ペーパーレス化の成功事例7選!事例から学ぶメリットや進め方のポイント

最終更新日時:2022/05/21

ペーパーレス

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テレワークの普及や働き方改革の推進に伴い、ペーパーレス化を取り入れる企業が増えています。今回はペーパーレス化の概要やメリット、企業がペーパーレス化に取り組む上で直面する課題、導入する際のポイントを説明します。また、7つの成功事例もあわせて紹介します。

ペーパーレス化の概要

まずはペーパーレス化とはどういうものなのか、普及が進む背景とあわせて解説します。

(1)紙の書類をデータ化して保存・使用すること

ビジネスシーンにおいては、紙媒体で運用していた文書や資料を電子化し、業務効率化やコストを削減することをペーパーレス化といいます。

特に、ペーパーレス化を通じて業務効率化を図ることで、企業業績向上や利益拡大に直結する改善も見込めるでしょう。

またSDGsが注目される今日にあっては、紙の使用を減らして環境保全への取り組みを強化することは、会社のイメージアップにもつながります。

(2)政府を挙げてペーパーレス化を促進している

ペーパーレス化に関わる関連法には、「e-文書法」(2005年4月施行)、「電子帳簿保存法」(1998年施行、2022年改正)などがあります。これらの法律は国税関係の書類などのデータ保存を認める法律です。後者の「電子帳簿保存法」については2022年に改正され、電子取引のデータ保存が義務化されるなど、政府によるペーパーレス化の推進が強化されています。

[出典:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」]

国の施策の一環としてペーパーレス化にスポットライトが当たったことや、ペーパーレス化が「働き方改革」にも直結することから、企業はペーパーレス化の導入に対して力を入れています。

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ペーパーレス化を推進する6つのメリット

企業はペーパーレス化を推進することで大きなメリットを得ることができます。ここでは主なメリットを6つ解説します。

(1)業務効率が上がる

ペーパーレス化を導入することで、業務効率の向上が期待できます。例えば、経費申請の場合、従来であれば作成した書類を印刷して、承認のために関係部署に回して、一人ひとりのハンコをもらわなければいけません。

一方、ペーパーレス化にして、経費精算システムやワークフローシステムを導入すれば、オンライン上で書類を回し、その場で承認が可能なので次々に関係部署へ送付できます。

紙ベースでの申請・承認をやめて専用システムを導入すれば、無駄なタイムラグも最小限に抑えられるので業務効率化が実現できるでしょう。

(2)管理コストを削減できる

ペーパーレス化を導入すると、紙の書類などを使わなくなるので管理コストを削減できます。

例えば、従来であれば紙代、印刷代、契約書・請求書の発送費用、書類の管理費など多くの費用が発生していました。これらをペーパーレス化すれば、管理コストを大幅に削減できるでしょう。

また、契約書や請求書に関しても顧客とデータのやり取りで完了するため、紙で残す必要もありません。書類の管理もデータ上で行えるので、書類の保管スペースや保管コストも削減できるでしょう。

(3)書類の検索が楽になる

ペーパーレス化を行い、今まで紙の書類で管理していた情報を全てデータ化することで書類の検索が格段に楽になります。

従来であれば、必要な情報を得るためにファイリングされた資料から探しだす必要があったり、古い資料を探し出すために倉庫や資料室から取り寄せるなど、必要な情報を探し出すのに時間や手間がかかっていました。

一方、ペーパーレス化を推進し、例えば情報をクラウド上で保管すれば、検索機能を使ってすぐに情報を探し出すことができるでしょう。データ検索が楽になることで、これまでよりも仕事の効率がアップすることは間違いありません。

(4)ログが残るため紛失リスクを減らせる

ペーパーレス化を行い、データ保存・管理を行えば、そのデータをいつ誰が閲覧して変更したかという履歴が確認できます。つまり、適切に管理すれば、基本的にはデータの紛失や消失が起こりづらいということです。

仮に紛失・消失した場合でも最後にデータにアクセスした担当者の履歴が残っているので、すぐに確認でき、適切な運用によって復元できる可能性も高まります。

(5)テレワークを促進できる

ペーパーレス化によって、あらゆる場所からデータにアクセスできるようになるので、テレワークの促進に役立ちます。

例えば、営業資料や報告書、見積書・契約書などをすべてデータ上で管理できるので、オフィスに出勤する頻度を減らすことができます。社内での申請・承認もクラウド上で行えれば、ハンコを押すための出勤が不要になります。

他にも、業務マニュアルをはじめとした資料類を電子化し、クラウドで管理すれば必要な時に必要な情報に簡単にアクセスできるようになります。

ペーパーレス化の推進は、テレワークの普及に直結するものであると同時に、働きやすい職場づくりにもつながります。

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(6)SDGSに取り組む企業というブランディングができる

