ペーパーレス化が環境に与える影響とは?CO2削減効果や環境負荷について
環境負荷低減などを目的に、多くの企業が「ペーパーレス化」に取り組んでいます。しかし、ペーパーレス化によって、実際にどの程度のCO2削減効果が得られるのかは分かりづらい部分もあります。そこで本記事では、紙とペーパーレスでのCO2排出量を比較し、正しい環境保全の方法を解説します。また、おすすめのペーパーレス化の方法やシステムも紹介しますので参考にしてください。
目次
紙の利用が原因で起きる環境負荷
契約書や請求書などを紙媒体で保管している企業は少なくありません。また職場によっては、会議資料を毎回プリントアウトしているケースもあるでしょう。
紙媒体での運用が環境に与える負荷は、決して小さくありません。紙の運用における主な環境負荷の例は、下記の3つです。
- 森林伐採
- CO2の排出
- 紙の大量消費
それぞれどのように環境に負荷がかかっているのかについて解説していきます。
(1)地球温暖化の原因の1つは森林伐採
紙を作るためには、原料となる木材を確保するために森林を伐採します。紙の消費が増えるほど、木を大量に切ることになります。
このとき、森林伐採が急激に進んでしまうと、二酸化炭素を吸収する森林が減ってしまうため温暖化が進みます。
もちろん地球温暖化の原因は森林伐採だけではありませんが、環境に影響を与える要因の一つになっているという側面はあります。
(2)不要になった紙の焼却でCO2を排出
使用した後の紙はゴミ箱に入れられ、ごみ処理施設に運ばれて行きます。それらのほとんどは焼却処分されます。
焼却する際には二酸化炭素が発生するので、森林伐採とともに地球温暖化に影響を与えます。
1kgあたりの可燃ごみを燃やした場合、二酸化炭素が排出される基準値は0.34とされているため、単純にコピー用紙を1,000kg分燃やした場合、340kgもの二酸化炭素が出る計算です。
もちろんこれは1つの例に過ぎませんが、職場や家庭では毎日多くの紙ゴミが出されているので、焼却による環境負荷は無視できないものと言えるでしょう。
(3)日本人は年間202.7kgの紙を消費している
森林資源生産物に関する情報提供を行うRISI社が発表した2019年のレポートによると、日本の年間紙消費量は世界第6位です。
【国民一人当たり消費量】
- 1位:ベルギー 268.0kg
- 2位:スロベニア 264.6kg
- 3位:ドイツ 235.3kg
- 4位:オーストリア 227.0kg
- 5位:アメリカ 205.5kg
- 6位:日本 202.7kg
日本人は世界の中でも紙の消費量が多い国です。企業や学校、家庭などさまざまな場面で紙を使い、その一部を焼却処理していると考えると、CO2排出量を減らすためにはそもそもの消費量を減らす必要があると言えそうです。
ペーパーレス化により削減できるCO2排出量・環境への保全効果
紙の消費に関する一般的な環境負荷について解説をしましたが、次は実際にオフィスなどでペーパーレス化を行うことによって、どのくらい環境保全ができるのかを解説していきます。
(1)A4用紙1万枚をペーパーレス化すれば13.6kgのCO2を削減できる
オフィス内では、契約書や請求書などをはじめ、各種資料用の紙としてA4用紙を使用するケースが多いでしょう。
A4用紙は1枚が0.004kg(4g)になるため、1,000枚で4kg、10,000枚で40kgになります。例えば、社員・スタッフが100人いる企業で、10ページ1セットになった資料を一人ずつに配り、10回会議を行ったときに使用される量が10,000枚(40㎏)です。
40kgのA4用紙を焼却した場合、二酸化炭素排出基準値に当てはめると下記のような計算になります。
【A4用紙10,000枚】40kg × 【基準値】0.34 = 13.6kg(二酸化炭素排出量の目安)
ペーパーレス化を実施してA4用紙を10,000枚減らすだけで、二酸化炭素の排出量を13.6kg削減できます。
もちろんこの計算は単純な試算であり、実際にはペーパーレス化を行っても電力消費などで二酸化炭素は排出されます。
しかし、ペーパーレス化を行ってオフィス内での紙の使用量を減らすことは、紙の原料となる木材の伐採量軽減にもつながるため、森林の保護効果はあると言えるでしょう。
(2)A4用紙1万枚のペーパーレス化で木を1本保全できる
通常、1t(1,000㎏)の紙を作るのに20本の木が必要なので、木材10本で500kg、木材1本で50㎏の紙が作れる計算になります。前述のように、A4用紙10,000枚は紙40kgに相当します。A4用紙1万枚をペーパーレス化できれば、おおむね木が1本無駄にならないということになります。
