ダイベストメントとは?活発化する背景やESG投資との関係について

最終更新日時:2023/03/15

SDGs

ダイベストメントとは

近年さらに注目を集めているESG活動。投資の分野でも広がりを見せている中、個人や企業において注目されているのが「ダイベストメント」です。本記事では、そんなダイベストメントについて、ダイベストメントとは一体何なのか、活発化している背景とメリットなどを詳しく解説していきます。

ダイベストメントとは?

ダイベストメントとは、個人や企業が特定の企業に対して株式・投資信託・債券などで投資あるいは融資している資金を回収したり止めたりすることをいいます。

銀行口座に預金しているお金を引き出すことも、大きく捉えればダイベストメントにあたり、「investment(投資)」の反対語として使われることが多い言葉です。

近年は、ESG(環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance))に配慮している企業に投資する「ESG投資」が積極的に行われるなど、地球温暖化などの環境問題や人権問題や差別などの社会問題、法令遵守など企業の管理体制などに対して世間の関心は高まっています。

企業もこの傾向を読み取り、ESGを意識した事業を展開する必要がありますが、中には温暖化の原因になっている化石燃料に関連した事業を行っていたり、社会貢献に消極的な企業や、ガバナンス体制が整っていない企業も存在します。

したがって、最近では、このようなESGに配慮していない企業から投資・融資している資金を引き上げるという意味でダイベストメントを使うことが多くなっています。本記事でも、ダイベストメントはこの意味を前提として解説します。

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ダイベストメントが活発化している背景

ダイベストメントが活発化している背景としては、ESG投資の規模拡大だけでなく、座礁資産のリスク回避の動きの広がりもあります。

ここでは、ダイベストメントがなぜ注目を集めているのか、その背景を見ていきましょう。

ESG投資の規模拡大

前述したとおり、近年では環境問題や社会問題、企業の管理体制といったESGへの関心が高まっており、ESG金融市場の規模が拡大しています。

世界持続可能投資連合(GSIA)が公表したデータによると、2020年におけるESG投資額は35兆3000億ドルと、2018年から約15%も増加しています。

ただし、国内では再生可能エネルギーに対する投資自体は活発化しているものの、残念ながらダイベストメントの動きはかなり遅れているのが現状です。ドイツの環境NGOウルゲワルドが発表した調査でも、石炭開発事業者へ融資を行った銀行のうち、融資額の世界トップ3を日本の銀行が独占していたことからも明らかです。

参考:「朝日新聞デジタル世界のESG投資、15%増え3880兆円 2020年

座礁資産化リスクの広がり

「座礁資産」とは、社会環境や市場が変わることで価値が減少してしまう資産のことをいいます。

地球上にある石油や石炭などの化石燃料は、生活する上で必須となる資源ではあるものの、すべてを活用するのは難しいと現在考えられています。

それは、化石燃料は温室効果ガスである二酸化炭素を多く排出すると言われており、人類が排出する温室効果ガスには、地球温暖化を抑制するためにある一定の上限が設けられているからです。

したがって、化石燃料は将来「座礁資産化」のリスクがあり、化石燃料や化石燃料を活用した事業を行う企業価値は減少すると考えられていることから、これを回避するためにタイベストメントが活発化しているというわけです。

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ダイベストメントを行うメリット

これまで述べてきたとおり、環境問題や社会問題に配慮している企業に投資するESG投資に対して、ダイベストメントはESGに配慮していない企業から資金を引き上げる行為です。

それでは、ダイベストメントを行うことによって、個人や企業が得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

ここではダイベストメントを行うメリットを、個人の場合と企業の場合に分けてお伝えします。

個人におけるダイベストメントを行うメリット

個人で行うダイベストメントには、株式・投資信託・債券などの金融資産の回収や、銀行預金の回収などがあります。

ダイベストメントを個人が行う大きなメリットは、「近年の地球温暖化などの環境問題解決や人権問題などの社会問題解決に向けて、間接的に参加できる」という点です。

石炭・石油などの化石燃料を活用して事業を行っている企業や、社会問題に配慮してない企業など、ESGに配慮しない企業に対して投資するということは、結果として環境汚染や差別などの社会問題を容認していることになります。

また、預金している銀行自体が環境汚染している企業に投資している場合、自分も間接的にその企業を支援し環境汚染を容認していることになってしまいます。

それは、銀行が預けられた金銭を資金として、外部に投資しているためです。したがって、個人がダイベストメントを行うことによっても、環境問題や社会問題の解決のために間接的にはなりますが貢献できますしている。

そして、回収した資金でESGに積極的に取り組む企業に新たにESG投資を行うことが可能です。

企業と異なり個人だと小規模であまり意味がないようにも見えますが、それが集まれば影響力も大きくなるため、個人においてもダイベストメントを行うことはとても重要といえるでしょう。

