サステナブルとは?意味やSDGsとの関係性・関連語を具体例で解説
近年耳にする機会が増えているサステナブル。地球や社会への配慮を指す言葉として使われていますが、はたしてサステナブルの本当の意味とは何なのでしょうか。本記事では、そんなサステナブルについて、意味やSDGsとの関係など詳しく解説していきます。
目次
サステナブルの意味とは?
サステナブルとは、sustain(持続する)とable(〜できる)を合わせた言葉で、持続可能という意味です。環境保全やエコの文脈でサステナブルが使われるときは、「持続可能な社会を実現するための取り組み」といった意味合いになります。
環境破壊、資源の枯渇、人口増加など、世界は多くの問題に直面しています。現在の大量生産・消費型の経済が続くと、社会活動はやがて限界を迎えるでしょう。
そのような危機を前に、環境へのダメージや資源の消費を最小限に抑え、持続可能な社会を目指そうという声が強くなりました。そこで生まれたのがサステナブルという考えです。
サステナブルな社会では、未来の世代に負債を負わせずに、将来も豊かな生活を続けられる経済活動を目指します。そのためには、環境を保護し、資源を維持できる社会の実現が必要です。
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サステナブルとSDGsの関係性
サステナブルとSDGsは、しばしば同じ文脈で語られます。ここからは、これら2つの関係性について解説していきます。
SDGsとは?
SDGsは持続可能なよりよい世界を目指す国際目標で、2030年までに達成することを目標に2015年の国連サミットで採択されました。SDGsには17のゴールが設定されており、それらは大きく分けて3種類に分類できます。
1つが貧困・飢饉・教育問題といった、社会全体の改善が必要となる「社会面の開発アジェンダ」です。2つ目が、エネルギー・資源の活用、労働環境・働き方の改善、不平等の是正などの「経済アジェンダ」です。3つ目が、環境保護や気候変動への取り組みをおこなう「環境アジェンダ」です。
日本でもSDGsの目標達成を目指して、官民一体となった取り組みがおこなわれています。また、消費者のSDGsへの関心が年々高まっていることから、SDGsに力を入れる企業も増加しています。
サステナブルとSDGsの関係
SDGsもサステナブルも、目指している方向は同じです。両者の違いは、サステナブルは一般的な理念であり、SDGsは目指すべき目標という点です。
サステナブルは「持続可能」を意味する、抽象的な考えです。社会活動が継続しておこなえるような取り組みや仕組みなどを包括した、広い概念といえるでしょう。SDGsは、そのようなサステナブルな社会を目指すための具体的な目標です。
言い換えるなら、SDGsはサステナブルという概念をベースに提案された目標ということになります。
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サステナブルな暮らしが社会で求められている背景
サステナブルな暮らしが必要だと言われていますが、このような声が強くなったのには、いくつかの理由があります。ここでは、その理由について解説します。
環境問題
サステナブルな暮らしが求められる理由のひとつが環境問題です。現在、世界にはさまざまな環境問題が累積しています。
代表的なものが、世界的な気候変動です。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)によると、2011〜2020年の世界の平均気温は、工業化前と比べて約1.09℃も上昇しています。気温の上昇は今後も続き、気候対策を講じなければ今世紀末までに3.3〜5.7℃上昇すると予測されているのです。
これは石油や石炭などの化石燃料の燃焼によって、二酸化炭素が発生したことが原因とされています。
このまま地球温暖化が進めば、熱波、大雨、干ばつといった異常気象が増加し、人類だけでなく、生態系にも深刻な影響を与えると危惧されています。
また、工場からの排水やゴミの投棄などが原因で、土壌汚染・水質汚染なども深刻です。このような環境問題を放置すると、将来的に人間が生活できない環境となってしまう恐れがあります。
[出典:全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)「温暖化とは?地球温暖化の原因と予測」]
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資源の枯渇