ペーパーレス化を導入し、A4用紙10,000枚の消費を抑えることによる環境保全のロジックは下記のようになります。
A4用紙10,000枚の消費を抑える→A4用紙製造に必要な木1本を守れる→保全した木が空気中の二酸化炭素を酸素に変え、地球温暖化の加速を緩める
他にも、A4用紙10,000枚を製造する際に排出される二酸化炭素も抑えられるため、ペーパーレス化は環境保全に効果的です。
ペーパーレス化した場合の電力消費によるCO2排出量
ペーパーレス化に取り組むことによって二酸化炭素の発生を抑えることが可能ですが、データで保存する際の電力消費でも二酸化炭素が排出されます。
次はペーパーレス化を導入した場合の二酸化炭素の排出量について紹介していきます。
(1)100kwhの電力使用で44kgのCO2が発生する
ペーパーレス化に取り組むためにはさまざまな機器の導入が必要です。
機器の使用によって多くの電力を消費します。東京電力の試算(2022年度)によると、100kwhの電力を利用すると44kgの二酸化炭素を発生させます。
(2)ペーパーレス化に必要な機器の電力消費量とCO2排出量
ペーパーレス化に取り組む際に必要になる機器には、「サーバー」「パソコン」「タブレット」「モニター」などがあります。
<消費電力の例(1時間使用した場合)>
- サーバー:22.5w
- パソコン:12.5w
- タブレット:7.5w
- モニター:3.75w
20人規模の企業を例に、サーバーは24時間稼働、パソコン5台・タブレット5台・モニター5台は1日8時間稼働、それぞれの機器を20日間使用した場合の消費電力は下記のように試算できます。
【サーバー】
22.5w × 24 × 20日間 = 10800w = 10.8kwh
【パソコン】
12.5w × 8 × 20日間 × 5台 = 10000w = 10kwh
【タブレット】
7.5w × 8 × 20日間 × 5台= 6000w = 6kwh
【モニター】
3.75w × 8 × 20日間 × 5台 = 3000w = 3kwh
計:29.8kwh
上記の条件でペーパーレス化に取り組んだ場合、1ヵ月で29.8kwhの電力を消費します。よって、二酸化炭素の排出量は下記の通りです。
29.8kWH/100kWH(基準値)×44kg(基準値)=13.1kg
20人規模の企業が紙での運用をペーパーレス化に切り替える場合、この試算では、毎月13.1kgの二酸化炭素が排出されています。
人数や機器の導入規模で排出量は変わりますが、ペーパーレス化を実施したからといって二酸化炭素の排出がなくなるというわけではありません。
逆に、導入機器が多すぎると二酸化炭素の排出量が増えてしまう可能性があるため、事前のシミュレーションが大切になります。
ペーパーレス化した場合・しない場合のCO2排出量の比較結果
次に、「ペーパーレス化した場合」と「しない場合」の2つのパターンを比較していきます。
(1)電子機器を多く導入した場合はCO2排出量が増える可能性がある
ペーパーレス化による電子機器導入によって増えるCO2排出量と、10,000枚のA4用紙を使用した時のCO2排出量をまとめると、下記のようになります。
【ペーパーレス化実施】
13.1kg/月間
【A4用紙を10,000枚使った場合】
13.6kg/10,000枚
仮に、20人規模の企業で月間のプリント枚数が10,000枚程度であれば、わずかにペーパーレス化による環境負荷軽減の効果が得られます。
一方で、電子機器の導入を多くしてしまうと必要以上に二酸化炭素の排出量を増やしてしまう可能性があります。その場合には、ペーパーレス化が環境保全につながらないケースもあります。
(2)電力消費を抑えてペーパーレス化を進めることが重要
「ペーパーレス化=環境に良い」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、施策を間違えると環境負荷の軽減効果が低くなる場合もあります。重要なのは、紙の削減と同時に、適切な電子機器の導入によって電力消費を抑えることです。
ペーパーレス化は環境保全につながるだけでなく、業務効率化などにも寄与します。いずれの場合でも、やみくもにシステムを導入するのではなく職場環境に合う最適なものを選択する必要があります。
消費電力を抑えることが主目的なのであれば、使用機器を最小限に抑えるための導入計画を立てましょう。
今すぐ実践できる環境保全への取り組み5つ
