FAXが廃止できない理由は?ペーパーレス化を阻む壁や廃止する方法
DX化が叫ばれ「取引先がFAXの利用を廃止してしまった」「ペーパーレス化したい」といった声が聞こえてくる昨今、本記事では企業がFAXをやめられない理由やスムーズなペーパーレス化への移行方法を解説します。デジタル化のポイントについてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ペーパーレス化の障壁となる「FAX」
「ペーパーレス化を進めたいけどなかなか進められない」。ペーパーレス化が進まない原因の一つとして、今もFAXを利用していることを理由にあげる企業は少なくありません。
近年、FAXの利用を廃止してメールやクラウドサービスで書類のやり取りをする企業が増えてきましたが、なぜ多くの企業は今もFAXの利用を続けているのでしょうか。
本記事では、FAXを利用している企業がこの利用を廃止できない理由や、FAXを使い続けることのデメリット、そしてペーパーレス化する方法などを解説します。
FAXの利用を廃止できない5つの理由
FAXを利用し続けている企業が、FAXの利用を廃止できない理由は以下の5つが挙げられます。
- IT系の企業以外はデジタル化が浸透していない
- 多額の費用や社員教育が必要になる
- 取引先がFAXを使い続けている
- FAXに慣れていて抜け出せない
- 業界や職種によってはFAXのほうが使いやすい
1.IT系の企業以外はデジタル化が浸透していない
IT関連企業はペーパーレス化が進んでいる一方で、非IT企業ではデジタル化が浸透していない傾向があります。近年、経済産業省によりDX推進することが推奨されており、DX化が進まなければ、2025年には大きな経済損失が発生すると発表。
経済産業省によりDX推進することが推奨されており、DX推進が進まなければ数年後には大きな経済損失が発生してしまうと発表。これは「2025年の崖」と呼ばれ、2025年以降、毎年最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると試算されています。
このような状況下で、IT関連企業は社会の変化や顧客のニーズを捉えてデジタル化を進めていますが、一方、非IT化企業ではデジタル化が進んでいない傾向にあります。
デジタルリテラシーの低い非IT企業では、ITスキルを持つ従業員が少なく、デジタル化が浸透しづらいといった背景もあるでしょう。
これまでとは全く異なる方法で取引をすることに、顧客を失うのではないかといった懸念もあるかもしれません。このような理由からFAXを廃止できない企業があることも考えられます。
2.多額の費用や社員教育が必要になる
FAXの利用を廃止し、デジタル化を進める際には多額の費用や社員の教育が必要です。
デジタル化するには、これまでアナログで行っていた業務をデジタルで実施できるサービスやツールを導入する必要があります。サービスやツールを導入する際は、イニシャルコストや月々のランニングコストなどが発生するため、予算の問題もあるでしょう。
また、これらのサービスやツールを使いこなしてデジタル化を進めるには、社員教育も必要です。この教育にも費用や時間などさまざまなコストが発生することから、デジタル化に踏み出せない企業もあります。
3.取引先がFAXを使い続けている
取引先がFAXを使っている場合、この利用を廃止することは現実的ではないでしょう。自社ではデジタル化のサービスやツールを導入し、デジタル化を進めていても取引先がFAXを利用している場合、強引にFAXを廃止することはできません。
このように、FAXを利用している取引先が自社にとって主要であればあるほど、FAXの廃止は難しくなるでしょう。
4.FAXに慣れていて抜け出せない
数年前まではFAXを利用する企業が多数であったため、FAXの利用に慣れている従業員はまだ多いものと思われます。
また、日本の多くの企業ではハンコ文化が残っています。ハンコを押印した書類をスキャンしてメール送信する煩雑な業務より、書類をダイレクトに送れるFAXを利用したいという企業も少なくないでしょう。
このように、FAXの利用を廃止できない原因には、使い慣れたFAXを廃止して新しいツールを導入することへの煩わしさを感じ、抜け出せないというケースもあるのではないでしょうか。
5.業界や職種によってはFAXのほうが使いやすい