資源の枯渇も深刻な問題です。人類は社会活動をおこなうために、さまざまな資源を利用しています。
例えば石油や石炭は、地下に埋まった動植物が何億年もかけて変化したものです。そのような資源を、人類は大量に消費し続けています。特に石油の枯渇が迫っており、一説によると、あと40年ほどで石油が尽きると指摘されています。
技術の発達によって採掘できる石油量が増加しているため、実際の枯渇はもっと先になる可能性もありますが、それでも石油資源は有限です。まだ石油を利用できる内に、我々は石油依存の社会から脱却する必要があります。
また、地下水の枯渇も深刻です。現在、世界の食料の約半分が、乾燥した地域で生産されています。そのような地域では、主な水源を地下水に頼っています。しかし、インドやパキスタン、アメリカなど、世界のさまざまな地域で、地下水の枯渇が危惧されています。
特に、アメリカのカリフォルニア州では、2030年代には地下水が枯渇する地域が出てくると予測されているのです。地下水が枯渇すると、世界的な食糧不足を招くだけでなく、地盤沈下などの災害を引き起こす危険があります。
このように、人類は地球の資源を急速に消費してきているため、資源がなくなるのは時間の問題と考えられています。この差し迫った状況に対応するためにも、サステナブルを意識した取り組みが必要です。
[出典:ナショナル ジオグラフィック「地下水が危機、今世紀半ば18億人に打撃」]
労働者の人権問題
世界中で起こっている人権侵害も深刻な問題です。貧困、争乱、難民など、さまざまな形で人々の生命と尊厳が脅かされています。
例えば、企業による労働者への人権侵害が懸念されています。労働者に過剰な労働を強いたり、過酷な環境においたり、不当な差別をおこなう企業はあとを絶ちません。
このような問題を放置してしまうと、次第に問題が大きくなり、対処が困難になる可能性があります。人権侵害が常態化するような社会は、人々の安定した生活を困難にするため、サステナブルな社会の目指すものと反します。
人々が将来にわたってよりよい生活を享受するためには、不当な人権侵害は是正される必要があるのです。
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サステナブルの関連語|社会での活用事例
サステナブルな社会の実現のために、さまざまな形で持続可能な社会を目指す取り組みがおこなわれています。ここでは、代表的な事例を5つ見ていきましょう。
サステナブルフード
地球環境や社会に配慮して生産された食品をサステナブルフードと呼びます。環境面に配慮したサステナブルフードとして挙げられるのが、オーガニックフードです。
オーガニックフードは、農薬、化学肥料、殺虫剤を使用せずに栽培されるため、環境への負担が少ないとされています。サステナブルフードを購入する消費者の動きが増えていくことで、環境問題の解決に貢献することが可能です。
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サステナブルファッション
サステナブルファッションは、環境に配慮した衣類の利用方法のことです。衣類にはコットンなどの天然繊維や、ポリエステルのような人工繊維が使用されます。このような材料を調達し、服を製造するまでには大きな環境負荷が発生しているのが現状です。
環境省によると、服1着に換算してCO2の排出量が25.5kg、水の消費量は2,300リットルにも匹敵します。そのため、少しでも環境負荷が少なくなるような取り組みが大切です。
個人で実行可能な取り組みとしては、長く着られる服を利用する、古着を購入する、着なくなった服を買い取ってもらう、などの方法があります。企業の場合は、長く着られる服の製造、リユース市場の活性化、適正な在庫管理などが有効な取り組みです。
このように、衣服を長く利用し、捨てる際もリサイクルするといった取り組みが、サステナブルファッションでは推奨されています。
サステナブルコーヒー
サステナブルコーヒーは、コーヒーを生産している開発途上国の環境問題や労働者に配慮したコーヒーです。
コーヒーの原産地は、おもに中南米、東南アジア、アフリカ諸国といった開発途上国です。生産されたコーヒー豆の多くは、先進国で販売されます。そのため、先進国でのコーヒー価格の変動で、小規模な工場や労働者の生活が脅かされるという問題があります。
そこで、立場の弱い開発途上国の生産者が不利にならないように考えられたのが、フェアトレードという制度です。フェアトレード基準では、コーヒーの最低価格が設定されています。生産者は安定した収入を確保できるため、教育や社会の活性化に繋がるのです。
