業務委託の労務管理について|正社員との違いや注意点を解説!

最終更新日時:2023/07/13

労務管理システム

業務委託の労務管理

働き方の多様化により増加している業務委託。正社員などとは異なり、委託者・受託者が対等な立場である契約形態を言いますが、受託者の労務管理はどのように行えばよいのでしょうか。本記事では、業務委託の労務管理について、正社員との違いや注意点をあわせて解説します。

業務委託とは?

業務委託は、雇用契約に依存せずに行われる仕事の形態です。報酬は注文者から受けた仕事の成果物や、役務の提供に対して支払われます。

法的には「業務委託契約」という用語は適切ではありません。民法上では、請負契約や委任/準委任の契約といった契約形態のことを指します。また、これらを組み合わせた発注や、引き受けの方法を総称して「業務委託契約」と呼ぶことがあります。

正社員(雇用契約)との違い

業務委託と正社員(雇用契約)との違いは、主に以下の2つが挙げられます。

  • 使用従属性の有無(指揮命令権はあるか)
  • 労働基準法の対象か

業務委託契約では、委託する企業側から受託者(フリーランスや個人事業主など)への指揮命令権は発生しません。一方、雇用契約では雇用主が労働者に対して指揮命令権を持ち、労働者はその指示に従うことが求められます。

また、業務委託契約と雇用契約では、労働法の適用が異なります。雇用契約を結んだ労働者は労働法の保護を受けることができますが、業務委託契約を締結したフリーランスや個人事業主には労働法の保護が適用されません。

業務委託契約の種類

ここからは業務委託契約の種類について紹介していきます。

請負契約

請負契約は、請負人が特定の仕事を完遂することを約束し、注文者がその仕事の成果に対して報酬を支払う旨を約束することで成立する契約です。(民法第632条)

たとえば、ITベンダーが企業からプログラム制作を引き受け、完成したプログラムに対して報酬が支払われるという形態が該当します。

請負契約は、請負人が仕事を遂行しなかったり、成果物に不備があり契約目的の達成が困難である場合、注文者側が契約を解除する権利があるのが特徴です。

委任契約

委任契約は、一定期間にわたって特定の業務を遂行することに対して報酬が支払われる契約形態です。民法の第643条によれば、「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」とされています。

例としては、税理士や行政書士などが挙げられるでしょう。

また、請負契約が主に成果物や納品物の提供を目的としているのに対し、委任契約は業務の遂行そのものを目的としています。

準委任契約

準委任契約は、委任契約と同様に業務の遂行を目的とする契約形態を指します。(民法第656条)

委任契約が主に「法律行為」を行う契約であるのに対し、法律行為以外の事実行為を受託するのが準委任契約です。たとえば、システム保守、コンサルタント業務などが挙げられるでしょう。

また、2020年4月1日に施行された民法改正により、準委任契約には「成果完成型」と「履行割合型」の2つの類型が明示されています。

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業務委託契約を結ぶ際の労務上の注意点

業務委託契約を結ぶ際の労務上の注意点は、以下の4つです。

  • ワーカーに対する指揮命令は認められない
  • 他社の業務に従事することを制限してはならない
  • 契約によって報酬の算出方法が異なる
  • 偽装請負とみなされる可能性がある

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ワーカーに対する指揮命令は認められない

業務委託契約では、委託者は受託者に対して指揮命令権を行使することはできません。両者は対等な立場であり、受託者は自身の裁量で働く方法やスケジュールを決定できます。

したがって、企業はフリーランスに対して「毎日9時から17時まで働いてほしい」「リモートでなくオフィスでの作業を要求する」という具体的な指示は行えません。

また、ミーティングへの出席を義務付けることも不可能です。もし何らかの理由で指定が必要な場合は、互いの合意を得て、契約締結時に明確に記載する必要があります。

業務委託契約の労務管理においては、委託者と受託者の双方が互いの役割や責任を理解し、協力関係を築くことが重要です。明確なコミュニケーションや、作業内容の共有により、円滑な業務遂行が実現されます。

他社の業務に従事することを制限してはならない

業務委託契約を結ぶ際の注意点として、「他社の業務への従事を制限してはならない」ということが挙げられます。

業務委託契約では、受託者に対して自社に専属で働くように要求することは許されません。たとえ直接的な指示がなくても、他社との契約や仕事を制約するような状況が生じることは許されないのです。

報酬に固定要素が含まれたり、一社の業務での労働が160時間になってしまうなど、時間を大幅に費やすことによって他社の仕事が制約される場合、契約が雇用契約とみなされる可能性もあります。

業務委託契約を適切に実施するためには、受託者がほかのクライアントとの関係を維持し、複数の仕事を遂行できるようにすることが重要です。そのため、業務委託契約においては、独立性と自由度を確保することが求められます。

契約内容や報酬体系について明確に取り決め、受託者が他社との業務を制約されることなく自由に活動できる関係を構築しましょう。

契約によって報酬の算出方法が異なる

雇用契約では、時間単位や月給などの報酬体系が一般的です。しかし、業務委託契約は契約内容によって異なります。

請負契約では、成果物に対して、準委任契約(委任契約)では業務の遂行にかかった工数や作業時間に対して報酬が支払われます。業務委託契約の労務管理では、労働時間に応じて必ずしも報酬が発生するわけではない点を認識しておかねばなりません。