ペーパーレス化に取り組むことで、SDGsに対して積極的に取り組む企業としてブランディングできます。

SDGsの17のゴールの中で、ペーパーレス化と最も関連性が高い項目は「つくる責任、つかう責任」が挙げられます。ペーパーレス化は、紙の使用を削減することにつながるので、環境に配慮した活動と言えるでしょう。

ペーパーレス化は業務の効率化だけでなく、企業イメージの向上にも寄与する取り組みのため、多くの企業がメリットを享受できます。

ペーパーレス化が進まない企業が抱える課題

ペーパーレス化には多くのメリットがありますが、思うように取り組みが進まない企業もあるでしょう。そのような企業が抱える主な課題を3つ解説します。

(1)自社のITリテラシーの低さ

ペーパーレス化が進まない理由として、自社の従業員におけるITリテラシーの低さに問題がある場合があります。

例えば、ベテランの従業員の中には、デジタル機器の扱いが不得意な人もいるため、従来の紙ベースの業務から変えたくないという強い反対の意見が出ることもあるでしょう。

また若手の中にもデジタル技術に対して、苦手意識がある人もいるでしょう。その場合には、新たに導入されたツールやシステムの利用に二の足を踏む場合があります。結果的に、せっかくシステムやツールを導入しても、部署内やチーム内での運用方法が以前のままということになってしまう可能性があります。

(2)システム導入コスト

ペーパーレス化を推進するには、システムやツールの導入が必要不可欠です。つまりペーパーレス化には初期投資が発生することになります。具体的なコストとしては、サーバーやインフラの環境整備からセキュリティー対策、そしてパソコンやタブレットの購入費などです。

ペーパーレス化を実行したからといって、すぐに目に見える成果や利益がでるわけではないので、意思決定者が中々投資に踏み出せないという課題もあるでしょう。

(3)業界全体がアナログ

ペーパーレス化が進まない理由として、その企業が所属している業界全体がアナログであるという課題が挙げられます。

例えば不動産業界など、紙での契約書が慣習化している場合は、自社だけがペーパーレス化を進めるのが難しいかもしれません。相手先のことを考えると、一社だけがすべての業務フローを電子契約に切り替えるのは現実的ではないと考えるでしょう。

リーディングカンパニーや周辺の関連企業など、業界をあげてペーパーレス化を進めなければ普及のハードルがいっそう高くなります。

ペーパーレス化を推進する際のポイント

ペーパーレス化を推進すればコスト削減からセキュリティー対策、そして企業イメージさえも向上させる可能性があります。そんなペーパーレス化を推進するためのポイントを3つ紹介します。

(1)自社内にペーパーレス化のメリットを周知する

ペーパーレス化を推進させるには自社内で、そのメリットについて解説し、理解を深めることが第一歩となります。

特に経営層がメリットについて詳しく理解することで、ペーパーレス化推進の勢いが増すでしょう。経営層はペーパーレス化を進めることで業務効率化や企業のブランディン形成に役立つことを知っておく必要があります。経営戦略の一つとしてペーパーレス化を進めることで、企業間競争で優位性を確保できる可能性もあります。

また、従業員を含めた全社的に、ペーパーレス化の必要性を周知させることも大切です。最終的に行動に移すのは従業員なので、メリットや効果はもちろん、意義や目的の共有も、ペーパーレス化の促進にとって大切です。

(2)スモールスタートでペーパーレス化を導入する

ペーパーレス化を推進する際に、最初からすべての業務で、紙ベースからデータ管理に切り替える必要はありません。

ペーパーレス化を頓挫させないためには、部署やプロジェクトなど業務ごとにペーパーレス化を導入しても良いでしょう。小さな区切りで活動する方が、従業員にとってハードルが低くなるため、結果や効果を検証しながら実行していく方法も検討してみましょう。

(3)取引先へ説明と同意を形成しておく

自社でペーパーレス化を進めたものの、取引先では対応できず、一部の業務でペーパーレス化ができないという問題も起こり得ます。

そうならないためにも、ペーパーレス化を推進するにあたり、取引先に対して事前に電子契約などのペーパーレス化に切り替えるという案内を通達しておく必要があります。事前に案内を済ませておくことで、相手先も早めの対応や検討が可能になるでしょう。

ペーパーレス化に成功した7つの企業事例

ここでは、ペーパーレス化を成功させた7つの事例を解説します。

(1)株式会社大和総研

株式会社大和総研は、大和証券グループのシステム、リサーチ、コンサルティング業務を展開しています。同社ではワークフローシステムを導入し、ペーパーレス化に成功しました。

