簡単にGUIアプリケーションを作成することも可能です。
C#はマイクロソフトの各種ツールによるサポートがあり、初心者にも使いやすい言語といえるでしょう。
JavaScript
JavaScriptはオブジェクト指向のプログラミング言語で、Webサイトのクライアントサイドやサーバサイド開発などに活用可能です。
ライブラリ・フレームワークの豊富さが特徴で、モバイルアプリ開発にも使われています。主要なブラウザには概ね対応していて、手軽にWebアプリのクライアントサイドを開発できるという側面もあります。
「Node.js」を活用してサーバサイド開発もできますが、メインとなる言語にJavaScriptを組み合わせた活用方法が主流です。
TypeScript
TypeScriptはJavaScriptを拡張した言語で、2014年にMicrosoftによって開発・発表されました。2017年にGoogleが社内の標準開発言語として採用したことがきっかけとなり、需要が拡大したと言われています。
TypeScriptはJavaScriptのコードに変換されるため、すぐに利用できることやJavaScriptライブラリが使用できる互換性の高さが特徴です。
加えて、大規模な開発プロジェクトでもエラーを防ぎやすい設計がされています。また、変数のデータ型をあらかじめ決めておいたり、1つの関数定義で異なるデータ型の引数を処理できるといった使い方も可能です。
Ruby
Rubyは、1995年にまつもとゆきひろ氏によって開発・リリースされた日本発祥のオブジェクト指向プログラミング言語です。
シンプルな文法でソースコードの記述量を減らせるのが特徴で、効率的かつスピーディーなシステム開発が行えます。
また、RubyはWebサービスのバックエンド開発、基幹システム開発など幅広い用途に使える汎用性も魅力です。とくに、Ruby on Railsとの組み合わせが有用で、Shopifyやクラウドワークスなどで活用されています。
ただし、実行速度の遅さがあるため、大規模なシステム開発には向かない言語と言えるでしょう。
COBOL
COBOLは1959年にアメリカで開発されたプログラミング言語で、大規模な電子計算処理や事務処理に向いています。
英語に近い構文を持ち、計算処理やバッチ処理に特化しているのが特徴です。COBOLは世界中のATMトランザクションや、商用トランザクションで広く使われていて、その信頼性が評価されています。
ただし、ソースコードが冗長であることや、技術者が不足しているという課題もあるようです。
基幹システムで使われる開発言語のトレンド
ここでは、基幹システムで使われている開発言語のトレンドを、4つの分野にわけて紹介します。
Webアプリケーション・サービスの開発で使われる言語
Webアプリケーション・サービスは、GoogleやYouTubeなどのWebブラウザを利用するアプリケーション・サービスのことを指します。
需要の高い分野であり、サーバサイドとクライアントサイドに分かれて開発されるのが一般的です。それぞれの領域で使用される代表的な言語は、以下のとおりです。
クライアントサイド
- HTML
- CSS
- JavaScript
サーバサイド
- Java
- PHP
- Ruby
- Python
モバイルアプリの開発で使われる言語
モバイルアプリは、iOSまたはAndroidを使用するスマートフォン・タブレット向けのアプリケーションです。そのため、Webのアプリ・サービスとは特徴が異なります。
モバイルアプリの開発言語は主にJava・C#・JavaScriptなどが利用されてきました。しかし、最近ではiOS向けとしてSwift、Android向けとしてJavaやKotlinを採用するケースが増えています。
ただし、SwiftはApple社公式のプログラミング言語であるため、Windowsで利用できない点には注意が必要です。
業務アプリケーションの開発で使われる言語
業務アプリケーションとは、企業向けの基幹システムや在庫管理システムなどを指します。
クライアントサーバシステムが主流であり、以下のようなコンパイラ型プログラミング言語が使用されるのが一般的です。
- Java
- C/C++
- C#
- Python(近年増加傾向)
汎用系業務システムの開発で使われる言語
汎用系業務システムは、行政機関や金融機関などで使用される基幹システムのことです。汎用機と呼ばれる専用の大型コンピューターを利用して開発を行います。
主にCOBOLで開発されている場合が多く、他のクライアントサーバーシステムへのリプレイスが難しいこともあり、そのままCOBOLの運用・保守が続けられているのが現状です。
一方、COBOLを扱えるエンジニアが減少したことで、新規開発案件が減少傾向にあります。
基幹システムで使われる開発言語の選定基準
ここからは、基幹システムで使用する開発言語の選定基準を5つみていきましょう。
開発するシステムに合わせて選ぶ
プログラミング言語にはそれぞれ個性や特性があるため、開発するシステムにあわせて選ぶことが重要です。
その時々で主流やトレンドはありますが、開発の目的を果たせて、作りたいものが実際に作れる言語を選定しましょう。
開発言語の特徴を基準に選ぶ
プログラミング言語の選定は、開発言語の特徴に基づいて行う必要があります。
たとえば、コンパイラ型は実行速度、汎用性、信頼性に優れています。ただし、最近ではインタプリタ型にも事前コンパイルが可能な言語が登場しているため、一概には言えません。
インタプリタ型は、即座にプログラムを実行できる利点がありますが、処理待ちが発生し実行速度が遅くなる可能性もあり、大規模システム開発に不向きな場合もあります。
言語によって特徴が大きく異なるため、開発したいものに適した特徴の言語を選びましょう。
自社の開発環境を基準に選ぶ
開発効率を高めるためには、自社の開発環境も確認しておく必要があります。
プログラムを作成するには、開発言語のほかにソフトウェアやハードウェアも必要です。基本的にはテキストエディタとターミナルがあればソースコードは書けますが、なかには統合開発環境(IDE)が提供されているものもあります。
データベースとの接続を基準に選ぶ
システム開発にはデータベースが不可欠です。ただし、開発したいシステムによって適切なデータベースは異なります。
データベースありきで言語を選ぶべきではありませんが、選定候補の開発言語とデータベースの相性については、事前に確認しておく必要があるでしょう。
言語の普及率を基準に選ぶ
言語の普及率を基準に選ぶとしたら、C・C++・Pythonなどが候補になります。特に日本国内ではC言語やC++の人気が根強く、多くの企業で採用されているのが実情です。
普及率の高い言語を選ぶことで、将来的にエンジニアの採用がしやすくなるメリットがあります。選定候補にある程度の自由度がある場合は、このような観点を加えるのもよいでしょう。
▷基幹システムを刷新する目的とは?刷新するメリットや失敗しない進め方
開発言語の特徴やトレンドを押さえて基幹システムを自作しよう
開発言語にはさまざまな種類があり、特徴・適性・できることが異なります。それぞれの開発領域によってよく使用される言語やトレンドがあるため、開発時の参考にするとよいでしょう。
本記事を参考に各言語の特徴やトレンドを押さえつつ、適切な言語を選定して基幹システムを自作しましょう。
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