電子機器を導入してペーパーレス化を進めることも大切ですが、環境保全のためにオフィスでできることは他にもあります。具体的な方法として、下記の5つの取り組みが挙げられます。
- 会議資料を両面印刷にする
- プロジェクター等を利用して資料を共有する
- 古紙回収・再利用する
- 不要な電力カットを心がける
- ペーパーレス会議システムなどを導入する
それぞれのポイントについて詳しく解説をしていきます。
(1)会議資料を両面印刷にする
業種や職場環境によっては、会議などの場で紙の資料を使わざるを得ない場合もあります。例えば、会議参加者がノートパソコンを持ってない場合や、共有モニターがない場合などが該当します。
そのようなケースで紙の使用量を減らすためには、会議資料を両面印刷で作成するのが良いでしょう。両面印刷によって、単純に紙の使用量を1/2に減らせます。また片面に2ページ分面付け(2in1)するなど、印刷方法を工夫することでもプリント枚数を減らすことができます。
(2)プロジェクター等を利用して資料を共有する
一人一台ずつパソコンを使っている企業では、デバイスの台数が多いほど消費電力と二酸化炭素の排出量が増えます。
そうした職場では、パソコンやモニター、タブレットの使用台数を減らすために、プロジェクターを使って資料を映すことで消費電力を抑えることが可能です。会議で使った資料は、アップデートしたものを会議後にメールやチャット等で送れば、簡単にデータ共有できます。
(3)古紙回収・再利用する
会議で使用した紙の資料やダンボール、業務で使った資料用の冊子やポスターなどは適切にリサイクルしましょう。事業所から出た古紙は分別することにより、再利用可能です。
引取先は自治体や業者などさまざまです。リサイクル可能な資源区分や回収期間も異なるので、全社でルールを共有して適切に実行しましょう。
(4)不要な電力カットを心がける
二酸化炭素の排出量を極力抑えたい場合は、節電の意識を心がけましょう。具体的な節電対策には次の4つの方法が挙げられます。
- オフィスで不要な電気を消す
- エアコンの温度設定をこまめに調整する
- モニターなどの省電力設定
- 使用していない機器の電源を落とす
他にも不要な電力カットの方法はたくさんあるので、オフィス内で工夫して省電力化を行っていきましょう。
(5)ペーパーレス会議システムなどを導入する
ペーパーレス会議とは、言葉からもイメージができるように紙を全く使用しない会議です。ここまで説明してきたように環境保全につながるだけでなく、印刷や配布の手間、印刷コストなども削減できます。
他にも、紙の資料の紛失などによって、重要な営業情報や機密情報が外部に洩れてしまう可能性もあります。セキュリティ面も強化できるため、プロジェクターや画面共有機能を使ったペーパーレス会議の導入も検討してみましょう。
環境保全にもおすすめのペーパーレス会議システム5選
最後に、環境保全はもちろん、スピーディーな情報共有やセキュリティ対策などの観点からも有用な、ペーパーレス会議システムを5つ紹介していきます。
(1)ConforMeeting/e
ConforMeeting/eはペーパーレス会議システムの中でも、特に操作性に優れている点で人気があります。
タッチ操作タイプなので直感的な操作ができるほか、手書きやページめくりはその場で参加者の画面にも反映され、会議に参加している人がスムーズに理解できるような仕組みになっています。マーカー機能も備わっており、重要なポイントを伝えながら会議を進められます。
会議情報は暗号化され、サーバーで一元管理できます。端末にデータを残さないので、資料の漏えい防止にも役立ちます。クラウドセキュリティ認証(ISO27017)を取得しているため、高水準のセキュリティが期待できるサービスです。
提供元 | NECソリューションイノベータ |
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初期費用 | 無料 |
料金プラン | ■基本サービス※1 30,000円(税別)1GB・10ユーザー ■追加ユーザー3,000円/1ID■追加ディスク5,000/5GB ※最低契約期間は6カ月 |
導入実績 | 記載なし |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
(2)ECO Meeting
ECO MeetingはExcelやWordなどの資料をPDFファイルに変換し、タブレットで共有できるシンプルなシステムです。専用アプリを使用し、資料へのマーカー書き込みやデータの同期がスムーズに行えます。