また、フェアトレードには環境に関する基準が設けられています。フェアトレードの認証を受けた生産者は、農薬の削減、有機栽培を奨励するなどして、環境負荷の軽減に努めているのです。
フェアトレードコーヒーを購入することで、コーヒー生産者の生活を豊かにし、環境に優しい生産体制に貢献できます。
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サステナブルツーリズム
サステナブルツーリズムとは、経済・社会・環境への影響に配慮した観光のことです。観光客の多い地域では、観光によるゴミや排ガスの増加で環境破壊が起きています。また、騒音や渋滞などで、地域の生活に悪影響を与えていることも問題になっているのです。
このような状況を放置すると、地域の文化や自然が破壊され、観光産業が継続できなくなる危険があります。サステナブルツーリズムでは、観光資源を守るための取り組みがおこなわれており、具体的には観光客の入場制限、車の排ガス規制などです。
個人で取り組めるサステナブルツーリズムも考案されています。例えば、エコバッグを持ち歩く、交通手段として自転車などを利用するといったものです。
サステナブルシーフード
サステナブルシーフードは、海洋資源の健全性を維持するために、持続可能な漁獲方法で得られた水産物です。
世界的な人口増加にともない、海洋資源の需要はますます高まっています。このままでは、魚介類が減少し、生態系に大きな悪影響を与えてしまうと危惧されています。
MSC(海洋管理協議会)は、MSC漁業認証規格を策定し、持続可能な海洋資源利用の方法を定めました。MSC漁業認証規格には3つの原則があります。
- 健全な状態にある水産資源のみを漁獲する
- 将来にわたって漁獲を継続できるよう、水産資源の適切な管理をおこなう
- 生態系への影響を最小限に抑える
このような規格に準じた方法で漁獲されたものが、サステナブルシーフードです。サステナブルシーフードを選んで購入することは、海洋資源の保全に繋がります。
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サステナブルな社会を実現するためのエシカル消費とは?
サステナブルな社会の実現のためにできる行動として、エシカル消費という考えがあります。エシカル消費とはどのようなものなのか、具体的に説明していきます。
必要なのはエシカル消費
エシカル(ethical)は英語で「倫理的、道徳的」という意味です。エシカル消費とは、法律や利益などではなく、倫理的な観点で商品やサービスを選択することを指します。
一般的な価値観では、消費者は価格が安い、質が良いといった、商品そのものの価値で購入するものを選びます。しかし、そのような選択には、商品の製造過程が考慮されていません。そのため、一般的な消費行動は、企業の環境破壊や過酷な労働の抑止力にはならない性質があります。
サステナブルな社会の実現のためには、消費者が倫理観や道徳観をもとに、持続可能な事業をおこなっている企業の商品を選択していく必要があります。これがエシカル消費です。
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エシカル消費のメリット
エシカル消費の大きなメリットは、企業が自発的にサステナブルな社会を目指した事業をおこなうという点です。
消費者が従来の価値観に加えて、倫理的な考えをもとに商品を選択すれば、企業もそれに合わせて事業方針を変更します。例としては、環境負荷の低い方法で原料を調達する、労働者の人権に配慮した労働環境を整備する、といった取り組みです。
また、そのような企業のサステナブルな活動が重要視されるようになると、企業活動の透明性が高くなるメリットが生まれます。企業の取り組みは外部から見えないため、消費者からすると、本当にサステナブルな活動をおこなっているかわかりません。
そのため、企業は認証機関などを利用して、本当に効果のある活動をおこなっていることを第三者機関に保証してもらいます。このような認証制度を通すことで、消費者は企業の活動が見えるようになるのです。
エシカル消費が消費者に浸透することは、サステナブルな社会の実現の助けになります。
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サステナブルな社会に向けてできること