企業におけるダイベストメントを行うメリット

企業がダイベストメントを行うと、個人よりも動く金額が大きいため、その分影響も当然大きくなります。そして、ダイベストメントを企業が行う場合、「財務リスクを軽減できる」というメリットを得られます。

座礁資産への投資は、これまで述べたとおり、今後の成長が見込みにくいため、株価の低下などによる投資資金の減少が予想され、投資資金を回収できず自社の資産の減少につながる大きなリスクがあります。

したがって、座礁資産関連のESGに配慮しない企業への投資についてダイベストメントを行うことによって、そういった財務のリスクを大幅に軽減できるでしょう。

また、ダイベストメントは一般社会に対しても、ESG活動に積極的に取り組んでいることをアピールできます。

ESGに配慮しない企業から撤退し、環境問題や社会問題貢献に対して積極的に取り組んでいる企業であることを外部にアピールできれば、企業イメージも向上するでしょう。

そして、回収した資金で、ESGに積極的なESG銘柄に投資すると、一般社会に対してさらに強力なメッセージとなります企業がダイベストメントを行う場合、多くのメリットがあることを覚えておきましょう。

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ダイベストメントを行うデメリット

確かに、ダイベストメントを行った企業や個人は、環境問題や社会問題に積極的に取り組んでいるということをアピールできるでしょう。

ダイベストメントを実施された企業は、ESGに対する取り組みが不十分で環境を汚染する企業などと、企業イメージは悪化するリスクがあります。

そして企業イメージの低下だけでなく、株価の下落や融資まで拒否される可能性もあり、経営資金の減少は企業にとっては事業の存続にも関わるほどの大きなダメージとなります。

今後化石燃料に関連した事業を行っている企業や、社会貢献度が低い企業は、経営面で難しい舵取りを迫られることでしょう。

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ダイベストメントの事例

これまで述べてきたとおり、ダイベストメントを実行することで、個人も企業もさまざまなメリットを受けられます。日本と海外に分けて、ダイベストメントの有名な事例をいくつか見ていきましょう。

日本の事例

日本ではいまだに化石燃料をメインとしたエネルギー政策をとっているため、世界と比較すると、ダイベストメントが遅れています。しかし、このようにESGに対する意識の遅れが感じられる日本においても過去にダイベストメントの事例はいくつかあります。

2018年に大手生命保険会社の日本生命と第一生命が、それぞれダイベストメントを行ったのがそれで、各社はダイベストメントを実施し、ESGを重視する姿勢を表明しました。

また、日本の個人の投資家の約3割がESG投資を意識したり、いくつかの企業が石炭に関わる事業からの撤退を表明するなど、徐々に日本でも脱炭素などESGに対する意識が高まっているといえるでしょう。

参照:「国際環境NGO 350 Japan:日本の3メガバンクが石炭産業への融資総額で未だ世界のワースト3を独占

参考:「野村證券:地球のために、今できること

海外の事例

海外では、ダイベストメントが活発に行われています。

アメリカに本店を置く世界最大の資産運用会社、「ブラックロック」は2020年に今後の資産運用にESGを重視することを表明しました。

具体的には石炭関係の企業に対して、ダイベストメントを行うことや、リスクも抑えて投資できるESG関連の上場投資信託を拡大することなどを挙げています。

またフランスの「BNPパリバ・アセットマネジメント」は、売上の10%以上が燃料炭の企業を2020年より投資対象から除外することを表明しました。

なお、BNPパリバ・アセットマネジメントはこれまでも、たばこや武器に関係する企業に対してダイベストメントを行っており、ESGに積極的に取り組んでいる企業と言えるでしょう。こうした大手企業の動向により、今後は更にダイベストメントの動きが世界中で加速すると考えられます。

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ダイベストメントに対して企業が行うべき対策とは?

世界はESGを重視する流れになっているため、企業側も積極的にESGに取り組むと同時にそれをアピールする必要があります。

具体的には、化石燃料を活用している企業については徐々に化石燃料への依存度を減らしていく、有害な商品・物質を扱う企業については新たに無害の商品開発を行うなど、企業努力が急務です。

そうすることで、企業はダイベストメントを回避できるだけでなく、ESGに積極的に取り組んでいることを社会にも認められ、新たな資金源を確保することにつながる可能性もあります。

しっかりとしたESG活動が、ダイベストメント対策にもなり、結果的に頑丈な経営基盤を築くことにつながるでしょう。

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ダイベストメントを防ぐためにESG経営を推進していこう

ESGを重視し、ESG投資が拡大していく世界の流れは、地球温暖化などが懸念されている今日では今後ますます加速することが予想されます。

したがって、自社を守り発展させていくためには、ESGが重視されてきた背景を含めた理解とESG活動への積極的な取り組みが欠かせません。

もし、ダイベストメントが行われてしまうと、資金面でのダメージだけでなく、企業イメージの低下という大きな代償を負うことにもなります。

したがって、本記事を参考に、対外的にもしっかりとESGに配慮した経営を行い、それをアピールして、世界の流れから取り残されないようにしましょう。

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