トラブルを回避するためにも、契約締結時に契約の種類や報酬の対象を明確にすることが重要です。どのような業務を遂行し、その対価としてどのような報酬が支払われるのかを明確にしましょう。

契約内容を明確化することで、トラブルや誤解が生じるのを未然に防ぐことができます。

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偽装請負になってない?違法な業務委託契約の判断基準

偽装請負とは、書類上は業務委託として契約しているのにもかかわらず、実際の働き方が労働者派遣に該当することを指します。近年、働き方の多様化によってフリーランスとして働く人が増えているということもあり、労働者保護の観点から偽装請負の取り締まりが強化されているようです。

ここからは、偽装請負になっていないかの判断要素や、代表的な4つのパターンを紹介します。

偽装請負かどうかを判断する際の要素

偽装請負に該当するかどうかは、当事者間の指揮命令関係の有無で判断されます。本来、業務委託契約では委託者から受託者への指揮命令はできません。

業務委託として契約しているのにもかかわらず、業務に関する細かい指示を行っていたり、働く時間や場所を指定するという実態がある場合、偽装請負と判断されることがあります。また、勤務規則の適用や定時が決められている場合なども、偽装請負に該当するので注意が必要です。

偽装請負の代表的な4つのパターン

厚生労働省東京労働局では、偽装請負の代表的なケースを以下4つのパターンに分類しています。知らないうちに偽装請負になっていたということを避けるためにも、どのようなケースが当てはまるのか、把握しておきましょう。

・代表型
請負と言いながら、発注者が業務の細かい指示を労働者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行ったりしています。偽装請負によく見られるパターンです。

・形式だけ責任者型

現場には形式的に責任者を置いていますが、その責任者は、発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、発注者が指示をしているのと実態は同じです。単純な業務に多いパターンです。

・使用者不明型
業者Aが業者Bに仕事を発注し、Bは別の業者Cに請けた仕事をそのまま出します。Cに雇用されている労働者がAの現場に行って、AやBの指示によって仕事をします。一体誰に雇われているのかよく分からないというパターンです。

・一人請負型
実態として、業者Aから業者Bで働くように労働者を斡旋します。ところが、Bはその労働者と労働契約は結ばず、個人事業主として請負契約を結び業務の指示、命令をして働かせるというパターンです。

引用元:東京労働局「あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ?

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業務委託の労務管理のポイント

業務委託の労務管理のポイントは、業務委託契約書を取り交わすことにあります。

業務委託契約書を取り交わす

業務委託契約書は、委託者(依頼する側)と受託者(委託を受ける側)との間で業務委託関係を明確にするために使用される文書です。この契約書には、以下の重要な事項が含まれます。

  • 契約期間
  • 業務内容
  • 報酬

それぞれ詳しく見ていきましょう。

契約期間

業務委託契約を締結する際には、契約期間を明確にしておきましょう。

どれくらいの期間契約を結ぶかを決めたら、その内容を契約書に明記します。長期的な業務委託が見込まれる場合は、契約期間の自動更新が行われることも記載しておくとよいでしょう。

さらに、契約違反があった場合に契約を途中解除できる旨を記載することも重要です。契約違反や重大な問題が発生した場合、委託者や受託者は適切な措置を取る必要があります。契約書に解除条件や手続きを明確に定めることで、トラブル発生時にも役立つでしょう。

業務内容

業務委託契約を締結する際には、発注する業務の内容や仕事量をあらかじめ決めておくことが重要です。業務内容が曖昧であると報酬の対価も不明確になる可能性があります。

しかし、発注先の能力やスキルを正確に把握することが難しい場合もあるでしょう。そのような場合は、相談しながら業務量を決定するのもひとつの方法です。

業務委託先と受託先が関連する企業であっても、基本的には範囲外の業務を無料で契約することは避けるのが適切でしょう。不審な要素を含んだ契約は、後にトラブルの原因となる可能性があるため、契約は厳格に行う必要があります。

また、業務委託契約では指揮命令権はないものの、進捗管理のために状況の共有を依頼することは問題ありません。業務の状況を把握するためにも、定期的な報告を受けながら管理しましょう。

報酬

業務委託では、請負契約と準委任契約の2つのタイプがあります。これらは、報酬の対価が「成果物」によるものか「労働」によるものかで異なります。契約を結ぶ際は、発注する業務がどちらに適しているかを判断しなければなりません。

とくに請負契約では、報酬の対価となる成果物が何を指すのかについて双方の理解が異なると、完成後にトラブルの原因になる可能性があります。

事前に成果物に対する理解を合わせ、契約時と納品時にそれぞれ確認することが重要です。また、追加で業務を発注する場合は、別途料金が発生することになるので、注意しましょう。

労務業務を効率化させる方法!業務改善のポイントとツール活用のすすめ

業務委託の労務管理を適切に行いトラブルを未然に防ごう

業務委託は、正社員などの労働者とは異なる関係性の契約形態です。外部に仕事を委託するため、使用従属性が生じないということを理解しておく必要があります。

また、契約上は業務委託であっても、労務の実態次第では雇用契約とみなされる場合もあるため注意が必要です。本記事で紹介したポイントを参考に、適切な労務管理を行っていきましょう。

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