サステナブルな社会を実現するための取り組みについて、個人・企業のそれぞれでできることを紹介していきます。
個人でできるサステナブルな取り組み
個人でできる取り組みは非常に些細なことではありますが、継続して取り組んでいくのが大切です。ここからは個人でできる取り組みについて紹介していきます。
サステナブルへの理解を深める
もっとも大事なことは、サステナブルへの理解を深めることです。サステナブルを理解することで、現在の社会の問題は何か、そのためにどのような取り組みがおこなわれているかがわかるようになります。
正しい理解は、サステナブルな社会の実現のために、自分が何をすべきかを考える指針となるでしょう。サステナブルを理解するには、外部省のSDGsのプラットフォームから学ぶのがおすすめです。SDGsは具体的な取り組みにまで踏み込んでいるため、わかりやすく、学習に最適なものになっています。
[参考:外務省「JAPAN SDGs Action Platform」]
サステナブルな商品を購入する
サステナブルな商品を選ぶエシカル消費は、企業のサステナブルな事業活動を促進します。
どれがサステナブルな商品かわからない場合は、ラベルに注目してみましょう。オーガニック認証マークや、国際フェアトレード認証ラベルがついているものは、認証機関からサステナブルな商品だと保証を受けています。
また、古着のようなリユース製品も、サステナブルな商品です。ひとつの製品を多くの人が長く使うことは、商品製造時に発生する環境負荷の軽減に繋がります。
ごみの量を増やさない選択をする
ごみの量を増やさないことも、サステナブルな取り組みになります。すぐに実行できるのが、エコなパッケージを選ぶ方法です。従来は、肉や魚は発泡スチロール製のトレーで梱包されていましたが、最近はフィルムで真空パックされたスキンパック包装が広がり始めています。
スキンパック包装はゴミが少なくて済む、消費期限が延びるなどのメリットがあるため、サステナブルな社会実現に貢献する包装方法です。そのほかにも、「消費できないほど商品を買いすぎない」といった小さな取り組みも、継続によって大きな効果に繋がります。
生活排水に気をつかう
料理・お風呂・洗濯などの生活排水は水源を汚してしまう原因となります。大量に洗剤を利用したり、料理で使った油をそのまま捨てたりするのは避けるべきです。
そのため、不用意に洗剤を使いすぎない・脂はそのまま流さないなどの対処をするようにしましょう。また、固形のものもそのまま流さずに可燃ごみとして処理するのも大切です。
▷SDGsの目標達成のためにできること|簡単にできる身近な取り組みを紹介
企業でできるサステナブルな取り組み
企業単位でサステナブルに取り組むことは、個人の取り組みとは違い、規模が大きくなるため社会にも大きなインパクトをあたえられます。ここからは、企業でできる取り組みについて紹介していきます。
環境への負担を低減する取り組みを行う
事業所で節電を呼びかける・エコカーを社用車乗り換えるなどは、事業を継続する中のサステナブルの取り組みの一つです。
これらの企業でのサステナブルな取り組みを企業HPやSNSでPRすることによって、ブランディングやイメージアップにも寄与します。現時点で自社の設備を見直し、サステナブルな取り組みができないか考えてみましょう。
働きやすい環境を整える
産休や育休を取得できる環境を整える、フレックス制度や時短勤務を採用するなど、従業員が働きやすい環境を整えるのも企業ができるサステナブルな取り組みの一つです。
性別や年齢、置かれている状況に関わらずに幅広い人が働きやすい環境を用意し、プライベートと仕事のバランスを保てるようにするのも大切な取り組みの一つでしょう。
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サステナブルな社会に向けてできることから始めていこう
資源を大量に消費する社会は、いずれ限界がやってきます。将来にわたって我々が社会生活を営んでいくためには、サステナブルな社会の実現が必要です。
サステナブルな取り組みと聞くと、再生可能エネルギーやリサイクルなど、企業がおこなうものに注目しがちです。しかし、個人で実行できる取り組みも数多くあります。例えば、古着を利用したり、エシカル消費を実践するといったことです。
サステナブルな取り組みは、社会に生きるすべての人が参加するものです。今の自分のライフスタイルに合わせて、自分に何ができるのかを考えてみましょう。
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