システム導入前の課題として、独自のシステムでは対応できる業務の幅が狭く、さらに維持管理に限界がありました。また400種類もの申請書を紙で処理しており、時間や人件費が大きくかかっていたことも課題でした。

ワークフローシステム導入によるペーパーレス化を成功させたことで、承認や決済のスピード感がアップし、業務の標準化やデータ管理・活用にかかる作業効率が格段にアップしました。

(2)三菱UFJファクター株式会社

三菱UFJファクター株式会社は三菱ファイナンシャルグループでファクタリングや代金回収サービスを担う会社です。同社はワークフローシステムによって、申請書のペーパーレス化を成功させました。

具体的な効果として、申請から承認までにかかっていたリードタイムの大幅な削減を達成しました。導入前は紙ベースの文化が根強く残っており、ペーパーレス化によるデジタル管理が果たしてできるのかが不安でした。

しかし、ペーパーレス化に向けて、システムを導入したところ、システム自体が使いやすかったことで社員に受け入れてもらえ、スピーディーな改善に至りました。

(3)株式会社カオナビ

株式会社カオナビはクラウド人材管理システムの「カオナビ」を提供している会社です。

同社は電子契約サービスによって契約書のペーパーレス化を実施しました。進め方としてはスモールスタートを採用しており、まずは新規契約の書類からペーパーレス化を進めました。

導入前の課題としては、テレワーク中に顧客との契約書を結べないことがありました。また、事務担当者による契約書の確認や修正依頼に時間がかかっていたことも問題となっていました。

電子契約サービスの導入後には、顧客との契約でハンコがいらなくなったことでスピーディーに契約が進みました。また顧客からの満足度が上がったことに加えて、契約書にまつわる事務作業の手間が大幅に削減されました。

(4)株式会社ライフコーポレーション

株式会社ライフコーポレーションは近畿圏、首都圏でスーパーマーケットを展開する企業です。同社では会議実施にあたり、首都圏120名、近畿圏150名分の大量の書類が必要になっていました。準備する資料は莫大で、用意するための所要時間も担当者の負担となっていました。

そこでペーパーレス化の一環として、タブレットを用意し、会議資料をデータで共有することにしました。タブレット導入によって、店長会議では、毎月6万人分の印刷費+紙代+人件費が削減できました。

(5)ぺんてる株式会社

ぺんてる株式会社は日本を代表する総合文具メーカーです。同社では長時間の会議、紙ベースでの文書管理が負担となっていました。そこでペーパーレス化を実施し、iPadを導入しました。

以前は紙ベースで莫大な情報を管理していたため、書類が多かったり、管理が煩雑になっていました。

iPad導入後は、会議出席者に資料データを事前に送付できるようになったことで、従来は半日程度かかっていた会議が1.5時間程度に短縮できました。ペーパーレス化によって、印刷担当者の負担、会議に参加する人の負担が大きく改善されました。

(6)コニカミノルタビズコム株式会社(現コニカミノルタジャパン株式会社)

コニカミノルタビズコム株式会社(現コニカミノルタジャパン株式会社)はシステムを利用した企業の情報管理・運用の支援を行う企業です。同社では新しい働き方を推進するために、まずは働き方に関する社内調査を実施しました。

調査の結果、本来複数人で行うべき新しい企画を生み出す業務を一人で担当していたり、定型的な事務処理が多すぎることが課題として挙げられました。

そこでペーパーレス化を進めることで、業務効率化を図ることに成功しました。同時に、ペーパーレス化によって生まれたスペースを利用して、フリーアドレス制を導入。それにより、コミュニケーションを活発化させるオフィス環境を構築しました。

(7)西松建設株式会社

西松建設株式会社は国内外で土木、建設事業を展開している企業です。同社は社内会議用で用意する資料の削減をめざし、ペーパーレス化を導入することに決めました。

ペーパーレス化の実施後には、年間250万枚程度の印刷費を削減できました。また、会議前に資料を印刷して用意する業務を大きく削減できた点も導入効果の一つです。

成功事例を参考にペーパーレス化の実現へ

業務効率化やテレワークの導入、働き方改革の推進を実施する上で、ペーパーレス化は企業にとっての大きな課題の一つです。ペーパーレス化を成功させるには、まずは意義や目的、メリットなどについて全社的に周知させる必要があります。同時に、経営層が必要性を理解して、率先して進めていくことも重要です。

ペーパーレス化を実行しても、すぐには目に見えた利益を生み出すことはできません。課題とその解決方法を検討した上で、少しずつ進めるようにしましょう。

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