【SDGs】学校における取り組み事例を解説!学校教育への必要性とは
近年、多くの関心が寄せられるSDGsですが、学校教育の一環としてSDGsの目標達成や、意識の向上につながる活動を取り入れている学校もあります。具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。本記事では、学校で行われているSDGsに関する取り組みの紹介と学校教育への必要性を解説しています。
目次
学習指導要領にも「持続可能」のキーワード
学習指導要領とは、国内のどの地域の学校であっても、一定水準の教育が受けられるようにするため、学校教育法などの関連法に基づいて文部科学省が定めた教育課程(カリキュラム)の基準のことです。
この学習指導要領は、小学校、中学校、高等学校などで個別に定められていますが、いずれの要領にも「持続可能な社会」のキーワードが、数多く記載されています。このことからもSDGsの取り組みが、教育界でも重要視されていることがわかるでしょう。
実際に、SDGsだけでなく、地球が抱える問題を自分事として捉え、自ら解決するための行動を起こせる力を身につけるための教育である「ESD(持続可能な開発のための教育)」の取り組みが実践されています。
まずは、SDGsとESDのそれぞれの意味をおさらいしておきましょう。
SDGsとは?
「SDGs(Sustainable Development Goals)」は、日本語で「持続可能な開発目標」と訳されています。SDGsは、「誰一人取り残さない、持続可能な開発目標」として2015年9月に国連総会により採択されました。
地球温暖化による環境の変化や人種・男女間における差別、貧困による教育格差など、社会・経済・環境に関する17の世界目標と169の達成基準が構成され、2016年1月から2030年12月までの15年間で達成することを目指しています。
ちなみに、日本におけるSDGsへの取り組みの達成度は、国連加盟165カ国中19位となっています。
[出典:Sustainable Development Solutions Network「Sustainable Development Report 2022」]
ESDとは?
一方の「ESD(Education for Sustainable Development)」は、「持続可能な開発のための教育」として、SDGsの考え方を子どもたちにも理解してもらい、持続可能な社会を支える人となってもらうための教育現場における取り組みとされています。
学校教育法では、学力の3要素として、「知識・技能」、「思考力・判断力・ 表現力等」、「主体的に学習に取り組む 態度」が定義されていますが、この中でもESDは、SDGsを達成するために自ら解決に向けた行動を起す「思考力・判断力・ 表現力等」を身に付けるための教育と認識しておくとよいでしょう。
SDGsの取り組みは学校教育において必要なのか?
教育政策に関する総合的な国立の研究機関である国立教育政策研究所は、SDGsの実践力を高める方法のひとつとしてESDを教育現場に取り入れることを提唱しています。
SDGsの考え方と重要性について、幼少期から知っておくことによって、世界で起こっている問題を身近なこととして考え、行動する力が身につくと期待されています。
小学校で行われた取り組み事例
では、実際の教育現場では、ESDとしてどのような取り組みが行われているのかをみていきましょう。まずは、小学校における取り組み事例をご紹介します。
北海道石狩市立生振小学校
石狩市立生振小学校は、郷土を愛する心や食に関する適切な思考力・判断力を育てたいとの考えから、「つくる」「育てる」「食べる」という一連の体験ができる農業・自然観察・地域交流を学校活動に取り入れています。
農業では、児童が実際に米作りや野菜作りを行い、生育観察から収穫・加工に至るまでを体験しました。このような活動を通して、自然や地域社会に対する理解や、教科横断的な学びが深まる効果があったとしています。
東京都江東区立八名川小学校
江東区立八名川小学校は、ESDの取り組みにおいて数々の受賞歴を持つ学校です。同校では、まず「誰一人取り残さない教育」の方針のもと、画一的ではなく、一人ひとりの視点や気づきを重視し、目標意識を引き出し、児童が相互に認め学び合うスタイルの定着を目指しています。
また、児童が問題意識を持つことからスタートし、各自で調べて、自分の意見をまとめ、伝え合うというカリキュラムを取り入れ、正解のない課題に対する問題解決力を高める教育にも力を入れました。
宮城県気仙沼市立大谷小学校
宮城県の気仙沼市立大谷小学校では、同市立大谷中学校と合同で、地域の自然保護活動「大谷ハチドリ計画」が行われました。気仙沼市では害虫による「松枯れ」や海藻が育たなくなる「磯焼け」が問題となっていました。地域の自然保護と復元のために、一人ひとりができることに取り組む。これが「大谷ハチドリ計画」です。