業界や職種によってはFAXを使う企業の方が多いといった実状もFAXの利用をやめられない理由の一つになっているでしょう。物流や製造業、卸売業などの業界では今もFAXの利用量が多く、多くの人がFAXを利用するのは当たり前と考える商習慣もデジタル化を阻む理由の一つになっているのかもしれません。
FAXは「手軽である」「ずっと利用しているので使い慣れている」といった声が聞かれるように、日本のビジネス文化に溶け込んでいることもあり、移行が進んでいないことも考えられます。実際に、日本の中小企業の約8割が今もFAXを利用しています。
FAXを使い続けた場合の6つのデメリット
FAXを使い続けることには以下の6つのデメリットがあります。
- 必要な時間や作業工程が長い
- 国の指針が痛手になる
- デジタル化の流れに乗り遅れる
- 誤送信や情報漏洩のリスクがある
- FAXを使い続ける際のコストがかさむ
- 災害が起きた際に利用できない・紛失するリスク
1.必要な時間や作業工程が長い
FAXを使い続けた場合、必要な時間や作業工程が長いというデメリットがあります。FAXを取引先に送り、レスポンスを得られるまでには時間がかかります。また、FAXを送るまでに必要な作業工程も複数あるため、手間もかかります。
このように、FAXを送る前・送った後それぞれの時間や作業工程が長いことが、FAX利用のデメリットとして挙げられます。
2.国の指針と逆行
FAXを使い続けることは国の方針から逆行することになってしまいます。経済産業省は、デジタル化を進めなければ、数年後には国全体に大きな経済損失が生じてしまうと発表しており、DX推進が推奨されています。
FAXを使い続けることはDX推進とは逆行しているともいえるでしょう。国もDX化を勧めているため、ゆくゆくはFAXを利用する企業が減少することも想定されます。
3.デジタル化の流れに乗り遅れる
FAXを使い続けることは、デジタル化の流れに乗り遅れることになります。近年、IT企業はもちろんですが、IT系企業以外でもデジタル化を進める風潮があります。そのため、FAXを廃止した企業と取引をする場合、取引相手の業務に支障が出てしまうこともあるでしょう。
また、デジタル化の流れに乗り遅れたことから廃業してしまう企業が存在するのも事実です。国の方針や変化を選ばないことでデジタル化の波に乗り遅れ、経営面でマイナスになることも懸念されます。
4.誤送信や情報漏洩のリスクがある
FAXを使い続けることには、誤送信などのリスクが伴います。さらに、紙の書類を管理する必要があるため、デジタル管理するよりも情報漏洩の懸念があり、セキュリティ面でのリスクが伴います。
FAXは一度送ってしまうと送信の取り消しをすることは不可能ですが、コミュニケーションツールやチャットを利用した場合、送信の取消ができるため、誤送信のリスクを低減することが可能です。また、書類もデジタルで管理でき、閲覧権限やパスコードの設定など情報漏洩を防ぐ機能も備わっています。
5.FAXを使い続ける際のコストがかさむ
FAXを使い続けることはコストがかさむというデメリットもあります。複合機を利用するには月々のリース代や用紙代、インク代などさまざまなコストがかかります。また、設置するにはスペースの確保も必要になるため、ある程度の広さがあるオフィスが必要になります。
これらのようにFAXを使い続けることは、諸々のコストやスペースといった間接的な費用を含めたさまざまなコストが発生するのです。
6.災害が起きた際に利用できない・紛失するリスク
災害が起きた場合、FAXが利用できなくなる、または紛失するリスクがあります。複合機は衝撃に強くはなく、災害で衝撃が与えられた場合、故障して利用できなくなる可能性もあります。
また、送信中に災害が発生した場合は情報が紛失することもあるでしょう。災害が起きた際、FAXには弱点があることも認識しておく必要があります。
FAXを廃止してペーパーレス化する6つのメリット
FAXを廃止してペーパーレス化をすることのメリットは以下の6つです。
- システムでデータの管理や活用が可能
- 労働時間が短縮
- 業務の効率化・可視化
- 社内DXの促進
- 職場の他の課題にも目が向く
- ツールの導入でFAX以外の便利な企業が利用できる
1.システムでデータの管理や活用が可能
FAXを廃止してペーパーレス化することで、システム上のデータ管理や活用が可能になります。さらに、データをインターネット上で管理することもできるようになります。このことによりデータの保管が楽になるだけでなく、資料がより探しやすくなったり情報漏洩のリスクを低減することも可能です。