書き込んだ資料をブラウザにアップし、後から確認できるようにダウンロードが可能です。不正行為が行えないように、ログインから一定時間で強制ログオフされます。農協や金融機関、大学、医療機関など、さまざまな団体で利用されている実績からも安心できるシステムです。
提供元 | 株式会社エステック |
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初期費用 | 50,000円 |
料金プラン | ■アカウント費用 1,000円/1ID ■ストレージ費用1,000円/1GB |
導入実績 | 農協、金融機関、計測制御機器メーカー、医療機関など |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
(3)moreNOTE
moreNOTEはiPadやiPhone・Androidタブレットなど、さまざまなデバイスで使用できるペーパーレス会議システムです。同期機能が付いており、分からない箇所を一緒に確認しながら資料の共有・更新が行えます。
手書きメモやテキスト検索などの機能も搭載されています。会議資料を一か所にまとめられるため、紙では埋もれてしまいがちな内容もスムーズに検索できます。
提供元 | 富士ソフト株式会社 |
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初期費用 | 36,000円(税別) |
料金プラン | ■月額料金(税別) 1,200円/ID ■ディスク費用1,200円/GB |
導入実績 | 農協、放送業、自治体、金融機関、大学など |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
(4)Poly G7500
Poly G7500はノイズキャンセル機能が付いているペーパーレス会議システムで、直感的に操作できる点も好評。会議資料などをワイヤレスでスピーディーに共有できるのも特徴です。
周りの音をしっかりと拾ってくれるため、同じ空間で会議を行っているような臨場感のある時間を過ごせます。会議の進行がスムーズになり必要以上に会議が長引かないため、消費電力の削減効果が期待できます。
提供元 | POLY |
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初期費用 | 無料 |
料金プラン | 要相談 |
導入実績 | 記載なし |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
(5)SmartMeeting
SmartMeetingはカレンダーと議事を自動連係できる便利なペーパーレス会議システムです。面倒な閲覧権限の設定が不要で、データをフォルダへ格納する必要もありません。カレンダー機能と連携しているため、日程調整もスムーズに行えます。
通知機能もついているほか、他のツールと連携を行って情報共有ができます(Google ChatやChatworkとも連携予定)。簡単なタスク機能も付いているので、業務効率化も期待できるシステムです。
提供元 | 株式会社SmartMeeting |
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初期費用 | 200,000円 |
料金プラン | 要相談 |
導入実績 | 電気通信業、情報通信業など |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
ペーパーレスと省電力で環境保全も考慮したビジネスへ
ペーパーレス化を考えた場合、単純に紙の使用を抑えればいいと考える人も多いですが、ペーパーレス化を行うために機器をたくさん導入してしまうと必要以上に二酸化炭素が排出されます。
環境保全を意識してビジネスを行う場合、導入するシステムの種類や数を最適化することが求められます。例えば、ペーパーレス化を進める上では「ペーパーレス化会議システム」を利用するのも1つの手です。会議資料や報告書などの印刷枚数が減らせる他、スピーディーな情報共有も期待できます。
企業活動において環境保全の重要性が増す中、具体的な取り組みを進めるためにはまずはペーパーレス化に着手してみてはいかがでしょうか。その際には、紙の使用量削減とともに、省電力化も意識しましょう。
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