また大谷小学校では、住み続けられる街づくりとして、環境保全だけでなく地域の経済を支える一次産業を学ぶ機会として、稲作体験や海藻の生態調査が授業に取り入れられました。
中学校で行われた取り組み事例
次に、中学校での取り組み事例をご紹介しましょう。
相模原市立鳥屋中学校
相模原市立鳥屋中学校では、3年生を対象に、気候変動の深刻さを自分事と考えるための、2019年に発生した「東日本台風」を題材にしたSDGsの講義が行われました。
また学園祭では、3年生全員が「ぼくたちはどう生きるか 〜SDGsを通して〜」と題した発表を一人ずつ行なっています。発表は、貧困、ジェンダー問題、水の衛生、食糧問題、ごみ問題など、SDGsに関連する身近にある問題を生徒たち自身で調査し、自分達でできることを考察するという内容でした。
三輪田学園中学校
東京都千代田区にある三輪田学園中学校では、生徒会によるTable for TwoやWFP(国連世界食糧計画)、UNICEF(国連教育科学文化機関)、国際赤十字、国境なき医師団などへの活動協力など、さざまな活動行われています。
また、SDGsに関する読書やレポート課題、大学講師による講義、国際問題を国連会議の形を模して議論する「模擬国連」など、多様でユニークな活動にも力を入れています。
桜美林中学校
東京都町田市にある桜美林中学校は、ユネスコスクールに加盟し、SDGsに向かい合う教育を実践しています。
防災をテーマに東北支援活動や他校との学習交流を行う「さくらプロジェクト」に取り組み、プロジェクトの一環で、「みやぎ防災ジュニアリーダー養成研修会 東日本大震災メモリアル」にも参加しています。また、募金や寄付活動など、国際的な貧困の解消や教育格差の是正などに貢献しています。
高校で行われた取り組み事例
最後に、高校で行われた事例を3つご紹介いたします。
武田高等学校
広島県東広島市の武田高等学校では、SDGsそのものへの理解を深める活動や、食をテーマにした授業、委員会や学園祭での実践・発表など、様々な角度から取り組みが行われています。
2022年度は、グループでの探求学習や、「ペットボトルキャップの回収」、「クラスTシャツをフェアトレードの製品に」、「子供服の回収」など生徒発のプロジェクトが進められています。
こころ未来高等学校
こころ未来高等学校は全国各地から入学可能な長崎県初の広域通信制高等学校で、多様性を尊び、生徒の多様なニーズに応えることのできる教育環境の整備に努めています。
同校では、SDGsの目標に挙げられている「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」が主なテーマです。SDGsを実践するにあたって、まずは教員研修を実施。理解を深めた上で、校内のスタジオから全国の生徒にSDGsに関する授業を届けています。
また、「誰一人として取り残さない」を実現するため、「校内居場所カフェ」の設置やNPO法人と連携したボランティア活動を展開しています。
啓明学院高等学校
兵庫県神戸市にある啓明学院高等学校は、少人数ゼミでの学術研究を通してSDGsへの関心を高める活動が行われています。
特筆すべきは、文献を通して世界で起こっている貧困などの問題を知るだけでなく、実際にフィールドワークを行ったり、解決するためのビジネスプランを立てたりすることで、SDGsへの関心を高める活動です。近年では、ミャンマーを貧困から脱却させる具体的な方法について検討が行われました。
また、英語の授業でもSDGsをテーマとし、各自で研究を行い、英語でプレゼンテーション、スピーチ、あるいはディベートを行うカリキュラムがあります。
学校で取り組みを行う際の注意点
SDGsへの取り組みは、子どもたちが「問題解決のために自分ができることを見つけ、行動を起こせる力」を身につけることにその目的があります。「SDGs」を学ぶことだけが目的とならないよう注意しましょう。
また、SDGsに自然と興味関心が持てる生徒ばかりではありません。経験したことのない問題を自分事として捉えることが難しい生徒もいるはずです。押し付けとならないよう、子どもたちが自ら考え、主体性を持てる環境と工夫が大切です。
未来を担う子どもたちにもSDGsを広めよう
持続可能な社会づくりのためには「持続可能な社会を実現するための人材」が必要です。
日本の目標達成進捗は次第に遅れつつある状況であり、これを改善し、推進していくには、国民一人ひとりがSDGsの重要性を理解し、問題を自分事としてとらえ解決できるようにしなければなりません。
このような背景から、地球の未来を担う子どもたちへのESDの実施が国の教育方針としても示されています。既に複数の学校でロールモデルとなるような素晴らしいSDGs活動の実績が挙げられつつあり、これらを参考にさらなる活動の拡大や活発化が期待されています。
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