また、OCRという手書きの文字を読み取るツールでデジタルの文字コードを生成するシステムを活用することで、これまで使用していた紙の資料をデジタル化することが可能になります。デジタル化に移行する際はOCRも活用することで、これまで使用した資料も利用できるようになります。
2.労働時間が短縮
ペーパーレス化することで作業時間の短縮につながります。紙を使用して事務作業をする場合、作業工程が多くなり時間がかかってしまいます。一方で、一方で、ペーパーレス化すると、PC上で全ての業務が完結し、さらに手間も省けるため作業時間を短縮することが可能となります。
3.業務の効率化・可視化
紙を使用して業務を行う場合、資料のやり取りが効率的とは言えませんでした。また、業務プロセスもブラックボックス化してしまい、誰がどの業務を行っているかわからないという状況が課題とされています。
一方で、ペーパーレス化しシステムを導入することで、業務をスピーディーかつ正確に実施できるため効率化が可能に。さらに、業務プロセスが可視化されるため、業務の進捗状況もその都度、確認できるようになります。
このような特徴のあるペーパーレス化を進めることで、タスクの配分や人員配置もしやすくなるというメリットもあります。
▷業務効率化・業務改善を図るアイデア17選!成功へ導く手法も解説
4.社内DXの促進
ペーパーレス化を進めることは、社内DXの推進に繋がります。ペーパーレス化をすることでパソコンだけでなく、スマホからも作業や確認をすることが可能に。さらに、スマホから作業や確認ができるようになることで、移動時間にも作業をすることができるのです。
また、データの一元管理や集約ができるため、資料を探す手間も省けます。このように、ペーパーレス化を進めることで、これまで以上にデータ活用することができたり、働き方を改善できたりすることから、社内DX促進が促進されるようになります。
5.職場の他の課題にも目が向く
ペーパーレス化を進めることで、職場の他の課題にも目が向くようになります。FAXを廃止せず、紙の資料を使用し続ける場合、業務プロセスが明確化・共有されないため、自分以外の課題に目を向けることは厳しい状況でした。
一方で、ペーパーレス化を進めることで、業務プロセスや結果が明確化・共有されるため、職場の他の課題にも目を向けられるようになります。そして、そして、課題が明確になれば、課題を解決することも可能でしょう。結果的に、業績の向上や社員のモチベーションアップにも繋がることが期待できます。
6.ツールの導入でFAX以外の便利な機能が利用できる
ペーパーレス化を可能にするツールを導入することで、FAX以外の便利な機能も利用できるようになります。複合機の機能はFAXやコピー、印刷をメインとしているため、他の業務に活用することはできませんでした。
一方で、デジタルツールを導入することで、資料の保管や共有、活用に役立つ便利な機能が利用できるようになります。これらの便利な機能を利用することで、FAXの手間を省けるだけでなく、さらに業務を効率化することも可能です。
企業がFAXを廃止してペーパーレス化する方法
ペーパーレス化に関心があり、推進したいものの方法がわからず、なかなか進まないという企業もあるのではないでしょうか。次に企業がFAXを廃止してペーパーレス化する方法を解説します。
企業がFAXを廃止してペーパーレス化する方法は以下の3つです。
- 自社に最適なFAXの代替案のアイデアを提案
- FAXを利用停止する前にOCRシステムを導入
- FAXの送受信を電子化するシステムを導入
1.自社に最適なFAXの代替案のアイデアを提案
企業がFAXを廃止してペーパーレス化するには、これまでFAXで行っていた業務に代わる方法を提案する必要があります。
パソコンを利用した仕組みの構築やチャット、SNSなどの利用、メールを活用したデータの送受信など、方法はさまざまです。さまざまな方法がある中で、自社にとって最適なものは何かを考えて提案することが重要です。
また、このような提案は自社のみならず、取引先にも実施できれば理想です。取引先の都合も考慮した上で、代替案を提案するようにしましょう。
2.FAXの利用を停止する前にOCRシステムを導入
FAXの利用がやめられないという企業には、これまでの資料の取り扱いや活用方法に課題があるのかもしれません。これまでの紙の資料はどこに保管すべきか、もう使用できなくなるのかなど、さまざまな懸念が生じるでしょう。
