日本の労働生産性はなぜ低い?海外との比較や低い理由について解説

最終更新日時:2022/07/30

生産性

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先進国の中で最低の状態が続いている日本の労働生産性。しかし、一体なぜここまで日本の労働生産性が低くなってしまったのでしょうか。本記事では、その理由や海外との比較、そしてどうすれば日本の労働生産性を向上させられるのかなど詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

労働生産性とは?

労働生産性とは、生産過程で生み出された労働の効率のことをいいます。労働力や時間という資源からどれだけの成果が得られたのかを数値化したもので、従業員1人または1時間あたりで産出される成果を指しています。

また、労働生産性には「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の2種類があります。労働量に対し、どの程度の成果があげられたかを数値化するこの2つは、それぞれの対象が異なっています。

「物的労働生産性」は、投入した労働量に対してどれだけの生産量や販売金額が得られたかを測る指標です。

一方で「付加価値労働生産性」は、投入した労働量に対して、どれだけの人件費や営業利益といった付加価値を生み出したかを測る、粗利に近いものです。

日本における労働生産性の現状

日本は海外諸国と比較して、労働生産性が低い傾向にあります。労働生産性の測定方法や海外との比較などから、日本の現状についてみていきましょう。

労働生産性の測定方法

前述した2種類の労働生産性は、測定方法が異なります。

種類計算式
物的労働生産性生産量÷労働量
付加価値労働生産性付加価値÷労働量

このとき、労働量は「労働者数×労働時間」で表されますが、労働者数のみで計算し、1人あたりの生産性を測定する場合もあります。

海外との比較・推移

2021年に公益財団法人日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較 2021」で、日本の労働生産性は以下のような結果となりました。

種類数値(ドル)各国とのランキング(OECD加盟38か国のうち)
時間あたりの労働生産性49.523位
1人あたりの労働生産性78,65528位

上記の結果は、7カ国の主要先進国のなかでも最下位の水準で、1970年以降この状況が続いています。また、時間あたりの労働生産性でいえば、日本はアメリカの6割程度にとどまっています。

[出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較 | 調査研究・提言活動」]

[出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」]

国際社会から見た日本の現状

製造業者が多い点など日本とよく似た産業構造を持つドイツの労働生産性は国際比較で8位。主要先進国のなかでもアメリカに次ぐ順位に位置します。

また、ドイツの年間労働時間は平均約1,363時間ですが日本の平均年間労働時間は約1,680時間となっており、年間で300時間以上ドイツを上回っています。ドイツでは、労働者が所定時間内で業務を終わらせる文化が根付いており、それが高い労働生産性の要因になっているといいます。

また、労働生産性の向上にはICTへの投資も欠かせませんが、主要先進国中で最も高い労働生産性を誇るアメリカはICT関連の投資に注力しています。

日本の労働生産性の低さは「年間労働時間の長さ」が原因のひとつと示唆され、この課題をどのように解決すべきかが問われています。

業種別の違い

海外の国々と比較した際に、日本の労働生産性が低いことは事実ですが、すべての業種において低いというわけではありません。労働生産性の高い業種には、「不動産業」「金融業」「電気・ガス・水道業」などが挙げられます。

しかし、労働生産性の低い業種があることも事実です。労働生産性の低い業種としては、「飲食業」「宿泊業」「医療」などが挙げられます。

これらのように、サービスを中心とした産業は人手不足の傾向があり、生産性を高めるための計画を立てにくいといった課題があるのです。

日本の労働生産性が低い理由

日本の労働生産性が低い理由は2つあると考えられています。まずは、労働量が多いことです。1つの仕事に携わる人数が多いほか、「残業が多い」「休暇が少ない」などが挙げられます。

  • 労働1時間あたりの労働生産性 = 生産量 /(労働者数×労働時間)

上の式によって1時間あたりの労働生産性が計算されるため、働く時間が長いほど分母が大きくなり、労働生産性が下がるのです。日本の労働生産性が低い理由は、労働時間の長さが要因と分析されています。

2つ目は、成果に相当する報酬や待遇が得られにくいことです。日本では、長きにわたって年功序列が続いてきました。そのため、若いうちは成果をあげても、成果に相応しい報酬や待遇を得ることが難しいといった側面があります。

昨今、年功序列という考え方は、働き方改革や価値観の多様化によって、多くの企業で見直されつつあります。

日本の労働生産性向上に必要な取り組みとは?

では、日本の労働生産性を向上させるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。ここでは、働く人の意識改革の必要性や、IT技術の導入に焦点を当てて見ていきましょう。

従業員の意識改革

労働生産性を向上させるには、従業員一人ひとりの意識や能力を高めなければなりません。そのため、各従業員に「限られた時間のなかで成果をあげる」という意識を持たせる必要があります。

また、労働生産性を向上させることがいかに重要かを伝えることも大切です。労働生産性を向上することで企業が得られる効果を伝え、結果を出した従業員に対して報酬や待遇を見直すなど、改善につなげましょう。

そのためにも、定期的な研修やスキルアップをサポートする制度の導入が効果的といえるでしょう。

IT技術の導入

業務にIT技術を導入することで、業務効率化や業務内容の可視化が可能です。業務のなかには、手動でなくてよいものもあります。ITツールを利用することで、迅速さやミスの軽減など期待できるため、IT技術を積極的に活用することがおすすめです。

また、手動での業務をサポートするITツールもあります。IT技術に任せられる部分は任せ、労働力の有効活用につなげましょう。

ICTをはじめとしたIT技術の導入が、生産性向上に大きな役割を果たします。従って、IT技術を活用するための環境整備やスキルを向上するための取り組みは欠かせません。

日本の労働生産性向上は最優先事項の課題

日本は諸外国と比べて労働生産性の低さが課題であり、その要因は労働時間の長さにあるとされています。企業が労働生産性の向上に取り組むためには、働く人の意識改革やIT技術の導入を視野に入れ、取り組みを進めるとよいでしょう。

労働人口の減少が加速している今、生産性を上げることの重要性について社内全体で共有し、労働生産性を向上させることは、最優先に取り組むべき事項であるといえます。

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