システム開発で利用できる補助金と助成金|申請方法や注意点
システム開発費用を抑えるためには、補助金や助成金の活用がおすすめです。国や地方自治体がさまざまな制度を実施しているため、事業内容に合ったものを選びましょう。本記事では、システム開発で利用できる補助金と助成金について、申請方法や注意点を詳しく解説します。
目次
システム開発で利用できる補助金と助成金
システム開発で利用できる補助金・助成金には以下のようなものがあります。
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助
- 業務改善助成金
なお、情勢の変化などに伴い、制度や申請枠の名称・内容などが変更される場合があるため、公式サイトで最新の内容を確認してください。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、中小企業や小規模事業者に対し、生産性を向上させるための設備投資やサービス導入を支援する補助金です。
この補助金は、新しい技術や設備の導入、サービスの改善などを通して、生産性の向上や事業の持続可能性を高めることを目的としています。
対象となる事業は、製造業・商業・サービス業など幅広く、申請には一定の条件を満たす必要があります。また、大幅賃上げを行うかどうかによって補助額の上限が変動するのが特徴です。
なお、2024年に18次公募は締め切られています。今後の日程については公式サイトで確認してください
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 |
省力化(オーダーメイド)枠 | 750万〜1億円 |
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製品・サービス高付加価値化枠(通常類型) | 750万〜2,250万円 |
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製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型、DX・GX) | 1,000万〜3,500万円 | 2/3 |
グローバル枠 | 3,000万〜4,000万円 |
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[出典:全国中小企業団体中央会「ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト」]
IT導入補助金
「IT導入補助金」は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際にかかる費用の一部を補助する制度で、業務効率・生産性・売上などの向上を目的としています。
IT導入補助金の交付を受けたい場合は、ITツールの導入計画を作成し、事前に申請する必要があります。
申請枠 | 補助額 | 補助率 |
通常枠 | 5万〜450万円 | 1/2以内 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 30万〜350万円 | 50万円以下の場合
50万〜350万円以下の場合:2/3以内 |
インボイス枠(電子取引類型) | 350万円以下 |
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セキュリティ対策推進枠 | 5万〜100万円以下 | 1/2以内 |
複数社連携IT導入枠 ※導入対象や事業者の規模による | 〜3000万円以下 | 1/2〜4/5 |
[出典:TOPPAN株式会社「IT導入補助金2024(令和5年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)」]
事業再構築補助金
「事業再構築補助金」は、コロナ禍による経営環境の変化に対して、新しい分野への進出・事業転換・業態転換などによる事業再構築を目指す企業の支援を目的とした補助金です。
新型コロナウイルスに関する状況は刻々と変化しており、公募を重ねるなかで申請枠の名称や条件が変更される可能性があるため注意しましょう。
申請枠 | 補助額(上限) | 補助率(短期に大規模な賃上げを行う場合) | |
成長分野進出枠 | 通常類型 | 1500万~7000万円 |
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GX進出類型 |
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コロナ回復加速化枠 | 通常類型 | 1000万~3000万円 |
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最低賃金類型 | 500万~1500万円 |
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サプライチェーン強靭化枠 | 3億~5億円 |
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[出典:株式会社パソナ「事業再構築補助金」]
小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む際の経費の一部を補助する制度です。
商工会議所の管轄地域内で事業を営む小規模事業者が対象で、補助金の交付を受けるためには、経営計画の策定と事前の申請が必要です。
申請枠 | 補助額(上限) | 補助率 |
通常枠 | 50万円 | 2/3 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 2/3 ※赤字事業者は3/4 |
卒業枠 | 200万円 | 2/3 |
後継者支援枠 | 200万円 | 2/3 |
創業枠 | 200万円 | 2/3 |
[出典:小規模事業者持続化補助金事務局「全国商工会連合会 小規模事業者持続化補助金(一般型)」]
業務改善助成金
「業務改善助成金」は、中小企業や小規模事業者が生産性向上のために設備投資やコンサルティングの導入、人材育成などを行い、事業場内最低賃金を引き上げた場合に、その費用の一部を助成する制度です。