このような課題を解決するのがOCRシステムです。OCRシステムとは、紙の文字を読み取ることで、文字をデジタル化できるシステムを指します。
OCRシステムを導入することで、紙の資料のデータを蓄積、管理、活用することが可能に。FAXの利用を停止する前にOCRシステムを導入することで、これまで使用していた紙の資料も引き続き活用できるのです。
3.FAXの送受信を電子化するシステムを導入
今もFAXを利用する取引先が多い企業の場合は、FAXの送受信を電子化するシステムを導入することで、効率的に業務を実施することもできます。
FAXに関連する作業を電子化することにより、テレワークでもFAXの送受信が可能になるため、業務の効率化を図ることが可能となります。
このように、FAXには代替案が複数あるため、自社にとって適切な方法を選ぶことで、ペーパーレス化が実現し、業務の効率化を図ることが期待できます。
FAXを廃止してペーパーレス化する際の注意点
FAXを廃止し、ペーパーレス化することのメリットや方法について解説してきましたが、いくつか注意点があります。
FAXを廃止してペーパーレス化する際の注意点は以下の4つです。
- FAXの廃止は段階的に実施
- メリットを社内外の関係者に説明
- 過去のデータが紛失しないように注意
- 検討段階が長引いて失敗するケースが多い
1.FAXの廃止は段階的に実施
FAXの廃止は段階的に実施するようにしましょう。その理由は以下の3つにあります。
- 従業員や顧客の抵抗感を低減させながらペーパーレス化できる
- 次のシステムを導入する際の作業プロセスの負担を少なくできる
- 今後デジタル化を進めることを基本から考えることができる
一方で、最初から全てのFAXを廃止すると従業員の負担が増えたり、顧客の信頼を失ったりする可能性があります。まずは、業務の一部から段階的にFAXを廃止していくことがベターです。
2.メリットを社内外の関係者に説明
FAXを廃止する際、FAXを廃止することのメリットを社内外の関係者に説明することを忘れてはいけません。関係者はこれまでのFAXを使用した業務に慣れているため、FAXを廃止することに抵抗を感じる人がいることも考えられます。
そのため、このことに対するメリットの説明がなければ、慣れない作業に不満が生じたり、時には信頼を失うこともあるかもしれません。
このような事態を避け、FAXを廃止することに納得してもらうためにも、メリットを社内外の関係者に説明する必要があります。
3.過去のデータが紛失しないように注意
FAXを廃止する際、過去のデータが紛失しないように注意しなければなりません。FAXを廃止した場合、過去のデータの取り扱いに問題が生じる企業もあるでしょう。
このような企業は、積極的にOCRシステムを導入し、紙のデータをデジタル化することで、データの紛失を防ぎ、かつ資料を保管するスペースやコストを削減することも可能です。
4.検討段階が長引いて失敗するケースが多い
FAXを廃止する際、検討段階が長引いて失敗するケースが多いといいます。本当に廃止すべきか、廃止した後の運用をどのようにするか、過去のデータの取り扱いはどのようにするかなど検討すべき点が多いことは事実です。
しかし、検討する期間が長引くと、最終的に慣れているFAXに戻ってしまい失敗するといったケースも少なくありません。
このような事態を避けるためにも、FAXの廃止は段階的に進めるようにすることをおすすめします。状況に応じて次の施策を検討し、段階的にFAXを廃止するのがおすすめです。
FAXを廃止してペーパーレスにいち早く移行すべき
本記事では、DX推進に逆らうことになるFAXがなぜ廃止できないのかという5つの理由や、FAXを使い続けることのデメリット、ペーパーレス化することのメリットなどを解説しました。
今後、デジタル化の流れに乗り遅れないためにも、FAXを廃止してペーパーレス化に移行することが推奨されています。取引上、FAX利用を停止できないケースでは送受信の電子化も視野に入れ、DX化について考えてみてもよいのではないでしょうか。
FAXを使い続けた場合、企業にとっての経済損失が発生する可能性も高くなるため、段階的にデジタル化に移行しつつ、FAX利用の方向性を見直していきましょう。
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