この助成金は、設備面の拡充と労働条件の改善という両面の向上を同時に実現することを目的としています。助成金の交付を受けるためには、すべての従業員の賃金を新たな最低賃金以上に引き上げるなどのルールに従う必要があり、実際に賃金を引き上げた人数によって助成金額が変動するのが特徴です。
コース区分 | 事業場内最低賃金引き上げ額 | 助成上限額 | |
事業場規模30人以上 | 事業場規模30人未満 | ||
30円コース | 30円以上 | 30万〜120万円 | 60万〜130万円 |
45円コース | 45円以上 | 45万〜180万円 | 80万〜180万円 |
60円コース | 60円以上 | 60万〜300万円 | 110万〜300万円 |
90円コース | 90円以上 | 90万〜600万円 | 170万〜600万円 |
[出典:厚生労働省「業務改善助成金」]
各自治体の補助金・助成金
ここまでに紹介した補助金・助成金は国が用意しているものであり、これらとは別に、各自治体でも補助金や助成金を用意している場合があります。
それぞれの内容や条件、金額などは各自治体によって異なるため、自社所在地の自治体の公式サイトなどで確認してみるとよいでしょう。
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システム開発で利用できる補助金と助成金の申請方法
ここでは、システム開発で利用できる補助金と助成金の申請方法を6つのステップで解説します。
申請したい補助金・助成金を選ぶ
まずは申請したい補助金・助成金を選びましょう。
公募を受け付けている補助金や助成金はその時々で異なりますが、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」で全国の公募を検索できます。公募の条件と自社の状況を照らし合わせて、申請できるかどうかを確認してください。
システム開発の見積もりを取る
続いて、システム開発にかかる費用の見積もりを取りましょう。これは、開発スケジュールや申請に必要な情報を集めるためです。
見積もりを取ってから補助金・助成金を探すことも可能ですが、その開発が条件に合致するとは限らないため注意が必要です。
補助金・助成金の公募要項を確認する
見積もりを取ったら、補助金・助成金の公募要項と改めて照らし合わせて確認しましょう。条件を満たしているかどうかを慎重に確認し、満たせていない条件がある場合は早めに対応・調整する必要があります。
必要書類を準備し申請をする
申請の条件を満たしていることが確認できたら、必要書類の準備を始めましょう。申請する補助金・助成金によって準備する書類・提出する窓口・期日・提出方法などが異なるため、十分注意が必要です。
採択通知を受け取り交付申請を行う
無事申請が通った場合には、採択通知が届きます。通知を受け取ったら、記載の内容に従って交付申請を行いましょう。
申請した事業を実施し補助金の交付を受ける
最後に、申請した取り組みを実施し、必要事項をまとめて実際に補助金の交付を受けます。実施報告の内容に問題がなければ、金額の確定と交付が行われる流れです。
▷システム開発とは?開発手法や工程・依頼時の注意点を簡単に解説
システム開発で利用できる補助金と助成金を申請する際の注意点
システム開発のために補助金・助成金を申請する際の注意点を5つ解説します。
補助金・助成金は後払いである
補助金・助成金は原則的に後払いであることに加え、交付が完了するまでには数か月単位の時間を要するのが一般的です。
つまり、多くの場合、補助金・助成金の交付よりもベンダーへのシステム開発費の支払いが先になるため、自社で立て替えられるだけの資金を用意しておく必要があります。
申請期間外の経費は対象外になる
申請期間外に支払った経費は補助・助成の対象外になるため注意が必要です。
原則として、補助金や助成金は申請した期間中に発生した経費のみが対象となります。申請を行う前に経費を支払った場合や、指定の方法以外で支払いを行った場合などは、補助・助成の対象外となる可能性があるため十分注意しましょう。
申請書の準備に手間がかかる
申請する補助金・助成金によって必要書類は異なりますが、いずれにしても準備に手間がかかることはあらかじめ理解しておく必要があります。
必要書類には、決算書などの既存の書類のほか、事業計画書のように申請のために新たに作成しなければならないものも含まれます。また、各書類には記載内容や書式が細かく設定されており、指定の形式でなければ審査の対象外になってしまう場合もあるのです。
多くの補助金・助成金の申請には期日が設定されているため、不測の事態が起きても修正に間に合うよう、スケジュールに余裕を持たせておくことが大切です。
補助事業の実施期間が定められている
補助事業の中には、実施期間が定められているものがあります。
例えば、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金では、補助事業の実施期間と、実績報告・請求の期日が定められています。
指定の期間内にシステム開発が完了しなかった場合や、報告・請求の期日を過ぎてしまった場合は、補助金・助成金を受け取れない可能性があるため注意しましょう。
採択されない可能性がある
補助金・助成金は、条件を満たして申請しても採択されない可能性があります。特に補助金には厳しい審査基準が設けられていることが多いでしょう。また、各事業には予算の上限もあります。
採択率は補助金・助成金ごとに異なりますが、全申請の半分以上が不採択となっている事業もあるのです。システム開発を行う際は、採択されない可能性も視野に入れながら慎重に検討しましょう。
▷システム開発の種類|オープン系・汎用系・Web系の特徴やメリット、デメリットについて
補助金や助成金を活用し費用を抑えてシステム開発を進めよう
企業の発展や立て直しをバックアップしてくれる補助金や助成金。システム開発にも適用されるものがあり、うまく活用することで開発費用を抑えられる可能性があります。一方、申請には手間がかかり、交付を受けるための条件が細かく設定されているため、利用する場合は公募要項を隅々までしっかり確認しましょう。
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